トヨタ・アルテッツァジータAS200 Lエディション(4AT)【ブリーフテスト】
トヨタ・アルテッツァジータAS200 Lエディション(4AT) 2001.11.02 試乗記 ……315.3万円 総合評価……★★★ありそうで少ないスポーティワゴン
2001年1月のデトロイトショーのプレスデイ初日、トヨタが日本人のプレスだけを集めて小さなミーティングを開いた。何かといえば、翌日発表されるレクサスIS系のニューモデルについての事前説明会だという。その場ではIS(アルテッツァ)ベースの画期的なバージョンといわれた。「単なるワゴン版と捉えないで、スポーツカーからワゴンに至るまでの様々な要素を入れた新しいクルマと思って下さい」、概略それがトヨタ側の説明だった。
だから翌日、ラップトップやデジカメとともに記者席の最前列を確保していて待っていた。ところがスモークとともに壇上に出てきたのは、単なるアルテッツァのワゴン版だったのだ。「これじゃあ、1960年代のコロナ5ドアセダンじゃないか」と、昔を知っているリポーターは思ったものだ。確か「ISスポーツクロス」という名前だったと思う。やたらクロス、もしくは「X」の言葉を使って、様々なジャンルのハイブリッドが出現したデトロイトでは、この程度では全然ハッタリが効かなかった。
その帰国版がアルテッツァジータである。要するにアルテッツァの5ドアワゴン、それだけのクルマだ。
でも「はったりコンセプトカー」ばかり幅を利かせていたデトロイトと違って、もう少し穏やかな日本市場に送り込まれたこのジータは、ふつうのワゴンというよりは、多少はスポーティワゴンの雰囲気をもつ。もとのアルテッツァが、当時のトヨタ他車種とは違ってあえてFR(後輪駆動)を採り、最初から硬派のスポーツセダンとして登場しているから、他のワゴン(といってもトヨタから普通のワゴンはずいぶん無くなったけれど)に比べるなら、やっぱりスポーティワゴンといっていいだろう。
個人的には昔から、つまり30年以上前からこの種のクルマにあこがれていたが、意外とこれまで国産には少なかった。そう思いつつ試乗を期待していたはずなのに、2日間で飽きてしまった。
最大の原因は、もうリポーターが歳をとりすぎたからだろうが、クルマにも何かそう感じさせるものがあると思う。
【概要】 どんなクルマ?
(シリーズ概要)
ベースとなったアルテッツァは、トヨタが日産スカイラインに対抗して送り出したスポーティサルーン。それまでマークII系のチェイサーあたりで応戦していたが、どうしてもプラットフォームからスポーティな性格をもったクルマを開発する必要があることを認め、2年前に送り出した。一方でアメリカのレクサスブランドでも、単に上品なクルマだけで勝負をするのではでなく、より若いユーザーを取り込むにはスポーティーカーが必要と判断され、日本には用意されない3リッターモデルが「IS300」の名前で販売された。
【車内&荷室空間】 乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
2リッターとはいえ「Lエディション」、というまでもなくトヨタのクルマは、人によって要求は違っても、まあ普通の人なら文句はないほどの装備は揃っている。意外といいのは、「L」の場合はパセンジャーシートも電動になることで、寝たり起きたりと、むしろドライバーより姿勢変化が多いこのシートの主にとってはとても助かる。インストルメントパネルに関して、アルテッツァが登場以来賛否両論があったクロノ風メーターは、このモデルでも継承されている。リポーターはそれがうれしかった。人によっては“大人じみていない”というかもしれないが、日本のクルマでこういう風にオリジナリティを取り入れただけでもエライと言えるし、慣れれば決して見にくくはない。それに全体に「日本的なバナキュラーデザイン」を否定しているような(多分レクサス・ベースだからだろう)、この姿勢を、私は評価する。
(前席)……★★★
スポーティワゴンのイメージを狙って、かなり個人重視の前席デザインはそれでいいと思う。本革とエクセーヌを使ったシートは、ダークブルーの外装だから当然黒系統だと思ったら、メーカーがいうアイボリーなるサンドベージュでそれも気に入った。
座ってみると小柄なリポーターにもそれなりに合う。だからシート位置やステアリングを調整すればそれなりにいい。スポーティドライビングにも、通勤モードにも合う。だが、終日スポーティドライビングのポジションにセットしたまま、箱根往復をいつものコースで走った後、持病の腰痛を少しだけ感じた。クッションではなく、やや薄いバックレストのためと思う。だが30代の想定ユーザーなら、まあ国産車としては合格点か。
(後席)……★★
リアシートは考え方次第である。スポーティワゴンと考えるなら、後ろのシートなんて座れればいい。とはいえ、ポルシェ911より広ければいい、という考えは10年以上古いだろう。こういうクルマだと思えばまあ充分という言い方もある。だけど今の社会、スポーツカーであろうが何であろうが、ワゴン狙う以上は少しでも広い方がいい。法規上は後席3人乗りだが、基本的にはあくまでも二人用。一見タイトに感じられていいが、クッションやバックレストも薄いので、少々疲れる。「プラス2」以上だけど、間違っても姑を乗せてはいけない。
(荷室)……★★★
ワゴンボディだからセダンよりは載せやすい。でも本当のワゴンじゃないから、期待してはいけない。乗用車より便利だけど、荷物室の天地は少ないし、いざ荷物を積むと後ろが見えないクルマのひとつ。リアシートのバックレストを前倒してフルスペースを作り出しても、それでも荷室フロアに段差が出来る。でもスポーティーカーこれだけ荷物が運べればいいか。結婚したばかり、子供もいないカップル向け。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
スポーティカーといえども世間でどんどん少なくなってきたストレート6は、やっぱりそれなりにこのクルマの魅力だろう。世界的水準からすれば、それに最近V6がそれなりに良くなってきたことを考えると、最高のユニットとは言いかねるが、それでも独特のクラシカルなクルマの味わいを与えるエンジンだ。考えてみればIG-FEは生まれたときから素性のいい、少なくともベスト・トヨタ6だったから、今でも色あせない。ただしこのクルマの場合、もう少しドラマティックな味付けの方がいい。ティップ式ATは4速ながらもギアリングがトルク特性に合っている。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
いいクルマだ。正直に応答して、まともにコーナーを走る。だからといって戦闘的ではない。ふつうのドライバーにとって、特に挑戦なんかする必要がなければ(そんなもの、もともと無いんだけれど)、飛ばしやすく、使いやすいクルマで済む。あくまでも扱いにくい性格はなく、グリップとパワーのバランスは巧みに釣り合っているから、悪く表現するとつまらないぐらい行儀がいい。乗り心地は、ややストローク感に欠けるし、薄いシートもそれを助けないけれど、高周波の振動には強いから、日本の道にはいいだろう。だが本気になって飛ばしたとき、我が古き良き友人にして、新しい自動車の求道者、舘内 端先生が最初にアルテッツァが出たときの言葉を思い出した。
「浅い!」
それが舘内師の言葉だったが、リポーターはよく理解できる。いいクルマだけど、人にじっくりと愛させる何かに欠けている。
ジータはそれなりにいいジャンルに挑戦している。でもどこかで浅い。そのボディのように。
(写真=高橋信宏)
【テストデータ】
報告者:大川 悠
テスト日:2001年10月2日から3日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2001年型
テスト車の走行距離:4267km
タイヤ:(前)215/45ZR17/(後)225/45ZR17
オプション装備:トラクションコントロール(5.1万円)/オートレベリング機能付きディスチャージヘッドランプ+ヘッドランプクリーナー(9.7万円)/DVDボイスナビゲーションシステム(26.5万円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3):高速道路(4):山岳路(3)
テスト距離:229.0km
使用燃料:27.0リッター
参考燃費:8.5km/リッター

大川 悠
1944年生まれ。自動車専門誌『CAR GRAPHIC』編集部に在籍後、自動車専門誌『NAVI』を編集長として創刊。『webCG』の立ち上げにも関わった。現在は隠居生活の傍ら、クルマや建築、都市、デザインなどの雑文書きを楽しんでいる。
-
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション(4WD)【試乗記】 2026.6.1 「ホンダCR-V」がフルモデルチェンジ。新型は適切なボディーサイズと高品質な内外装を持ち、乗れば最新のホンダ車らしい気持ちよさが味わえる。ただし、その月販目標は400台。ちょっと弱気ではあるものの、周辺事情にも考えを巡らせると極めて妥当な数字にも思えてくる。
-
トヨタRAV4 GRスポーツ(4WD/CVT)【試乗記】 2026.5.30 新型「トヨタRAV4」のプラグインハイブリッド車ではEV走行換算距離が約150kmにまで到達。もちろん電池容量の拡大によるところも大きいが、何よりも最新のハイブリッドシステムによる効率向上が効いている。「GRスポーツ」をドライブした印象をリポートする。
-
キャデラック・リリックV(4WD)【試乗記】 2026.5.29 キャデラック初の電気自動車(BEV)「リリック」に、最高出力646PSのハイパフォーマンスモデル「リリックV」が登場。“ブランド史上最速”をうたう豪速SUVだが、実際に乗ってみると、高い動力性能がもたらすゆとりや心地よさにも魅力を感じる一台となっていた。
-
DS N°8エトワールAWD(4WD)【試乗記】 2026.5.28 前衛を身上とするフランスのラグジュアリーブランド、DSオートモビルから、新たなハイエンドモデル「DS N°8(ナンバーエイト)」が登場。当代屈指の性能を誇る電気自動車であり、かの地では大統領専用車にも選ばれる一台の、独創の魅力に触れた。
-
メルセデスAMG GLC53 4MATIC+(4WD/9AT)【海外試乗記】 2026.5.27 「メルセデス・ベンツGLC」にスポーティーな「メルセデスAMG GLC53 4MATIC+」が仲間入り。「43」と「63」の中間、AMGとしては松竹梅の竹にあたるモデルだが、今後はそのポジションの重要性がさらに増すことになるという。本国ドイツでドライブした印象をリポートする。
-
NEW
レクサスES350h(FF/CVT)/ES350e(FWD)/ES500e(4WD)【海外試乗記】
2026.6.3試乗記「レクサスES」がフルモデルチェンジ。シャシーがFFベースというのは歴代モデルと同じだが、新型ではボディーサイズがググッと拡大。「LS」の6輪ミニバンコンセプトが登場したこともあり、今後のレクサスセダンの総代を担うことになる。北米で乗った印象をリポートする。 -
NEW
ミドシップ化で運動性能はどう変わる? 「GRヤリスMコンセプト」の現時点での完成度を体感
2026.6.3デイリーコラム「GRヤリス」をベースとしたミドシップ4WDとして市販化を目指す「GRヤリスMコンセプト」。現在もスーパー耐久に投入されるなどして鍛えられているが、その開発車両をドライブできた。普通のGRヤリスとの運動性能の違いや、新開発エンジンの印象などをリポートする。 -
NEW
第115回:メイク・アメリカ・グレート・アゲイン!(後編) ―デザインもサイズも規格外! 魅惑のアメリカ車はなぜ“主役”になれないのか?―
2026.6.3カーデザイン曼荼羅トヨタ&ホンダが発表した、米国生産車の日本導入計画。しかしアメリカには、規格外に面白いクルマがまだたくさんあるのだ! カーデザインの識者とともに魅惑の日本“未”導入車を探すとともに、魅力的なアメリカ車が、それでも主役になれない理由を考えた。 -
どうしてピアノブラックの内装材は多用されるのか?
2026.6.2あの多田哲哉のクルマQ&Aよく目にするピアノブラックの内装材は、「キズや脂汚れが目立つ」などネガティブな評価もしばしば。それでも多用されているのはなぜか? 車両開発者の多田哲哉さんに聞いてみた。 -
BSAゴールドスター650(5MT)【レビュー】
2026.6.2試乗記かつて一世を風靡(ふうび)した英国の名門、BSAが復活! 新生第1号モデルである「ゴールドスター650」は、クラシックで優雅なお散歩バイク……と思いきや、ツインカムの大排気量シングルで、ライディングも前のめりに楽しめるマシンに仕上がっていた。 -
レストモッドがイメージ 特別なオニツカタイガーの魅力に迫る
2026.6.1オニツカタイガーの新作ドライビングシューズを知る<AD>オニツカタイガーが、“レストモッド”と呼ばれるクルマのレストア&カスタム手法に着想を得たドライビングシューズを発表。4タイプ製作された、「MEXICO 66 DRIVING」のスペシャルバージョンの魅力に迫る。






























