時代の変化にどう向き合うか?
第45回東京モーターショーを振り返る
2017.11.07
デイリーコラム
世界のトレンドに対する、日本メーカーの回答は?
今回の東京モーターショーは面白かった。
プレスデーの2日間と、ガイドツアーのガイドとして3日間。合計5日間をかけて会場を巡った正直な感想だ。ちなみに5日間の総歩行距離は63.9kmにも及んでいる。
面白かった理由。それは変化のただ中にいるからだろう。思い返せば、ほんの2年前までは、どこのショーに行っても話題はSUVばかり。最新技術というよりも、中国市場攻略の話ばかりが聞こえた。ところが、ドイツメーカーにおける排出ガス不正発覚や、中国政府によるEV(電気自動車)強化、自動運転技術の進化などにより状況が一変。「電動化」「知能化」「コネクテッド」さらに「EVシフト」という、大きなトレンドが登場したのだ。
また、つい先日に開催されたフランクフルトショーでは、プジョーや日産が不参加。すでにデトロイトや東京モーターショーで進んでいる、ショーのドメスティック化の影がフランクフルトにも見えるようになった。もしかすると、来年のパリショーにもその影響が及ぶのか? どのようになるにしろ、これからのモーターショーはかつて「5大ショー」と呼ばれていたころのようなものではなく、新しい意味合いを持つことになるはず。現在は、その模索の時期といえるだろう。
そうしたテーマや変化に対して、日本の自動車業界はどのように応えたのか?
日産と三菱、ホンダは、トレンドのど真ん中をゆく展示を見せてくれた。またトヨタは、トレンドを押さえつつもFCV(燃料電池車)やGRブランドなどといった、昨今の取り組みも紹介。独自路線のアピールにも抜かりなかった。これに対して、マツダとスバルは次世代のデザインコンセプトを、スズキは新春初売りを意識した新型モデルを出品。ダイハツはデザインコンセプトに加え、アセアンで発表したMPVを持ち込んでみせた。世界を相手に商売する大手はトレンドを押さえ、中小は自らの得意分野で勝負する。そんなスタンスが見えただけでも、今回の東京モーターショーは面白かったのだ。
来場者は減った。それがどうした?
今回のショーは、2回ある週末のうち、初回が台風にたたられた。そのこともあって、最終的な来場者数は77万1200人。来場150万人を誇ったバブル期どころか、前回の81万人にも届かず、という結果に終わっている。実際に予算縮小もあるのだろう。きらびやかなショー仕立ても減った。2年に一度の日本自動車業界のお祭りと考えれば、少々寂しいものであったのも確かである。
しかし、ある意味それも仕方ないと思う。なんといっても新車販売台数は減っているし、昔よりも若者の興味がクルマから離れているのも事実。高齢化が進み、人口も減っている。かつてとは状況が異なるのだ。それなのに、バブルのころを思い出して「あのころと比べると来場者数が減った」と嘆くのはナンセンスではないだろうか。
そもそも、一日に10万人も来場者があると、人が多すぎて展示を見るどころではない。6万~8万人が上限だ。そういう意味では、今回のショーは平均的にそれくらいの来場者数で推移していた。逆にいえば、来場者数は会期が同じであれば現状くらいで横ばいしていればよいのではなかろうか。
また、ガイドをやっていて感じたのだが、来場者の熱意は十分だった。キャンギャル目当ての「クルマなんてどうでもいい」という人は減っているのではないだろうか。歌や踊りといったエンターテインメントも減っているが、本来モーターショーはクルマを見にくるところ。クルマや技術といった展示内容そのものは、どのブースも相応に力の入ったものだった。
今回のショー、統計を見ると、15歳から39歳までの来場者が前回の42.2%から51.3%に増えている。女性も17.7%から24.1%へと増加。依然として40代以上が来場者の半数を占めるのは問題だが、若い男女が増えているのは朗報だ。もう少し、若いというか、子どもが増えてほしいものである。
いずれにせよ、状況は過去と異なる。過去の栄光をいつまでも懐かしむのではなく、新しい状況にあった新しい東京モーターショーを目指すべき。そのためには、人数ではなく、どんな人がやってきているのか? ということを重視するべきではないだろうか。
(文=鈴木ケンイチ/編集=堀田剛資)

鈴木 ケンイチ
1966年9月15日生まれ。茨城県出身。国学院大学卒。大学卒業後に一般誌/女性誌/PR誌/書籍を制作する編集プロダクションに勤務。28歳で独立。徐々に自動車関連のフィールドへ。2003年にJAF公式戦ワンメイクレース(マツダ・ロードスター・パーティレース)に参戦。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを“分かりやすく”“深く”説明することをモットーにする。
-
日本で売れるクルマはあるのか!? 最新の“アメリカ産ニホンシャ”を清水草一が検証する! 2026.1.19 アメリカからの外圧による制度変更で、北米生産モデルの国内導入を決めたトヨタ。同様に、今後日本での販売が期待できる「海外生産の日本車」には、どんなものがあるだろうか? 清水草一が検証してみた。
-
新生ノートンがいよいよ始動! 名門の復活を担う次世代モーターサイクルの姿に迫る 2026.1.16 英国のモーターサイクル史にあまたの逸話を残してきた名門、ノートンが、いよいよ再始動! その数奇な歴史を振り返るとともに、ミラノで発表された4台の次世代モデルを通して、彼らが思い描く未来像に迫った。
-
市街地でハンズオフ運転が可能な市販車の登場まであと1年 日産の取り組みを再確認する 2026.1.15 日産自動車は2027年に発売する車両に、市街地でハンズフリー走行が行える次世代「ProPILOT(プロパイロット)」を搭載する。その発売まであと1年。革新的な新技術を搭載する市販車の登場は、われわれにどんなメリットをもたらすのか。あらためて考えてみた。
-
30年の取材歴で初めてのケースも 2025年の旧車イベントで出会った激レア車 2026.1.14 基本的に旧車イベントに展示されるのは希少なクルマばかりだが、取材を続けていると時折「これは!」という個体に遭遇する。30年超の取材歴を誇る沼田 亨が、2025年の後半に出会った特別なモデルを紹介する。
-
東京オートサロンでの新しい試み マツダのパーツメーカー見学ツアーに参加して 2026.1.13 マツダが「東京オートサロン2026」でFIJITSUBO、RAYS、Bremboの各ブースをめぐるコラボレーションツアーを開催。カスタムの間口を広める挑戦は、参加者にどう受け止められたのか? カスタムカー/チューニングカーの祭典で見つけた、新しい試みに密着した。
-
NEW
クルマの乗り味の“味”って何だ?
2026.1.20あの多田哲哉のクルマQ&A「乗り味」という言葉があるように、クルマの運転感覚は“味”で表現されることがある。では、車両開発者はその味をどう解釈して、どんなプロセスで理想を実現しているのか? 元トヨタのエンジニア、多田哲哉さんに聞いた。 -
NEW
プジョー208 GTハイブリッド(FF/6AT)【試乗記】
2026.1.20試乗記「プジョー208」にマイルドハイブリッド車の「GTハイブリッド」が登場。仕組みとしては先に上陸を果たしたステランティス グループの各車と同じだが、小さなボディーに合わせてパワーが絞られているのが興味深いところだ。果たしてその乗り味は? -
ベントレー・コンチネンタルGTアズール(4WD/8AT)【試乗記】
2026.1.19試乗記ベントレーのラグジュアリークーペ「コンチネンタルGT」のなかでも、ウェルビーイングにこだわったという「アズール」に試乗。控えめ(?)な680PSのハイブリッドがかなえる走りは、快適で満ち足りていて、ラグジュアリーカーの本分を感じさせるものだった。 -
第327回:髪もクルマもナイスファイト!
2026.1.19カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。日産の新型「ルークス」で夜の首都高に出撃した。しっかりしたシャシーとターボエンジンのパワフルな走りに感心していると、前方にスーパーカーの姿を発見。今夜の獲物は「フェラーリ・ローマ」だ! -
日本で売れるクルマはあるのか!? 最新の“アメリカ産ニホンシャ”を清水草一が検証する!
2026.1.19デイリーコラムアメリカからの外圧による制度変更で、北米生産モデルの国内導入を決めたトヨタ。同様に、今後日本での販売が期待できる「海外生産の日本車」には、どんなものがあるだろうか? 清水草一が検証してみた。 -
フェラーリ12チリンドリ(後編)
2026.1.18思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が「フェラーリ12チリンドリ」に試乗。前編では伝家の宝刀であるV12エンジンを絶賛した山野。後編ではコンビを組むシャシーの印象を余すところなく聞いてみた。




