スズキKeiワークス FF(5MT)【試乗記】
使いきる快感 2002.11.29 試乗記 スズキKeiワークス FF(5MT) ……131.01万円 「カッ飛び豆粒モデル」として世のクルマ好きを驚かせた「アルトワークス」。2000年末の生産中止以来、ほぼ2年ぶりに“ワークス”が復活した!今回は「Kei」がベースである。真っ赤な新世代ワークスに、『webCG』記者が乗った。ロウダウンと4輪ディスク
試乗会場には、スペシャルグリルをもち、フォグランプが埋め込まれた大型パンパーを備えた「Keiワークス」が並んでいた。スズキの方にご挨拶すると、「今回は色の選択を間違えました」と、赤いテスト車を見ながら苦笑いされる。グリル、ボディサイド、リアゲートに付けられた赤い「Works」バッヂが目立たないというのだ。
大丈夫。ノーマルのKeiより15mmロウダウンされたKeiワークスは、ちゃんとスポーツモデルの迫力をかもし出していますよ。
2002年11月12日、軽乗用車Keiのスポーツバージョン、Keiワークスが発売された。従来の「Keiスポーツ」の後継グレードにあたるモデルで、64psを発生するツインカムターボに、5段MTもしくは4段ATが組み合わされる。FF(前輪駆動)のほか、4WD車あり。
Keiワークスは、ノーマルと顔つきが変わるほか、ルーフエンドに大型のスポイラーが付く。15インチのアルミホイールも新意匠。室内にはレカロ社と共同開発したと謳われるバケットシートが奢られ、ファブリックの表皮も専用だ。そのほか、リアブレーキがドラムからディスクに格上げされ、FFの5MTモデルにはフロントLSDが標準で装備される。
価格は、FFの5MTモデルのみ「Keiスポーツ」より2.0万円アップの124.2万円。FFのAT車および4WDの値段は変わらず、それぞれ129.7万円(4AT)と、133.9/141.4万円(5MT/4AT)となる。
オツリがくる
いわゆるガンメタにペイントされた6本スポークのアルミがなかなかイイ。リアにも、ホイールの奥に丸いブレーキローターがのぞく。4輪ディスクは、2000年に生産が終了した「アルトワークス」以来だという。スズキはKeiによるワンメイクレース「Keiスポーツカップ」を行っているから、同社のスポーツイメージ向上には、アルトよりKeiに“ワークス”を追加するほうが効果的と判断されたのだろう。
Keiワークスは、外観のみならず、足まわりはダンパー、スプリングとも専用設定がなされ、ステアリングも通常の3.8回転から3.3回転に速められていると聞いて、ちょっと驚く。ずいぶん本格的だ。
「RECARO」という白い文字がウレシイ運転席に座って、試乗をはじめる。スポーツシートとはいえ、着座位置はノーマルモデルと同じで、視点が高い。ステアリングホイールは本革巻き。速度計と回転計は、シルバーメーターである。
パワーユニットはKeiスポーツからのキャリーオーバーで、3気筒らしく元気に回る。3500rpm付近から加給感が強まるが、爆発的なパワーの上昇はない。ロウで45km/h、セカンドで65km/h、サードで100km/hに達する細かく刻まれたギアで、64ps、10.8kgmと絶対的なアウトプットの小ささをカバー。同じエンジンを積む「MRワゴンスポーツ」よりヒト1人分軽い、780kgのボディを軽快に運ぶ。Keiワークスには、セカンド、サードをフルスケール使って走る爽快感、クルマの性能を使いきる快感がある。
スペシャルチューンのサスペンションは、「スポーツ」と「乗り心地」のバランスがよく、しなやかにしつけられる。コーナリングではそれなりにロールしながらよく粘る。ビックリしたのは、フロントに装着されたヘリカル式LSDの有効なことで、ハードに曲がりながらなおかつスロットルペダルを踏み込んでいくと、Keiワークスはフロント内輪を空転させることなく、グイグイ前に進んでいく。息をつめてのコーナリングが楽しめる。一方、ちょっと気を抜いてカーブにアプローチすると、若干のアンダーステアを出して抗議する。リミテッドスリップの標準装着だけで、Keiスポーツからの価格上昇分2.0万円は「じゅうぶんオツリがくる」と思った。
Keiなわけ
「ワークスはもっと過激じゃないと、という社内の声もありました」と、ランチを取りながらスズキの開発者の方が話してくれる。「でも、『ワークスも大人になったんです』と説得しました」。
たしかにKeiワークスは、かつての「アルトワークス」の、「ドコ行っちゃうの!?」といったネズミ花火のような(?)カッ飛び感は影をひそめ、加速時やコーナーリングでも、文字どおり地に足がついたスポーツモデルになった。いまさら言うのもなんだが、きっと大人になったのはワークスだけでなく、軽自動車というカテゴリーそのものが成熟したのだろう。Keiワークス“素”の値段は124.0万円。「トヨタ・ヴィッツ」をはじめとした小型車と四つに組む。いうまでもなく「軽だから」という言い訳は通じない。
「派手なエアロパーツで飾るだけでなく、メカニカルな面にも手を入れているのが立派だ」と考えていたら、開発費圧縮の苦労にハナシがおよび、レシオを変えたステアリングギアは、実は「アルト」のもの、と教えてもらった。ノーマルバージョンのKeiは、アルトより大きなタイヤを履くため、ステアリングの重さを考慮して「ワゴンR」と同じややスロウなギアを使っているのだ。
ちなみに、今回“ワークス”をアルトでなくKeiに設定した理由として、「スポーツモデルといえども3ドアでは売れない」という事情もあるようだ。世知辛い、平成大不況のニッポンですから。そういえば、Kei自体、そもそも「3ドアのスペシャルティモデル」としてデビューしたんじゃなかったっけ……。
Keiワークス、ガンバッテいただきたい。
(文=webCGアオキ/写真=林渓泉/2002年11月)

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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