日産エクストレイル20Xハイブリッド“エマージェンシーブレーキ パッケージ”(4WD/CVT)/エクストレイル20X“エマージェンシーブレーキ パッケージ”(4WD/CVT)
オンでもオフでも優等生 2015.09.09 試乗記 日産を代表するSUV「エクストレイル」に試乗。新たにラインナップされたハイブリッドモデルの燃費性能と、これまで以上に磨き上げたとされる3代目のオフロード走破性を確かめた。いざ、ハイブリッドでエコラン競争
「エクストレイル ハイブリッドのエコラン競争に参加するんですが、ドライバーをお願いできますか?」
webCG編集部からの誘いに、いつもなら二つ返事で引き受ける私だが、「エコラン競争」という言葉に一瞬尻込みした。経費節減のこのご時世、日ごろからエコドライブを心がけてはいるものの、いざ燃費競争となるといつも散々な結果に終わるからだ。
電話口でしばらく黙り込む私に編集部のS君は、「ゴール後に、ガソリン車でオフロード走行もできますので、どうですか? それに、おいしいランチも待ってるみたいですよ!」と畳みかける。「もちろん行くけど、順位は期待しないでよ……」ということで交渉成立し、8月某日の朝、前出のS君とTカメラマン、そして私の3名からなるwebCGチームはスタート地点である日産グルーバル本社(神奈川県横浜市)に集結した。
地下駐車場で待ち構えていたのは、「エクストレイル20X ハイブリッド“エマージェンシーパッケージ”」(4WD)。参加車両はすべて「ブリリアントホワイトパール」のボディーカラーで見事に統一されていて、中身ばかりか見た目までもイコールコンディション化が図られていた。
上手なエコランの5カ条とは?
エクストレイルハイブリッドに搭載されるのは、147psを発生する2リッター直列4気筒直噴ガソリンエンジンとCVTに、1個のモーターと2個のクラッチを組み合わせた「インテリジェント デュアル クラッチ コントロール」システム。クラッチの操作により、エンジン走行、モーター走行(いわゆるEV走行)、エンジン+モーター走行を巧みに切り替える、日産独自のシステムだ。これにより、4WDのJC08モード燃費は、ガソリン車の16.0km/リッターに対し、ハイブリッド車は20.0km/リッターにアップしている。
エコラン競争では、日産グルーバル本社から山梨県河口湖町にある標高約1000mのキャンプ場まで約150kmの燃費を競う。ルートは自由ということだが、高速道路中心の移動になるはずだ。目標はカタログ燃費を超えることだが、そのためには、
1.発進から50km/hまでは意識してモーターで走る。
2.ふんわりブレーキを使い急ブレーキは避ける。停車時はブレーキをしっかり踏む。
3.坂の頂上手前からアクセルオフして、惰性で下る。
4.1200-2000rpmを意識して走る。
5.電池を“ためて→使う”を繰り返す。
……という走り方が効果的であると日産のスタッフが教えてくれた。「これならできそうだ」と思いながら、日産グルーバル本社をあとにするwebCGチームだったが……。
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
トップは19.4km/リッター
前述の“5カ条”に加えてとった作戦としては、2WD(FF)で走ることと、あまりスピードを上げすぎないことくらい。ルートはナビの指示通りで、エアコンもあえてオンのまま(!)である。
エコドライブをサポートする「ECOモード」をオンにしてスタート。モーターの力でスムーズに発進するのはエクストレイル ハイブリッドの醍醐味(だいごみ)だが、流れを乱さないように走ろうとすると、ついアクセルペダルに力が入り、エンジンがかかってしまうことも。こんなとき、他のハイブリッド車のように「EVモード」があると、少し楽かもしれない。一方で、走行中にアクセルペダルを緩めると頻繁にエンジンが停止し、緩い加速なら高速走行中でもモーターだけで済んでしまうことが多々あった。
モーターがエンジンをアシストする状況ならさらに力強い加速が手に入り、登り勾配を含めて常に余裕ある走りを楽しむことができた。クラッチのオン・オフにより自動的に走行モードが変わるのだが、その切り替えが実にスムーズなのも、このクルマの印象をよくしている。
肝心の平均燃費は、一般道中心の序盤こそ15km/リッターに届くか届かないくらいだったが、高速走行が進むにつれて19km/リッター台まで伸びていった。ところが、登り勾配が続く後半で16km/リッターにまで落ち、最終的には17.2km/リッターとカタログ燃費には及ばなかった。ちなみにこの日のトップは18km/リッター台をたたき出す一方、われわれwebCGチーム(といっても運転したのは私だけなのだが……)は、5台中5位、つまりビリ。後日、届いた集計結果でも、28チーム中22位という不名誉な結果である……トホホ。ちなみにトップは19.4km/リッター、全チームの平均燃費は17.8km/リッターだった。
オフロードでも安心できる
エコラン競争のあとは、舞台をオフロードコースに移し、ガソリンモデルのエクストレイルで4WDの走りをチェックした。エクストレイルにはガソリン、ハイブリッドともに同じ「ALL MODE 4×4-i」が搭載されている。ハイブリッドだからといって、前をエンジン、後ろをモーターで駆動するいわゆる「e-4WD」を採用しないのがエクストレイルのこだわりだ。
「AUTOモード」で走りだすと、オフロードでも平たんな場所なら前輪にほぼ100%近いトルクが配分される一方、急な登り勾配などでは自動的に後輪のトルク配分が増やされ、4輪がスリップすることなく、安定して長い坂を登り切ることができた。
坂の途中でクルマを止めても、ヒルスタートアシストが発進をサポートしてくれるし、反対に急な下り坂では、4WDを「LOCKモード」にしたうえで「アドバンスドヒルディセントコントロール」機能を使い、歩むような速さで坂を下りることができるから、冷や汗をかかずに済んだ。
オフロード試乗を終えたあとは、再びハイブリッド車で横浜の日産本社を目指す。往路とは違って特にエコランを意識せず、流れに任せてクルマを走らせたときの燃費は16.5km/リッター。ストレスのない走りを楽しんだことを思えば、なかなかの好燃費といえるだろう。往路が登り、復路が下りということを考えると、帰りもエコランをしていたらカタログ燃費は軽く超えていたに違いない。
そんなハイブリッド車が、実はエクストレイル人気に大きく貢献している。ハイブリッドが発表された4月から3カ月間の受注台数を見ると、ガソリンの1万480台に対してハイブリッドが1万804台。つまり、エクストレイルの2台に1台がハイブリッドということになる。「ノート」や「セレナ」とともに日産の国内販売を支えるエクストレイルにとって、このハイブリッドはまさに鬼に金棒! ハイブリッド車信奉が強い日本において、ガソリン車以上に力強い走りと低燃費を手に入れたエクストレイル ハイブリッドが日産の“顔”になる日は近い?
(文=生方 聡/写真=高橋信宏)
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
テスト車のデータ
日産エクストレイル20Xハイブリッド“エマージェンシーブレーキ パッケージ”
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4640×1820×1715mm
ホイールベース:2705mm
車重:1630kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:147ps(108kW)/6000rpm
エンジン最大トルク:21.1kgm(207Nm)/4400rpm
モーター最高出力:41ps(30kW)
モーター最大トルク:16.3kgm(160Nm)
タイヤ:(前)225/65R17 102H M+S/(後)225/65R17 102H M+S(ダンロップ・グラントレックST30)
燃費:20.0km/リッター(JC08モード)
価格:301万1040円/テスト車=359万2425円
オプション装備:ボディーカラー<ブリリアントホワイトパール スクラッチシールド>(4万3200円)/NissanConnectナビゲーションシステム+アラウンドビューモニター<MOD〔移動物検知〕機能付き>+インテリジェントパーキングアシスト+ステアリングスイッチ<オーディオ、ナビ、ハンズフリーフォン、クルーズコントロール>+BSW<後側方車両検知警報>+ふらつき警報+クルーズコントロール(32万7240円)/リモコンオートバックドア<ハンズフリー機能、挟み込み防止機構付き>(5万4000円)/ルーフレール(5万4000円) ※以下、販売店装着オプション LEDフォグランプ<アラウンドビューモニター装着車用>(6万9614円)/デュアルカーペット<消臭機能付きフロアカーペット+ラバーマット 2列車用>(3万3331円)
テスト車の年式:2015年型
テスト開始時の走行距離:4716km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
日産エクストレイル20X“エマージェンシーブレーキ パッケージ”(2列シート車)
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4640×1820×1715mm
ホイールベース:2705mm
車重:1500kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ
トランスミッション:CVT
最高出力:147ps(108kW)/6000rpm
最大トルク:21.1kgm(207Nm)/4400rpm
タイヤ:(前)225/65R17 102H/(後)225/65R17 102H(ヨコハマ・ジオランダーG91)
燃費:16.0km/リッター(JC08モード)
価格:259万9560円/テスト車=327万9331円
オプション装備:LEDヘッドランプ<ハイ/ロービーム、オートレベライザー付き、フレンドリーライティング作動付き、シグネチャーLEDポジションランプ付き>+フォグランプ<クロムメッキリング付き>(7万5600円)/NissanConnectナビゲーションシステム+アラウンドビューモニター<MOD〔移動物検知〕機能付き>+インテリジェントパーキングアシスト+ステアリングスイッチ<オーディオ、ナビ、ハンズフリーフォン、クルーズコントロール>+BSW<後側方車両検知警報>+ふらつき警報+クルーズコントロール(32万7240円)/SRSサイドエアバッグ<運転席・助手席>+SRSカーテンエアバッグ(7万5600円)+リモコンオートバックドア<ハンズフリー機能、挟み込み防止機構付き>(5万4000円)+ルーフレール(5万4000円) ※以下、販売店装着オプション スマートルームミラー(6万円)/デュアルカーペット<消臭機能付きフロアカーペット+ラバーマット 2列車用>(3万3331円)
テスト車の年式:2013年型
テスト車の走行距離:1万4476km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
-
スズキ・エブリイJリミテッド(MR/CVT)【試乗記】 2025.10.18 「スズキ・エブリイ」にアウトドアテイストをグッと高めた特別仕様車「Jリミテッド」が登場。ボディーカラーとデカールで“フツーの軽バン”ではないことは伝わると思うが、果たしてその内部はどうなっているのだろうか。400km余りをドライブした印象をお届けする。
-
ホンダN-ONE e:L(FWD)【試乗記】 2025.10.17 「N-VAN e:」に続き登場したホンダのフル電動軽自動車「N-ONE e:」。ガソリン車の「N-ONE」をベースにしつつも電気自動車ならではのクリーンなイメージを強調した内外装や、ライバルをしのぐ295kmの一充電走行距離が特徴だ。その走りやいかに。
-
スバル・ソルテラET-HS プロトタイプ(4WD)/ソルテラET-SS プロトタイプ(FWD)【試乗記】 2025.10.15 スバルとトヨタの協業によって生まれた電気自動車「ソルテラ」と「bZ4X」が、デビューから3年を機に大幅改良。スバル版であるソルテラに試乗し、パワーにドライバビリティー、快適性……と、全方位的に進化したという走りを確かめた。
-
トヨタ・スープラRZ(FR/6MT)【試乗記】 2025.10.14 2019年の熱狂がつい先日のことのようだが、5代目「トヨタ・スープラ」が間もなく生産終了を迎える。寂しさはあるものの、最後の最後まできっちり改良の手を入れ、“完成形”に仕上げて送り出すのが今のトヨタらしいところだ。「RZ」の6段MTモデルを試す。
-
BMW R1300GS(6MT)/F900GS(6MT)【試乗記】 2025.10.13 BMWが擁するビッグオフローダー「R1300GS」と「F900GS」に、本領であるオフロードコースで試乗。豪快なジャンプを繰り返し、テールスライドで土ぼこりを巻き上げ、大型アドベンチャーバイクのパイオニアである、BMWの本気に感じ入った。
-
NEW
トヨタ・カローラ クロスGRスポーツ(4WD/CVT)【試乗記】
2025.10.21試乗記「トヨタ・カローラ クロス」のマイナーチェンジに合わせて追加設定された、初のスポーティーグレード「GRスポーツ」に試乗。排気量をアップしたハイブリッドパワートレインや強化されたボディー、そして専用セッティングのリアサスが織りなす走りの印象を報告する。 -
NEW
SUVやミニバンに備わるリアワイパーがセダンに少ないのはなぜ?
2025.10.21あの多田哲哉のクルマQ&ASUVやミニバンではリアウィンドウにワイパーが装着されているのが一般的なのに、セダンでの装着例は非常に少ない。その理由は? トヨタでさまざまな車両を開発してきた多田哲哉さんに聞いた。 -
2025-2026 Winter webCGタイヤセレクション
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>2025-2026 Winterシーズンに注目のタイヤをwebCGが独自にリポート。一年を通して履き替えいらずのオールシーズンタイヤか、それともスノー/アイス性能に磨きをかけ、より進化したスタッドレスタイヤか。最新ラインナップを詳しく紹介する。 -
進化したオールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2」の走りを体感
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>欧州・北米に続き、ネクセンの最新オールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2(エヌブルー4シーズン2)」が日本にも上陸。進化したその性能は、いかなるものなのか。「ルノー・カングー」に装着したオーナーのロングドライブに同行し、リアルな評価を聞いた。 -
ウインターライフが変わる・広がる ダンロップ「シンクロウェザー」の真価
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>あらゆる路面にシンクロし、四季を通して高い性能を発揮する、ダンロップのオールシーズンタイヤ「シンクロウェザー」。そのウインター性能はどれほどのものか? 横浜、河口湖、八ヶ岳の3拠点生活を送る自動車ヘビーユーザーが、冬の八ヶ岳でその真価に触れた。 -
第321回:私の名前を覚えていますか
2025.10.20カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。24年ぶりに復活したホンダの新型「プレリュード」がリバイバルヒットを飛ばすなか、その陰でひっそりと消えていく2ドアクーペがある。今回はスペシャリティークーペについて、カーマニア的に考察した。