スズキ・エブリイランディXC 2WD(4AT)【試乗記】
『どんな路地にでも』 2001.06.20 試乗記 スズキ・エブリイランディXC 2WD(4AT)……159.8万円ひねりのない答
軽ワンボックスワゴンの「エブリイワゴン」をベースに、1.3リッターエンジンを搭載し、7人乗りとしたモデルが「エブリイランディ」。従来は「エブリイプラス」の名で販売されていたが、この度クラス初となるインパネシフトの採用をはじめとするマイナーチェンジが施され、名称も改められたというわけだ。
外寸こそやや拡大されたが、室内空間は基本的に軽と同じ。いざというときには7人乗れるとはいうものの、税金や保険料はグーンと高くなってしまうこの種のクルマの購買層は、いったいどういう人たちなのだろうか?
スズキによれば、「年齢層は30代以上で、車庫を含めた周辺環境によってサイズが限定されるが、たまには大人数で乗れるとうれしい」というような人々が対象ユーザーらしい。姿かたちから連想されるとおりの、まったくヒネリのない答で申し訳ないが、そういうことなのである。
バリエーションはベーシックな「XA」とデュアルエアコン、電動オートステップなどを標準装備した高級グレードの「XC」の基本2車種で、それぞれに2WDと4WDが用意される。今回の試乗車は2WDのXCだった。
トルク・トゥ・ウェイト・レシオ=89kg
繰り返すがランディは基本的に「軽」と同じボディに、1.3リッターというほぼ2倍のキャパシティをもつエンジンを搭載する。この成り立ちからは、「パワフル」というのは大げさにしろ、「かなりキビキビ走るのでは」と予想されたが、いざ乗ってみると、動力性能はいささか期待外れだった。試乗会が催された河口湖周辺のなだらかな上り勾配の道路で、発進からの加速がどうにも鈍く感じられるのだ。アクセルをベタ踏みにしないと、先行するカメラカー(スバル・レガシィツーリングワゴンGT-B EチューンII)についていけないのである。2リッターターボと比較するのはあまりに酷だが、率直に言って、運転者のみのさびしい1人乗車でこの状態では、「7名乗せて大丈夫なのかい?」といささか不安になった。
あとでカタログで調べたところ、車重1040kgに対して最大トルクは11.7kgm。参考までに軽規格の「エブリィワゴンJOYPOPターボ」は、890kgに対して10.4kgm。1kgmあたりの重量は、ランディが約89kg、JOYPOPが約86kg。もちろんこの数値のみで単純比較はできないが、トルク・トゥ・ウェイト比に関しては、軽であるエブリィワゴンのほうが有利なのだった。つまり、こっちが勝手にランディを買いかぶっていたわけである。
「光りモノ」による上級感
動力性能は少々拍子抜けだったが、ワンボックス特有のすばらしい見晴らし、ボディサイズによる取り回しのよさ、それにコントロール類のなじみやすさが相まって、使い勝手はいい。30分も乗っていれば、どんな路地にでも突っ込んでいく自信が芽生える。室内の広さ、乗り心地とも、4人のための近距離移動用と考えれば不満はない。
フロントシートのクッションは固めで、掛け心地、サポートとも、腰痛持ちの筆者でも合格点が与えられる。リアシートはフロントよりややクッションが薄い。その違いによる掛け心地の差はともかくとして、座面までの高さが低く、身長168cmの私でも腿が浮いてしまうのは残念。
リアタイヤの真上に位置するサードシートは、さすがに道路のつなぎ目などではポンポン跳ねるし、マフラーが近いせいか加速時はかなりウルサイ。もっとも、あくまでオケイジョナルな存在であるサードシートにまで快適性を求めるのは、筋違いというものだろう。
今回のマイナーチェンジでは、従来の「エブリイプラス」の見た目が「軽」とあまり変わらなかったという反省から、メッキグリルをはじめ、随所に「光りモノ」を追加するなどして上級感を演出したという。そうした小技がターゲットユーザーには効くのかもしれないが、個人的にはいかにも「軽」そのものといったプレス打ち抜きの、頼りないアクセルペダルの踏み心地なんかを改良してくれたら、いっそう“いいもの感”が増したのではないか、と思う。ついでにいえば、営業車ムード漂う内装色のグレーをベージュ系に変えたら、はるかに室内が明るく、より広く感じられるようになると思うのだけれど、大きなお世話か。
(文=田沼 哲/写真=河野敦樹/2001年6月)

松本 英雄
自動車テクノロジーライター。1992年~97年に当時のチームいすゞ(いすゞ自動車のワークスラリーチーム)テクニカル部門のアドバイザーとして、パリ・ダカール参加用車両の開発、製作にたずさわる。著書に『カー機能障害は治る』『通のツール箱』『クルマが長持ちする7つの習慣』(二玄社)がある。
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