フランス勢の自由な発想に脱帽(前編)【ジュネーブショー2013】
2013.03.11 自動車ニュース【ジュネーブショー2013】フランス勢の自由な発想に脱帽(前編)
高級車やスーパーカーで攻勢をかけるドイツやイタリア、イギリス勢に対し、同じ欧州メーカーでもフランス勢は楽しさや柔軟な発想で勝負。なかでもプジョー&シトロエンは、電気を使わないハイブリッドこと「Hybrid Air」で注目を集めていた。
■「プジョー208」ベースのクロスオーバーが登場
プレスデイ初日、朝8時からのプレスコンファレンスのトップバッターはプジョーだった。ピカット社長が日本でも好評の「208」の背高版「2008」をサラッと紹介した。コンファレンスは平等に各社15分と短いために、手短かに済ませなければならないのだ。
Tシャツ姿の10人前後の若者男女がフラッシュモブ風に2008の周囲やルーフの上(!)を飛び跳ね回りながらベールを剝ぎ取り披露。再び、ピカット社長が登場して短くスピーチした。
コンファレンスが始まる前から、実は僕には気になるものが視界の隅に存在していた。コンファレンス会場右側の壁沿いにプジョーのミニカーやアパレル、グッズ類などを販売している「La Boutique」がすでに店を開けているのだが、その建物の上には白いクルマが乗せられているのだ。そして、その白いクルマが、目の前で白い布をかぶせられた何台もの2008のシルエットに視覚的にピタリと重なってしまう。
「あっちにもベールをかぶせておくのを忘れたのかな? まさか、これからワールドプレミアで発表しようとするクルマを無防備にも、素っ裸でみんなから丸見えのあんなところに置いておいたりしないよな?」
社長スピーチの間中も気になって気になって仕方がなかったのだが、ベールが剝がされ、前と右上をキョロキョロ見比べた。そのクルマはやっぱり2008だった!
2008のフロントフェイスやウィンドウグラフィックは208のそれを引き継いでいるが、ルーフがリアウィンドウ上で一段持ち上げられていて、ウィンドウの上縁側に太いクロムメッキが施されているのがデザイン上のアクセントになっている。展示されていたすべての2008にはルーフレールが装着されていたので、その分だけ「ルノー・キャプチュア」よりもアウトドア風味が強められている。インテリアは208と基本的に同一だった。
一方シトロエンは、「C4ピカソ」の後継が予定されているコンセプトカー「テクノスペース」を披露。回転ステージに展示されており、多くのメディアが取り囲んでいたのは人気の表れだろう。C4ピカソよりも、見た目はマッシブな印象を受けた。フロントウインドウは「C3」から始まった「ゼニスウィンドウ」。ルーフにまで大きく切れ込んでいる。プジョー・シトロエンの次世代プラットフォーム「EMS2」を用いることで車体全体で70kgの軽量化を実現しているという。
■ラインナップ強化が進むディーゼルハイブリッド
プジョー・シトロエンはディーゼルエンジンにバッテリーとモーターを組み合わせ4輪を駆動する「Hybrid4」(イブリッド・キャトル)版のラインナップを拡充してきており、ブースにも「3008」「508」と価格付きで展示していた。
新たに登場した「508RXH」は5万9900スイスフランと高級車の範疇(はんちゅう)に入るが、個人的にはとても魅力的に見えた。合計出力200psのユニットを持つ「508 Hybrid4」ワゴンの最低地上高を少し上げ、オーバーフェンダーを装着している。
「アウディA6オールロードクワトロ」のように最低地上高を運転席のスイッチで5段階に変化させられるエアサスペンションを持っているのか、それとも「A4オールロードクワトロ」のような車高一定のコンベンショナルなサスペンションを持っているのか不明だったが、最低地上高を上げたステーションワゴンという存在は、SUVに二の足を踏むシティーアウトドアーズマンにとってはとても身近に映る。長距離走行に有利なディーゼルと街中に優れているハイブリッドに四輪駆動が組み合わされているわけだから理想的な一台ではないだろうか。
■電気いらずの画期的なハイブリッドが登場
今回のショーで最も興味を引かれた技術展示が、プジョー・シトロエンの「Hybrid Air」だった。なんとガソリンエンジンと空気とオイルのアキュムレーターを組み合わせたハイブリッドシステムなのだ。電気モーターとバッテリーによる既存のハイブリッドシステムがエネルギーの回生とアシストを電気を媒介にして行うのに対して、このHybrid Airは空気とオイルで行う。
エンジンが駆動する油圧ポンプ(モーターと記されていたが)によって床下に設置された細長いアキュムレーター内のオイルをピストンによって押し縮めていく。次にその圧力はリアシート下のエアタンク内の空気を圧縮する。シティーモードでは圧縮された空気の膨張を解くことによってオイルが押し戻され、その力でタイヤを駆動する。これは電気を用いたハイブリッドカーのEVモードに相当する。もっとパワーが必要だとクルマのECUが判断するとエンジンが始動し、空気の力と併せて走る。そして、高速道路など負荷の小さな状況ではエンジンだけで走ったり、空気を圧縮したりする。
「バッテリーとモーターを用いないので、その分の設備投資も必要としないから発展途上国でも比較的容易に生産することができる。2016年の実用化を予定している」
その手があったか!
まさにコロンブスの卵的なアイデアだ。オイルと気体をアキュムレーターに封入してそこに圧力を加えて、解放した時のエネルギーを利用するなんて、シトロエンのハイドロニューマチック・サスペンションの応用ではないか。アイデアが生まれた経緯については今回のショーでは明らかにされなかったが、勝手にそう考えて走りっぷりを想像するだけでもワクワクしてきた。
(文と写真=金子浩久)
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