ジープ・グランドチェロキー リミテッド(4WD/8AT)/グランドチェロキー ラレード(4WD/8AT)
ボーン・イン・ザ・ U.S.A. 2013.11.08 試乗記 内外装に手直しを受け、8段ATに換装されるなど、「ジープ・グランドチェロキー」のマイナーチェンジは通常の枠を超えた大掛かりなものだ。その仕上がり具合はいかに。3.6リッターV6エンジンを搭載する「リミテッド」と「ラレード」に試乗した。8段ATで走りと燃費を強化
Born in the USA, I was born in the USA, born in the USA……とキリがありませんが、ボーン・イン・ザ・ USAの一台が新たに日本国に上陸した。ダイムラークライスラー時代(1998~2007年)の遺産、4代目「グランドチェロキー」のフェイスリフト版である。ご存じの方はご存じのように、日本市場では2011年に発表された4代目グラチェロは、メルセデス・ベンツの現行「Mクラス」とプラットフォームを共有する。2915mmのホイールベースは当然同じ、前ダブルウィッシュボーン/後ろマルチリンクのサスペンション形式も同じだ。つまりこれ、クルマの出来栄えからいって、ようするにベンツが開発したジープなのである。それって、すごくないですか。
で、こたびの4代目のフェイスリフトにおける機構的変更の目玉は、自動変速機が従来の5段からZF製の8段に換装されたことだ。「クライスラー300」と同様の改善が施されたわけだけれど、SUVの場合、8段化によるギア比のワイド化のメリットは大きい。下はローを低めることで、SUVに必要な悪路での極低速の走破性とけん引能力が大幅にアップ、上はトップを高めることでオンロードでの燃費性能を向上させている。燃費の改善は3.6リッターV6モデルで8%、5.7リッターV8で5%の向上をみている。
エクステリアでは顔がモダンになった。ヘッドライトがクライスラー300にも似たLEDとなり、空力の洗練を受けた。ちょっとワルい感じになって、じつにステキだ。
エンジンはV6とV8の2種類がある。今回試乗したのはV6のみなので、お話をV6に絞る。「ペンタスター」と誇らしげに名付けられた3.6リッターV6は現在のクライスラーの主力エンジンである。グラチェロでこれを搭載するモデルには、金属バネの「ラレード」と、エアサスと革内装をおごられた「リミテッド」の2グレードがある。価格は前車が427万3500円、後車が542万8500円。お値段以上なのは断然ラレードで、実際販売も半分以上がラレードになるとクライスラーも見ている。外観では、フロントバンパーの一部がクロムになり、マフラーがデュアルになっていたらリミテッドであるとわかる。デュアルマフラーを気にしなければ、クロム部分はブラックのままでもカッコいい。
見ると乗るとじゃ大違い
最初に乗ったのはラレードである。会場内にこしらえてある特設器具で、凸凹路での能力を体験する。端で見ているとビックリだけれど、実際には先生の指示に従い、クルマがただただやってくれるので、ドライバーは自分でやっているより、外から見ている方がダイナミックで、呆気(あっけ)にとられる。コースから外れて落っこちるのではないのか、と不安になる。人工的につくられたコースなので、走れることはわかっている。走れないコース設定したらアホである。
であるにしても、サスペンションストロークがたっぷりあって、各種電子制御がなければ、絶対にできない芸当である。オフロード性能は、SUV、とりわけジープというブランドがもっていてしかるべき能力である。もっていないジープなんて、洗っても色の落ちないリーバイス501、南極でさぶいノースフェイス、アフリカの悪路で壊れるランクルみたいなもので、あってはならんことである。
会場の外は舗装された狭い山道で、大型SUV向きとは、およそいいがたいコースであった。そのような不向きな状況だからこそわかることは、車重が2トンもあるのに、そう遅くもないことだ。3.6リッターペンタスターはツインカムヘッドと可変バルブタイミングをもち、最高出力286ps/6350rpm、最大トルク35.4kgm/4300rpm と意外に高回転型ながら、低速トルクも十分、上まで回すとアメ車とも思えぬ快音を発する。緻密なサウンドを奏でるのだ。ZFの8段ATも文句なしである。
ステアリングはSUVゆえたいへんギア比がスローである。とはいえ、往年のレンジローバーなんぞを思い起こしてみれば、フツウの乗用車から乗り換えてもさほど違和感はない。ちゃんとタイヤとステアリングが太いキズナでつながっている。高い着座位置がもたらす見晴らしのよさは、SUVならではである。室内はドイツ車らしく、もとい、アメ車ながら、たいへんきちんとした印象を受ける。新たに8.4インチのタッチスクリーンをセンターパネルに得ている。かのマセラティとも共通の部品だそうで、ありがたいことである。
アメリカの懐が生んだ歴史的産物
乗り心地は前述したごとく、金属バネであっても、ストロークがたっぷりあり、未舗装路であっても快適だ。タイヤは265/60R18サイズで、ちなみにメルセデスの「ML350」は同じ18インチでも255/55とやや偏平になっている。当たり前だが、性格分けがきっちりなされている。グラチェロのほうが想定速度が低く、快適志向なのだ。それはそうである。USAにアウトバーンはないのだし。
エアサスは上下に100mmほど伸び縮み自在で、オフロードでは当然、金属バネよりも高い踏破力をもつだろうし、高速時にはノーマル時より自動的に車高を若干低めて燃費を稼ぐ。フツウに乗っている限りに、乗り心地はさほど変わらない。リミテッドはシートヒーター内蔵のレザーシートが示すごとく、贅沢(ぜいたく)なモデルととらえるべきだろう。もちろん、贅沢はすてきですけど。
Born in the USAのアメリカ製品のすばらしいところ。それは、たとえ建前といえども、自由と機会均等の国らしく、クラスレスなことである。代表はいうまでもなくブルージーンズで、炭坑夫、カウボーイから合衆国大統領、もちろんカーボーイも履く。老若男女、ニッポン人も愛好している。ジープもそうかもしれない。2等兵(たぶん)からパットン将軍まで乗る。それを文化的には階級社会がいまも残っているというヨーロッパの、マルクスを生んだドイツのメルセデス・ベンツがつくった。スリーポインテッドスターがついたMクラスなんて、一番安いのでも760万円。ヘタしたら、というべきか、うまくいったらというべきか、グランドチェロキーが2台買える。これをお買い得といわずしてなんといいましょう。
最後に、ブルース・スプリングスティーンの「ボーン・イン・ザ・U.S.A.」について。あれ、サビの部分だけ聴いていると愛国的な歌なのですが、じつはベトナム反戦歌だったということを今回、ネットサーフィンしていて知った。
ベンツがつくったジープ、というような表現をすると、ジープの人は怒るかもしれない。でも、アメリカ合衆国は私たちが考えているより懐が深い、と私は勝手に思う。アメリカは移民の国で、自由と民主主義の国である。アメリカンドリームの国である。新型グランドチェロキーは、USAだからこそ実現した歴史的産物である。そこに価格を超えた価値がある。
(文=今尾直樹/写真=小林俊樹)
テスト車のデータ
ジープ・グランドチェロキー リミテッド
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4835×1935×1805mm
ホイールベース:2915mm
車重:2200kg
駆動方式:4WD
エンジン:3.6リッターV6 DOHC 24バルブ
トランスミッション:8段AT
最高出力:286ps(210kW)/6350rpm
最大トルク:35.4kgm(347Nm)/4300rpm
タイヤ:(前)265/60R18 110H M+S/(後)265/60R18 110H M+S(クムホ・ソルウスKL21)
燃費:8.6km/リッター(JC08モード)
価格:542万8500円/テスト車=542万8500円
オプション装備:なし
テスト車の年式:2013年型
テスト車の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター
ジープ・グランドチェロキー ラレード
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4835×1935×1825mm
ホイールベース:2915mm
車重:2160kg
駆動方式:4WD
エンジン:3.6リッターV6 DOHC 24バルブ
トランスミッション:8段AT
最高出力:286ps(210kW)/6350rpm
最大トルク:35.4kgm(347Nm)/4300rpm
タイヤ:(前)265/60R18 110H M+S/(後)265/60R18 110H M+S(クムホ・ソルウスKL21)
燃費:8.6km/リッター(JC08モード)
価格:427万3500円/テスト車=427万3500円
オプション装備:なし
テスト車の年式:2013年型
テスト車の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター

今尾 直樹
1960年岐阜県生まれ。1983年秋、就職活動中にCG誌で、「新雑誌創刊につき編集部員募集」を知り、郵送では間に合わなかったため、締め切り日に水道橋にあった二玄社まで履歴書を持参する。筆記試験の会場は忘れたけれど、監督官のひとりが下野康史さんで、もうひとりの見知らぬひとが鈴木正文さんだった。合格通知が届いたのは11月23日勤労感謝の日。あれからはや幾年。少年老い易く学成り難し。つづく。
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