日産フーガハイブリッド(FR/7AT)【試乗記】
おもしろハイブリッド 2011.01.26 試乗記 日産フーガハイブリッド(FR/7AT)……646万8000円
燃費性能を声高にアピールする、日産の高級セダン「フーガハイブリッド」。その主張の真偽のほどを、長距離ドライブで試した。
力試しの1200km
「日産フーガハイブリッド」で興味深いのは、何といってもその燃費性能である。そこで、とりあえず東京〜大阪間の往復を試みた。往路は高速道路、帰路は一般国道と走行パターンを変えて、さらに東京〜横浜を2往復して首都圏の燃費もとってみた。
まず高速道路での印象から。土曜日だったこともあり、交通量はかなり多い。しかし渋滞して止まってしまうほどではなく、大型トラックは多いものの流れてはいる。瞬間的には120km/h、上り坂でトラック同士の追い越しに続く時などは60km/hまで落ちる、といった走行パターンを繰り返す。
そんなとき、Dレンジのままだと分からないが、マニュアルモードにシフトしてその時のギアポジションをみると、4速か5速に入っていることが多い。フーガハイブリッドのATは7段であるものの、高速道路ならトップギアの7速で走っているかというと、決してそうではない。
平坦路を100km/hで走ってるときにマニュアル操作でシフトアップさせても、走行抵抗に勝てるほどエンジン回転は上がらず、すぐシフトダウンしてしまう。5速でも1500rpmでの使用を前提にしているに過ぎない。一番燃費が稼げる条件と思われる7速におけるミニマムな速度は130km/h、ということになりそうだ。
無意識のハイテク/対話できるハイテク
一方このハイブリッドシステムは、ガソリンエンジンとモーターの間、モーターと駆動輪の間にあわせてふたつのクラッチをもち、下り坂など負荷が軽くなるとエンジン側のクラッチを切って惰力走行モードに移行、エンジンはストップする。
後部クラッチがつながると駆動輪からのトルクで充電するか、微小の負荷ならばモーターが駆動する。この辺の動力伝達の切り替えは十分にスムーズで、ふたつのクラッチと電気モーターがうまく作動して、トルクコンバーターの代わりに回転差を吸収してくれる。
たとえば、大きなトラックの後方に追尾して走るような状況では、スリップストリームを利用するような感じで、エンジン回転ゼロのまま引っ張られて走る感覚があり、これは相当燃費がよくなりそうだと予感させる。運転法としてイケナイとされていた、ギアを抜いて惰力運転している区間もある。昔と違ってフットブレーキもよく効くし、エンジンブレーキが必要ならばモーターは回生ブレーキとなり、さらにバッテリーがフルならばエンジンが始動してエンジンブレーキ状態となる。そんなことが、ドライバーの思考とは無関係に全部自動的に行われるのだ。
ただ、右足の感触はちょっと奇異だ。走行モードを「ECOモード」にすると、アクセルペダルに反力をあたえてドライバーに燃料消費の低減を促す機能が働くため(ECOペダル)、アクセルペダルに載せている足の裏には、意思と無関係に押したり引いたり、勝手に動く感触が伝わる。これを嫌う人もいるかも知れないが、私自身は嫌うどころか情報として甘受したい。「ああ、いまモーターに替わった」とか、負荷が変化したことに対応する機械の動きがオモシロイとさえ思う。だから、個人的には嫌いなAT車であっても、眠くなるようなことは無かった。クルマとの対話が楽しめるからだ。
環境問わず立派な燃費
大阪で一旦高速道路から下りて、給油してみる。ゲージはまだ4分の1残っているが、40.73リッター入って、満タン法で13.25km/リッターの燃費を得る。ちょっと期待値には届かなかったが、走行可能距離は741kmと出た。
これはこれで結構飽きないと感じたが、同じパターンで高速道路を戻るのも能がないと思い、帰路は国道25号で亀山に出て、さらに国道1号東海道を帰ることにした。
こちらはバイパスも完備されており信号機のスパンも長いので、現実的には60-90km/hほどで流れている。加減速や勾配の頻度が高いから、高速道路よりもはるかにクルマとの対話が楽しめる。また同じくDレンジからマニュアルモードに変えてギアポジションを確かめると、こちらはほとんど3速で走っている状況が多い。そしてもちろんエンジンは頻繁にオン/オフを繰り返す。
横浜に戻ってきて給油すると、今度は44.52リッター入って、燃費は12.12km/リッターと出た。区間走行距離は偶然ながら540kmと同じ。一般道を使っての結果だから立派なものだ。
次の日は横浜〜東京間を2往復、首都圏の実用に近い状況で燃費性能を試してみる。その結果は、183kmで11.0km/リッターとなった。これも、加減速の激しさや渋滞を考慮するなら、「2桁いけば立派」と評価されてしかるべきだ。
ハイブリッドといえば「トヨタ・プリウス」のプラネタリー方式が技術的にはオモシロイ。だがあの構造では変速機がつかない。将来の可能性としては電気式のオーバードライブくらいだろうか。そこへいくと、エンジンとモーターを直列に配するハイブリッド方式は技術的にはつまらない。ホンダ方式はマニュアルギアボックスがオモシロイが、モーターだけでは走れないから、燃費は思ったほど伸びない。
モーターだけでも走る日産方式は、ATでもオモシロイ。アクセルペダルの踏み分けでいろいろな走行パターンが経験できるし、ホンダ方式より燃費はいい。ニュートラルで転がっている区間はエコラン競技のようでもある。
どの方式であれ、省エネ運転の極意は回収した電気をいかに使うかであり、バッテリーをできるだけ「空」にしておくのが鍵だ。その点、フル充電気味になってないと心配なシニアドライバーは考えを改めなければならない。機械の作動も、フーガハイブリッドの量産がすすめば、ますます洗練されていくだろう。
(文=笹目二朗/写真=荒川正幸)

笹目 二朗
-
トヨタRAV4アドベンチャー(4WD/CVT)【試乗記】 2026.8.1 いまやトヨタの最量販モデルへと上り詰めた「RAV4」の6代目モデルが登場。もちろんトヨタにとっては自信作のはずだが、後を追うライバル勢も着々と進化しており、カスタマーのチェックの目は厳しくなるばかりだ。国内向けでは最廉価の「アドベンチャー」でその仕上がりを試した。
-
ビモータKB998リミニ(6MT)【レビュー】 2026.7.31 ビモータのスーパースポーツ「KB998リミニ」にサーキットで試乗! イタリア職人の手によるフレームに、カワサキの強心臓を搭載した一台は、いかなる走りを見せてくれるのか? クローズドコースだからこそ体験できたマシンの真価に迫る。
-
ポルシェ・マカンGTS(4WD)【試乗記】 2026.7.29 ポルシェの擁する電動のハイパフォーマンスSUV「マカン エレクトリック」に、さらに走りを磨いた「GTS」が登場。エンジンを積まない電気自動車でも、ポルシェならでは、GTSシリーズならではの走りは楽しめるものなのか? 雨のなかの試乗を通して確かめた。
-
シトロエンë-C3マックス(FWD)【試乗記】 2026.7.28 シトロエンのコンパクトハッチバック「C3」に電気自動車版の「ë-C3」が登場。さすがはシトロエンらしく、操作系やスペック、装備の設定、さらには乗り心地にいたるまで、普通のBEVとはひと味違う。誰にでも勧められるクルマではないが、そもそもシトロエンとはそういうポジションだ。
-
スズキ・ジムニー ノマドFC(4WD/4AT)/ジムニー ノマドFC(4WD/5MT)【試乗記】 2026.7.27 “ジムニー史上初”となる、5ドアのロングボディーで人気を博す「スズキ・ジムニー ノマド」。快適な後席と広い荷室空間が自慢のファミリーの新顔に、はたして死角はないのか? このクルマの本領であるオフロードも走行し、その実力をつまびらかにした。
-
NEW
「売れるクルマ」と「いいクルマ」にズレがあるとき、開発者がつくりたいのはどっち?
2026.8.4あの多田哲哉のクルマQ&A「いいクルマが売れるとは限らない」などといわれるが、「売れるクルマ」と「いいクルマ」が一致しないとき、エンジニアが目指したいと思うのはどちらなのか? 元トヨタの車両開発者である多田哲哉さんに聞いてみた。 -
NEW
ホンダ・スーパーONE(FWD)【試乗記】
2026.8.4試乗記ホンダのスポーツハッチバック電気自動車「スーパーONE」がいよいよ公道を走り始めた。その愛らしいスタイリングと走りの楽しさはすでに各所で報告されているが、多くの方が不安に感じているのは“距離”に関してに違いない。幾度かの経路充電を挟みつつ300km余りをドライブした。 -
第341回:「スカイアクティブZ」は大丈夫か
2026.8.3カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。夜の首都高に新型「マツダCX-5」で出撃した。マイルドハイブリッドのパワートレインと進化したシャシーが織りなす走りを確かめつつ、ディーゼルエンジンがラインナップから消えた3代目CX-5について考えた。 -
MINIクーパーSEポール・スミスエディション(FWD)【試乗記】
2026.8.3試乗記人気のプレミアムコンパクト「MINI」に、特別なデザインが魅力の「ポール・スミスエディション」が登場。著名なファッションブランドがコーディネートしたMINIは、クルマに疎い人も、ブランドに疎い人も魅了する、説得力のある装いの一台に仕上がっていた。 -
「フェラーリ12チリンドリ マヌアーレ」の“MTごっこ”は、スーパーカーの新スタンダードになるか?
2026.8.3デイリーコラムフェラーリひさびさの3ペダルMT車として注目される「12チリンドリ マヌアーレ」は、実はDCTがベースの“なんちゃってMT車”だ。やはり、超ハイパワー車と伝統的なMTのコンビは無理なのか? 事情に詳しい西川 淳はこう考える。 -
マツダCX-5 G(後編)
2026.8.2思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が新型「マツダCX-5」に試乗。後編ではマイルドハイブリッド化された2.5リッターエンジンやホイールベースが拡大されたシャシーが織りなす走りをチェック。気になる「スカイアクティブZ」についても聞いてみた。




































