アルファ・ロメオ・トナーレ イブリダ ヴェローチェ(FF/7AT)
改善に終わりなし 2026.04.11 試乗記 アルファ・ロメオのミドルクラスSUV「トナーレ」がマイナーチェンジ。走りに装備、デザインと、多方面で進化を遂げた最新型に、箱根のワインディングロードで試乗した。“CセグメントSUV”という、最量販マーケットで戦う今どきのアルファの実力を報告する。量販が見込めるCセグメントSUVのアルファ
トナーレは今のアルファ・ロメオで、「ジュニア」と「ステルヴィオ」の間にポジショニングされるミドルクラスのSUVだ。一般的にいわれるところのCセグメントに属しており、輸入車だと「BMW X1」や「フォルクスワーゲン・ティグアン」「プジョー3008」あたりとほぼ同サイズとなる。……ということは、欧州や日本はもちろん、北米に中国を含めて、世界的にももっとも売れ筋のアルファとなってしかるべきクルマであるわけだ。
そんなトナーレの(日本の輸入元であるステランティス ジャパンによると)“新型”が、先日日本に上陸した(参照)。見た目にはフロントエンドの化粧直しにとどまるが、2022年の本国デビュー時のトナーレ(国内発売は翌2023年1月)から見ると、サスペンションチューンやパワートレイン制御の見直しに、前後トレッドの拡幅、そしてシフトセレクターの形状変更にその他の機能装備の強化まで、細かく改良の手が入っているとか。というわけで、今回のトナーレは新型というと少し大げさだが、といって表層の“フェイスリフト”の範囲にはとどまらず、やはり“マイナーチェンジ”と呼ぶのが、もっとも実態に近いのでは……と、個人的には思う。
ステランティス ジャパンとしても、今回を機にアルファのSUV製品群をあらためてシリーズとして訴求していく方針らしい。以前からある1.5リッターターボのマイルドハイブリッド車が、ジュニアと同じく「イブリダ」に改称されたのも、その一環といえるかもしれない。
また、これまであったプラグインハイブリッド車は日本のラインナップから外されて(本国などでは残っている)、ひとまずは日本での売れ筋となるであろうイブリダ1本でいくようだ。グレード構成がエントリーの「スプリント」と上級の「ヴェローチェ」という2本立てになるのは、近年のアルファではおなじみである。
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「インテンサ」で先行導入されていた仕様・装備も
本記事は、そんな新しいトナーレを箱根に持ち込んで催された、メディア試乗会の報告である。会場でwebCG取材班に用意された試乗車は、「モンツァグリーン」に塗られたヴェローチェだった。モンツァグリーンは今回からの新色だそうで、従来のトナーレにあった明るい「モントリオールグリーン」とは別物だ。
スプリントと比較したときのヴェローチェの特徴としては、外装では20インチホイール(スプリントは18インチ)やプライバシーガラスなどが目につく。さらに、内装では電動レザーシートやシフトパドル、ステアリングヒーター/シートヒーター、harman/kardonのサウンドシステムが標準装備となり、「ALFAデュアルステージバルブサスペンション」という電子制御ダンパーも専用でつく。
改良直前に限定販売された「ハイブリッド インテンサ」に試乗させていただいていた筆者にとっては、新しいトナーレのインテリアには、じつはちょっと既視感があった。というのも、最新のトナーレではロータリー式シフトセレクターもハイライトとなっているが、厳密にいうと、これはインテンサを含む改良直前のトナーレに先行採用されたディテールでもあるからだ。また、ブラックレザーにベージュのステッチを合わせるセンスもなんともオシャレというほかないが、これも改良前のインテンサで最初に採用されたものだった。
今回は走行メカニズムやその他の機能装備にも細かく改良の手が入っているのは先述のとおりだが、このうちサスペンションチューンやスマホのワイヤレスチャージャーの冷却機能などは、インテンサの時点で投入されていた改良点である。そして、ハイブリッド制御の改良やトレッド拡幅(前後とも10mm)、先進運転支援システムのアップデート(荒天時や強い日差しによる誤検知防止)は、今回のマイナーチェンジで新たに改良されたポイントだという。
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パワートレインにみるマナーの改善
今回、唯一見るからに変わっているのは、外観のフロントエンドだ。左右ヘッドライト間やバンパーのグリルを拡大しつつ、中央のスクデット(盾)の左右にスリットが入った。空力に配慮して実際の開口面積はさほど変わっていないようだが、見た目には大開口的な迫力が加わった。フロントバンパー形状の変更により歩行者保護性能が向上したとともに、全長も10mm短くなった。
イブリダ(=イタリア語でハイブリッドの意)と呼ばれるようになったパワートレインについては、1.5リッター可変ジオメトリーターボ+7段DCT、そして48Vマイルドハイブリッドという基本構成に変わりはない。エンジンで最高出力160PS、最大トルク240N・m、電動機で20PS、55N・mというそれぞれのピーク性能値、およびリチウムイオン電池の電圧や容量は、いずれもこれまでと同様だ。にもかかわらず、0-100km/h加速は従来比で0.3秒短縮されて、8.5秒になったという。
アルファのイブリダはマイルドハイブリッドではあるが、電気のみでのEV走行も可能。電池残量があればエンジンを止めたまま発進して、下り坂などの低負荷だと70~80km/hの高速域でもストンとエンジンが落ちる。いわれてみると、改良前のインテンサより、シフトマナーがよくなった気がしないでもない。とはいえ、今回は箱根のワインディングロードのみでの限られた試乗だったため、こうしたパワートレインの細かい洗練のほどを、はっきりと体感しづらかったのが正直なところだ。
パワーユニット単体での性能値は、よりコンパクトで車重が250kg以上軽い「ジュニア イブリダ」の1.2リッターターボとさほど変わらない。なので、トナーレの動力性能は、よくも悪くも“ほどほど”といった印象にとどまる。ただ、ジュニアのエンジンが1.2リッター3気筒なのに対して、トナーレは1.5リッター4気筒なので、トナーレのほうが上級感があるのも事実だ。
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軽い操舵感とクイックな応答性
比較的軽めのステアリングを操作すると、水平姿勢のままクイックに反応する基本的なキャラクターは、最新のトナーレでも健在だ。繰り返しになるが、サスペンションそのものは改良直前に調律し直されており、その部分は今回は変わっていないとか。しかし、わずかにトレッドが拡大されたこともあって、ロールはさらに減少して、ターンインでの初期反応はより俊敏になった感がある。
また、このヴェローチェには電子制御ダンパーも備わっていて、おなじみの“DNAダイヤル”で「N=ノーマル」もしくは「A=アドバンストエフィシェンシー」を選んだときと、「D=ダイナミック」を選んだときではフットワークも少し変わる。パワーステアリングの設定もモードによって変わるようだが、どのモードでもクルマの動きに対して少し軽すぎるきらいがあるのは、改良前と大きく変わらない。まあ、こういう軽い手応えのステアリングをクイックに反応させるのが、近年のアルファが目指すところでもあるのだろう。
DNAダイヤルの中央にはダンパーのイラストが描かれたボタンがあり、Dモードを選んだ状態でそれを押すと、ダンパー設定が一段階ソフトになる。この設定だとアクセルワークでの荷重移動が少しスムーズになって、個人的にはより好ましく思えたのは前回乗った改良前のインテンサと同様だ。
アルファのSUVシリーズで下に位置するジュニアや、上級のステルヴィオと比較すると、全体にしなやかさが物足りない感がいなめないトナーレではあるが、こうして地道に改良していく姿勢は素直に評価したい。いずれにしても、価格やサイズなどの実用性を考えると、今のアルファ・ロメオで、トナーレがいちばん間口が広い。世界的にも売れ筋のこのクラスで、さすがにアルファも手をぬくわけにはいかないだろう。
(文=佐野弘宗/写真=向後一宏/編集=堀田剛資)
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テスト車のデータ
アルファ・ロメオ・トナーレ イブリダ ヴェローチェ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4520×1835×1600mm
ホイールベース:2635mm
車重:1600kg
駆動方式:FF
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
エンジン最高出力:160PS(117kW)/5750rpm
エンジン最大トルク:240N・m(24.5kgf・m)/1700rpm
モーター最高出力:20PS(15kW)/6000rpm
モーター最大トルク:55N・m(5.6kgf・m)/2000rpm
タイヤ:(前)235/40R20 96V XL/(後)235/40R20 96V XL(ピレリ・スコーピオン)
燃費:16.6km/リッター(WLTCモード)
価格:653万円/テスト車=674万7910円
オプション装備:メタリックカラー<モンツァグリーン>(8万8000円) ※以下、販売店オプション ETC車載器(1万6060円)/ドライブレコーダーV263A(5万9950円)/プレミアムフロアマット(5万3900円)
テスト車の年式:2026年型
テスト開始時の走行距離:2275km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター
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佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。
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