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シトロエンDS3カブリオ スポーツシック(FF/6MT)

我慢知らずのカブリオレ 2013.11.19 試乗記 生方 聡 個性的なスタイリングと活発な走りで、ユニークな存在感を放っている「シトロエンDS3」。空を味方につけて、その魅力はどう変わったのだろうか。真っ赤な「シトロエンDS3カブリオ スポーツシック」で秋の箱根を行く。
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気負わずにオープンエアモータリング

「DS3カブリオ」と聞いて、真っ先に思い浮かべたのは、キャンバストップがガバッと開くフルオープンカーの姿だった。同じグループなら「プジョー205」や「306」のカブリオレのイメージ。DS3ならボディーもコンパクトだから、街乗りが楽しそう……なんて想像していたから、本当の姿を知ってびっくり、ルーフサイドフレームが残っているではないか!

確かに最近は「フィアット500C」など、ルーフサイドフレームが残るオープンモデルが増え、カブリオレの定義があいまいになっているのかもしれない。でも、これでカブリオと呼ぶのはさびしいなぁ……。

そう言っておきながら、個人的にはこのスタイルは嫌いじゃない。自身のオープンカー遍歴を振り返ったとき、ルーフを開ける機会が一番多かったのは、「フォルクスワーゲン・ポロ オープンエア」という、ルーフサイドフレームが残る電動キャンバストップのクルマだった。カブリオレほど開閉に手間が掛からないし、ルーフが開いていても外からはわからないので、気負わずに開けられる。冬場でも室内はぬくぬく。それでいて、十分な開放感が味わえるので、日差しがつらい真夏や雨や雪が降るとき以外は、大抵ルーフを開け放ち、オープンエアモータリングを楽しんだものだ。

だから、DS3カブリオがどんなクルマかを知ったとき、一瞬さびしい気持ちになったものの、すぐに期待が膨らんでしまったのだ。

グレードは「スポーツシック」のみ、トランスミッションも6MTのみというシンプルな設定。テスト車のボディーカラーは「ルージュ ルビ」と呼ばれる赤のパール塗装。
グレードは「スポーツシック」のみ、トランスミッションも6MTのみというシンプルな設定。テスト車のボディーカラーは「ルージュ ルビ」と呼ばれる赤のパール塗装。 拡大
小径のレザーステアリングにアルミペダルと、室内はスポーティーな仕立て。試乗車にはディーラーオプションのナビゲーションシステムが装着されていた。
小径のレザーステアリングにアルミペダルと、室内はスポーティーな仕立て。試乗車にはディーラーオプションのナビゲーションシステムが装着されていた。 拡大
レザーシートが標準で備わる。ボディーカラーが「ルージュ ルビ」の場合、ダッシュボードは「カーボテック」、シートカラーは「ミストラル」(黒)という組み合わせになる。
レザーシートが標準で備わる。ボディーカラーが「ルージュ ルビ」の場合、ダッシュボードは「カーボテック」、シートカラーは「ミストラル」(黒)という組み合わせになる。 拡大
後席は3人掛け。「このクラス初の5シーターオープン」とうたわれる。電動ソフトトップをフルオープンにすると、後席はかくも開放的な空間に。
後席は3人掛け。「このクラス初の5シーターオープン」とうたわれる。電動ソフトトップをフルオープンにすると、後席はかくも開放的な空間に。 拡大
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フルオープン時で残念なのが……

DS3カブリオの一番の特徴は、一見してカブリオとわからないところ。DS3のデザインはそのままで、オープンエアモータリングの楽しさだけを付け加えたのがDS3カブリオだから、ノーマルルーフと区別が付かないのはつくり手の思惑どおり……というわけだ。

早速、電動ソフトトップを操作してみる。DS3カブリオの場合、ルーフの状態には3パターンあり、全閉の「クローズ」、全開の「フルオープン」、そして、ルーフの部分だけ開いている「セミオープン」だ。操作はルーフコンソールのスイッチを使うが、120km/hでも操作できるというのがウリのひとつで、高速道路を走行中でも開閉が可能ということになる。

ただし、クローズから一気にフルオープンにするわけにはいかず、いったんセミオープンの状態にしたのち、さらにスイッチを操作することでリアウィンドウ部分が畳まれてフルオープンになる。

まずはセミオープンで走りだす。フルオープンには及ばないものの、これでも十分にオープン感覚を味わうことができる。一般道を流すスピードなら風の巻き込みは気にならず、巨大なスライディングルーフが付いたという印象だ。そのまま高速道路に入ると、90km/hあたりから、いわゆるドラミングによって、キャビンにドンドコという不快な音が響きはじめる。そういう場合は、サイドウィンドウを少し下ろしてやればいいのだが、DS3カブリオの場合、フルオープンにしてやると、このドラミングが一気に解消。これは開けずにはいられない!

ただ、ひとつ困ったことがある。うしろがよく見えないのだ。

電動ソフトトップには「フルオープン」と「セミオープン」の2モードがある。もちろん、任意の位置で止めることも可能。開閉に要する時間は16秒。(クリックするとソフトトップが開閉する様子が見られます)
電動ソフトトップには「フルオープン」と「セミオープン」の2モードがある。もちろん、任意の位置で止めることも可能。開閉に要する時間は16秒。(クリックするとソフトトップが開閉する様子が見られます) 拡大
ドライバーの頭上には走行風の巻き込みや風切り音を抑える「ディフレクターネット」が備わる。
ドライバーの頭上には走行風の巻き込みや風切り音を抑える「ディフレクターネット」が備わる。 拡大
タイヤサイズは205/45R17。「ツートン ノアール(黒)」と呼ばれるアルミホイールを標準で履く。
タイヤサイズは205/45R17。「ツートン ノアール(黒)」と呼ばれるアルミホイールを標準で履く。 拡大
「DS3」シリーズのトレードマーク「3D・LEDコンビネーションランプ」がリアビューを個性的に彩る。
「DS3」シリーズのトレードマーク「3D・LEDコンビネーションランプ」がリアビューを個性的に彩る。 拡大

マニュアル免許取得のススメ

おかげで、後方車両の確認には神経を使うが、風を感じる爽快さはセミオープンの比ではない。それなりに風の巻き込みは大きくなるが、ルーフ前端の「ディフレクターネット」を立ち上げれば多少緩和される、100km/h巡航なら十分快適なクルージングが楽しめる。

フルオープンやセミオープンの状態では、多少、ボディーの緩さが感じられるが、クローズではノーマルルーフとほとんど変わらない剛性感がもたらされる。一般のカブリオレに比べると、遮音性も格段に優れている。ルーフの構造とボディーの補強により、車両重量は20kg増加したというが、156psを発生する1.6リッター直噴ターボを積むDS3カブリオにとっては、ほとんど誤差のようなもので、ノーマルルーフと変わらず、余裕ある加速を見せてくれる。特に3000rpmを超えたあたりからの勢いがたまらない。

パワフルなエンジンを積むDS3カブリオを支えるために、足まわりは明らかに硬めだが、そのぶん、ノーマルルーフ同様、機敏なハンドリングが堪能できる。電動ソフトトップを足しても、失ったものはない……。そんなシトロエンの主張にもうなずける。

唯一の弱点は、トランクの開口部が狭く、荷物の出し入れがしにくいことか。一方、マニュアルトランスミッションしか選べないのは……個人的には弱点どころか、こんな楽しいクルマがマニュアルで乗れるなんてラッキーとしかいいようがない。ちなみに、ヨーロッパでもオートマチックは用意されないので、このクルマにほれてしまったオートマ免許の人は、これを機会にマニュアル免許を取ってはいかがだろう? その苦労はきっと楽しさに変わるはずだ。

(文=生方 聡/写真=小河原認)

オープン化による重量増加はわずか20kg。ハッチバックモデルと変わらない、スポーティーな走りが「DS3カブリオ」の身上。
オープン化による重量増加はわずか20kg。ハッチバックモデルと変わらない、スポーティーな走りが「DS3カブリオ」の身上。 拡大
1.6リッタターボユニットは156psを発生する。JC08モード燃費は13.6km/リッター。参考までに、ハッチバックの「スポーツシック」(6MT)は14.1km/リッター。
1.6リッタターボユニットは156psを発生する。JC08モード燃費は13.6km/リッター。参考までに、ハッチバックの「スポーツシック」(6MT)は14.1km/リッター。 拡大
トランク容量(VDA方式)は230リッター(ハッチバックは285リッター)。リアシートを倒せば、さらに広がる。ただし、開口部が幅71×高さ27cm程度(実測値)と狭く、大きな荷物の出し入れには難儀しそう。(クリックするとリアシートが倒れる様子を見ることができます)
トランク容量(VDA方式)は230リッター(ハッチバックは285リッター)。リアシートを倒せば、さらに広がる。ただし、開口部が幅71×高さ27cm程度(実測値)と狭く、大きな荷物の出し入れには難儀しそう。(クリックするとリアシートが倒れる様子を見ることができます) 拡大
フルオープン時の開放感は「DS3カブリオ」の醍醐味(だいごみ)。しかし、たたまれたソフトトップによって、後方視界が大きく奪われてしまうのが悩みどころ。
フルオープン時の開放感は「DS3カブリオ」の醍醐味(だいごみ)。しかし、たたまれたソフトトップによって、後方視界が大きく奪われてしまうのが悩みどころ。 拡大

テスト車のデータ

シトロエンDS3カブリオ スポーツシック

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3965×1715×1460mm
ホイールベース:2455mm
車重:1210kg
駆動方式:FF
エンジン:1.6リッター直4 DOHC 16バルブターボ
トランスミッション:6MT
最高出力:156ps(115kW)/6000rpm
最大トルク:24.5kgm(240Nm)/1400-3500rpm
タイヤ:(前)205/45R17 88V/(後)205/45R17 88V(ブリヂストン・ポテンザRE050A)
燃費:13.6km/リッター(JC08モード)
価格:311万円/テスト車=311万円
オプション装備:なし

テスト車の年式:2013年型
テスト車の走行距離:3161km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(6)/山岳路(3)
テスト距離:304.9km
使用燃料:27.0リッター
参考燃費:11.3km/リッター(満タン法)

シトロエンDS3カブリオ スポーツシック
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生方 聡

生方 聡

モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。

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