クルマ好きなら毎日みてる webCG 新車情報・新型情報・カーグラフィック

第125回:往年のモータースポーツシーンがよみがえる! 
〜ドイツの「ゾリチュード・リバイバル」を訪ねる

2011.08.17 エディターから一言 島下 泰久
【webCG】クルマを高く手軽に売りたいですか? 車一括査定サービスのおすすめランキングを紹介!

第125回:往年のモータースポーツシーンがよみがえる! 〜ドイツの「ゾリチュード・リバイバル」を訪ねる

人もクルマも盛りだくさん

ドイツのヒストリックカーイベント「ゾリチュード・リバイバル2011」

7月末、「ポルシェ・パナメーラターボS」の試乗のため向かったドイツでは、ポルシェが面白いプログラムを用意してくれていた。2011年7月22〜24日に開催されたヒストリックカーイベント「ゾリチュード・リバイバル」に招いてくれたのだ。

会場のゾリチュードリンクはシュトゥットガルトから車で20分ほど行ったところにあるサーキットだ。といってもここは常設ではなく、公道を封鎖したコース。歴史は古く、1903年にはモーターサイクルによるヒルクライムイベントが開催されていたという。コースがほぼ固まったのは1935年のこと。この全長11kmにもおよぶハイスピードのマウンテンコースでは、戦前から戦後にかけてモーターサイクルの、そして戦後には自動車のレースが多数開催される。1960年代に入るとF1も開催されるが、1965年にはすべてのレース開催が終了してしまったのだ。

「ゾリチュード リバイバル」とは、つまりここがモータースポーツの聖地のひとつだった頃の熱狂を今に再現するイベントといえる。とはいってもレースをするわけではない。戦前も戦後も2輪も4輪も問わず、往年のシーンを彩ったマシンが集まり、しかも展示されるだけでなく実際に走る。そんなイベントなのである。

こうしたヒストリックモータースポーツのイベントは最近盛んになっている。有名なところではイギリスの「グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード」などが挙げられるが、それに比べるとゾリチュードは知名度は高くなく、行く前にはそこまで大きな期待を抱いていたわけではなかった。
しかし、実際に訪れてみて驚いた。参加車両も参加者も、そして観客もものすごい数に上り、さらには参加車両も、まさに貴重なモデルが盛りだくさんだったのである。実はここ、1952年のモーターサイクルのGPでは、50万人の観客が集まったという。見くびってはいけなかったのだ。

スタートラインから順番に走り出すマシン達。「ランチア・ストラトス」「フェラーリ330P4」「ポルシェ910」「メルセデス・ベンツ300SL」……と垂涎(すいぜん)の名車が続く。このあたりは観客の数もひと際多く、1台1台が走り出すたびに大歓声が巻き起こっていた。(S)
スタートラインから順番に走り出すマシン達。「ランチア・ストラトス」「フェラーリ330P4」「ポルシェ910」「メルセデス・ベンツ300SL」……と垂涎(すいぜん)の名車が続く。このあたりは観客の数もひと際多く、1台1台が走り出すたびに大歓声が巻き起こっていた。(S)
拡大
手前は1969年の「ロータス49C」、そして奥が1970年の「ロータス72」。美しいゴールドリーフカラーのF1マシン2台は存在感抜群だ。ドライバー達のスーツもそれらしい雰囲気。しかも彼らはレストアされた当時のロータスのトランスポーターまで持ち込み、パドックの空気を70年当時にタイムスリップさせていたのだ。 (S)
手前は1969年の「ロータス49C」、そして奥が1970年の「ロータス72」。美しいゴールドリーフカラーのF1マシン2台は存在感抜群だ。ドライバー達のスーツもそれらしい雰囲気。しかも彼らはレストアされた当時のロータスのトランスポーターまで持ち込み、パドックの空気を70年当時にタイムスリップさせていたのだ。
(S) 拡大
パドック内で、さながら休憩所のようになっていた車両運搬車。よく見ると、そのヘッド部分は「シトロエンDS」なのだった。そのキャビンの後ろが切り落とされ、2台のマシンを載せられるほどの荷台が付いている。トレーラーではなく、直付け。全長、一体何メートルなんだろう? (S)
パドック内で、さながら休憩所のようになっていた車両運搬車。よく見ると、そのヘッド部分は「シトロエンDS」なのだった。そのキャビンの後ろが切り落とされ、2台のマシンを載せられるほどの荷台が付いている。トレーラーではなく、直付け。全長、一体何メートルなんだろう?
(S) 拡大

ポルシェCEOの素顔も見られた!

盛り上げに一役買っていたのが、ここが地元のポルシェである。彼らはここにミュージアム所蔵の2台の「550スパイダー」、そして1961年式の「718 F1」を送り出し、しかも飛び切りのドライバーまで用意した。

まずはハンス・ヘルマン氏。シュトゥットガルト出身で、1970年にポルシェに初のルマン総合優勝をもたらすなど大活躍を演じた英雄である。そしてヘルベルト・リンゲ氏はポルシェAGの国際カスタマーサービス部に勤務しながらワークスドライバーとして活躍し、ミッレミリアやセブリング、ツール・ド・コルスにタルガ・フローリオといった名だたるレースで優勝を飾った御仁。映画『栄光のル・マン』でカメラカーのドライバーを務めたのも有名なエピソードだ。

そして「718 F1」のステアリングを握ったのは、なんとポルシェAGのマティアス・ミューラーCEOだった!
「練習する時間はなかったけれど、無事に走れて良かったよ。ゾリチュードリンクには子供の頃、モーターサイクルのレースを観にきたことがあるんだ」

実はミューラーCEOに対しては、フォルクスワーゲン出身ということもあり、あまりエンスージアスティックな人というイメージは抱いていなかった。しかしながら、この日の楽しそうな顔ときたら! ちょっと安心したというのは余談である。

そんな豪華な面々が訪れていた一方で、進行にはおぼつかないところの散見されたこのイベント。夏としては気温も低く、時折雨もちらついていたが、観客は皆ニコニコ待っている。「別に急ぐ何かがあるわけじゃない。別にいいじゃん」という感じだ。良い意味でローカルイベントらしい雰囲気はパドックにまで浸透していて、ヘルマン氏もリンゲ氏も群がるファンに気さくに応え、せっせとサインを書いていた。ポルシェも“こういう所なのに”ではなく“こういう所だからこそ”、ミュージアムの貴重なクルマを持ってきたのかもしれない。

イベント終了後、シャトルのドライバーが気を利かせてコースを1周してくれた。グラベルのたぐいがないのは当然として、その速度域の高さには面食らった。往年のドライバー達は本当に勇敢だった。これもまた、飾ってあるレーシングカーを見るだけでは、リアルには分からなかったことである。

(文=島下泰久/写真=ポルシェジャパン、島下泰久(S))

ドイツのヒストリックカーイベント「ゾリチュード・リバイバル2011」

1950〜70年代に主にスポーツカーレースで活躍した、御年83歳のハンス・ヘルマン氏の周囲には始終ファンが群がっていた。ちなみにポルシェ・ミュージアム所蔵のこの「ポルシェ550スパイダー」は1954年のカレラ・パナメリカーナにて、ヘルマン氏がドライブしてクラス優勝を成し遂げた個体そのものだという。
1950〜70年代に主にスポーツカーレースで活躍した、御年83歳のハンス・ヘルマン氏の周囲には始終ファンが群がっていた。ちなみにポルシェ・ミュージアム所蔵のこの「ポルシェ550スパイダー」は1954年のカレラ・パナメリカーナにて、ヘルマン氏がドライブしてクラス優勝を成し遂げた個体そのものだという。 拡大
「ポルシェ718 F1」のコクピットにいたのは、ポルシェAGのマティアス・ミューラーCEO。練習する時間はまったくなかったということだが、見事な走りを披露していた。ポルシェはミュージアム所蔵の貴重なマシンを送り込むのみならず、CEOまでこうして参加して、このローカルイベントを大いに盛り上げたのだ。
「ポルシェ718 F1」のコクピットにいたのは、ポルシェAGのマティアス・ミューラーCEO。練習する時間はまったくなかったということだが、見事な走りを披露していた。ポルシェはミュージアム所蔵の貴重なマシンを送り込むのみならず、CEOまでこうして参加して、このローカルイベントを大いに盛り上げたのだ。 拡大
こんなイベントだけに、周辺には面白いクルマがいっぱいだった。写真はマイクロカーの一団。手前のクーペはグートブロットが1950〜1954年に発売した「スペリオール」である。排気量593cc、後に663ccを発生する2気筒2ストロークエンジンをフロントに積み、スポーティな走りを実現していたという。 (S)
こんなイベントだけに、周辺には面白いクルマがいっぱいだった。写真はマイクロカーの一団。手前のクーペはグートブロットが1950〜1954年に発売した「スペリオール」である。排気量593cc、後に663ccを発生する2気筒2ストロークエンジンをフロントに積み、スポーティな走りを実現していたという。
(S) 拡大
島下 泰久

島下 泰久

モータージャーナリスト。乗って、書いて、最近ではしゃべる機会も激増中。『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)、『クルマの未来で日本はどう戦うのか?』(星海社)など著書多数。YouTubeチャンネル『RIDE NOW』主宰。所有(する不動)車は「ホンダ・ビート」「スバル・サンバー」など。

エディターから一言の新着記事
エディターから一言の記事をもっとみる
新着記事
新着記事をもっとみる
車買取・中古車査定 - 価格.com

メルマガでしか読めないコラムや更新情報、次週の予告などを受け取る。

ご登録いただいた情報は、メールマガジン配信のほか、『webCG』のサービス向上やプロモーション活動などに使い、その他の利用は行いません。

ご登録ありがとうございました。

webCGの最新記事の通知を受け取りませんか?

詳しくはこちら

表示されたお知らせの「許可」または「はい」ボタンを押してください。