「アウディTTクーペ」に乗る
1999.10.12 自動車ニュース「アウディTTクーペ」に乗る(10/12)
アウディ・ジャパンは、「アウディTTクーペ」を10月20日に発売した。CG編集部の記者、竹下元太郎の特急インプレッション。
この丸っこいバウハウス・スポーツは、いったいどんな走りを披露するのか? まずは頭に思い描いてみてほしい。225psの1.8リッター・ターボユニットは全長4mのボディを力強く加速させ、ハンドリングはクワトロ4WDシステムのおかげで泰然自若の安定ぶりを誇るはずだ。ボディ剛性も高いんだろうなぁ……、すべて正解。計測すれば、たぶん2.5リッターNAのポルシェ・ボクスターを上回るタイムを叩き出すだろう。乗り心地は? もしかするとハードな突き上げをイメージしているかもしれないが、それはハズレ。遠出をしたくなるようなしなやかさを持ち合わせている。要するにTTは、格好が良く(そう言って異論があるなら“ユニーク”で)、かなり俊足で、誰もがハンドリングを楽しめるオールマイティーなスポーツカーである。
しかし、だ。クルマ全体がリアルスポーツとしての挑発的な息吹に満ちているかというと、これは意見が大きく分かれるところだろう。より具体的に言うなら、ターボユニットの音であり、トルクフィールであるが、生粋のスポーツカーにしては少々ドラマ不足なのである。
わずか2200rpmで28.6mkgのピークに達し、台形型のトルクカーブを描くフラットトルク型のこのエンジン、とにかくスロットルを踏めばおよそどの回転域でも充分なトルクが手に入ってしまう。4500rpm+で一段と勢いこそ増すものの、タコメーターの針と同調したドライバーの気持ちの高まりというものをさほど促さない。
目的地に早く到達したいのか、それともその過程を楽しみたいのか。前者を支持するドライバーならTTはまたとない存在だが、“ミニ911”を期待していた筆者などは、ちょっとイージーすぎる印象を得た。ボクスターの新型2.7リッター・フラットシックスをミドシップに搭載した914/6ならぬ“TT/6”が出ないかなぁ。(CG編集部 竹下元太郎)
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