トヨタ・ファンカーゴ1.5G“リアリビングバージョン”(FF/4AT)【ブリーフテスト】
トヨタ・ファンカーゴ1.5G“リアリビングバージョン”(FF/4AT) 2003.01.16 試乗記 ……201.2万円 総合評価……★★★★フツーの安心感
「ヴィッツ」ベースのハイトワゴン「ファンカーゴ」。マツダの新型「デミオ」やホンダ「モビリオ・スパイク」、そして日産の新型「キューブ」など、明確なキャラクターをもつライバルが続々登場するなか、“携帯空間”ファンカーゴはマイナーチェンジで対抗する。涙目型「ティアドロップスタイル」のヘッドライト、「ヴィッツ」風ヒゲグリルを採用したフロントマスク。リアコンビネーションランプは後退時に光る部分をクリアにした「ダイヤモンドカット」を施し、エクステリアはアカ抜けた印象。しげしげ観察しないとわからない微妙さだが。全車「平成12年度基準排出ガス75%低減レベル」の超ー低排出ガス車をパス。1種類だったシートアレンジを3種類に増加するなど、商品性の向上が図られた。
走れば、低回転からトルキーなエンジン、見晴らしが良く小振りなボディサイズで、キビキビ。リアの居住性、荷室ともに広く、“携帯空間”の謳い文句通りだ。ただ実用車然としているので、「“Fun”Cargo」っていうほど楽しいかどうかは疑問。まぁ、乗るヒトを選ばないのがミリョク、ともいえる。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
1999年にデビューした、「ヴィッツ」ベースのコンパクトワゴン。2002年8月に施されたマイナーチェンジで、内外装をリフレッシュ。全車「平成12年度基準排出ガス75%低減レベル」の超ー低排出ガス車に認定された。さらにFFモデルは、平成22年燃費基準も達成し、グリーン税制の対象車種となった。
従来は、「前席セパレートタイプ+リアシートを床下に収納できる“リトラクタブルシート”」のみだったが、マイチェンにともない、「前席ベンチシート+後席リトラクタブルシート」と、「前席セパレートタイプ」に、床下収納はできないが、クッションが厚く座り心地のよいリアシートを組み合わせた「リアリビングバージョン」が加わり、3種類のシートアレンジから選択できるようになった(Jグレードを除く)。
エンジンは、1.3リッターと1.5リッターの2種類。いずれも直4DOHCである。トランスミッションはコラム式4段ATのみ。グレードは下から「J」「X」「G」(1.5リッターのみ)の3種類で、それぞれに2WDと4WDが用意される。
(グレード概要)
「G」グレードは、1.5リッターエンジンのみが用意される、ファンカーゴのトップグレード。「J」「X」グレードはスチールホイールだが、「G」は14インチアルミホイールを装着。インテリアは、本革巻ステアリングホイールや、メタル調センタークラスター&パワーウィンドウスイッチベースなどを装備する豪華版だ。「G」グレードにのみ、盗難防止システム「エンジンイモビライザー」が、1.5万円でオプション設定される。オーディオはもともと付かないが、他のグレードよりスピーカー数が2個多い、4スピーカーが標準となる。
【室内空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
マイナーチェンジで、2色あったインテリアカラーを無難なダークグレーに一本化。ステアリングホイールは、中央部分の面積が小さいシャープな3本スポークに変更、センターメーターやダイヤル式エアコンスイッチの縁取りにシルバー調を採用し、質感向上が図られた。新しいライバルの個性的な室内に比べると地味だが、「趣味にあわなくて気に入らん!」なんてことがなさそうな、誰にでも受け入れられるフツーっぽさがイイ。
収納場所は豊富だが、ボディサイズのせいかどれも小さめ。特にセンターコンソール中央のポケットは使い勝手がいい場所なのに、深さもなく角度が水平気味なので、ちょっと元気に走り出したら、入れておいた携帯電話が後席までスッ飛んだ。滑りにくいラバーを張るだけで、多少は改善できると思うのだが。
(前席)……★★★
高い視点と広いフロントスクリーンは、良好な視界を提供。ルーフ前端の切れ目も、ギリギリ目に入るか入らないかなので、開放感も抜群である。ノーズが下へ下がっていて運転席からボンネットは見えないが、ボディサイズが小さいから、取りまわしはラク。小ぶりなサイズで、あたりがフニっと柔らかいシート。乗り込んでしばらくは「なかなかイイ座り心地」と思わせる。しかし、高速道路に乗って1時間ほど走ったら、リポーターと助手席のカメラマンともども、コシが痛くなった。オシリと腰が沈むせいだろう。運転席はダイヤル式のハイトコントロール付きで、シート前端を軸に全体の角度を調節できる。
(後席)……★★★
マイナーチェンジで加わった「リアリビングバージョン」は、床下にシートを格納できる「リトラクタブルシート」を捨てた代わりに、厚みのある座面で座り心地重視のシートが奢られた。板っぺらのようなリトラクタブルシートに較べれば、当たり前だが座り心地はずっと良い。
(荷室)……★★★★
リアシートを畳まなくても、プリマクラッセの帽子ケースを、横に寝かせて積める奥行きがある。「リアリビングバージョン」は、シートバックを前に倒せるのはもちろん、さらに座面ごと前へ持ち上げて折りたたむことができる。完全フラットな荷室を望まないなら、普通の人はこのバージョンがオススメ。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
低回転からトルキーな実用性の高いエンジンは、特にストップ&ゴーの多い街中で本領を発揮。想像以上にキビキビ走ることができた。登坂変速制御付き電子制御4段AT「Super ECT」は、速度や走り方に合わせてシフトアップ&ダウンを細かく、かつスムーズに制御する。コラム式のATシフターは、ほぼ「D」に入れっぱなし。
100km/h巡航でのエンジン回転数は2500rpm付近。最大トルクを発生するのは4200rpmだからまだまだ余裕があり、追い越しもイライラすることない。ビックリしたのは燃費。市街地も高速道路も、ちょっと(かなり?)急いで運転したにもかかわらず、12.0km/リッターを記録した。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
乗り心地はフワっと柔らかく、80km/hくらいまでは快適だった。しかし100km/h付近で目地段差を乗り越えると、上下動の収まりが悪くてフワフワする。ハンドリングも同様、街乗りではなんの問題もなくステアリングの重さも適度なのに、高速走行では中立付近があいまいで安定しない。“半”商用車としての割り切りか。
(写真=峰昌宏)
【テストデータ】
報告者:webCG大澤俊博
テスト日:2002年10月9日〜11日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2002年型
テスト車の走行距離:1659km
タイヤ:(前)175/65R14 82S/(後)同じ(いずれもブリヂストンB391)
オプション装備:ツインムーンルーフ+フロントパーソナルランプ+オーバーヘッドシェルフ=10.5万円/DVDボイスナビゲーション付きワイドマルチAVステーションII+バックモニター=30.7万円/SRSサイドエアバッグ=3.5万円/Sパッケージ=8.0万円/盗難防止システム=1.5万円
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(4):高速道路(6)
テスト距離:183.4km
使用燃料:15.3リッター/km

大澤 俊博
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