日産ティアナ250XV(FF/CVT)【ブリーフテスト】
日産ティアナ250XV(FF/CVT) 2008.09.19 試乗記 ……335万4750円総合評価……★★★
モダンリビングコンセプトを受け継いだ、2代目「日産ティアナ」。そのターゲットは中国市場に傾きつつあるが、日本でも魅力のあるセダンなのか? 450kmの走行でOMOTENASHIを受けてきた。
キラリと光るなにかがほしい
ティアナのCMに出ている大和撫子と、“金麦”を冷やして待ってる美人妻。どっちの「檀れい」がいいかと聞かれたら、迷わずキラリと光る金麦の檀れいを選ぶ。だいたい、ティアナの女性が檀れいだなんて、女房にいわれるまで気づかなかったし。出しゃばらないところはティアナのキャラクターにあってるけど。
そのティアナ、値段のわりに見映えはいいし、冷静に見ても、よくできたクルマである。快適な移動手段という点でも、きっと家族のウケはいいはずだ。さほどクルマに思い入れがない人には、無難な選択肢としてお勧めできる。
これといって嫌みなところもないが、全体的に薄味で、「どうしてもコレじゃないと!」という気にさせられないのがクルマ好きには不満なところ。それがティアナの個性といえばそれまでだし、世界中のさまざまな市場に展開するにはこういう味付けのほうがいいのかもしれないが、それでも、キラリと光るなにかがほしいなんて、わがままな話だろうか?
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【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
2003年2月にデビューした「ティアナ」。“モダンリビングコンセプト”を受け継ぎ、2008年6月に現行モデルである2代目に生まれ変わった。先代の販売台数の約半数を占めた中国市場を意識し、グローバルな視点に基づいた快適性を採り入れるべく進化させたという。
新開発のプラットフォームが奢られ、専用のエンジンも搭載。エンジンは2.5と3.5のV6、4WD用の2.5リッター直4という3種が用意され、いずれもCVTと組み合わされる。
(グレード概要)
テスト車の「250XV」は、新開発となる2.5リッターV6を搭載し、豪華装備を備えた上級グレード。ティアナの代名詞ともいえる助手席オットマンシートはもちろんのこと、インテリジェントエアコン、HDD式のカーウイングスナビゲーションシステム、バックビュー&サイドブラインドモニターなどの便利な装備も標準で備わる。なお、ティアナ専用となる2.5リッターV6は、レギュラーガソリン対応である。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
“モダンリビング”をテーマに、スタイリッシュで気持ちのいい空間を提案した初代ティアナのコンセプトは、この新型ティアナにもしっかり受け継がれている。木目調パネルにベージュのパッドが浮き上がるように配置されたダッシュボードは、その柔らかなフォルムとあいまって、心地良い雰囲気をつくり上げる。センターコンソールやドア内部の形状にも優しさが感じられた。
メーターもユニークで、クロームのリングに透明なイルミネーションリングが組み合わされたデザインがとても新鮮で上品。
贅沢をいえば、せっかくここまでやったのだから、ウッドパネルは本物がほしい。カタログモデルでは難しいかもしれないが、限定車でいいから、そういう仕様があればうれしい。
(前席)……★★★★★
インテリアデザイン以上にありがたいのがフロントシートの座り心地。表面はふわっとしているのに、座ると低反発クッションが身体全体を支えてくれる感じが絶妙。“パールスエード”というバックスキン風の表皮にも高級感がある。パワーシートが標準だが、運転席のみに装着のランバーサポートは手動になる。
助手席には、ティアナ自慢の電動オットマンがおごられている。オットマンには一家言ある編集部Mのアドバイスにしたがい、最初にオットマンを一番上まで跳ね上げ、そこから徐々に下げて、踵(かかと)がフロアに着いたところで固定すれば、たしかに楽ができる。あればうれしい機能である。
(後席)……★★★
ロングホイールベースを活かしたパッケージングのおかげで、後席の足もとは余裕十分。自然な姿勢で足が前に出せるし、前席との間には足が組めるほど広いスペースが確保される。
シートは、見た目こそフロントと変わらないが、座ってみるとフロントほどコシがない。それでも十分快適なのだが、走り出すと路面の凹凸を伝えがちで、前席に比べて落ち着きが足りないのが惜しい。
(荷室)……★★★★
4850mmという全長相応に広いラゲッジスペース。最大1160mmの奥行きに500mmの高さ、幅も最大1420mmで、トランクリッドのヒンジが荷室に干渉しない設計なのでスペースを有効活用できる。開口部が広いのも使いやすい点だ。
長尺物が搭載できるようトランクスルー機能はあるが、後席が倒せないのは残念な点。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
レギュラーガソリン対応のVQ25DEは、10・15モード燃費が12.0km/リッターと、2.5リッターV6としては十分に経済的。実際に運転してみると、燃費を考えてか、アクセルペダルの踏み始めあたりの反応がやや鈍い感じもあるのだが、加速は低回転から余裕があり、その気になってアクセルペダルを踏み込めば、4000rpm半ばまで回転を上げたのち、グングン速度を伸ばしていく。CVTとしては比較的リニアでダイレクトなのも印象をよくしている。
ただ、加速時のパワートレインのノイズは大きめで、V6らしさがあまり伝わってこない。これなら4気筒でもいいのでは?
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
マイルドな乗り心地はティアナの美点。一般道では落ち着いた挙動を示し、高速道路でもフラット感は十分。首都高速の継ぎ目を通過する際にも、ハーシュネスの遮断は良好である。ただ、前席に比べると後席の快適性が多少劣るのが気になった。
ワインディングロードでハンドリングを試す機会はなかったが、ふつうに走るかぎりはこれといって嫌なところは見つからない。ノーズが長いので、車庫入れのときなど気を遣う場面もあったが、このサイズに抵抗がなければどうぞ!
(写真=郡大二郎)
【テストデータ】
報告者:生方聡
テスト日:2008年9月3日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2008年型
テスト車の走行距離:8159km
タイヤ:(前)215/55R17(後)同じ(いずれも、ダンロップ SP SPORT270)
オプション装備:ETC=2万6250円/VDC=6万3000円
形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3):高速道路(5):山岳路(2)
テスト距離:461.4km
使用燃料:46.25リッター
参考燃費:9.98km/リッター

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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