ヒュンダイXG300L(5AT)【試乗記】
まだまだ“発展途上” 2004.04.26 試乗記 ヒュンダイXG300L(5AT) ……309万5400円 ヒュンダイのサルーン「XG」シリーズを代表するのが、3リッターモデルの「XG300」。「XG250」のできばえに気をよくして、上級グレードに試乗した別冊CG編集室の道田宣和だったが……。日進月歩? それとも……
いったい、どっちがホントなのか?
追加モデルの「XG250」に気をよくして臨んだ既存の「XG300L」試乗だったが、どうしたことか、このクルマには上級車のメリットがあまり感じられない。そればかりか、むしろ廉価版にはなかったアラさえ目立つ結果となった。問題は、その原因が生産時期の違いを反映した家電並みの進歩にあるのか、個体差なのか、それとも機種ごとのできに思わぬバラツキがあるのか、ということだ。
ただし、これだけはハッキリしている。答えがそのいずれかであっても、韓国車はまだまだ“発展途上”にあるということだ。むろん、それは同時に潜在能力の高さをも意味し、今後の可能性に大いに期待が持てるともいえる。
XGシリーズは1998年にデビューし、2001年に輸入が開始されてから3年が経つ。V6エンジンが前輪を駆動するアッパーミドルクラスのサルーンで、日本でも2003年末までにトータルで2140台を売り上げた。今年はさらにその数を伸ばそうと排気量のやや小さい、そしてなにより重要なことに、破格のバーゲンプライスともいえる220万2900円の「XG250」を追加投入したのは既報のとおりである。これを機会に、いままでなぜか『webCG』が乗り逃していた3リッター版も引っぱり出してみたというわけだ。
「クラウン」をやや幅広くしたサイズのボディ鼻先に収まるのはヒュンダイ自製のDOHC24バルブV6 3リッターエンジンで、ボア91.1×ストローク76.0mmは同84.0×75.0mmの2.5リッター版を凌ぐオーバースクエアタイプだ。このスペックからすれば単にパワフルなだけでなく、高回転も苦にしないに違いない。そのパワーとトルクだが、3リッターの、2.5に対する絶対的な差は意外に小さく、それぞれ17psと2.9kgm増しの184psと25.8kgmに留まる。依然としてレギュラーガソリンで済むのが強味だ。対する車重は80kg増しの1650kg。これにより馬力当たり荷重は9.4kg/psから9.0kg/psに軽減されている。つまり、加速は向上しているはずだ。ギアボックスは4段から5段にグレードアップされ、パワーステアリングのコントロールも単純な油圧式から電子-油圧式に進化する。
ユルい感じはなぜ?
テスト車は2003年4月に登録されたモデルだった。1年近く経ったとも、それしか経っていないとも言えるが、乗った途端にどことなくヤレた印象を受け、思わずオドメーターの数字を確認した。ところが走行距離そのものはまだ4000km台半ばにすぎない。
一般的に、広報車は“無慈悲な”ジャーナリストたちの手によって酷使されることが多い。とはいえ、ちょっと早すぎるのではないか、というのが正直なところである。なにしろメーカーの話によれば、韓国は一歩郊外に出るといまだに悪路が結構残っているそうで、日頃そうしたところで鍛え上げられているため、むしろ耐久性には定評があると胸を張っていたのだから。
もしかしたら、80kgの重量増が予想以上に効いているのかもしれない。というのも乗り心地のソフトさはかなりのもので、同乗者によってはもはや街なかのスピードでも酔いそうだと洩らす者もいたからだ。乗りはじめはサスペンションストロークの過程が案外スムーズなことだけに目を奪われていたドライバーも、慣れてくると次第に舟のようなピッチングを指摘しないわけにはいかなくなった。程度そのものは軽微だが、フロア振動がほぼ常時伝わってくる点も古臭い感じに繋がっているのかもしれない。そうなると不思議なもので、XG250の簡素な内装がスッキリと好ましく思える。こちらは“豪華”なぶん、コクピットまわりに増殖したフェイクの木目やらなにやらが、うとましく感じられるようになってきた。
違いはそれだけに留まらない。ステアリングは終始重めだった250と対照的に、いつでもどこでも軽すぎるくらいに軽く、たとえるなら昔のアメリカ車並み。手のひらだけでスルスルとまわって楽チンなことこのうえないが、むしろ頼りなさの方が先に立つ。
せっかちなオートマチック
けれども、嬉しいことにパワーはそれなりに頼もしい。既に述べたとおり数字の違いそのものは小さめだが、現実はXG250に比べて、回転域全域で明らかにパワフルなことがわかる。ショートストロークのなせるわざか、その気になればDレンジ任せでもシーケンシャルモードを利用した手動でも、リミットの6600rpmにごく近い6300rpmまで軽々と吹け、ここ一発という場面でややもたつきをみせた250とは違って、乗りやすいことはたしかだ。
同じことは3000rpm以下の中・低回転域でも言えるのだが、こちらは若干の違和感が感じられた。というのも、アイドリングから1000rpm台まではスロットルを踏んでも目立った反応がなく、2000rpmに入ると一転してワッと吹けるものだから、穏やかな発進にかえって気を遣うのだ。おまけに、ブレーキが思ったほど初期減速Gが出ないタイプとあって、街なかのストップ・アンド・ゴーは意に反してクルマの動きがギクシャクしがちである。
オートマチックも250のそれとはかなり趣を異にする。5段のうち下3段が詰まった感じで、ふつうに踏むと発進してからいくらも行かないうちにポンポンポンとシフトアップが起こり、メーターが50km/hプラスに届いた頃には早くも5速に入っているといった具合なのだ。せっかちなのである。逆も同じ。特に停止寸前にはコツンコツンと数度にわたって機械が自動的にシフトダウンし、軽いショックとなって身体に伝えられることが多い。
アイドリングが負荷の変動を受けやすいのも特徴のひとつ。エンジンが充分に温まっているのに1250rpmくらいまで高まり、クリープが強まってズルズルと這い出しそうになることがあった。コンピューターコントロールといえば、エアコンもなぜか気まぐれだ。温度設定の上限である32度でようやく温風が出てくることがあるかと思えば、その翌日には25度でもかなり暑く感じることがあった。もちろん体調のせいなどではなく、複数の人間が確認しての話である。このへんはさすがに調整不足が原因だろうから、ここはひとつヒュンダイの名誉のためにも、是非もう一度ベストな状態でテストができる日を期待したい。
(文=別冊『CG』編集室道田宣和/写真=峰昌宏、ヒュンダイモータージャパン/2004年4月)

道田 宣和
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