フィアット・パンダ4×4(4WD/6MT)/ジープ・グランドチェロキー ラレード(4WD/8AT)
気取らない実力派 2015.03.03 試乗記 FCAが擁するイタリアとアメリカのブランドの中から、注目モデルをピックアップ。スポーティーなアルファ・ロメオとクライスラーを取り上げた前編に続いては、オフロード走行に強みを見せる、フィアットとジープの試乗インプレッションを報告する。しゃれているけど悪路もイケる ―― フィアット・パンダ4×4
さて、FCA最新モデルの試乗も後半ということで(前編はこちら)、中継地点の軽井沢にて「アルファ・ロメオ・ジュリエッタ クアドリフォリオ ヴェルデ ローンチエディション」から「フィアット・パンダ4×4」に乗り換える。
ご承知のとおりパンダ4×4は2014年10月、現行パンダに全国340台の限定車として追加された6MTの四輪駆動モデルだ。
フルタイム4WDシステムは最新のトルクオンデマンド式。通常時はFFでの走行となるが、電子制御により、状況に応じて必要な駆動力が分配される。また低ミュー路用の電子式デフロック(ELD:エレクトロニック・ロッキング・ディファレンシャル)も備えており、50km/h以下の状況であれば、シフトノブの奥にあるボタンを押すことでデフロック機構を作動させることが可能だ。
ジュリエッタから乗り換えると、パンダ4×4は「大衆車的」に感じられる。ジュリエッタはドアの開閉ひとつとっても「厳かな感じ」が若干ただようが、パンダ4×4にはそういったものは一切ない。その造形とタッチは、イタリアのおっさんが普通のコーヒーを飲みに集まる普通のバールのようだ。しかしそれこそがパンダというクルマの真骨頂であるはずで、今回のパンダ4×4が「妙な高級感」など携えてなくて本当によかったと思う。
とはいえそのデザインセンスは「信頼のイタリアもの」ゆえ、貧乏くささはみじんもない。特にドア内側最上部、黒い部分にある多数の細かな凹凸が単なるシボではなく、「PANDAPANDAPANDA……」とひたすら刻印されていたのを発見した際は(しかも、たまに文字の向きを変えたり小文字を挟むなどの小ワザも利いてる)、イタリア人のセンスに震撼(しんかん)した。
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雪道が楽しくなる
ではパンダ4×4にて雪の軽井沢を疾走してみよう。とはいえ当日はほぼ完璧に除雪が済んでいたため、ドライ路面とほとんど似たような心持ちで走れるコンディションではあった。
エンジンは0.9リッターターボの「ツインエア」。これが車両重量1010kgの「フィアット500ツインエア ポップ」に搭載されると、それこそ豆鉄砲がさく裂したかのごとき痛快な加速を披露するわけだが、車両重量1130kgのパンダ4×4になると、その「豆鉄砲さく裂感」はさほどではない。しかし道具グルマ的に使いたいパンダ4×4としては、このぐらいが逆に好ましい。
もちろん、6MTを適切に“出し入れ”しながら走行すれば、十分以上に痛快な加速や高速巡航を楽しむこともできる。ただ横風にはあまり強くないため、(風向きにもよるが)結局は比較的まったりと走ることが、このクルマのスイートスポットを最大限生かすことにはなるのだろう。
さて、そうこうしているうちに白馬村に差し掛かる。このあたりでELD(電子式ディファレンシャルロック)をONにして、オンデマンド式4WDの恩恵を最大限に受けねばなるまい……などとシリアスな顔で考えていたが、シリアス顔は不要だった。ELDをONにしたパンダ4×4は、雪道には不慣れなドライバーである、筆者からの各種入力に対してもまったく破綻しない。それどころか最終的には(安全な場所で)後輪をスライドさせながらの回頭が楽しめるまでに至ってしまった。
これは、残念ながら筆者の運転技術が向上したわけではなく、「軽量で好バランスなクルマはたいてい運転しやすく、楽しい」ということなのだろう。現在のパンダ4×4も往年のパンダ4×4と同じ、そういった類いの魅力を備えたクルマであったことに、妙なうれしさを感じている。
素のグレードでも十分ゴージャス ―― ジープ・グランドチェロキー ラレード
お次に乗り換えたのが「ジープ・グランドチェロキー ラレード」。ご承知の方も多いと思うが、現在販売されているグランドチェロキーは2013年にマイナーチェンジを受けている。それまでとはフロントまわりの顔つきが変わり、同時にインテリアもグレードアップ。そしてトランスミッションは5段タイプのATからZFの8段ATに変更された。
今回試乗した「ラレード」はベースグレードといえる仕様で、その上には装備充実の「リミテッド」が。このどちらも搭載エンジンは3.6リッターのV6 DOHCだ。さらに豪快なテイストを求める人には5.7リッターの伝統的V8 OHVを積む「サミット」があり、さらにさらに豪快さんなグランドチェロキーを求める人のために、6.4リッターのマッスルなHEMIエンジンを搭載する「SRT8」も用意されている。
……などと「さも最初から知ってましたよ」的に書いたが、これらはすべてカタログからの受け売りだ。前編として紹介した「クライスラー300 SRT8+」に関する文章のなかで「筆者はマッスルカーには全然詳しくない」と書いたが、より正確を期すのであれば「筆者はアメリカ車全般に詳しくない」と書くべきだった。当然、現行グランドチェロキーの成り立ちについても知らなかったし(ダイムラーとクライスラーが“離婚”する前に開発が始まったモデルであるため、メルセデスの技術が結構入っているのですね……)、試乗するのも初めてだ。
そんな筆者に、webCG編集S氏が言う。「本当は普通すぎるラレードじゃなくて、もっとゴージャスなリミテッドを試してもらいたかったんですけどねぇ」と。
……いったいこの人は何を言っているのだ? ラレード、十分に「ゴージャス」でステキではないか?
かなりステキな「普通」
もちろん筆者の感覚がズレている可能性もある。現在はたまたま現行型の「ルノー・メガーヌ ルノースポール」というクルマを所有しているが、普段はたいてい10年落ちぐらいのイタリア車などに乗っている。それゆえ、人生初の海外旅行でアメリカに行った人が下町のダイナーに入り「さすがアメリカのレストランは洗練されてるなあ!」というような勘違いをしてしまうのと同種の勘違いを、筆者もしている可能性はゼロではない。
しかし普通に考えてこの内装もさまざまな機能も、十分ゴージャスにして快適だと思うのだが、左の写真群を見てあなたはどう思うだろうか? モア・アンド・モアを求めることが悪いとは思わない。しかし少なくとも筆者のような門外漢にとって、ジープ・グランドチェロキー ラレードとは十分ゴージャスでステキなSUVであった。
そのステキさは走りだしても変わらない。高速道路にて、後方を走るパンダ4×4は強い横風に若干苦戦しているようだったが、グランドチェロキー ラレードは、そんなさまつなことは問題にすらならないといった体で矢のように直進する。リミテッドではより上質なエアサスを採用しているらしいが、筆者としてはこの金属バネでも何ら不満はない。
白馬村の豪雪エリアでは最初のうちこそ2160kgという車両重量がもたらす慣性エネルギーにややとまどったが、慣れてしまえば、そしてセレクテレインを「SNOW」にしておけば、「クォドラトラックII」なる4WDシステムがいい仕事をしてくれる。いわゆる「急が付く操作」さえしなければ、仮にあなたが筆者のような竹レベルのドライバーであったとしても、特に不安なく走ることができるだろう。
アメリカの普通(というか正確には中の上か、もうちょっと上ぐらい?)は、非常にステキな「普通」であったのだ。
(文=伊達正行/写真=高橋信宏)
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テスト車のデータ
フィアット・パンダ4×4
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3685×1670×1615mm
ホイールベース:2300mm
車重:1130kg
駆動方式:4WD
エンジン:0.9リッター直2 SOHC 8バルブ ターボ
トランスミッション:6段MT
最高出力:85ps(63kW)/5500rpm ※ECOモード選択時:77ps(57kW)/5500rpm
最大トルク:14.8kgm(145Nm)/1900rpm
タイヤ:(前)175/65R15 84Q/(後)175/65R15 84Q(ピレリ・アイスアシンメトリコ)
燃費:15.5km/リッター(JC08モード)
価格:251万6400円/テスト車=259万8480円
オプション装備:なし ※以下、販売店オプション フロアマット(1万9440円)/純正ポータブルナビ(4万9680円)/フィアットオリジナルETC車載器(1万2960円)
テスト車の年式:2014年型
テスト開始時の走行距離:7318km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター
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ジープ・グランドチェロキー ラレード
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4835×1935×1825mm
ホイールベース:2915mm
車重:2160kg
駆動方式:4WD
エンジン:3.6リッターV6 DOHC 24バルブ
トランスミッション:8段AT
最高出力:286ps(210kW)/6350rpm
最大トルク:35.4kgm(347Nm)/4300rpm
タイヤ:(前)265/60R18 110Q/(後)265/60R18 110Q(グッドイヤー・ラングラーIP/N)
燃費:8.6km/リッター(JC08モード)
価格:461万1600円/テスト車=463万1040円
オプション装備:なし ※以下、販売店オプション フロアマット(1万9440円)
テスト車の年式:2014年型
テスト車の走行距離:1803km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター

谷津 正行
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