第344回:グリップとコントロール性の高次元な両立
ピレリの最新タイヤ「P ZERO」と「DRAGON SPORT」を試す
2016.05.18
エディターから一言
拡大 |
ピレリのフラッグシップタイヤ「P ZERO(ピーゼロ)」が新世代に移行した。同社の新しいスポーティータイヤ「DRAGON SPORT(ドラゴンスポーツ)」とともに、上海国際サーキットでその実力を試した。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
3種類のP ZEROを設定
ピレリが2種の新型タイヤを発表した。フラッグシップスポーツ、P ZEROの新世代モデルと、スポーティータイヤのDRAGON SPORTだ。
P ZEROは長い歴史を誇るピレリの代表作。1987年に「フェラーリF40」の純正タイヤとして初代がデビューした。2000年には第2世代の「P ZERO ROSSO(ピーゼロロッソ)」へ進化。2007年の第3世代P ZEROを経て、今回の新型は第4世代モデルに該当する。
初代P ZERO当時、求められる性能はドライ&ウエットハンドリングとサーキットのラップタイム程度だった。しかしその後、スポーツカーの進化に合わせて、ハイドロプレーニング、摩耗、快適性、長期性能安定性などのニーズが加わっていった。新型ではもちろんそれらを向上させ、さらなる重点課題としてウエットブレーキと転がり抵抗のハイレベルな両立、および軽量化、そして低ノイズ化を挙げている。
ピレリは以前から販売の伸び率の高い超高性能タイヤに力を注ぐことを宣言している。その中心的存在であるのが新型P ZEROだ。今回はスポーツカー用、サルーン用、スーパーカー用の3種類を用意して対応力を強化した。全てP ZEROの伝統である非対称デザインを採用。ベースとなるスポーツカー用は4本の縦溝を基調にアウト側に高剛性ブロックを配置。サルーン用はブロックピッチを細かく刻み、横溝を貫通させず静粛性を引き上げた。スーパーカー用は「P ZERO CORSA(ピーゼロコルサ)」の後継という位置づけで、縦溝を3本に減らしてセミスリック化し、グリップを徹底追及している。
発表時のラインナップは3種の合計で、18~22インチ、全77サイズの設定。2016年の国内販売は60サイズを予定する。
すでに60もの純正承認を獲得
新型はランフラットやシールインサイド、PNCS(ピレリ・ノイズ・キャンセリング・システム)といった新技術を搭載したサイズもある。ピレリはこれらを「アプリを内包したタイヤ」と表現した。PNCSはタイヤの空洞共鳴音を抑制する技術で、ウレタン材を8個、インナーライナーに貼付。タイヤが太鼓のように足まわりと共鳴して“コーン”と発する安っぽい音を低減する。カーメーカーの要求に応じて搭載する方針で、現状ではマクラーレン、アウディ、ボルボの承認タイヤに採用した。
3種のデザインとアプリ(オプション)を駆使した新型は、発表時点でカーメーカーの純正承認を60も獲得済みという。その例を挙げれば、「フェラーリ488GTB」「F12TDF」「GTC4ルッソ」、「ランボルギーニ・ウラカン」「アヴェンタドール」、「ジャガーXF」「Fタイプ SVR」、「マクラーレン540C」「570S」、「ポルシェ・ボクスター」「ケイマン」「パナメーラ」、「メルセデス・ベンツEクラス」、「BMW 7シリーズ」「X1」、「アウディR8」「S6」「A6」「RS 3」「A3」、「フォルクスワーゲン・ゴルフR」「シロッコR」、「ボルボS90」「V90」などの承認をすでに獲得。例えばマクラーレンでは540Cはスポーツカー用、570Sはスーパーカー用と使い分ける。
P ZEROは初代から欧州のカーメーカーと歩調を合わせて共同開発を実施してきたが、発表時点で60もの承認を得たタイヤは前代未聞だ。ちなみにピレリは現在700以上の承認タイヤを製造、販売しており、その数はライバルに比べてダントツに多い。
さらに重要なのは、これら承認タイヤがリプレイス市場でも手に入る点だ。カーディーラーかピレリショップで注文すれば、承認マークを刻印した新車と同じ性能のタイヤが購入できることを覚えておいてほしい。ピレリの調査によると、承認タイヤを知っているユーザーは、欧州でも16%にすぎないという。日本ではどのくらいだろうか。
グリップの高さは想像以上
新型P ZEROのアジア向け試乗会は、F1第3戦中国グランプリ直後の上海国際サーキットで開催された。雨が降り出し、油が浮き出したスリッピーな路面で最初に試乗したのはランボルギーニ・ウラカン。タイヤも慣らしをしていない新品の新型P ZERO。極めて滑りやすい状態でのスタートだった。
ピレリは以前から限界コントロール性を最重視する設計コンセプトで、あえてピークグリップを目指すことがなかったように思う。しかし新型P ZEROのグリップは高い(もちろん最初の走り始めを除いて)。雨が降り続き、路面の油や埃(ほこり)が一掃された状況でのウエットグリップは想像以上だった。とくにブレーキング&トラクション性能は強力。耐ハイドロプレーニング性も優秀で、水深がありそうな場所でも幅広いタイヤが浮き上がらず、ロードホールディング性は高い。
他にも「アウディR8」「ポルシェ911」「メルセデスAMG GT」で試乗した。F1ビードと名付けられた、ビード(ホイールと接する部分)の裏側に高剛性ゴムを採用した新構造が効果を発揮しているのかもしれない。横剛性がしっかり確保されており、不自然な変形がないので安心して荷重をかけられる。コーナー進入時は弱アンダーステアからブレーキングでニュートラルステアに移行。クリッピングポイントを過ぎて加速するとリアが滑り出すが、しっかりトラクションがかかりコーナリングしやすいように少しずつスライドするので、アクセルコントロールが楽しめる。グリップのピークがなだらかでピレリらしい特性だ。ゆっくりタイヤの感触を楽しむ余裕がある。
ウラカンとR8は純正承認タイヤで、ストローク感があって足まわりとのマッチングがとくに素晴らしかった。ドライ性能や静粛性は今回判断できないが、おそらく乗り心地はそれなりにいいのではないかと思う。
気楽にドライブできるDRAGON SPORT
もうひとつの新型DRAGON SPORTは、アジアパシフィック地域がターゲットのスポーティータイヤ。17~20インチ、全16サイズを用意する。高いグリップ性能と快適性を兼ね備えたヤングユーザー向けの新作だ。
パターンデザインは新開発の非対称タイプ。4本の縦溝を基調に、比較的太い横溝をしっかり刻んだ。雨の日の安全性を重視したコンセプトが把握できる。アウト側ショルダー部は周方向に連結し、ドライグリップ向上とノイズ低減を図った。溝のピッチが細かく、ブロックが小さい。サイドやショルダーも比較的丸く、快適性が目立ちそうだ。
このDRAGON SPORTは上海国際サーキットのほか、日本国内の高速道路でも試乗した。まず、ターゲット車種である「トヨタ・マークX」「アウディA3」「フォルクスワーゲン・シロッコ」「フォード・フォーカス」で限界域を試す。雨が降っていて路面はウエット。それでもグリップは高く粘りがある。剛性はさほど高めていないが、手応えはしっかりしており、横方向の変形が小さいためハンドリングはなかなかスポーティーに感じる。
コンフォート系のタイヤで高速スラロームを行うと、必ずリアが耐え切れず滑り出してスピンに陥るが、DRAGON SPORTはリアが粘り強く滑らず、スピンに陥りにくい。高速コーナリング中のタックインも小さい。
日本の高速道路では「ホンダ・オデッセイ アブソルート」に装着して試乗した。サイズは225/45R18。低偏平サイズでもソフトでしなやかな感触が心地よい。高速道路ではシャープすぎず直進安定性が良好だ。操舵(そうだ)時のレスポンスはマイルドだが挙動遅れが気になるほどではない。気楽にドライブできるタイヤといえる。
車重によってハッチバックだとスポーティー、ミニバンではソフト、セダンならその中間という印象を受ける。雨の日の安全性を重視したスポーティーコンフォートとして、インチアップやドレスアップにマッチしそうだ。
(文=竹内龍男/写真=ピレリ ジャパン)

竹内 龍男
-
第876回:“ヨコハマ史上最高”が目白押し SUV向けスタッドレスタイヤの新製品「アイスガード8 SUV」を試す 2026.10.2 2026年9月1日に販売が開始された横浜ゴムのSUV用スタッドレスタイヤ「アイスガード8 SUV」。従来製品との比較で氷上性能を14%、雪上性能を4%、耐摩耗性能を11%アップさせたというその実力を、一足先に冬のテストコースで確かめた。
-
第875回:キモは氷上性能! ダンロップの新しいスタッドレスタイヤ「ウインターマックス アイスプロ」を試す 2026.7.1 違いは氷の上で表れる! ダンロップの新しいスタッドレスタイヤ「WINTER MAXX ICE-Pro(ウインターマックス アイスプロ)」に、冬の北海道で試乗。氷上性能を徹底的に追求したという新製品の、パフォーマンスの一端に触れた。
-
第874回:自動運転からワイパーまで! 自動車を支えるメガサプライヤー ボッシュのあくなき挑戦 2026.6.27 世界屈指のメガサプライヤー、ボッシュが開発中の新技術を披露! 市街地での高度な運転支援技術に、日本の方言にも対応した対話型AI、サーキット走行のノウハウを教えてくれるコーチング機能等々……興味深いその中身をリポートする。
-
第873回:ウエット路面に強み ミシュランの新タイヤ「パイロットスポーツ5エナジー」と「プライマシー5エナジー」を試す 2026.6.19 2026年1月29日に導入が発表されたミシュランの新製品「パイロットスポーツ5エナジー」と「プライマシー5エナジー」。これまでの特徴に加え、低燃費性能や耐摩耗性、ウエットグリップ性能のアップをうたう両モデルの走りを、クローズドコースで確かめた。
-
第872回:「フォレスター」がJNCAPで最高評価を獲得! “安全”に対するスバルの不断の取り組みに迫る 2026.6.6 相対速度100km/hの衝突後でも、普通にドアが開く!? 人気のSUV「スバル・フォレスター」が、日本の自動車アセスメントで最高評価を獲得した。安全なクルマづくりを第一とするスバルの取り組みを、群馬製作所で行われた衝突試験デモの様子とともにリポートする。
-
NEW
あの多田哲哉の自動車放談――ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション
2026.10.9webCG Moviesホンダを代表するSUV「CR-V」に、トヨタでさまざまなクルマを開発してきたエンジニア、多田哲哉さんが試乗。その仕上がりにどんなことを思ったのか、動画でリポートします。 -
パナソニックが市販カーナビを終売! 巨人の撤退からカーエレクトロニクスの変化を読み解く
2026.10.9デイリーコラムパナソニックが、市販市場向けカーナビゲーション、ドライブレコーダー、リアビューカメラの終売を発表! カーエレクトロニクス界の巨人は、なぜ市場からの撤退を選んだのか? 変化し続けるマーケットの在りようを振り返り、車載機器の未来を考察した。 -
フェラーリ・プロサングエ ハンドリング スペチアーレ仕様(4WD/8AT)【海外試乗記】
2026.10.8試乗記フェラーリの4ドア4シーターモデル「プロサングエ」に、「ハンドリング スペチアーレ」を名乗るスペシャルバージョンが登場。その走りは従来モデルからどのように変わったのか? 跳ね馬の原産国、イタリアで確かめた。 -
「アプライドD」で何が変わった? スバルの「インプレッサ」と「クロストレック」の進化を探る
2026.10.8デイリーコラムスバルが「インプレッサ」と「クロストレック」の改良モデル「アプライドD」を発表した。モデルライフの折り返し地点となる今回の改良では、ラインナップの刷新がトピック。その内容とスバルの狙いを、スバリスト玉川ニコ氏が解説する。 -
“クルマづくりのプロ”の話をライブで配信! 「あの多田哲哉のクルマQ&A」公開収録のお知らせ
2026.10.7From Our Staff元トヨタの多田哲哉さんが、自動車に関するさまざまな疑問・質問に答える「あの多田哲哉のクルマQ&A」。その話がライブで聞けて質問もできる公開収録を、10月15日(木)の夜、19時半から実施します。 -
咆哮なき電気自動車「ジャガーTYPE 01(タイプ01)」に“ジャガーの魂”は宿るのか?
2026.10.7デイリーコラムいよいよ正式デビューを飾った、新生ジャガーのラグジュアリー4ドアGT「TYPE 01(タイプ01)」。いったいどんなクルマなのか、従来のファンも納得できる“ジャガーらしさ”はあるのか? 先行チェックした西川 淳がリポートする。