第26回:次世代欧州コンパクト来た~っ!
“ボルボ新プレミアムスニーカー”作戦を暴く
2016.05.24
小沢コージの勢いまかせ!! リターンズ
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ドイツ勢に宣戦布告? ボルボが新しいデザインとプラットフォームからなる、新世代のコンパクトカー戦略を発表。会場に展示されたコンセプトカーとプラダの高級スニーカーを前に、小沢コージが感じたこととは?
ボルボ新プレミアム戦略第2の矢とは?
まさかこういう戦略で来るとはね。やられましたよ、トーマス・インゲンラートさん。
先日上陸した2代目「XC90」で、かつてないプレミアム路線にスイッチした新世代ボルボ。小沢的には“北欧のレンジローバー”とも言いたくなる、スカンジナビアンかつロイヤルムードプンプンの味わいが面白く、ソイツが予想以上に日本でも受け入れられて現在受注500台突破と、まずは大成功! ただ、本当の勝負はこれからというか、「ゴルフ」クラスでありコンパクト。「V40」「XC40」あたりの普及クラスだろうと小沢は想定していました。
というのも800万円前後の「90シリーズ」なら、SPAってお金をかけた新型プラットフォームを楽勝で使え、電池をふんだんに使った1000万円オーバーのプラグインハイブリッドも作れるじゃないですか。
しかし下のクラスはそれほど素材費も手間ヒマもかけられないし、出るって話の新世代コンパクトプラットフォーム「CMA」はなにがミソなのかなと思ってたわけです。
で、先日スウェーデンはイエテボリの発表会に行ってビックリ。CMAもユニークだけど、それ以上にデザイン戦略が大胆だったのだ。言うなれば変幻自在のボルボ“新プレミアムスニーカー作戦”。一部独自解釈なので、デザイン部門トップのトーマスさんには「分かってない!」って怒られちゃうかもしれないけどね(苦笑)。
大胆、ドイツプレミアムへの挑戦状!
「これは(普通の)スニーカーではありません」と言いつつ、オシャレな白い厚底シューズをつかんだトーマスさん。プラダのプレミアムスニーカーでこれが今回の新世代「40シリーズ」の象徴だが、その直前のプレゼンテーションが面白かった。
ベールをかぶった、来年出るであろうXC40&V40のコンセプトカーの前で、大・中・小の同じデザインの黒革靴を並べたトーマスさんは「こんなつまらないプレミアムにはなりたくありません」と言い放った。これらが既存ドイツプレミアムブランドを指したのは間違いなく、その疑問はクルマ好きなら誰でも感じてたこと。つまり「サイズが変わっただけでまったく同じじゃん!」と言いたくなる今のデザイン戦略に対する強烈なアンチテーゼだ。
さらに新たにエナメルの黒、バックスキンの茶の革靴と、真っ白なスニーカーを並べて彼は一席ぶった。
「この靴(黒)にスーツは合いますが、ジーンズをはくと変に見えます。そして茶色はスーツとジーンズの両方に似合いますし、白はもちろんジーンズにぴったりです」と。
黒が新型90シリーズとするなら、茶が今後出る新型「60シリーズ」、白い厚底が新型40シリーズを指すのは間違いなく、こんな具合にサイズによってデザインを変えることを示唆したわけ。
「私たちはプレミアムしか売りません。ただ“その客”のためのプレミアムを作ります」。いわば新世代40シリーズは、客層に寄りそった白いプラダのプレミアムスニーカーのような存在でありデザインになるというわけだ。小さくとも退屈はさせないというわけだ。
「V」と「XC」とでデザインが違う
果たしてベールを脱いだ「40.1」「40.2」のデザインが面白い。確かに新型XC90の単なる縮小版じゃない。縦格子グリルや横TのハンマーLEDライトは同じで、矢印方向とスラッシュ角が合致した新エンブレムは同じだけど、サイドラインやフォルムがまったく違う。
まずXC40となるであろう40.1はアグレッシブで、ボンネット左右が「スプーンでえぐった」(トーマスさん)ように激しくえぐられているし、40.2にしろ、これってホントにワゴン? というハッチバックのようなセダンのようなデザイン。リアのドアハンドルは「アルファ147」同様にドア枠埋め込み式の隠しデザインだし、ルーフ形状も特徴的。40.1については「将来、『イヴォーク』みたいにオープンが出るんじゃ?」と予想した人もいる。
ここにも新たな挑戦があって、同じ40シリーズでもXC用とV用ではデザインが大きく違っていて、どちらも「父親が乗ってたクルマのチープな縮小版」ではなく、「セダンだワゴンだクーペだでくくれないもの」を目指している。プレゼン中は盛んに過去のデザインを「退屈」と揶揄(やゆ)し、やたら挑戦的。実際、狙っているのは“ジェネレーションX”だし、ボルボコンパクトとして今回初めて全米を含むグローバルマーケットに打って出るのだ。
来るべき“電気の時代”にも対応
一方、中身のCMAだけど2013年に親会社の吉利汽車と作ったスウェーデンのCEVT(チャイナ・ユーロ・ビークル・テクノロジー)で開発中。SPAと違って吉利と共有するコンパクトプラットフォームで、今回明かされた中でいうとパワートレインは新世代のモジュラーエンジン「DRIVE-E」の3気筒版。まずは1気筒500ccのガソリン直3ターボとプラグインハイブリッドの2タイプが作られ、ハイブリッドはディーゼル並みの熱効率になるらしく、とりあえずディーゼルは作られない。
ギアボックスはCEVT開発の7段DCTで、ざっくり言ってホンダの「フィット」用と似たようなシクミ。ここでスペースと効率を稼ぐのだ。
ボディーは高張力鋼板が多用されるが比率は分からず、とにかく軽さと効率と高い安全性がキモ。もちろん「新シティセーフティ」や「ランオフロードプロテクション」などのハイテク安全デバイスが、ふんだんに搭載される予定だ。
プラットフォームの担当エンジニアによると、将来を見据えたスケーラビリティーとフレキシビリティーが一番の自慢だそうで、電動化にも対応。電池やモーターの搭載スペースは最初から考慮されている。そして「世界で最もビューティフルー&セーフティなプレミアムを目指す」のだそうだ。
しかし小沢的には、真っ白なプレミアムスニーカー作戦! と言った方が分かりやすい。確かに、今の各社のプレミアム戦略は統一感を主眼に置きすぎ、退屈さは否めないしね。ってなわけで来年後半には出るかもしれないボルボの新プレミアムコンパクト。BMW、メルセデスもビビる出来だとホントに面白くなるんですけどねぇ。
(文と写真=小沢コージ)

小沢 コージ
神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』
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