ダイハツ・キャスト スタイルX“SA II”(FF/CVT)
さらりとした個性派 2015.11.13 試乗記 3つの顔を持つ軽自動車「ダイハツ・キャスト」。その中から、スタイリッシュなテイストが持ち味のバリエーション「スタイル」に試乗した。“都会派軽”の走りやいかに?びっくりするほどそつなく走る
もう何度もそのことを経験し、理解しているつもりなのだが、心の奥底にそんなはずないという決めつけが残っているのか、最新の自然吸気エンジンを搭載した軽乗用車に乗ると、高速道路であっても不足なく走るのにびっくりする。リッターカー並みの最大トルクをもつターボエンジン搭載車ならまだわかる。だが、自然吸気の660cc 3気筒エンジン搭載車のことだ。それなのに100km/h+αの速度で無理なく巡航することができ、車内に入ってくる音も発する振動も不快なほどではない。
積極的に高速道路を使おうとは思わないが、何かの拍子に使うことになってもそつなくこなす。ほとんど街乗り、たまに高速道路といった、一家の2台目、3台目としての使われ方をした場合に真価を発揮するようにできている。
今回はダイハツの新しい軽自動車のキャストに乗ってそう感じた。連れ立って走らせたCセグハッチに遅れることなく、きびきび走らせることができたのだ。キャストは「アクティバ」「スタイル」「スポーツ」という3つのモデルに分かれており、われわれがテストしたのはスタイル。アクティバがSUV風、スポーツが文字通りスポーティーな見た目なのに対し、スタイルは言ってみれば上品な仕上げ。
軽乗用車の場合、ひとつのモデルにおとなしい方とアグレッシブな方のふたつの顔つきを与えるケースが多いが、キャストは3モデル。そういえば、「コペン」も基本路線の「ローブ」、アバンギャルドな「エクスプレイ」、レトロな「セロ」と、3モデルが用意される。3つ出すのがダイハツの軽のパターンとなるのだろうか。
つくりのいいインテリア
ダイハツの軽乗用車は、5ドアハッチバックの「ミラ」、ハイトワゴンの「ムーヴ」、スーパーハイトワゴンの「タント」の3本柱で構成される。ミラはスズキでいえば「アルト」であり、ホンダでいえば「N-ONE」、ムーヴは「ワゴンR」であり「N-WGN」、タントは「スペーシア」であり「N-BOX」というふうに、主要な軽メーカーはこの3本柱を構成していて、各社それぞれにその派生車種がいくつかあり、また「コペン」「ジムニー」「S660」などのスペシャルなモデルがある。
キャストは柱と柱を埋める派生車種であり、スズキでいう「ハスラー」のポジションに相当する。ハスラーが大ヒットし、柱のモデルを喰(く)ってしまうほどに売れている様子を見て、キャストの開発陣は「うちもあれくらいヒットさせるぞ!」と息巻いて作業していたに違いない。
テスト車はライトローズマイカメタリックというボディーカラーで、ルーフには「デザインフィルムトップ」が装着されていた。早い話がルーフだけ白いツートンカラー仕様だ。ベージュのファブリックシートのおかげでインテリアは明るい印象。ダイハツの軽乗用車のインテリアは高品質だと評判だが、キャストのインテリアもその評判通り。樹脂パーツのつくりこみが丁寧で、各種スイッチを操作した際の感触も心地よい。ドア内張りの一部にシルバーの部分があるのだが、この部分が柔らかく、気持ち良いので何度も触った。
街乗りで快適
乗り込んで、エンジンをかけ、走らせて感じたのが冒頭の印象。小さな排気量の自然吸気エンジンだから発するトルクは限られ、1万rpm以上回るわけでもないからパワーも限られているはず。にもかかわらず決定的なパワー不足を感じさせないのは、ワイドな変速比のCVTのおかげなのだろう。ただし、常にエンジンの力を出しきっているためか、ステアリングホイールにある「パワー」スイッチは、押しても大して変わらなかった。
乗り心地もダイハツの軽乗用車が得意とするところ。ムーブやタントで感じられたボディーの剛性感の高さはこのクルマでも健在。そのうえで足まわりはソフトにセッティングされており、シートのクッションも適度にソフトで、街乗りでの快適性は高い。ハンドリングは決してスポーティーというわけではないが、正確。
オーナーが何度使うかわからないが、停車時に左右のフロントシートを前へスライドさせ、ヘッドレストを外し、思い切りリクライニングさせると、一番後ろまでスライドさせたリアシート座面とツライチとなって、思い切り足を伸ばして座ることができる状態にできる。凹凸は残るが簡易ベッドとしても使える。いっぽうでリアシートバックを左右両方、あるいはどちらかを倒すことで広大なラゲッジスペースをつくりだすこともできる。リアシートを後ろまでスライドさせた状態だとラゲッジスペースはほとんどなくなるが、ラゲッジフロアをめくると深いサブトランクが出てくるなど、少しでもスペースをつくりだそうという努力が見られる。
薦めやすいクルマ
最新版の「スマートアシストII」が一番廉価なグレードを除く全グレードに標準装備される。従来の「I」がレーザーとソナーで周囲の対象物を検知していたのに対し、「II」はそれらに単眼カメラが加えられ、対象物をより早く(遠くから)検知できるようになり、アシストが作動するスピードの範囲が広がったほか、歩行者も検知できるようになった。今や軽自動車にも衝突軽減ブレーキをはじめとする先進的な安全技術の装備が当たり前となりつつある。これらは初心者や高齢者に使われる比率が高い軽自動車にこそ必要な装備。こういう競争はどんどんやってもらいたい。
古今東西のいろんなクルマからモチーフを拝借してきたような外観デザインは好きになれないし、このクルマが何かを訴えかけてくるわけでもなかったが、機能的には文句のつけようがない。「娘が免許を取ってキャストを買ってとせがむんだけどどう?」と尋ねられた時に「いいんじゃないですか」と答えやすいクルマではある。その言い方は多少棒読みっぽくなってしまうが。
(文=塩見 智/写真=高橋信宏)
テスト車のデータ
ダイハツ・キャスト スタイルX“SA II”
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3395×1475×1600mm
ホイールベース:2455mm
車重:840kg
駆動方式:FF
エンジン:0.66リッター直3 DOHC 12バルブ
トランスミッション:CVT
最高出力:52ps(38kW)/6800rpm
最大トルク:6.1kgm(60Nm)/5200rpm
タイヤ:(前)165/55R15 75V/(後)165/55R15 75V(ダンロップ・エナセーブEC300+)
燃費:30.0km/リッター(JC08モード)
価格:128万5200円/テスト車=148万1393円
オプション装備:ライトローズマイカメタリック+デザインフィルムトップ(4万3200円)/スマートフォン連携メモリーナビゲーションシステム(9万7200円)/ドライビングサポートパック(1万2960円) ※以下、販売店オプション ETC車載器(1万7280円)/カーペットマット<高機能タイプ/ダークベージュ>(2万5553円)
テスト車の年式:2015年型
テスト開始時の走行距離:1430km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:190.6km
使用燃料:10.3リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:18.5km/リッター(満タン法)/17.9km/リッター(車載燃費計計測値)
拡大 |

塩見 智
-
BYDシールAWD(4WD)【試乗記】 2026.1.17 BYDのBEVサルーン「シール」の機能アップデートモデルが登場。強化のポイント自体はそれほど多くないが、4WDモデルの「シールAWD」は新たに電子制御式の可変ダンパーを装備したというから見逃せない。さまざまなシーンでの乗り心地をチェックした。
-
マツダCX-60 XDドライブエディション ナッパレザーパッケージ(4WD/8AT)【試乗記】 2026.1.14 「マツダCX-60」に新グレードの「XDドライブエディション ナッパレザーパッケージ」が登場。スポーティーさと力強さ、上質さを追求したというその中身を精査するとともに、国内デビューから3年を経た“ラージ商品群第1弾”の成熟度をチェックした。
-
カワサキKLX230シェルパS(6MT)【レビュー】 2026.1.13 その出来には“セロー乗り”も太鼓判!? カワサキのトレイルバイク「KLX230シェルパ」に、ローダウン仕様の「シェルパS」が登場。安心の足つき性で間口を広げた一台だが、実際に走らせてみると、ストリートでも楽しめるオールラウンダーに仕上がっていた。
-
メルセデス・ベンツC220dラグジュアリー(FR/9AT)【試乗記】 2026.1.12 輸入車における定番の人気モデル「メルセデス・ベンツCクラス」。モデルライフ中にも年次改良で進化し続けるこのクルマの、現在の実力はいかほどか? ディーゼルエンジンと充実装備が魅力のグレード「C220dラグジュアリー」で確かめた。
-
日産ルークス ハイウェイスターGターボ プロパイロットエディション(FF/CVT)【試乗記】 2026.1.10 日産の軽スーパーハイトワゴン「ルークス」がフルモデルチェンジ。「見えない危険が……」のテレビCMでお茶の間をにぎわせているが、走る、曲がる、止まるをはじめとしたクルマ全体としての仕上がりはどうか。最上級グレードをテストした。
-
NEW
ベントレー・コンチネンタルGTアズール(4WD/8AT)【試乗記】
2026.1.19試乗記ベントレーのラグジュアリークーペ「コンチネンタルGT」のなかでも、ウェルビーイングにこだわったという「アズール」に試乗。控えめ(?)な680PSのハイブリッドがかなえる走りは、快適で満ち足りていて、ラグジュアリーカーの本分を感じさせるものだった。 -
NEW
第327回:髪もクルマもナイスファイト!
2026.1.19カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。日産の新型「ルークス」で夜の首都高に出撃した。しっかりしたシャシーとターボエンジンのパワフルな走りに感心していると、前方にスーパーカーの姿を発見。今夜の獲物は「フェラーリ・ローマ」だ! -
NEW
日本で売れるクルマはあるのか!? 最新の“アメリカ産ニホンシャ”を清水草一が検証する!
2026.1.19デイリーコラムアメリカからの外圧による制度変更で、北米生産モデルの国内導入を決めたトヨタ。同様に、今後日本での販売が期待できる「海外生産の日本車」には、どんなものがあるだろうか? 清水草一が検証してみた。 -
フェラーリ12チリンドリ(後編)
2026.1.18思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が「フェラーリ12チリンドリ」に試乗。前編では伝家の宝刀であるV12エンジンを絶賛した山野。後編ではコンビを組むシャシーの印象を余すところなく聞いてみた。 -
BYDシールAWD(4WD)【試乗記】
2026.1.17試乗記BYDのBEVサルーン「シール」の機能アップデートモデルが登場。強化のポイント自体はそれほど多くないが、4WDモデルの「シールAWD」は新たに電子制御式の可変ダンパーを装備したというから見逃せない。さまざまなシーンでの乗り心地をチェックした。 -
新生ノートンがいよいよ始動! 名門の復活を担う次世代モーターサイクルの姿に迫る
2026.1.16デイリーコラム英国のモーターサイクル史にあまたの逸話を残してきた名門、ノートンが、いよいよ再始動! その数奇な歴史を振り返るとともに、ミラノで発表された4台の次世代モデルを通して、彼らが思い描く未来像に迫った。




































