渋滞研究家・清水草一が語る
年末年始の高速渋滞との付き合い方
2017.12.06
デイリーコラム
渋滞予測はほぼ当たる
今年も年末年始の渋滞予測が発表された。
詳しくはNEXCO各社のウェブサイトをご覧いただきたいが、渋滞予測は主に過去の実績をもとに立てられる。つまり今年に限って特段の傾向があるわけではなく、例年通り、下りより上り渋滞の方がより集中する。10km以上の渋滞予測回数のピークは、上り・下りとも2018年1月2日となっている。
私は渋滞研究家でもあるので、毎年この時期になるとメディアから渋滞予測に即したコメントを求められる。焦点は「渋滞回避の方法」だ。
回避法はひとつしかない。事前に発表された渋滞予測を見て、混む時間帯を避けて走ることである。
渋滞予測は8割がた的中する。もちろん自然渋滞に限ってで、事故渋滞等は予測不能だが、高速道路の事故の多くは渋滞中の軽微な追突。その程度なら、所要時間が大幅に増すことはない。
今年の渋滞予測には、その回避例が紹介されているが、いずれも「渋滞する時間帯を避けて利用する」というもの。渋滞してしまったらもう、回避する方法はない。
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下道に降りるには事前のリサーチが必要不可欠
よくされる質問に「どの車線が速いのですか」というものがある。
私の調査によると、7割がた左車線の方が速いが、ではどれくらい速いかというと、渋滞20kmあたりで最大1分程度。つまり、40kmの大渋滞でも2分程度しか差はつかない。その程度の差は、休憩回数を減らせば簡単に逆転できるし、むしろ無視した方が精神衛生上いい。
渋滞にはまったら、速そうな車線に移動したりせず、ただ淡々と前走車に追従するのが最善だ。アダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)装着車なら、肉体的苦痛もほとんどない。
もうひとつよくされる質問に、「下道を迂回(うかい)した方が速いのでは」というのがあるが、私の経験上、9割がた高速に乗り続けて耐えていた方が速い。中でも、混んでいるからと衝動的に下道に降りるのは最悪。墓穴を掘る確率が極めて高い。
下道を迂回する場合は、事前の入念なリサーチと計画性が必要で、それでも高速より速く到着するのはなかなかに難しい。
私は中央道上り線に限って、小仏トンネルを先頭にした渋滞距離が25km以上になった場合、大月インターチェンジ(IC)で降りて県道を迂回し上野原ICで乗り直した方が30分程度早着できるケースがあることを発見したが(国道20号線への迂回は中央道と大差ない)、それは長年の実走の積み重ねによるもので、いちかばちかでうまくいくことはまずないと思った方がいい。
ただ、近年の自然渋滞は、それほど恐れる必要もない。付加車線設置などの渋滞対策が進んだことで、自然渋滞内の平均速度は、昔に比べるとかなり上昇している。
例えば1月2日は、東名上り大和トンネルを先頭に最大35kmの渋滞が予測されているが、御殿場ICから横浜町田ICまでの所要時間予測は1時間50分。通常45分なので、1時間ほど余計にかかるだけなのだ。
(文=清水草一/写真=NEXCO東日本/編集=藤沢 勝)
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清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
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