ジープ・グランドチェロキー リミテッド(4WD/8AT)
“頼もしさ”が宝 2013.08.28 試乗記 デビュー以来初のテコ入れが実施された、4代目「グランドチェロキー」。どこがどう変わったのか? クルマとしての仕上がりは? アメリカ・カリフォルニア州でチェックした。メイクアップはいい感じ
GRAND(=雄大、壮麗)の名を持つ「グランドチェロキー」は、ジープブランドのフラッグシップモデルだ。
エライのは、ブランド内の席次だけではない。1992年に初代がデビューしてからの累計販売台数は、グローバルで500万台にのぼる。日本全国どこでも見かけるハイブリッドカー「トヨタ・プリウス」が、世界累計300万台(1997年12月~2013年6月)。コンパクトカーの「ホンダ・フィット」は487万台(2001年6月~2013年5月)。意外! と言ったら失礼だけれど、セールスもエライSUVなのである。
1999年に2代目が、2004年には3代目が登場。御家の事情でメルセデス・ベンツの血が入った4代目グラチェロは、日本国内では2011年3月から販売されている。各モデルスパンの中間で“お色直し”するのは他社のクルマと同様で、現行モデルも、2013年1月のデトロイトショーで後期型がお披露目された。今回試乗したのは、それである。
“見るからにアメ車”だった総メッキのグリルは、後期型ではボディー同色に変更された。468psの最強モデル「SRT8」に倣って、エアインテークの縁にだけクロムが光る。バンパーも新形状。上級グレードの新しいバイキセノンヘッドランプは同じクライスラーグループのセダン「300」に似ていて、フォーマルな雰囲気もただよう。
さほど大げさな化粧直しではない。でも、ずいぶん垢(あか)抜けたな、と思う。それでライバル=欧州の高級SUVをけん制しようというのだろう。
車内のリフォームも今風だ。センターコンソールのディスプレイは、正方形に近い、8.4インチの大画面に。従来のオーソドックスな2眼式メーターは、アナログ計をアニメで表示する液晶タイプとなった。初物ではないが、ジャガーやトヨタの高級サルーンにも見られる、新しい手法である。
関心高まる2つのV6
テスト車は、3.6リッターのV6ガソリンエンジンを搭載する「リミテッド」。従来の“ひねるタイプ”から変わった始動ボタンを押して、スタートする。
新たにシーケンシャル式が採用されたシフトレバーは、デザインも新しい。というより、全グレードのトランスミッションがクライスラー300と同じ8段ATになったことこそ、後期型グラチェロの大きなトピックである。
従来モデルの5段からは、一気に3段跳びになる。一番のねらいは、もちろん燃費の改善だ。一般道での短い試乗とあって、肝心の高速クルーズ時の様子や燃費について報告できないのが残念だが、変速の感触そのものはスムーズ。Dレンジのまま、タホ湖畔エメラルド・ベイ・ロードのアップダウンを軽やかに駆け抜ける。
ステアリングホイールの裏側にシフトパドルが追加されたのは大きい。すっかり見慣れた装備だけれど、これまでソコはオーディオのスイッチで、Dレンジのシフトレバーを左右に振って(左がダウン/右がアップ)のマニュアル操作も、「できるけれど、やらないだろ?」と言わんばかりだった。平均的なフルサイズSUVオーナー(平均年齢49歳)に比べて5歳は若いとされるグラチェロの購入層には、望ましい変化に違いない。
そのパドルを使って走らせていると、V6エンジンの気持ちよさにも気が付く。「フォロロロ!」といななく、音がいい。車重は2トンを超えるものの、シエラネバダの山岳路で無理をしている感じはしない。これならV8、要らないんじゃないか。
でも、今回のマイチェンの目玉である、3リッターV6「エコディーゼル」車に乗れなかったのはガッカリだ。FFで最高12.8km/リッター、4WDで最高11.9km/リッターと、ファミリーで一番燃費のいいグラチェロは、5.7リッターV8モデル(360hp、53.0kgm)をも上回る、58.0kgmの大トルクを発生する。
まぁディーゼルの「マツダCX-5」や「BMW X3」がモテる日本のSUV市場が、これでさらににぎやかになれば……と思ったら、なんと「導入の予定もなし」。さらにガッカリ。排ガス規制に加えて、わが国の市場規模もネックらしいが、いつかはカタログに加わってほしいものである。
ゆとりにうっとり
グラチェロのリミテッドは、5段階あるうちの“ど真ん中”にあたる。年間販売台数1500台といわれる日本市場でも中心的なグレードで、昨年モデルの国内価格は523万円である。
総革張りの上位グレードと違って、ダッシュボードやパネル類は樹脂製。でも、薄っぺらい感じはまるでない。快適装備の類いはまさに満載だし、コールセンターの呼び出しボタンまで付いている。ユーザーの平均世帯年収が12万5000ドル(=約1200万円)と聞いて納得できる、“いいもの感”はある。
何よりも印象的なのは、なめらかな乗り心地だ。目の前に伸びるウエスト・レイク・ブルーバードの路面は、見るからにザラザラ。ハイシーズンの観光道路なのに工事箇所も多い。でも、「あれっ?」と思うほど“雑味”が伝わらない。エアサス車であれば何でも快適とは限らないが、これは前期型から継承される「クォドラリフトエアサスペンション」のたまものだろう。
後席に回ってみると、小柄な筆者(163cm)なら足が組める広さ。それもそのはずで、4代続けて大きくなったグラチェロは、幅がほとんど2m。ホイールベースは2.9m以上ある。日本の都会を想像すると無視できないデカさだが……ボンネットの見切りはいいし、カメラやセンサーがあるのは“救い”。だったら車内のゆとりを選んでいいかと、つい気持ちが緩んでしまう。
走行モードの選択ダイヤルで「スポーツモード」を選んで、先を急ぐ。車高は自動で15mm下がるらしいが、運転中は気付かない。逆に、65mm上げることもできる。悪路に臨むときの備えである。
今回は実際、オフロードを走らない。でも“やればできる”の安心感は大きい。聞けば、グランドチェロキーユーザーの4割は女性だという。女も男も、老いも若きも、頼れるヤツには好意的なもの。高級サルーンでも得がたい、そんなキャラクターこそ累計500万台の秘訣(ひけつ)なんじゃないか。
2013年の秋には、日本にもこの新型が入ってくる。前年よりは円安になったものの、取りあえずリミテッドに関しては、ほぼ変わらぬ価格で扱われる予定だという。
(文=webCG 関 顕也/写真=クライスラーグループ、webCG)
テスト車のデータ
ジープ・グランドチェロキー リミテッド(4WD/8AT)
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4822×1943×1761mm
ホイールベース:2915mm
車重:2125kg
駆動方式:4WD
エンジン:3.6リッターV6 DOHC 24バルブ
トランスミッション:8段AT
最高出力:290hp(216kW)/6400rpm
最大トルク:36.0kgm(353Nm)/4800rpm
タイヤ:(前)265/60R18/(後)265/60R18(ミシュラン・ラティチュード)
燃費:シティー=7.2km/リッター、ハイウェイ=10.2km/リッター(米国EPA値)
価格:--
オプション装備:--
※数値は北米仕様車のもの
テスト車の年式:2014年型
テスト車の走行距離:2555km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター

関 顕也
webCG編集。1973年生まれ。2005年の東京モーターショー開催のときにwebCG編集部入り。車歴は「ホンダ・ビート」「ランチア・デルタHFインテグラーレ」「トライアンフ・ボンネビル」などで、子どもができてからは理想のファミリーカーを求めて迷走中。
-
トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”+エアロパフォーマンスパッケージ【試乗記】 2026.3.3 「GRヤリス」の新仕様として設定された「エアロパフォーマンスパッケージ」装着車に試乗。レースフィールドでの知見を交え開発したというエアロパーツの空力・冷却性能は、リアルワールドでも体感可能なのか。高速道路を経由し、郊外のワインディングロードを目指した。
-
ドゥカティ・モンスター(6MT)【海外試乗記】 2026.3.2 ドゥカティのネイキッドスポーツ「モンスター」が5代目にモデルチェンジ。無駄をそぎ、必要なものを突き詰めてきた歴代モデルの哲学は、この新型にも受け継がれているのか? 「パニガーレV2」ゆずりのエンジンで175kgの車体を走らせる、ピュアな一台の魅力に触れた。
-
フォルクスワーゲンID.4プロ(RWD)【試乗記】 2026.2.28 フォルクスワーゲンのミッドサイズ電気自動車(BEV)「ID.4」の一部仕様変更モデルが上陸。初期導入モデルのオーナーでもあるリポーターは、その改良メニューをマイナーチェンジに匹敵するほどの内容と評価する。果たしてアップデートされた走りやいかに。
-
スズキ・キャリイKX(4WD/5MT)【試乗記】 2026.2.27 今日も日本の津々浦々で活躍する軽トラック「スズキ・キャリイ」。私たちにとって、最も身近な“働くクルマ”は、実際にはどれほどの実力を秘めているのか? タフが身上の5段MT+4WD仕様を借り出し、そのパフォーマンスを解き放ってみた。
-
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション(4WD)【試乗記】 2026.2.26 日本で久々の復活を遂げた「ホンダCR-V」の新型に、北海道のテストコースで試乗。雪上・氷上での“ひとクラス上”の振る舞いに感嘆しつつも、筆者がドン! と太鼓判を押せなかった理由とは? デビューから30年をむかえたCR-Vの、実力と課題を報告する。
-
NEW
メルセデス・マイバッハSL680モノグラムシリーズ(4WD/9AT)【試乗記】
2026.3.4試乗記メルセデス・マイバッハから「SL680モノグラムシリーズ」が登場。ただでさえ目立つワイド&ローなボディーに、マイバッハならではのあしらいをたっぷりと加えたオープントップモデルだ。身も心もとろける「マイバッハ」モードの乗り味をリポートする。 -
NEW
始まりはジウジアーロデザイン、終着点は広島ベンツ? 二転三転した日本版「ルーチェ」の道のり
2026.3.4デイリーコラムフェラーリ初の電気自動車が「ルーチェ」と名乗ることが発表された。それはそれで楽しみな新型車だが、日本のファンにとってルーチェといえばマツダに決まっている。デザインが二転三転した孤高のフラッグシップモデルのストーリーをお届けする。 -
第863回:3モーター式4WDの実力やいかに!? 「ランボルギーニ・テメラリオ」で雪道を目指す
2026.3.3エディターから一言電動化に向けて大きく舵を切ったランボルギーニは、「ウラカン」の後継たる「テメラリオ」をプラグインハイブリッド車としてリリースした。前に2基、リアに1基のモーターを積む4WDシステムの実力を試すべく、北の大地へと向かったのだが……。 -
F1で絶体絶命!? アストンマーティン・ホンダになにが起きているのか?
2026.3.3デイリーコラム2026年のF1開催を前に、早くも苦戦が伝えられるアストンマーティン・ホンダ。プレシーズンテストでの大不振はなぜ起きたのか? ここから復活する可能性はあるのか? 栄光と挫折を繰り返してきたホンダが、ふたたびF1で輝くために必要なものを探った。 -
電動式と機械式のパーキングブレーキ、それぞれメリットは?
2026.3.3あの多田哲哉のクルマQ&A一般化された感のある電動パーキングブレーキだが、一方で、従来型の機械式パーキングブレーキを好む声もある。では、電動式にはどんなメリットがあって普及したのか? 車両開発者の多田哲哉さんに話を聞いた。 -
トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”+エアロパフォーマンスパッケージ【試乗記】
2026.3.3試乗記「GRヤリス」の新仕様として設定された「エアロパフォーマンスパッケージ」装着車に試乗。レースフィールドでの知見を交え開発したというエアロパーツの空力・冷却性能は、リアルワールドでも体感可能なのか。高速道路を経由し、郊外のワインディングロードを目指した。


































