BMW 640iグランクーペ(FR/8AT)【試乗記】
「グランクーペ」というカテゴリー 2012.06.25 試乗記 BMW 640iグランクーペ(FR/8AT)……1121万6000円
「カブリオレ」「クーペ」に続く「6シリーズ」の派生モデルとして登場した「6シリーズ グランクーペ」。BMW初となる“ラグジュアリー4ドアクーペ”の走りを試した。
クーペが先か、セダンが先か
2012年6月5日に「BMW6シリーズ グランクーペ」の日本での販売が始まり、これで「メルセデス・ベンツCLSクラス」、「アウディA7スポーツバック」と、4ドアクーペの役者がそろった。
この中で6シリーズ グランクーペが最後発ということになるけれど、それだけではなく他モデルとは少し成り立ちが違う。ライバルたちは、あくまで4ドアのセダンがベース。これを低くすることで、かっちょよさを狙った。一方、6シリーズ グランクーペは2ドアクーペに2枚のドアを加えることで4ドアクーペに仕立てたのだ。
乱暴に言うと、6シリーズ グランクーペは前後に引っぱって4ドアクーペにしたのに対して、ほかのモデルは上から押しつぶして低くした。実際、6シリーズ グランクーペの全高は1390mmと、CLSクラスの1415mm、A7スポーツバックの1430mmに比べて低く、全体のたたずまいもよりクーペっぽい。
6シリーズ クーペと基本的には同じ造形のインテリアには驚かないけれど、運転席に座った時の余裕たっぷりの頭上空間には驚いた。「かっこいいから多少窮屈でも我慢しよう」と思っていたのに、うれしい誤算だ。デザインと使い勝手がバランスしている。
6シリーズのグランクーペ、「4ドアクーペ」の「4ドア」の部分に関しては最後発であるけれど、「クーペ」の部分に関しては1976年の初代「6シリーズ」からの伝統があるのだ。カッコよさと快適さを両立するワザには年季が入っている。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
「コツコツ」するのがうれしい
試乗したのは3リッターの直列6気筒ターボエンジンと8段ATを組み合わせた「640iグランクーペ」のM Sportパッケージ装着車。4.4リッターV型8気筒+ツインターボの「650iグランクーペ」は少し遅れて、この秋に日本へ入ってくる予定だ。
ただしパワー感といい滑らかな肌触りといい、「これより上級のエンジンが要るの?」と思わせるほど、3リッターの直6ターボは充実している。
駐車場から一歩出た瞬間、「いいエンジンだなぁ」としみじみ感じる。アクセルの踏みはじめから敏感に反応して、かといってガバッとスロットルが開く下品さは感じさせず、すっとトルクが立ち上がる。スペックを見て納得。45.9kgmの最大トルクを、1300rpmという低い回転域で発生しているのだ。
動作があまりにスムーズなのでうっかりすると気付かないけれど、8段ATはいかにも効率的な仕事をしている。ぶっといトルクを利して早め早めにシフトアップして、高いギアを選ぶようにしつけられている。12.4km/リッターという優れたJC08モード燃費を達成しているけれど、エンジンだけでなくトランスミッションも大きな役割をはたしているはずだ。
乗り心地は、いかにもBMWらしいもの。すなわち、パンッと張った、確かな手ざわりがある。路面の凸凹をなかったことにするのではなく、不快じゃない範囲の「コツコツ」としてドライバーに伝える。決して乗り心地が悪いわけではなく、信頼感が増す類いのダイレクト感だ。
他の4ドアクーペとは競合しない
箱根山中で少しスピードを上げると、「4ドアクーペ」の「クーペ」の部分が強調される。「6シリーズ クーペ」から11.5cmもホイールベースが延びているけれど、動きがドン臭くなった感じはまったくない。
ステアリングホイールを切ると、スッとノーズが向きを変える。3mを超えるホイールベースでありながら、これだけドライバーの狙い通りに素直に曲がるのには驚きだ。右へ左へとコーナーをクリアするうちに、全長5mを超す車体がコンパクトになっていくようにさえ感じる。
試乗車はオプションの「ダイナミック・ダンピング・コントロール」を装着していた。したがって、8段ATのシフトタイミングやパワステのアシスト量、エンジンのレスポンスやDSCの設定を変えられる「ドライビング・パフォーマンス・コントロール」に連動して、足まわりのセッティングも可変となる。
「スポーツ」「スポーツ・プラス」「コンフォート」「コンフォート・プラス」「ECO PRO」と用意されるモードで、箱根のような山道を気持ちよく走れるのは「スポーツ」だった。
アクセルペダルを踏み込むと、狙ったタイミングどんぴしゃでシフトダウン。エンジン回転がはね上がり、乾いた快音とともにパワーが盛り上がる。ダイレクトな手応えのステアリングホイールからは、タイヤが路面とどのように接しているのかが詳細に伝わってくる。
ボディーが大きくエレガントになってもBMWはBMW。その“らしさ”が薄まることはまったくなかった。おしゃれな衣装をまとっているけど、その下は身体能力抜群のアスリート。前後重量配分も、ほぼ50:50でBMWの伝統にのっとっている。
冒頭でライバルの名前を列記したけれど、実際に「6シリーズ グランクーペ」に乗ってみると、競合することはないように思えた。「4ドアクーペ」というカテゴリーは一緒でも、体育会系の硬派なBMWはまったく別のキャラクターだ。
「6シリーズ グランクーペ」が競うのは同門の「BMW X6」だったり、あるいは「ポルシェ・パナメーラ」ではないか。
(文=サトータケシ/写真=峰昌宏)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |

サトータケシ
ライター/エディター。2022年12月時点での愛車は2010年型の「シトロエンC6」。最近、ちょいちょいお金がかかるようになったのが悩みのタネ。いまほしいクルマは「スズキ・ジムニー」と「ルノー・トゥインゴS」。でも2台持ちする甲斐性はなし。残念……。
-
DS N°8エトワールAWD(4WD) 2026.8.22 DSオートモビルから登場した、新時代の旗艦モデル「N°8」。完全新設計のシャシーにアクティブサスペンションを組み合わせた電気自動車(BEV)は、往年の“ハイドロ”を思わせる乗り味と人車一体の走りを備えた、稀有(けう)なサルーンに仕上がっていた。
-
メルセデス・ベンツCLA220(FF/8AT)【試乗記】 2026.8.21 メルセデス独自のオペレーティングシステムと、フル電動化を見据えた最新プラットフォームを組み合わせて開発された新型「CLA」。その先鋒として発売されたハイブリッドモデルの仕上がりを、セダンの上級グレードに試乗して確かめた。
-
マツダCX-5 L(4WD)【試乗記】 2026.8.19 マツダの販売の中軸を担うミドルクラスSUV「CX-5」が、3代目にフルモデルチェンジ。その完成度にはどうしても期待してしまうところだが、実車の仕上がりはどうだったのか? 絶対に失敗の許されない、マツダの基幹車種の実力に触れた。
-
トヨタbZ4XツーリングZ(FWD)【試乗記】 2026.8.18 クルマの進化か、充電インフラの進化か、それともCEV補助金拡充の効能かは定かではないが、ようやく日本の電気自動車(BEV)も普及期を迎えつつある。ことに「bZ4Xツーリング」は豊かな一充電走行距離と優れたドライバビリティーが自慢のトヨタの最新作だ。FWDモデルの仕上がりをリポートする。
-
BMW iX3 50 xDrive Mスポーツ(4WD)【試乗記】 2026.8.17 BMWの新世代電気自動車の第1弾である「iX3」がいよいよ日本の道を走り始めた。さすが「ノイエクラッセ」をうたうだけあって、内外装だけではなく、運転感覚もまた新しい。「Mスポーツ」グレードの仕上がりをリポートする。
-
NEW
スズキeスカイ プロトタイプ(FWD)【試乗記】
2026.8.24試乗記スズキが満を持して世に問う、軽規格の新型電気自動車「eスカイ」。軽乗用車の本質である、生活の足としてのちょうどよい性能を追求したという一台は、どのようなクルマに仕上がっているのか? 2026年秋の正式発表を前に、プロトタイプモデルに試乗した。 -
NEW
デビュー4年でどう変わる? 最新型「トヨタ・クラウン クロスオーバー」の詳細を予測する
2026.8.24デイリーコラム2022年7月のデビューから4年がたち、仕様変更が予告された「トヨタ・クラウン クロスオーバー」。では、どこがどう変わるのか? 最新型の発売を前に、さまざまな角度からポイントを予測してみよう。 -
トヨタRAV4アドベンチャー(前編)
2026.8.23思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が新型「トヨタRAV4」に試乗。ご存じのとおり今やトヨタの屋台骨を支えるSUVであり、先代モデルではグローバルでの年間販売台数が100万台に到達。世界で最も多く販売されるトヨタ車の6代目だ。箱根のワインディングロードでの印象を聞いた。 -
DS N°8エトワールAWD(4WD)
2026.8.22試乗記DSオートモビルから登場した、新時代の旗艦モデル「N°8」。完全新設計のシャシーにアクティブサスペンションを組み合わせた電気自動車(BEV)は、往年の“ハイドロ”を思わせる乗り味と人車一体の走りを備えた、稀有(けう)なサルーンに仕上がっていた。 -
メルセデス・ベンツCLA220(FF/8AT)【試乗記】
2026.8.21試乗記メルセデス独自のオペレーティングシステムと、フル電動化を見据えた最新プラットフォームを組み合わせて開発された新型「CLA」。その先鋒として発売されたハイブリッドモデルの仕上がりを、セダンの上級グレードに試乗して確かめた。 -
これは“ヨーロッパ版軽自動車”か? 欧州の新自動車規格「M1E」とニッポンの軽の可能性
2026.8.21デイリーコラム欧州で検討されている、新たな小型電気自動車(BEV)規格「M1E」。手ごろなBEVの普及と域内自動車産業の保護を目的としたこの規格は、軽自動車という独自の小型車を育んできた日本にとってもチャンスとなるのか? 新たな自動車規格の展望と可能性を考察する。





























