ルノー・ルーテシアE-TECHエンジニアード(FF/4AT+2AT)
ビビッときたらお早めに 2023.07.15 試乗記 WLTCモードで25.2km/リッターという燃費を誇る「ルノー・ルーテシア」のフルハイブリッドモデルに、スポーティーな新グレード「E-TECHエンジニアード」が登場。数々の専用装備によってアップグレードされたフレンチハッチバックの仕上がりやいかに。新世代の電動化モデルをイメージ
「アルカナE-TECHフルハイブリッド」に続いて、ルーテシアのそれにも追加されたエンジニアードは、本国でもE-TECHフルハイブリッド専用に設定されるグレードだ。フランス本国のウェブサイトを見ると、エンジニアードは現在、アルカナとルーテシア以外に「キャプチャー」にも設定されている。また、同じE-TECHを名乗るルノーでも、100%電気自動車の「E-TECHエレクトリック」にはエンジニアードの設定はないようだ。
エンジニアードの特徴は、今回の試乗車でもあるグレーメタリックをメインカラーとして、各部にゴールド(ルノーでの呼称は「ウォームチタニウム」)のアクセントをあしらっているところだ。このコーディネートは2020年10月に公開された電気自動車のコンセプトカー「メガーヌeVISION」を源流とするもので、新世代の電動化モデルを強くイメージさせる。重要なアクセントとなっているゴールドに、オーディオやRCカーのマニア筋などは、通電抵抗が小さい金メッキコネクターを想起するかもしれない。
シートやアルミホイール、バンパーにあしらわれた「F1ブレード」などの意匠を見るに、エンジニアードのベースになっているのはルノーで定番スポーツ系トリムグレードだった「R.S.ライン」である。ここで“だった”という表現を使ったのは、R.S.=ルノースポールブランドの役割は今後アルピーヌブランドが受け持つことになっているからだ。先日、本国発表されたルーテシアのマイナーチェンジモデルでも、新しいスポーツ系トリムとして、R.S.ラインのかわりに「エスプリ・アルピーヌ」が前面に打ち出されていた。
ただし、今回上陸したルーテシアE-TECHエンジニアードはご覧のように、従来モデルがベース。この原稿を書いている7月中旬現在、ルーテシアのマイナーチェンジモデルは本国でも未発売である。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
BOSEのオーディオが復活
エンジニアードの雰囲気そのものは、日本でもすでにアルカナでおなじみとなりつつある。ただし、現行ルーテシアの日本仕様にはベースとなったR.S.ラインが導入されていないので、われわれ日本のユーザーは、特徴的なゴールドのアクセントや車体色以外にも、初めて目にするルーテシアのディテールがいくつかある。
とくにR.S.ラインならではのF1ブレードやスピード感のあるホイールデザインは、現行ルーテシアでは新鮮だ。同時に、フロントグリルやバッジ、ウィンドウモールなど、通常クロームメッキになるディテールが、ことごとくグロスブラックに置き換えられているところも、いかにも最新のスポーツモデルっぽい。
とはいえ、もともとのルーテシアを知っている人には、インテリアのほうがより新しさを感じるかもしれない。エンジニアード/R.S.ラインではカーボンも重要なディテールのひとつとなっており、ルーテシアでもダッシュボードからドアトリムに、日本では初見のカーボン=炭素繊維風の生地があしらわれる。さらにシートもエンジニアード専用表皮となるだけでなく、フロントシート自体が、本国のR.S.ラインと同じくショルダー部分が張り出したスポーツタイプとなっている。現行ルーテシアのスポーツシートも日本では初だ。
肩口から背中全体をしっとりと包み込む感触のスポーツシートは、実際、なかなか具合がいい。ホールド性が高いだけでなく、座り心地にも感心する。また、従来の日本仕様のルーテシアではあまり色気がなかったダッシュボードのルーバーやステアリングセンターパッドにゴールドのアクセントが光るのも明らかに高級感がある。さらに、Aピラー内側のスピーカー部分には「BOSE」の文字も見える。BOSEオーディオは現行ルーテシアでも当初は「インテンス」に標準装備されたのだが、半導体不足が原因なのか、途中の仕様変更でシンプルな「ARKAMYS(アルカミス)」社製の6スピーカータイプに切り替えられていた。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
純粋に心地よいパワートレイン
走りについては、すでに発売されているルーテシアのE-TECHフルハイブリッド(以下、E-TECH)と選ぶところはない。1.6リッター直4エンジン+2モーターのハイブリッドシステムからサスペンション、17インチタイヤまで、走りにまつわるメカニズムやハードウエアはすべて従来のルーテシアE-TECHと共通だという。
とはいえ、それは悪いことではない。ルーテシアE-TECHの魅力は、日本法人が推しまくる「輸入車燃費No.1」だけではない。走りについてもすこぶる魅力的……というのは、お世辞でもなんでもない。
ルノーのE-TECHはエンジン駆動、モーター駆動、エンジンが発電に徹するシリーズ駆動、あるいはエンジン+モーターのパラレル駆動……というあらゆるパターンを自在に使い分けながら走る、欧州車ではめずらしい非プラグインのストロングハイブリッドである。すでに耳タコかもしれないが、エンジン側4段、駆動モーター側2段というドグミッションを直結しているところがE-TECH最大のミソで、機構自体はシンプルなので駆動効率が高い。
ひとクラス上のアルカナでも十二分にパワフルなパワートレインを、それより160kgも軽い車体で使うルーテシアは、ひとことでパワフルだ。今回は後日ご報告するアルカナE-TECHエンジニアードと合わせたメディア試乗会での取材で、ゼロ発進や50~60km/hからの追い越し加速では、隣車線を走るアルカナを軽々と置き去りにするほどであった。また、走行中はドグミッションという言葉から想像されるようなギクシャク感は皆無で、前記の加速レスポンスの鋭さとともに、微妙なアクセル操作に対するリニアな加減速マナーにも、あらためて感心した。いやはや、純粋に心地よいパワートレインである。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
実はお買い得モデル!?
ルーテシアE-TECHの走りは、1.3リッターターボを積む純エンジン車より明らかに高級感がある仕上がりといってよい。まあ、動力性能そのものは1.3リッターターボのほうがさらに活発で、操縦性も軽快ではある。しかし、いかにも路面に吸いつく低重心感、ステアリングやシートから伝わってくる濃厚きわまる接地感、しっとりと重厚な乗り心地、それでいて軽快さもあまり損なわれずに正確性もそのままの操縦性、そしてハイブリッドらしい静粛性……が、ルーテシアE-TECHの美点だ。
漏れ伝わってくる情報によると、E-TECHだからといってシャシー方面に特別な仕立てが施されているわけではないそうだから、このルーテシアの走りも、必然に重くなったウェイトに合わせた強化や調整、そして荷室下にリチウムイオン電池を搭載するゆえの重量配分変化……による結果オーライということなのだろう。実際、車検証表記に見る前後重量配分は、1.3リッターターボの64:36に対して、E-TECHでは60:40に改善している。
今回ラインナップ加わったエンジニアードの価格は、同じE-TECHを積む「レザーパック」の5万円高となる。レザーパックと比較すると、エンジニアードではレザーシート表皮とステアリングヒーターが省かれるが、かわりにスポーツシートや9スピーカーのBOSEオーディオに加えて、360°カメラにワイヤレス充電機能、フレームレスルームミラーなどがつく。総合的には逆にエンジニアードのほうがレザーパックより買い得感が高い気もする。
前記のように、フランス本国を含む欧州ではすでにマイナーチェンジモデルが公開。本国では今夏にも発売とのウワサもあるので、このモデルの販売期間もあまり長くはなさそうだが、なかなか魅力的なエンジニアードに相当するグレードが今後も用意されるかは定かではない。今回ビビッときた向きには、待っているヒマはなさそうだ。
(文=佐野弘宗/写真=花村英典/編集=櫻井健一)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
テスト車のデータ
ルノー・ルーテシアE-TECHエンジニアード
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4075×1725×1470mm
ホイールベース:2585mm
車重:1310kg
駆動方式:FF
エンジン:1.6リッター直4 DOHC 16バルブ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:4段AT(エンジン用)+2段AT(モーター用)
エンジン最高出力:91PS(67kW)/5600rpm
エンジン最大トルク:144N・m(14.7kgf・m)/3200pm
メインモーター最高出力:49PS(36kW)/1677-6000rpm
メインモーター最大トルク:205N・m(20.9kgf・m)/200-1677rpm
サブモーター最高出力:20PS(15kW)/2865-1万rpm
サブモーター最大トルク:50N・m(5.1kgf・m)/200-2865rpm
タイヤ:(前)205/45R17 88H XL/(後)205/45R17 88H XL(コンチネンタル・エココンタクト6)
燃費:25.2km/リッター(WLTCモード)
価格:379万円/テスト車=387万8550円
オプション装備:なし ※以下、販売店オプション フロアマットセット<プレミアム>(2万8050円)/ETC2.0ユニット(2万8600円)/エマージェンシーキット(3万1900円)
テスト車の年式:2023年型
テスト開始時の走行距離:1425km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。
-
日産リーフB7 G(FWD)【試乗記】 2026.3.20 民生用電気自動車のパイオニアである「日産リーフ」が3代目へとフルモデルチェンジ。シャシーや電池、モーターなどすべての要素を刷新し、もはやスペック上は何の不安もない水準にまで進化している。360km余りのドライブで実際のところを確かめた。
-
モト・グッツィV7スポルト(6MT)【レビュー】 2026.3.18 イタリアの名門、モト・グッツィのマシンのなかでも、特に歴史を感じさせるのがロードスポーツの「V7」だ。ファンに支持される味わい深さはそのままに、よりスポーティーにも楽しめるようになった最新型の実力を、上級グレード「V7スポルト」に試乗して確かめた。
-
トヨタRAV4 Z(4WD/CVT)/RAV4アドベンチャー(4WD/CVT)【試乗記】 2026.3.17 「トヨタRAV4」が6代目へと進化。パワートレインやシャシーの進化を図ったほか、新たな開発環境を採用してクルマづくりのあり方から変えようとした意欲作である。ハイブリッドの「Z」と「アドベンチャー」を試す。
-
アストンマーティン・ヴァンキッシュ ヴォランテ(FR/8AT)【試乗記】 2026.3.14 英国の名門、アストンマーティンの旗艦車種「ヴァンキッシュ」に、待望の「ヴォランテ」が登場。5.2リッターV12エンジンを搭載した最上級コンバーチブルは、妥協のないパフォーマンスと爽快なオープンエアのドライブ体験を、完璧に両立した一台となっていた。
-
プジョーE-3008 GTアルカンターラパッケージ(FWD)【試乗記】 2026.3.11 「プジョー3008」の電気自動車版、その名も「E-3008」が日本に上陸。新しいプラットフォームに未来感あふれるボディーをかぶせた意欲作だが、その乗り味はこれまでのプジョーとは明らかに違う。ステランティスのような大所帯で個性を発揮するのは大変だ。
-
NEW
トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス” +エアロパフォーマンスパッケージ(前編)
2026.3.22ミスター・スバル 辰己英治の目利きスバル/STIでクルマの走りを鍛えてきた辰己英治氏が今回試乗するのは、トヨタの手になる4WDスポーツ「GRヤリス」だ。モータースポーツへの投入を目的に開発され、今も進化を続けるホットな一台を、ミスター・スバルがチェックする! -
BMW i5 eDrive35LエクスクルーシブMスポーツ(RWD)【試乗記】
2026.3.21試乗記BMWの「5シリーズ ロング」は知る人ぞ知る(地味な)モデルだが、実はエンジン車のほかに電気自動車(BEV)版の「i5 eDrive35L」も用意されている。まさに隙間産業的にラインナップを補完する、なんともニッチな大型セダンの仕上がりをリポートする。 -
軽商用BEVの切り札「ダイハツe-アトレー」に試乗! 街の小さな働き者のBEVシフトを考える
2026.3.20デイリーコラム軽商用車界の大御所ダイハツから、いよいよ電気自動車(BEV)の「e-ハイゼット カーゴ/e-アトレー」が登場! スズキやトヨタにも供給される軽商用BEVの切り札は、どれほどの実力を秘めているのか? “働く軽”に慣れ親しんだ編集部員が、その可能性に触れた。 -
アルファ・ロメオ・ジュニア イブリダ プレミアム(FF/6AT)
2026.3.20JAIA輸入車試乗会2026アルファ・ロメオのエントリーモデルと位置づけられる、コンパクトSUV「ジュニア」。ステランティスには、主要メカニズムを共有する兄弟車がいくつも存在するが、このクルマならではの持ち味とは? 試乗したwebCGスタッフのリポート。 -
第288回:自称詩人は中古車で自由を表現する? 『自然は君に何を語るのか』
2026.3.20読んでますカー、観てますカー「月刊ホン・サンス」第5弾は『自然は君に何を語るのか』。恋人の両親に初めて会う自称詩人は、気まずい空気の中で次第に感情を抑制できなくなっていく。「キア・プライド」が小道具としていい味! -
日産リーフB7 G(FWD)【試乗記】
2026.3.20試乗記民生用電気自動車のパイオニアである「日産リーフ」が3代目へとフルモデルチェンジ。シャシーや電池、モーターなどすべての要素を刷新し、もはやスペック上は何の不安もない水準にまで進化している。360km余りのドライブで実際のところを確かめた。
















































