BMW 218iアクティブツアラー ラグジュアリー(FF/6AT)
FFハッチは一日にして成らず 2015.01.23 試乗記 FFレイアウトに“ストレート3”ユニットと、BMWブランドにとって初モノ尽くしの「2シリーズ アクティブツアラー」。Cセグメントハッチバックの定番的存在「フォルクスワーゲン・ゴルフ」という壁を、一発で乗り越えることができたか? 上質感が強調されたグレード「218iアクティブツアラー ラグジュアリー」に試乗した。40年後の真っ向勝負
TVコマーシャルでゴルフがサザンを起用したら、ミスターチルドレンの新曲を使ってきたのが2シリーズのアクティブツアラーである。ミスチルの音に反応するのは、サザンのリスナーよりかなり若いはずだ。ピンポイントで30代をターゲットにしているように見えるコマーシャルである。お台場の高層マンションに住む、若いファミリーあたりがイメージカスタマーだろうか。
ゴルフより若い層を狙うといっても、BMWのことだから、価格競争はしない。アクティブツアラーに200万円台はなく、「332万円より」である。今回の試乗車、「218iラグジュアリー」は381万円だ。クルマのキャラクターとしてはおそらく「メルセデス・ベンツBクラス」が真っ向勝負のライバルだろうが、「307万円より」の「B180」よりも強気だ。
2シリーズ アクティブツアラーは、ゴルフより40年遅れてやってきたBMWブランド初のFFモデルである。クルマ好きにとって、最大の興味はまさにその点だろう。
BMWの「1シリーズ」は欧州Cセグメントの一台としてゴルフのライバルには違いないが、「ウチはFRですから」と言われると、どんな批評も批判も治外法権のようなところがあった。でも、今度は同じFFとして、ガチである。
ハッチバック以上ミニバン未満
218iに乗り込んで、いちばん近いと思ったのは、やはりメルセデスの「Bクラス」である。ボディーサイズはほぼ同じ。ゴルフのようなフツーのハッチバックと違うのは高めの全高(1550mm)で、その分、室内の空気量がたっぷりある。2列シートの5人乗りでも、ハッチバック以上、ミニバン未満といった感じの広さ感である。
1シリーズじゃもう狭いねと言って、アクティブツアラーに買い替えたファミリーがいたら、いちばん感激するのは、後席の広さだろう。リアシートのクッションはなぜか小さめだが、座ると膝まわりの余裕は大きい。座面は高く、フロアは少し掘ったような形状なので、脚もラクに休ませられる。ヘッドルームもたっぷりしている。このクルマ、特等席はリアシートかもしれない。
ラグジュアリーには見るからに上等なダコタ・レザー・シートが標準装備される。しかも試乗車の内装はベージュ。広いだけでなく、室内はコートダジュールのように明るい。
だが、走りだすと、そんな高級イメージに軽く足払いをかけるのがこのクルマのおもしろいところである。エンジンがプルプルしている。停車していると、ハンドルを握る手にもかすかな振動が伝わる。コールドスタートから5分もすればアイドリングストップが効き出すから、それは気にならなくなるが。
カタマリ感があって彫りも深い5ドアボディーの押し出しや、内装の高級な仕立てに目を奪われているとフト、忘れがちだが、218iは3気筒なのである。
“ストレート3”を許せるかどうか
218iのノーズに横置きされるパワーユニットは、新しい「MINIクーパー」と同じ直噴1.5リッター3気筒DOHCターボである。136psのパワーや22.4kgmのトルクも同じだ。
ミニには6段MTもあるが、こちらは6段ATのみ。ラグジュアリーの車重は1460kg(試乗車は電動パノラマ・ガラス・サンルーフが装着されるので1490kg)。MINIクーパー5ドアよりちょうど200kg重いボディーを同じエンジンで引っ張る。そのわりにはスイスイよく走るが、けっしてパワフルではない。トルクで押すタイプでもない。エンジンに対してボディーが重い感じは否めない。
エンジンや変速機の制御を変えるドライブモードは、エコプロ、コンフォート、スポーツの3つ。エコプロで走っていて、これまでカッタルイと感じたBMWはないが、このクルマはアクセルをチョイ踏みしたときの反応が鈍すぎて、あまり使う気にならなかった。ただし、高速巡航時だとエコプロの効用は大きく、軽負荷時にアクセルをゆるめると900rpmのアイドリングに落として燃費を稼いでくれる。
3気筒特有のかろやかなビートとサウンドは、個人的には好きである。しかし、その回転フィールはプレミアムとか高級とかいったベクトルではない。そっち方面に過度な期待を抱くと、エンジンにショボさを覚える人もいると思う。検討中のかたは、ぜひディーラーで試乗してみてください。
新型MINIクーパーで初めて味わったときから感じているのだが、むしろこの3気筒エンジンはライトウェイトスポーツカーをつくったらさぞ楽しいのではないか。あるいは、思いきってスリーホイラーのコミューターにトライして、21世紀の「イセッタ」なんてどうだろう。
あらためて感じる“定番”の偉大さ
車検証によると、試乗車の前後軸重は前860/後630kgである。前後重量配分は58:42だ。50:50のイーブンを社是としてきたこれまでのBMWからすると、たしかにアクティブツアラーはFFだ。
だが、よりくわしくみると、58:42という数値はFFとしてはイーブンである。ちなみにメルセデスB180と「ゴルフ ハイライン」はともに62:38だ。それほど速くないエンジンでも、ワインディングロードで218iが軽快なハンドリングを見せるのは、そのへんのこだわりの成果かもしれない。
足まわりで残念なのは、乗り心地がいまひとつである。荒れた舗装路だと、タイヤがバタつく。とくに後席では気になった。腰から下だけで、路面の起伏やデコボコをいなす、いわゆるフラット感もBMWにしては乏しい。そういえば「Aクラス」や「Bクラス」も、FRのメルセデスほど乗り心地が洗練されていない。「メルセデス・ライド」と呼びたくなるような乗り味は、AにもBにもまだない。FF車でいい乗り心地をつくるのは実は難しいのかもしれない。
そんなことを考えると、あらためてゴルフはスゴイ! と思った。歴40年と1作目を比べたら酷かもしれないが、218iに乗っていていちばん強く感じたのはこれである。ゴルフは一日にして成らず。
(文=下野康史<かばた やすし>/写真=荒川正幸)
テスト車のデータ
BMW 218iアクティブツアラー ラグジュアリー
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4350×1800×1550mm
ホイールベース:2670mm
車重:1490kg
駆動方式:FF
エンジン:1.5リッター直3 DOHC 12バルブ ターボ
トランスミッション:6段AT
最高出力:136ps(100kW)/4400rpm
最大トルク:22.4kgm(220Nm)/1250-4300rpm
タイヤ:(前)205/55R17 91W/(後)205/55R17 91W(ブリヂストン・トランザT001 RFT<ランフラットタイヤ>)
燃費:16.8km/リッター(JC08モード)
価格:381万円/テスト車=462万3000円
オプション装備:アドバンスド・アクティブ・セーフティ・パッケージ(13万円)/コンフォート・パッケージ(14万4000円)/アドバンスド・パーキング・サポート・パッケージ(14万7000円)/BMWコネクテッド・ドライブ・プレミアム(6万1000円)/17インチ マルチスポーク・スタイリング 481アロイ・ホイール(9万2000円)/電動パノラマ・ガラス・サンルーフ(20万9000円)/ファインライン・ショアー・ウッド・トリム パール・グロス・ハイライト(3万円)
テスト車の年式:2014年型
テスト開始時の走行距離:3345km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(8)/山岳路(0)
テスト距離:232.1km
使用燃料:18.3リッター
参考燃費:12.7km/リッター(満タン法)/12.7km/リッター(車載燃費計計測値)

下野 康史
自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。
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