日産ティアナ350JM(CVT)【ブリーフテスト】
日産ティアナ350JM(CVT) 2004.08.10 試乗記 ……362万5650円 総合評価……★★★ 「モダン・リビング」を標榜し、低迷久しいセダン市場で健闘中の「日産ティアナ」。トップモデル「350JM」に、別冊CG編集部の道田宣和が乗った。
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そそらぬ美人
部屋があり、椅子があり、空調やAV機器も揃っている。考えてみれば、クルマの室内はたしかにリビングルームそのものだ。最近はクオリティ・オブ・ライフとやらを楽しもうと家具や調度品に関心が高まるなか、クルマのインテリアに「モダン・リビング」の発想を採り入れたのが「日産ティアナ」である。
そのティアナがメーカーいわく「これまで以上の高級感と快適性を追求して」、デビュー以来1年4カ月振りとなる初のマイナーチェンジを行った。といいつつも販売好調ゆえか、見た目にはほとんど違いがわからない程度の小規模な変更である。
さっそくトップモデルの「350JM」を引っ張り出し、“走るモダン・リビング”の出来映えを試してみた。なるほど室内は良質感と清涼感がいっぱいで、譬えればサワサワと渡る5月の風のような気持ちよさである。けれども、惜しいことに何かが足りない。それは「大人になりすぎて」忘れられた(?)、走りへの情熱なのかもしれない。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
「ローレル/セフィーロ」の後を継ぐ「ティアナ」は、そのこと自体が信じ難いほどガラッと変わった。伝統の(旧弊な?)車名を捨てたのがそうなら、見栄えより実質と居住性重視に大転換した設計思想がそう。価格設定もすこぶる挑戦的だ。なにしろ全長4770mm×全幅1765mmの堂々たるサルーンが2.3リッターのV6エンジン付きで236万2500円からというのだから、お買い得感はかなりのもの。
しかもモダン・リビングを目指しているだけあって質感は高く、その分さらにコスト・バリューが増す仕掛けだ。
メカニズムは横置き前輪駆動を基本に、2775mmと長めのホイールベースを挟んでフロントにストラットの、リアにマルチリンクのサスペンションを配している。これに2.3リッターと3.5リッター(パワーはそれぞれ173psと231ps)のDOHC V6エンジンを組み合わせ、上記の「230JK」から始まって同「M-コレクション」(252万円)「230JM」(267万2250円)「350JM」(340万2000円)に至るシリーズが構築されている。
また、それらFFモデルとは別に2.5リッターDOHC直4エンジン(160ps)と4WDを組み合わせた「250JK FOUR」(257万2500円)と「250JM FOUR」(293万4750円)も用意される。
(グレード概要)
テスト車の「350JM」はもっとも高価だが、実は割安感の点ではシリーズ随一と言えるかもしれない。今回の改良による恩恵は洩れなく享受しているほか、もともと装備水準そのものがダントツの豪華さだからだ。
この結果、高級輸入車並みのリア電動サンシェードが新たに標準で備わり、ステアリングホイールは自慢のインテリアと調和する「本革巻き/木目調」に、(フルオート)エアコンは除菌効果のある「プラズマクラスターイオン式」にそれぞれグレードアップされた。
併せて従来からのカーウイングス対応TV/DVDナビやカラーバックモニター、(オーディオ/ハンズフリーフォン用の)ステアリングスイッチ、インテリジェントキーなどが楽しめる。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
アルカンタラの艶と滑りをよくしたようなパステルカラーの「パールスエード」をシート素材とし、フェイクはフェイクでもコーティングの盛りを厚くして安物感を払拭した「木目調パネル」。それらが醸し出すモダンでソフトな雰囲気のなか、視認系と情報系、操作系が画然と分けられたダッシュボードはなかなかの新鮮さだ。
しかも、操作系はオーナー層を考慮してか一部が珍しく日本語表示で、それがまた全体のバランスを崩していないところにデザイナーの力量の高さが見て取れる。
ただし、あまりにスッキリ感を優先したせいなのか、実際には取り扱い説明書を見ないで操作するのは難しく、ラジオの選局ひとつとっても妙にフラストレーションが募ったのも事実である。
(前席)……★★★
絶対的なスペースは充分以上だが、決して小さくない外寸を考えると標準的ともいえる。胸まわりは広々として開放的だが、ダッシュボードの下半分が意外に室内を侵食しているのである。このため、セールスポイントのひとつであるオットマン付きの助手席を存分には楽しめないのが残念だ。
走行中は万一クラッシュした際に「サブマリン現象」の原因となるためか、カタログでは敢えて触れていないが、その気になればいずれも電動式のリクライニングとオットマン用クッションを使ってファーストクラス並みのフルフラット状態をつくりだすことができる。けれども、肝腎のそのときに伸ばした脚先がグローブボックスと干渉するのである。
(後席)……★★★
前席のバックレストを湾曲させているせいもあって、レッグルームはひと昔前に驚嘆させられた「アウディA6」や「VWパサート」並みの余裕である。立派なセンターアームレストも備わり、その点ではショファードリブンにも相応しい。個人タクシーに使われている例が多いのはそのためかもしれない。
ところが、ステアリングを代わってここに座ってみると乗り心地が思ったほど芳しくないことに気づく。前席でも感じられた、サスペンションストロークの最後で顔を出す微小なハーシュと上下動がなぜかより増幅されて感じられるのだ。ついでに言えば、後ろに向かって降りてくるルーフのせいでヘッドクリアランスはミニマムだし、上記の湾曲したバックレスト背面が妙にそこだけプラスチッキーで安っぽく見えるのも興醒めだ。
(荷室)……★★★★★
前輪駆動車のトランクを素直に真面目につくりさえすればこんなにもよくなるという見本。メーカーの謳い文句は相変わらずゴルフバッグが基準で、それを床に3セット並べて置くことができ、さらにその上に同2セットほかが重ねられるとのことだが、とにかく広く大きいのは事実である。
容量自体もVDA測定法で506リッターと充分だが、特筆すべきは床がフラットで突起がなく、アクセスも良好できわめて使いやすいことだ。しかも、リアのセンターアームレストに隠されたトランクスルー機構を使えばスキー板のような長尺物も収容でき(そうでなくても奥行きは充分なのだが)、ほとんど文句の付けようがない。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
このクルマのエンジンは「VQ35DE」の型式名が示すとおり、「フェアレディZ」や「スカイラインクーペ」のそれと基本設計を共有するが、実際にはまるで別物と言っても差し支えない。
むろん、縦置きか横置きかの搭載方法やチューン(あちらは同じ排気量と圧縮比で280ps)の違いはあるものの、大排気量車にはまだ稀なベルト式CVT(6段シーケンシャルモード付き)が組み合わされていることもあって、パワーの出方から音、そして雰囲気に至るまで、すべてが大きく異なるのである。
結果としてのエンジンマナーは徹底した低回転・低速トルク型と言ってよい。とにかく、運転中ふと気が付いてタコメーターの針に目をやるとエンジンは常に6700rpmのリミットがナンセンスに思えるほど低い1000〜2000rpmの間でユルユルと回っており、100km/h巡航もD(6速)でたったの1750rpmにすぎない。発進や追い越しでかなり踏み込んだつもりでもせいぜい3000rpmくらいにしかならないのだ。当然、室内は終始かなりの静かさである。
ところが、せっかくだからと半ば無理して回してみると事態は一変、4000くらいでガーッと急速にうるさくなり、回転そのものも6000rpmの手前にして明らかに苦しくなる。「無理して」と言ったのはそもそもその必要がないからだが、同時になぜか反発力が強すぎて積極的に踏み込む気がしないスロットルのせいでもある。それでも速さは充分以上だ。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
大型車らしく長いホイールベースと広いトレッド(前1520/後1525mm)に支えられ、ソフトな割にフラットな挙動そのものは悪くない。ただし、ブッシュとダンパーのセッティングにはいささか疑問が残る。サスペンションストロークの最後のところがスムーズでなく、コツンコツンと軽いショックに見舞われたり、微小な上下動が収まりきらないからだ。
ハンドリングは可もなく不可もなくといったところ。ロールがやや深めでブレーキが若干スポンジーなこと以外は特に問題もない。ただし、ステアリングはフィールに乏しく、すくなくとも運転して楽しい種類のクルマでないことはたしかである。
(写真=高橋信宏)
【テストデータ】
報告者:道田宣和(別冊CG編集室)
テスト日:2004年7月8日-7月12日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2004年型
テスト車の走行距離:1168km
タイヤ:(前)215/55R17 93V(後)同じ(ダンロップSPスポーツ270)
オプション装備:ロービームレベライザー付きキセノンヘッドランプ(5万2500円)/SRSカーテンエアバッグシステム(4万7250円)/濃色ガラス(3万1500円)/特別内装色(2万1000円)/SFHC(3万6750円)/フロアカーペット(3万4650円)
形態:ロードインプレッション
走行形態:市街地(7):高速道路(3)
テスト距離:347.8km
使用燃料:57.8リッター
参考燃費:6.0km/リッター

道田 宣和
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