ボルボXC90 2.5T(5AT)【ブリーフテスト】
ボルボXC90 2.5T(5AT) 2004.02.27 試乗記 ……674.0万円 総合評価……★★★★ 北米では2002年から、日欧では昨2003年にローンチされたボルボのSUV「XC90」。同車の中間グレードたる「2.5T」に、自動車ジャーナリストの生方聡が乗った。
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ライバルを凌ぐ使いやすさ
「XC90」は、ボルボ初の本格SUV。「優−低排出ガス」をパスする環境性能、背の低いクルマと衝突した際に相手へのダメージを軽減する方策など、環境適合性や安全性に配慮したボルボならではのSUVは、たとえば「ポルシェ・カイエン」やその子分(?)「フォルクスワーゲン・トゥアレグ」などのドイツ勢に比べると、走りの面でややおとなしい印象がある。
だが、実用性重視のエンジンや、さまざまなシートアレンジが簡単に楽しめる7人乗り3列シート、広い室内を実現したパッケージングなど、使いやすさではライバルを凌ぐ。ファミリーで楽しむなら、お勧めの1台だ。なにより、肩肘張らずに乗れるのがボルボらしいところである。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
ボルボのフラッグシップサルーン「S80」をベースにつくられたXC90は、世界最大の自動車マーケットたるアメリカのSUV人気をうけて開発された、同社初の本格SUV。2002年のデトロイトショーでデビュー、翌年の5月から日本に導入された。欧州メーカーでは「BMW X5」「フォルクスワーゲン・トゥアレグ」「ポルシェ・カイエン」らをライバルとする。
全長4800mmのボディに、3列シート7人乗り(本国には2列5人乗りもあり)のシートレイアウト。ボルボらしく、環境と安全にこだわりあり。強化ピラーでキャビンをカゴのように囲う「セーフティゲージ」で乗員を保護、7席分の3点式シートベルトや前席&サイド&カーテンエアバッグを装備する。スピン&アンダーステアを防ぐ「DSTC」に加え、背の高いSUVの転倒を防止する「RSC」(ロールスタビリティコントロール)といった、アクティブセーフティデバイスも充実。車高の低い車両と衝突した際や、対歩行者へのダメージ軽減策など、コンパティビリティも考慮した。
(グレード概要)
日本でのラインナップは、2.5リッター直5ターボ(209ps)+5ATを積む、エントリーグレード「XC90」とレザー内装の「XC90 2.5T」、S80譲りの2.9リッター直6ツインターボ(272ps)+4ATを搭載する「X90 T-6」の3種類。駆動方式は、いずれも電子制御ハルデックスクラッチを使うオンデマンドAWD(4WD)である。
全グレードにわたって装備は充実する。2.5Tの、ベーシックモデルに対するアドバンスは、レザーシートに加え、前席パワーシート、クルーズコントロール、ウッドステアリング、ハイパフォーマンスオーディオ(160W、8スピーカー)など。トップグレードのT-6は、プレミアムサウンドオーディオ(305W、11スピーカー)や、電動ガラスサンルーフを標準装備。タイヤは、225/70R16インチよりひとまわり大きい235/65R17インチを履く。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
外観はどこから見てもSUVらしいスタイルなのに、運転席から見える景色は、アイポイントが高いことを除けばSUVらしくない。副変速機や4WDの切り替えスイッチなども見あたらないので、SUVに馴染みがなくても違和感なくすんなりと運転できるはずだ。メーターパネルはアナログメーターが並び、シンプルで見やすいのがいい。
試乗車はダークグレーを基調としたインテリアで、ウッドパネルとあいまってボルボらしい落ち着いた雰囲気を演出する。エアコンは運転席と助手席で別々に温度設定できるオートエアコンが標準。オーディオはCD/MD両対応。後部座席の乗員がヘッドフォンでオーディオを楽しむための端子と、コントローラーも用意されている。HDDナビゲーションシステムはディーラーオプション。
(前席)……★★★★
試乗車の2.5Tには、ドアミラー連動メモリー機構付きの電動レザーシートが標準装着される。大きめのサイズでゆったりしているのに、革の張り具合が多少強いおかげで、乗員をしっかり支えてくれる印象だ。肩まで覆うシートバックと大型のヘッドレストは、快適なだけでなく、安心感も与えてくれる。
収納は、センターコンソールにCDケースが7枚入る大型の物入れとドリンクホルダーが備わり、さらにドアポケットや大型のグラブボックスなど、小物の置き場には困らない。アイポイントが高いので見晴らしはいいのだが、全長×全幅×全高=4800×1900×1780mmの巨体は、都内で乗るには少々持てあますサイズだ。
(2列目)……★★★★
3人分のスペースを提供する2列目シートは、4:2:4の3分割可倒式。シート裏のレバーでバックレストを簡単に倒すことができるうえ、その際にヘッドレストも外さなくてもよいのは、さすがボルボ。それぞれ独立してスライドさせることも可能だ。
左右のシートには十分な幅があり、一番後ろのポジションをとれば足が組めるほど広いレッグスペースを生み出す。3列目に人が座る場合はポジションを前に出すことになるが、一番前でも膝が前席に触れず、爪先もシート下に収まるから窮屈さは感じなかった。
中央席はやや小振りで大人が座るには狭いが、ビルトインタイプのチャイルドシートが備わる。前席中央にせり出して、フロントシートに座る親との距離を近づけることもでき、子供用としては重宝する。
(3列目)……★★★
3列目には独立したふたつのシートが備わるが、正直なところ大人が長時間座るには狭い。2列目シートを一番前に出せば、膝の前に多少スペースが生まれるが、それでも膝を抱えるような姿勢を強いられ窮屈な思いをする。短距離用、または子供用と割り切った方がいい。
乗り心地は、2列目も似た傾向はあるが、3列目ではいっそうリアタイヤが伝える路面の凹凸が気になる。さらに、フロアが高いので、子供やお年寄りは乗り降りに苦労しそうだ。スライド機構は持たないが、2列目同様、簡単にシートを倒すことができるのはいい。
(荷室)……★★★★
4800mmの全長からすれば当然だが、3列目を倒した状態のラゲッジスペースは奥行き1m超の広大な空間である。2列目も倒せば2mになり、大人2人が横たわれるフラットなフロアがあらわれる。一方、3列目に人が座るときでも奥行きは40cmほどあるから、手荷物を収める程度なら十分だ。テールゲートは上下2分割式で、通常は上側だけ開ければ済む。下側を開けるとフロアと同じ高さになり、重量物の積み降ろしに便利だ。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
XC90 2.5Tに搭載されるのは、2.5リッター直列5気筒DOHCにライトプレッシャーターボを与えた実用的なエンジン。最大トルクの32.6kgmを1500〜4500rpmで発生することからも想像できるように、2000rpm以下でも力強く、2トンを超えるボディ重量を感じさせない。
ライトプレッシャーターボは、過給機付きエンジンの盛り上がりこそないが、そのぶんアクセル操作に対するレスポンスが自然で、ターボを意識せずに扱うことができる。アクセルペダルを踏み込むと5気筒特有のサウンドとともに気持ちよく回転が上がり、トップエンドまで伸びるフィールは実にスポーティだ。5段ATとのマッチングもよく、ストレスを感じることなく運転できるのがうれしい。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
ポルシェ・カイエンやVWトゥアレグほどの硬さはないが、SUVとしては十分フラットな乗り心地を示す。目地段差を越えたときなど、多少ショックを伝えるものの、それ以外の場面で快適性は高い。ワインディングロードを走ると、さすがにロールやピッチングが目立ってくるが、挙動は安定しており、さほど不安は感じない。図体に似合わず、案外素直なハンドリングゆえ、ついペースが上がってしまう。
(写真=清水健太)
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【テストデータ】
報告者:生方聡
テスト日:2004年1月15日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2003年型
テスト車の走行距離:--
タイヤ:(前) 235/65R17 104V(後)同じ(いずれもコンチネンタル Premium Contact)
オプション装備:アンダープロテクションプレート=4.4万円/リアスキッドプレート=5.3万円/スノーブレード=1.5万円/カーナビゲーションシステムHDX300=20.6万円/アルミホイール“Neptune”=6.3万円/プレミアムサウンド・オーディオシステム=5.0万円/サンルーフ=16.0万円
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2):高速道路(7):山岳路(1)
テスト距離:--
使用燃料:--
参考燃費:--

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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