スバル・レヴォーグ 開発者インタビュー
日本のベストを目指して 2014.02.03 試乗記 富士重工業スバル商品企画本部
プロジェクトゼネラルマネージャー
熊谷泰典(くまがい やすのり)さん
国内専用のニューモデルとして2014年春に市場投入される、スバルの新型ワゴン「レヴォーグ」。その誕生の背景は、どのようなものだったのか? 開発責任者に話を聞いた。
カタチあっての、このサイズ
鮮烈なデビューを飾った「スバル・レヴォーグ」。走る技術の卓越ぶりはスバルならではだが、これまでとは違う存在感も際立つ。富士重工のクルマ作りが大きな曲がり角に差しかかったとすれば、見逃せないのは商品企画。そこで開発の責任者である熊谷泰典さんを直撃、“何がどうしてどうなったのか”聞いてみた。
――新しいレヴォーグは「国内専用モデル」といわれてますが、どのあたりが“国内専用”なんですか?
みなさんは車体のダウンサイズを話題にしてくれますけれど、実はもっと広い意味で、「国内のお客さまが何を求めておられるのか、それにスバルが応えることができていたかを全面的に見直した」というのが基本。そこに力を集中したという点で“国内専用”なんです。
――そうはいっても、納得しにくいのがボディーの寸法。たしかに全長は短縮されましたが、全幅が1780mmもあるなんて、とても日本向けに見えませんが?
たしかに、その点では小さいとは言えないかもしれませんね。ただ、お客さまの声を集めてみると、広い室内スペースのために現行「レガシィ(ツーリングワゴン)」くらいの全幅があるのは受け入れられるけど、フェンダーフレアが張り出した「アウトバック」はどうも……という傾向があります。そのあたりに正解があるのかな、と。
――違うんじゃないですか? 「インプレッサ」がだんだん大きくなってきた結果、レガシィとの板挟みで、この全幅しか選べなかったようにも見えますが。
大切だったのはデザインなんです。これまでのスバルって「側面がペタッと平らに見える」と言われたことが多かったでしょ。「あまり色気がない」とかね。今のレガシィも「箱っぽい」という声があります。そのぶん凝縮感も濃いんですが。そこに“豊かさ”とか“厚み感”を持たせたかった。
しかし、それは、5ナンバー(全幅1700mm以下)じゃ無理っぽい。だからといって、1800mmを超えると広すぎる。まあ、駐車スペースの関係で1750mmが限度というお客さまもいらっしゃるけれど、いろいろ調べてみて、どうやら1780mmあたりでギリギリ妥協できそうだと選んだわけです。
「見せ方」も変わった
――一方、インテリアに関して、日本の消費者に喜んでもらうポイントとは?
やっぱり質感だろうと。プラスチック感やパキパキ感を徹底的に排除したかったですね。そのうえで面の部分を上質なピアノブラックで彩るとか、要所要所にクロムのアクセントを配するとか……。
――おや、スバルって、そういう表面的な「見せ方」にこだわらない価値観が特色だと思っていたのですが。
そうでしたが、社内の考え方、感じ方がだいぶ変わってきたのは事実です。質感とか意匠とか、感覚的に捉える部分をもっと重視しようとね。そして、「日本人が日本のために、どういうものが作れるかを考えよう」となったんです。
そのためには金も使いましたよ。次期「WRX」(2013年11月にロサンゼルスオートショーで発表)とセットの形で仕事を進めて、コストを下げる努力も必要でしたけれど。
――今スバルは、多くの点でトヨタと共同で仕事をしています。そして、見た目や質感、コストダウンはトヨタの特技。レヴォーグの開発にも、トヨタからの影響を受けましたか?
いや、そう思われるのも当然かもしれませんけれど、これは富士重工が独自で手がけました。それより欧州車を含め、いろいろなクルマをベンチマークにしましたね。アウディ(の計器盤)とか、あとはBMWとか。どうやって質感を高めているのか観察しました。
「レガシィ」を受け継ぐクルマ
――それにしても、景気回復とはいえ、国内のクルマ市場、決して活況とは言えません。ちゃんと売れますか。
スバル自身が把握しているレガシィのお客さまが30万人ほどいらっしゃいます。そのほかに10万人ほどとして、その合計40万人の皆さんに振り向いてもらえるかどうかが努力目標になりますね。
――そうすると、レヴォーグがレガシィを食っちゃうんじゃないですか?
すでに次世代レガシィのコンセプトモデルは発表してますが、これから行く道を考えると、率直に言って日本が主軸の車種とは言いにくい。そういう意味では、(レヴォーグが)そのポジションを受け継ぐわけで、共食いになるとは言えないでしょう。
――つまり、将来のレガシィについては、あまり国内でのヒットは期待していない?
対米特化と言えるかもしれません。まあ日本では最近ヨーロッパ系が元気ですから、そちらとの競争かな、と。しかし、欧州車を意識してレガシィを元気にすると、それはそれで国内ユーザーのニーズから離れる可能性はありますね。
――それにしても、最近はワゴン界が低調すぎます。そんな中でレヴォーグがワゴンだけというのは、少し冒険なのでは?
いや、まだまだ日欧ではワゴンが活躍する余地があります。その中で、まずレヴォーグをジャパン・ベストに仕上げる意味は大きいと信じてます。運転していただければわかりますが、レヴォーグはワゴンであるだけでなく、“スポーツカー”でもあるんですから!
(インタビューとまとめ=熊倉重春/写真=荒川正幸)

熊倉 重春
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