シボレー・コルベットZ06(FR/7MT)/コルベットZ06(FR/8AT)
さらに高みへ 2015.02.26 試乗記 「コルベット史上最強」とうたわれる現行型をベースに、6.2リッターV8ユニットをスーパーチャージャーで659psまでドーピングした真の最強コルベットが「Z06」だ。日本への正式導入に先立ち、アメリカでステアリングを握った。史上最強のコルベット
「カマロ」がエアコンまでかなぐり捨てた本気走り仕様の「Z28」でニュル7分37秒台のタイムを記録したかと思えば、新型「マスタング」は同様の仕立てとなる「GT350R」でその記録を5秒以上更新、一方のクライスラーは「チャージャー/チャレンジャー」に700psオーバーのスーパーチャージドV8を積んだ「ヘルキャット」を公道に解き放ち……。
と、近頃2ドア・アメ車の世界では、度が過ぎるほどのパフォーマンスバトルが繰り広げられている。これほど激アツな三つどもえは1960年代後半のマッスルカーブーム以来だろう。思えばいずれも、その時代のオリジナルをモチーフにモダナイズされた意匠をまとっている。ベビーブーマーにはまぶしかったあの頃を思い出させるものとして、若者にはスーパーカーリーグで気を吐く身近なヒーローとして、これらはアメリカで支持を集めているようだ。
それにしても、シェールだなんだという話になった途端のそれ。なんだかんだ言っても、彼らの本音はごっついガタイにでっかいV8なんだなぁとしみじみさせられる。
と、いくら周囲がキャッキャと盛り上がろうが、あるいはどよ~んとへこみまくろうが、コルベットは常に自分の方法で自分の道を突き進んできた。量販スポーツカーとしてのれんを守り続ける最古のクルマ。その称号がだてではないだけに、彼らいわくの「史上最強」はすごみを増して伝わってくる。
「ZR1」の実質的後継車
新型コルベットに設定されたそのグレード「Z06」は、先代のモデルライフ後半に登場した「ZR1」の実質的な後継車だ。先代ではスモールブロックの限界ともいえる7リッターまで排気量を拡大したLS7型V8が搭載されていたが、新型に搭載されるのは6.2リッターV8+スーパーチャージャーのLT4型となる。詳しい方ならそれが、先代ではZR1に相当するユニットであることにお気づきだろう。
LS7が搭載されなかった理由について、主査のタッジ・ジェクター氏は燃費を最大の理由に挙げる。ビッグボアのプッシュロッド自然吸気ユニットを7000rpmまでカチ回す快感は代え難いものだが、さしものコルベットでもポート噴射の旧世代アーキテクチャーでは大手を振って売ることが難しい。残念ではあるものの、そんな時代であることはこちらも受け止めなければならない。
搭載されるLT4型の最高出力は659ps。先代ZR1のLS9型に対して12psの向上と額面的には控えめだが、中身は別物といっていいほど手が入れられている。アルミ材を大胆に用いたスモールブロックV8はOHVのまま、直噴化や可変バルブタイミングシステム、気筒休止など効率改善にまつわるソリューションがあらかた投入されるほか、イートン製の三葉式スーパーチャージャーもコンパクト化が図られ、重量や重心、前方視界への影響を最低限に食いとめた。
そのエンジンにトランスアクスルレイアウトで組み合わせられるミッションは7段MTのみならず、8段トルコンATも選択可能。GMが開発・生産する最新のそれはアルミやマグネシウムを多用する軽量コンパクトな設計ながら1000Nm(102.0kgm)までのトルクに対応するもので、トラックモードでは「ポルシェ911」のPDKを上回る素早い変速を可能にしているという。
それにより、Z06の0-60マイル(約97km/h)加速は2.95秒と、先代ZR1比で約0.5秒短縮。7段MTでも3.2秒と動力性能は確実に高められている。最高速は発表されていないが、ほぼ330km/hをマークしていたZR1のそれは超えてくることになるだろう。
乗り心地の洗練が著しい
これらを支えるシャシーは、先に登場した標準車のフレーム構造をキャリーオーバーし、特に大きな補強は加えられていないという。それでもコルベットの特徴であるリムーバブルトップがフィックスされていた先代のZ06に対して、クローズド時のねじり剛性は60%向上、トップを開放した状態でも20%上回っているというのが開発側の発表値だ。本国ではすでにコンバーチブルも発表されているあたりからも、車体剛性にまつわる自信は相当なものなのだろう。
日本仕様の詳細は未定だが、本国におけるグレードは基本的に1つ。そこにいくつかのパッケージオプションを付与することで個性化を図ることになる。中でも、最もサーキット走行を意識したものが「Z07パッケージ」。前後約390mm径のブレンボ製カーボンセラミックブレーキシステム、フロントスプリッターや高さ調整付き3分割リアスポイラーなどが加わるエアロエフェクトパーツなど、実戦的な装備が、ミシュランのパイロットスポーツカップ2タイヤと共に装着される。eデフを介して駆動されるタイヤのサイズ自体は先代のZR1と同等で、後輪では335幅となるこのタイヤを収めるべくボディーはオプションパッケージに関わらず前後共に広げられ、全幅は1965mmに達する。
アーキテクチャーが刷新されたことにより、先代に対して特にフットワークの洗練が著しいという標準車の印象はZ06でも変わらない。比較はどうしても先代のZR1になってしまうが、それに比べれば乗り心地は見違えるほどに滑らかで、荒れの大きなアメリカの舗装路でも乗員を無粋に揺するような場面はほとんどみられなかった。用途を絞ったがゆえに接地感が硬めに表れるパイロットスポーツカップ2でも、いなしに大きな変化がみられなかったのは、バネ下重量の軽いブレーキシステムも奏功しているのだろう。仮にZ07パッケージを装着したとしても、Z06はコルベットの美点であるGT的な柔軟性をしっかり感じさせてくれる。ちなみに60マイル付近での巡航回転数はMT、AT共に大差なく1400rpm付近。この状況では気筒休止も頻繁に働き、車載計の推移をみると11km/リッターを超える燃費も期待できそうだ。
ポルシェがライバル
サーキットの試乗では標準グレードとZ07パッケージ、双方の特性の差をわかりやすく感じることができた。ともあれ、制動や旋回の限界点はZ07パッケージの側が明らかに高い。エンジニア側はその数値を旋回時で最大1.2Gとおっしゃるが、車載のGメーターによるとコーナー次第では1.4G程度の数値をコンスタントに示している。もちろんそれはパイロットスポーツカップ2の強烈なグリップ力によるところも大きいのだろう。
一方でタイヤの限界を超えるあたりでは速度も尋常ならざるところに到達しているがゆえ、滑り出しの収束にはスキルを要することになる。コルベットのボディーコントロールデバイスは滑り出しを積極的に許容する方向だから最初はヒヤッとさせられるも、その後の作動は素早く滑らかなので、よほどのむちゃをしない限りはスピンモードに陥ることもないはずだ。
対する標準グレードは限界点こそZ07パッケージよりやや低めだが、全般的に挙動の推移が穏やかで御しやすいという美点がある。サーキットの連続走行ではさすがにペダルストロークが大きくなるものの、ブレーキの耐フェード性もスポーツモデルとしては水準以上のところにあり、絶対制動力はカーボンセラミックの側に譲るもコントロール性は同等以上とみていいだろう。時々サーキットを走るという前提でこのモデルを検討するに、ランニングコストを含めて考えると、あえて標準グレード側の安定感を選ぶのもありではないかというのが個人的な印象だ。
ともあれサーキットスピードでも際立つのは、先代ZR1に対する機械的精度の劇的な向上だ。「走る」「曲がる」「止まる」にまつわる曖昧なところはまったく見当たらず、操作に対して即座に、かつ精緻に反応してくれる。開発陣の発言を聞いていると、動的質感におけるベンチマークとしてチラチラとポルシェの名が挙がるわけだが、そのあたりのフィーリングはドイツやイタリアのスーパースポーツたちに完全に並んだとみていいだろう。とにかく恐ろしく速いという印象が先立っていたZR1に比べると、結果的に、クルマの動きを冷静に判断できている自分がいる。それだけコントロールの余幅は民主的に広げられたということだ。
Z06の価格は未定だが、プリオーダーの値札が1300~1500万円台のゾーンに掲げられていたことを思えば、そこから著しく外れることはないだろう。コルベットにそんなお金は払えないという認識はすぐにでも改めた方がいい。備えるのは世界屈指のパフォーマンスである。その対価としては破格に近いと個人的には思う。
(文=渡辺敏史/写真=ゼネラルモーターズ)
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テスト車のデータ
シボレー・コルベットZ06(7MT)
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4518×1965×1235mm
ホイールベース:2710mm
車重:1598kg
駆動方式:FR
エンジン:6.2リッターV8 OHV 16バルブ スーパーチャージャー付き
トランスミッション:7段MT
最高出力:659ps(485kW)/6400rpm
最大トルク:89.8kgm(881Nm)/3600rpm
タイヤ:(前)285/30ZR19/(後)335/25ZR20
燃費:--km/リッター
価格:--円/テスト車=--円
オプション装備:--
※データは北米仕様車のもの。
テスト車の年式:2014年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター
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シボレー・コルベットZ06(8AT)
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4518×1965×1235mm
ホイールベース:2710mm
車重:1598kg
駆動方式:FR
エンジン:6.2リッターV8 OHV 16バルブ スーパーチャージャー付き
トランスミッション:8段AT
最高出力:659ps(485kW)/6400rpm
最大トルク:89.8kgm(881Nm)/3600rpm
タイヤ:(前)285/30ZR19/(後)335/25ZR20
燃費:--km/リッター
価格:--円/テスト車=--円
オプション装備:--
※データは北米仕様車のもの。
テスト車の年式:2014年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター

渡辺 敏史
自動車評論家。中古車に新車、国産車に輸入車、チューニングカーから未来の乗り物まで、どんなボールも打ち返す縦横無尽の自動車ライター。二輪・四輪誌の編集に携わった後でフリーランスとして独立。海外の取材にも積極的で、今日も空港カレーに舌鼓を打ちつつ、世界中を飛び回る。
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