第195回:スマホナビ界に新たな衝撃!?
トヨタの新「smart G-BOOK」を実走テストする
2013.07.26
エディターから一言
手元のスマホが高性能ナビに早変わり
「ビッグデータ」。ITの世界も含め、今後ひとつのトレンドになっていくであろう、文字通り巨大なデータの集合体のことである。
2013年5月29日、トヨタは自社が展開するテレマティクスサービスを通じて収集・蓄積した独自のビッグデータを、交通情報や統計情報に加工して提供する新しいビジネスを展開し始めた。……のは既報の通り。このサービスの中でも一般消費者が活用できるのが、スマートフォン(以下スマホと表記)向けの新「smart G-BOOK」なのである。
現在、加速度的に市場が伸びているスマホナビアプリの領域だが、実はトヨタはこの分野での参入は早く、2010年12月には同サービスを開始している。スタートから約2年半、今回ナビエンジンもトヨタとゼンリンデータコムとの共同開発によって大刷新、前述したビッグデータを活用したナビの実力をチェックしてみることにした。
テストを開始する前に、まずこのナビアプリが持つ最大のメリットについて考えてみたい。トヨタのテレマティクスサービスである「G-BOOK」は2002年に誕生。その登録台数は国内累計で330万台、そのうち70万台は常時接続が可能なDCM(通信モジュール)を搭載している。G-BOOKはこれらから収集した自車位置や速度などの走行状況をアップロードし加工した、独自の「Tプローブ交通情報」を使うことで渋滞を考慮したルート案内を可能にしているが、今回このTプローブ交通情報をトヨタの純正カーナビ以外で初採用したことがニュースなのである。つまり、極端な言い方をすればトヨタ車を所有していないユーザーでも対応するスマホさえ持っていれば、その高度なサービスを享受できるようになったのだ。
またスマホの場合、iOSに関しては最新の「iPhone 5」では4インチと画面サイズが固定されるが、Android OSを搭載するスマホの場合、個人の好みで画面サイズが選べる。今回のテストで使ったような、市販カーナビと同じ7インチのディスプレイサイズを持つ“ファブレット(通話機能を持つタブレット)”を設置すれば、文字通り“カーナビ並み”の実力が得られるというわけである。
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東京駅前から山中湖へ。選んだルートは……
まず重要なことなのでテスト環境から説明しておく。
出発地点は編集部近くにある東京駅丸の内側、目的地は山中湖とした。なぜ山中湖かというと、実は事前に東名高速経由と中央道経由の2つのルートからほぼ同距離になる場所をピンポイントで調査。それがこの山中湖だったのだ(実際の探索では3km差が生じたので補正済み)。
実際、レジャーに出掛けた際、特に帰路ではどのルート(複数選択肢がある場合など)を選べばいいか悩むケースも少なくない。その先の渋滞を事前に把握することで適切なルートを選択し誘導することがナビの重要な機能と考えて目的地を選んだわけである。
またテスト車両はオンダッシュ装着がしやすく、かつ前方視界を妨げない「スマート・フォーツークーペmhdプラス」を選択。この車両には偶然にもディーラーオプションのSDナビゲーションフルセット(ETCやリアカメラとのセットで価格は17万6400円)が装着されており、文字通り「スマート対決」(?)となったが、これとの比較も同時に行える環境下でのスタートとなった。
まずは目的地を設定。メニュー画面もわかりやすく、検索項目も住所/電話番号/施設名……と、この辺は専用機と遜色はない。それどころか、PCでG-BOOKにアクセスして探しておいた場所を記憶、共有できる「Gメモリ」と呼ばれる機能もあるので、自宅などで事前にルートを設定しておけば、乗車してすぐ出発できるのだ。
最初にナビが探索したのが中央道経由だった。このナビアプリは「5ルート同時探索」も可能なのですぐに確認してみたところ、東名高速経由と比べて高速料金が520円高くなる一方、到着予想時刻では17分中央道経由のほうが早くなるという。テストの趣旨としては「早く快適に目的地に到着する」ことを重視したので、最初の提案通りのルートを選択。もちろん使う人によって走り方は異なるのでこの「5ルート同時探索」を使って好みのルートを選べば問題はないはずである。
出発までお待たせしてしまったが、ナビの指示の通り、神田橋ランプから入線し首都高速4号線経由で中央道に入り目的地へ向かう……。
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市販ナビ並みの機能を備える
ディスプレイサイズが大きいことを差し引いても、地図の見やすさはかなりレベルアップしている。特にスゴイ、スゴすぎ! と感じたのが3Dランドマークが「超!」が付くほど精密なポリゴンで描かれていること。都市部のビル群の間を走る場合、実際に見える風景とこの画面がシンクロすることで交差点などでも迷うことは少なくなるはずだ。
地図表示画面はノースアップ/ヘディングアップ/ヘディングアップ+3Dの中から選択できるのだが、個人的にぜひオススメしたいのは、やはり3D表示である。自車位置上空から俯瞰(ふかん)して見る形だが、その角度が絶妙で、ヘディングアップの見やすさを残しつつ「少しその先」の道路状況がつかみやすい。またナビの機能に関しても文字の大きさや地図色、細街路に入った際の地図自動切り替えなど好みに応じて細かい設定が可能な点も専用機に負けない内容となっている。
高速道に入ると画面右側にその先のSAやPA、ICの案内が同時に表示される点も親切である。
実は、この日は比較的道路がすいていたこともあり、往路ではスマートに装着されているナビと目的地までの誘導がほぼ変わらない結果となった。逆に言えば、市販ナビ並みと言える能力の証明にもなったわけだ。目的地に到着するまでの音声案内や交差点表示などもきめ細かく親切であった。
今回の新「smart G-BOOK」に搭載される新機能の中、特に気に入ったのが独自の音声認識エンジンを搭載した「エージェント機能」である。検索方法は標準的なもので十分だが、この機能は探したい情報を語りかけるようにスマホに伝えるだけでかなり細かいオーダーにも答えてくれる。しかも、それで結果が出なければ後述するオペレーターへ直接つないでくれるというきめ細かい配慮がうれしい。ちなみにスタッフの希望もあったので「吉田のうどん」で検索したら、しっかり候補を出してくれたので遅めのランチを取ることができました。
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やっぱり便利なオペレーターサービス
さて帰路である。
恥ずかしながら筆者は編集部の住所を知らなかった。とはいえ同行の編集部員にそれを聞いては芸がない。G-BOOKで好評のオペレーターサービスを使って、帰路へのルート探索を行うことにした。
社名、ビル名、おおまかな区、何でもいい、自分の記憶の中からわかること全てをオペレーターに伝える。待つこと十数秒、ビンゴ! である。しかも、編集部の場所を検索してくれるだけでなく、そこまでのルートを探索し、スマホに送信してくれた。これは、ちょっと機械が苦手……という人にもかなり有益なサービスと言えるのではないだろうか。
で、オペレーターが導いてくれた(?)帰路は、往路と異なる東名高速経由。途中で交通情報を確認して納得した。「中央道 八王子→調布間渋滞」。あらためてオペレーターとこのサービスに感謝である。
また帰りの高速で落下物があったので(走行にはまったく支障がない程度だったが)、ここで新機能「交通情報投稿」を使ってみた。これはいわゆるSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)で、渋滞の始まりや終わり、クルマの流れる速さ、通行止めなどの情報を、ワンタッチで地図に「スタンプ」できる機能。こうした情報を他のユーザーと共有することで、よりドライブを快適にすることができるはず。私も落下物の情報を投稿しておいた。
最終的には、行きと同じ神田橋ランプで首都高を降りて編集部に到着。今回のテストは無事終了となった。
結論としては、一方通行などもしっかり考慮し、ピンポイントで誘導してくれた点も含めてとにかく優秀である。ナビ専用機との差は、スマホの場合、自車位置の補足はGPSがメインになってしまうので、入り組んだ場所ではたまに自車位置がズレてしまうことくらい。ただ、実用上ほとんど気にならないレベルであったことは報告しておく。
スマホ用ナビアプリでありながら、トヨタの持つテレマティクスサービスがしっかり使えるこのアプリ。急な遠隔地へのドライブや帰省時などにも、かなり重宝するはずだ。
(文=高山正寛/写真=河野敦樹)

高山 正寛
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