第49回:国交省を再直撃! 結局なにが問題なのか? トヨタは悪くない……は本当なのか?
2024.06.17 小沢コージの勢いまかせ!! リターンズ実は問題ないんじゃないのか?
いやはやまたまたトンでもないことが起こってしまいました。そう、トヨタ、ホンダ、マツダ、スズキ、ヤマハの日本が誇る四輪・二輪メーカー5社のまとめて認証不正発覚問題です。
6月3日に連続でトップ会見が行われ、以降は報道の嵐なので知らない方はいないはずですが、きっかけは間違いなく2023年12月20日のダイハツ大規模認証不正。
その後、国交省から日本のメーカー&サプライヤーに通達が出て、それを受けて発覚したわけで、しかもほぼダイハツの出荷再開が始まったタイミングでの再発。それもあのトヨタまで含むという。
小沢的にはマ、マジですかという感じで、クルマ好きはもちろんモノづくり大国を自負するニッポン人がガックリすることは想像に難くないわけですが、一番気になるのはトヨタの豊田章男会長の例の会見です。不正は認めつつも「規定より厳しい条件で試験を行った」と発言。これが本当なら実は問題ないんじゃないの? と思っちゃうのがクルマ好きのサガ。
ってなわけで不躾(ぶしつけ)小沢、前回に続き再び国交省を直撃してみましたっ。
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より厳しい試験をしたのになぜ認められないのか?
国交省:プルルルル、ガチャ……はい、審査・リコール課です。
小沢:自動車ジャーナリストの小沢コージと申しますが、前回のダイハツ認証問題に引き続き今回もお話を伺いたく。
国交省:はい。
小沢:率直に言わせていただくとですね、ついに起こっちゃいましたね、という感じで。そもそも今回はなにがどう行われたのですか?
国交省:今回の事態はダイハツ工業やトヨタ自動織機の不正事案を踏まえ、その他のメーカー・サプライヤー全85社に国土交通省から「実態を調べて報告してください」と通達して返ってきた結果です。出てきちゃいましたね……といえばそうなんですけど。
小沢:率直に言って一番気になるのはトヨタの対応というか豊田章男会長の会見で、該当する不正の6件中5件はテスト条件を過剰に厳しくやった結果だと。「開発データをそのまま認証データとして出してしまった」ということですが、僕らはアレを聞くと「課題をオーバー気味にやって試験をクリアしたのならいいんじゃないのか」と。「トヨタは本当は悪くないんじゃないか」と思ってしまうわけです。実際、あれはなにが問題なんですか?
国交省:型式指定、型式申請では、規定の基準に適合しているかを確認します。基準というのは今や国連の基準そのもので、乗用車に関してはほとんど国内基準と調和してまして、細かい試験方法とか試験の条件も決まっていますので、当然それに従ったカタチで試験した結果で判断しなければいけない。
小沢:一部で言われているように、日本だけが海外と違う「ガラパゴスな厳しい認証規定を守っている」わけではないと。特に欧州とはほとんど同じ規定を使っているとか。
国交省:そうです。今回のトヨタの場合は、とある衝突試験でより重い台車をぶつけた……とご説明されてますけど、結局、本来1100kg(の台車)をぶつけるところで1800kg(の台車)をぶつけたとして、規定より重いからといって一概に安全性がより高いかって、それは技術的に見てみないといけない。各メーカーさんが開発段階でよりいいクルマをつくろうとして、基準より厳しい条件でやる。それ自体はいいと思うのですが、それと型式試験を国際基準と違う条件でやって「合格した」とウソをつくのとは違います。
小沢:1100kgの台車をぶつけるべき試験で1800kgの台車をぶつけ、そのデータを1100kgの台車でやったことにして出してたんですね。
国交省:そうです。
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重さが違えば「違う試験」
小沢:でもそれって単なるコミュニケーション不足の問題じゃないんですか。以前、国交省さんにダイハツの不正について聞いたときに、クルマにはグレード違いで車重の重い軽いがあって、重めのグレードで出したテストデータがあり、それが基準をクリアしていれば軽量グレードのテストを免除することはあり得るとおっしゃっていた。それは事前にきちんと説明してくれればいいんですよ、とお聞きしたような?
国交省:小沢さんがおっしゃるように、グレード別に重い軽いがあるなかで、一番重いグレードを選んで試験するっていうのはあります。ただ、それと国際基準と全然違う条件でやるというのは違います。国際基準より重い条件だからいいっていうのは認められない。
小沢:なるほど。グレード違いで重いグレードが軽いグレードの肩代わりをするのはいいけど、実際にぶつける台車の重さが国際基準と異なる場合は「別のテスト」だと認識されるってことですね。
国交省:そうですね。トヨタさんはアメリカ向けの試験とおっしゃってますけど、おっしゃるとおり違う試験になりますし、そもそもなぜ1100kgの台車をぶつけるのかって、日本やヨーロッパは小型車が多いからなんですよ。逆に1800kgはアメリカではピックアップトラックが多いからそうなってるだけであって、それぞれの国の交通状況に合わせて基準がつくられているんです。一概に重いからいい、アメリカ向けの試験をやっているから日本向けの試験をしなくていいかって、それは手順が違いますよね。
小沢:軽いには軽いなりの意味があるというか、現象として違うと。国としてはそちらが頻発しているのでそちらでやるべきだと。
国交省:そのために日本の保安基準として欧州と協調した国際基準を使っていますので。
小沢:もうひとつ、歩行者保護の認証テストで、ボンネットに対して50度でぶつけるべきところを65度でぶつけた。65度のほうが当たり方がより厳しいからいいんじゃないか、みたいな話もあったんですが……。
国交省:これまたボンネットの形状によって衝撃が変わるので、一概にどちらが厳しいかの判断は難しい。単純に数字だけ比べればより直角に近い65度のほうが厳しいという印象を受けるとは思うのですが、これまたボンネットの形状によって違いますし。そもそもそれでやりたいんだったら、まずは国際基準を65度にしようとするのが本筋であって、より厳しいからこっちでいいでしょう? という理屈にはならないですよね。
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性善説に基づく認証は限界ではないのか?
小沢:う~む、そういうことですか。今回、自分も話を聞いていて善し悪しが分からなくなってきていて、過剰にやっていたのならいいのではないか、事前に確認しておけばよかったのではないかと思ったんですが、少し違うということですね。今回発覚したのはトヨタは全部で6件あって、そのうち5件は過剰試験で、「レクサスRX」のエンジン出力認証に関してのみが不正かと思ったのですが。
国交省:一番大事なのはなぜ不正が起きたのかの原因究明です。そのひとつが認証のやり方かもしれないですけど、そもそもなぜ起きてしまったのか。今トヨタ自動車はまだ調査中で、章男会長は6月末ぐらいまでに調査報告を出すっておっしゃってましたけど、それは認証に対する(考え方の)ギャップが本当の原因なのか、それともこれまで日野とかダイハツとか自動織機で共通していた不正の背景と似通っているのか。
小沢:例の忙しいとか開発時間が足りないとか、最後のつじつま合わせみたいな話ですね。
国交省:ああいう要因がトヨタ自動車では本当になかったのか? そこが一番の本筋としてまず調べていただきたいところで、そのうえで再発を防止するために、トヨタとしてはどういう対策を打てるのかということです。トヨタが業界として国と一緒にやるべきことがあるのならば、今までも相談して手順の合理化などはしていますので、そういったものは当然ウエルカムでやらせていただきますと。まずはその前段階として原因究明。徹底的に調べて、早く報告してくださいというのが国交省としてのスタンスになると思います。
小沢:しかしそもそもメーカーが提出してきた測定データで認証を取るという、いわゆるつくり手の性善説に基づくようなシステムがもはや厳しくなっているのでは? という話は当然出てきますよね。
国交省:結局今回、不正行為が国の審査とか、その後の監査で見つからなかったっていうのは事実ですので、そこについては再発を防止するとともに、メーカーが不正を起こさない、起こさせないためにはどのような仕組みが必要なのか。そういったところを考える検討会をこの4月に立ち上げましたので、そういう話も出てくるとは思います。
ただ、われわれ国が職員をたくさん抱えて、予算を大量に使い、設備をそろえて認証検査を100%コチラでやれば不正はゼロに近づくでしょうけど、国だけでそれをやるのは現実的ではないですし、メーカーと敵対するのではなく、お互いにやるべきことをやって不正の再発防止を考えるべきかと思います。
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誰も幸せにならない今の“認証システム”
小沢:なるほど。最後にもうひとつ、前回のダイハツのときも結局認証不正はあったのに、その後つくられたクルマには不都合がなく「安全でそのまま乗ってていい」ってことになっている。そうなると今ある認証システムって一体なんなんだろう? って気がしちゃうんですよ。ダイハツ車も結局リコールは1件だけで、テストをカンニングでパスはしたけど、合格した人はちゃんと学力があるという不思議な事態になっている。つまり今の認証システムってちょっと厳格すぎて、不必要にメーカーの価値をおとしめるだけのものになっていて、メーカーはもちろん、管理する側も誰も幸せにならないような仕組みだという気がするのですが。
国交省:繰り返しますが、認証制度としては国連の基準を使っているので、日本も欧州も全く同じです。ドイツでも日本でも互いにどちらかで認可したものがそのまま使えるカタチになってます。大昔は日本でもドイツでも同じような試験を互いにやって手間ばかりで無駄が多かったのですが、今は相当合理的になっている。基準についても乗用車であればほとんど調和された国連基準を使っていまして、例えば小沢さん、いま自動車の認証の国際基準がいくつあるか知ってますか?
小沢:知りません。
国交省:乗用車でいうと日本の基準が47個あって……いや逆の言い方のがいいですね。いま乗用車に適用されている国連規則は43個あって、日本はそのすべてを取り入れています。
小沢:43項目は全部欧州と同じだと。残りは?
国交省:あとの4つは日本オリジナルの規則であって、1つはワイパー規定などですが、それは国際基準がないから残っているだけで、今後ワイパーに関して国際ルールができたら、それはなくなると思います。なので今回トヨタは43個のうち6個の国際規則に違反していると。そういう言い方になります。
小沢:しかしなぜ日本でばかりこういう報道というか不正が起こるんでしょうね。確かにドイツも排ガス不正が大々的に起こりましたが、日本は細かく何回も起こる。
国交省:そこはわれわれにも分からない部分です。
小沢:もしかしてマジメすぎるんじゃないですか? 日本人。中国だった、たぶん表に出ませんよ(笑)。
(文=小沢コージ/写真=トヨタ自動車、本田技研工業、マツダ、スズキ/編集=藤沢 勝)
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小沢 コージ
神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』
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