ルノー・ルーテシア1.4 RXT(4AT)【試乗記】
マニュアルが欲しい 2002.11.15 試乗記 ルノー・ルーテシア1.4 RXT(4AT) ……185.0万円 欧州で190万台以上を売り上げたヒットモデル、ルノー「クリオ」こと邦名「ルーテシア」。しかし、日本ではふるわない。1.4リッターのベーシックモデルに、webCG記者が乗った。ユーロNCAP★★★★
ルノーのコンパクトカー「ルーテシア」(欧州名クリオ)。1998年にモデルチェンジして2代目になり、現行モデルは2000年6月にビッグマイナーチェンジが施された「フェイズ2」である。日本には2002年3月に、ホッテストバージョンの3ドア「ルノースポール2.0」が導入され、それから約1ヶ月遅れの4月10日に、ベーシックモデル「1.4 RXT」が追加された。こちらは当初5ドアボディのみ、右ハンドルで、トランスミッションも4段ATだけだ。ちなみに本国には1.4リッターの他に、1.2、1.6、そしてルノースポール製ではない2リッターもラインナップされる。
マイナーチェンジで、“変わった”と認識できるのは、いうまでもなくデザインだ。特に「付けマツゲしたみたい」(webCGワタナベ)なフロントマスクは、先代と較べると“シャレっ気が出た”というところ。グリル中央の大きなルノーマークやボンネット中央のモールドは、2001年の東京モーターショーにも出品されたコンセプトカー「タリスマン」や、フラッグシップ「ヴェルサティス」にも共通する、これからの“ルノー顔”。日本では、「ルノー」の名は知られていても、どんなクルマが売れているのかわからないヒトが多いから、個性の強い新しいフロントマスクは、以前よりはルノー車を印象づけるのに役立つかもしれない。
「全体の50%以上が新しくなった」と謳われるフェイズ2モデル。プラットフォームは基本的に従来と同じものの、衝突安全性を向上させるためにボディが強化され、前席に膨らみ方を2段階に自動調節する「アダプティブエアバッグ」やサイドエアバッグ、フォースリミッター&プリテンショナー付きシートベルトなどが備わり、パッシブセーフティー装備が充実した。フェイズ2クリオは、欧州の衝突安全テスト「ユーロNCAP」で4つ星を獲得した。
カングーと較べられる!?
フランスを中心に、欧州でベストセラーのルーテシアだが、日本ではいささか販売が思わしくない。フェイズ1時代、2001年4月〜6月の販売台数は467台。フェイズ2に変わった2002年4月〜6月の販売は、約半分の234台にとどまった。
「バタくさい(?)新顔がウケないのかしら?」と思い、ルノージャポン広報担当者に聞いてみると、「カングーに喰わたようなトコロがありまして」とおっしゃる。2002年3月から我が国に導入された、日本でいうところのハイトワゴン「カングー」。かたやベーシックな大衆車、こなた商用車ベースの乗用車版と、本国ではまるでジャンルの違うクルマだが、日本では“フランス車”でひとくくりになる不思議さ。まあ、カングーの大きなハコを背負ったルックスは立派に見えるし、広い荷室をどう使うか考えるだけで楽しい。それでいて、価格はカングーのほうが10.0万円安いのだ。ミニバン大国ニッポンにおいては、コンベンショナルなコンパクトハッチより魅力的に感じる人が多いのだろう。
なにはともあれルーテシアに乗ってみた。2つの山をもつ新デザインのメーターナセルは、以前のシンプルなひさし型より可愛らしい。シフトレバー奥に2個のカップホルダーが追加され、運転席まわりの使い勝手が向上した。デザインが変わったといっても気負ったところはなく、フワっと柔らかくて体に吸い付くようなシートの座り心地とあわせて、親しい友人宅のような居心地のいい空間を提供してくれる。
リアシートは6:4の分割可倒式で、ダブルフォールディングも分割して行えるから、利便性は高そうだ。
マニュアルが欲しい
新しいルーテシアのボディサイズは、ビッグマイナーで90×5×15(全長×全幅×全高)mm拡大され、ホイールベースは5mm延長された。とはいえ、依然として手頃なサイズで、混雑した都内での取りまわしもラクチンである。
編集部から千葉県は木更津の先を目指し、首都高速に入った。エンジンは、1.4リッター直4DOHC16バルブ。排気量や形式は従来と同じながら、電動スロットルバルブを採用し、より繊細なコントロールが可能になったという。低回転からトルクがあって、つかいやすい。
首都高速の合流でアクセルを踏みつけると、キックダウン後の加速は小気味よい。前が混雑していたのでアクセルを戻したら、強いエンジンブレーキがかかって驚いた。学習機能付き「プロアクティブ4段AT」は、「ドライバーの運転パターンや路面状況などに応じて、最適なシフトチェンジを行う」と謳われる。リポーターは「乱暴なドライバー」と判断されたらしい。キックダウンしてしばらくはアクセル全開しか受け付けず、シフトアップを期待してアクセルを戻しても、エンジンブレーキがかかるだけ。流れている高速道路では便利だが、ストップ&ゴーの多い都内ではギクシャクした。マニュアルだったらな……、という思いが頭をよぎる。
ともあれ、アクアラインに入ってからは道もガラガラ。速度に乗ればスムーズによく走る。パワステは、油圧式から速度感応型の電動式になったが、高速でのしっとりした手応えが自然。ハンドリングも小気味よく、一般道で右へ左への連続したカーブも身軽だ。
……なんて気持ちのいい走りも、ATの思い通りにならないシフトが足を引っ張る。「MTがあれば」の思いは膨らむばかり。狭い世界の話で恐縮だが、リポーターは長期テストでフェイズ1のクリオRSに乗る『Car Graphic』誌の加藤哲也編集長や、初代ルーテシア(もちろんMT仕様)を中古で購入しようと考え中の、webCGで撮影をお願いする峰昌宏カメラマンなど、何人かの“ルノー好き”を知っている。全員に共通するのは、MTを欲しがっていたことである。日本のルノーファンは、認知度の低いブランドが好きというニッチさによるかもしれないが、多くはマニュアルに乗りたいハズ。AT大国だからといって万人向けのATを入れるより、好きな人向けにMTを入れたほうがいいと思うのですが、いかがでしょう? 同郷のプジョーも、主要モデルにMTを用意して成功していることだし。
(文=webCGオオサワ/写真=河野敦樹/2002年9月)

大澤 俊博
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