新型車がぞくぞくデビュー
マクラーレンの市販計画はどうなっている?
2018.05.25
デイリーコラム
今後4年で11車種も!?
マクラーレン・オートモーティブの近未来は、同社の中期計画「トラック22」にすべて記されている。トラック22に基づく彼らの将来像を、チーフ・オペレーティング・オフィサー(COO)のジェンス・ルードマン氏に聞いた。
「トラック22はマクラーレン・オートモーティブの2022年にあるべき姿を描いたもので、この計画を発表した2016年からの6年間で15のニューモデルを投入することがその骨子です」
ちなみにマクラーレンは、2016年以降に「720S」と「570Sスパイダー」をローンチし、2018年のジュネーブモーターショーでは「セナ」と「セナGTR」を公開した。つまり、残る4年間で登場が見込まれるのは計11モデルということになる。
実は、マクラーレンは次に発表するモデルをすでに明らかにしている。
「セナとセナGT-Rに続いてはコードネーム“BP23”を発表します。これはセナのようなサーキット向けのモデルではなく、高速クルージングを得意とするグランドツアラーとなります」
現在、マクラーレンのモデルラインナップがスポーツシリーズ、スーパーシリーズ、アルティメットシリーズで構成されていることはご存じのとおり。このうち、BP23は「P1」やセナと同じアルティメットシリーズに属する。
「アルティメットシリーズは、登場するモデルごとに特定のジャンルが定められています。そして必ず限定生産となるのがアルティメットシリーズの特徴です」
BP23の“BP”はビスポークプロジェクト、つまり特別に用意されたモデルであることを意味する。続く“2”は、ビスポークプロジェクトを担当するマクラーレン・スペシャル・オペレーションズ(MSO)にとって2番目のプロジェクトであることを示している。
![]() |
ハイブリッドにも注力
では、彼らが手がけた最初のビスポークプロジェクトとは何だったのか? 意外にも、これは1993年にデビューした「マクラーレンF1」であるという。そして間もなく登場するBP23は、さまざまな意味でマクラーレンF1のトリビュートモデルというべき内容になっている。
例えば、コードネームの最後につけられた“3”は、BP23がマクラーレンと同じ3シーターであることを意味する。また、マクラーレンF1は1993年に当時の量産車として史上最速に相当する240.14mph(384.22km/h)を記録したが、BP23の最高速度はこれを上回ることが示唆されている。そしてとどめが、BP23の生産台数がマクラーレンF1と同じ106台に限られる点。ちなみにBP23のパワートレインはハイブリッド。発売は2019年の予定だ。
それにしても、わずか6年間で15モデルを投入するとは恐るべき開発スピードだ。現在のマクラーレン・オートモーティブの規模について、ルードマン氏に解説してもらった。
「従業員は現時点で2300人です。このうち900人が生産部門に所属していて、およそ500人がエンジニア。さらに私たちは新しいコンポジットセンターの立ち上げに取り組んでいるところで、この工場では新たに200人を採用することになります。新設のコンポジットセンターでは、これまで外部に委託していたモノコックを内製する計画です」
生産規模に関してはどうか? 「2017年は3340台を生産しました。2018年は4000台を実現する見通しです。この2年間、私たちの生産部門は目を見張るような成長を遂げました。とりわけ2年前には2シフト制を取り入れ、新たに250人を採用しました」
「私たちの生産キャパシティーは年間5000台ほどで、2022年前後には生産台数がこの水準に到達する見通しです。それ以降は生産台数を大きく拡大することなく、この規模を維持する考えです」
こうした計画を実現するためにまず重要になるのが、トラック22に記されているとおり残り4年間で11モデルを開発することである。
「常に4つないし5つの開発プログラムを並行して進めています。私はトラック22を推進する立場にありますが、計画はすべて順調に進行していると申し上げましょう」
ちなみに、2022年までに全モデルの50%がハイブリッドモデルになるというから、こちらも楽しみだ。
(文=大谷達也<Little Wing>/写真=マクラーレン・オートモーティブ、webCG/編集=関 顕也)
![]() |

大谷 達也
自動車ライター。大学卒業後、電機メーカーの研究所にエンジニアとして勤務。1990年に自動車雑誌『CAR GRAPHIC』の編集部員へと転身。同誌副編集長に就任した後、2010年に退職し、フリーランスの自動車ライターとなる。現在はラグジュアリーカーを中心に軽自動車まで幅広く取材。先端技術やモータースポーツ関連の原稿執筆も数多く手がける。2022-2023 日本カー・オブ・ザ・イヤー選考員、日本自動車ジャーナリスト協会会員、日本モータースポーツ記者会会員。
-
トヨタ車はすべて“この顔”に!? 新定番「ハンマーヘッドデザイン」を考える 2025.10.20 “ハンマーヘッド”と呼ばれる特徴的なフロントデザインのトヨタ車が増えている。どうしてこのカタチが選ばれたのか? いずれはトヨタの全車種がこの顔になってしまうのか? 衝撃を受けた識者が、新たな定番デザインについて語る!
-
スバルのBEV戦略を大解剖! 4台の次世代モデルの全容と日本導入予定を解説する 2025.10.17 改良型「ソルテラ」に新型車「トレイルシーカー」と、ジャパンモビリティショーに2台の電気自動車(BEV)を出展すると発表したスバル。しかし、彼らの次世代BEVはこれだけではない。4台を数える将来のラインナップと、日本導入予定モデルの概要を解説する。
-
ミシュランもオールシーズンタイヤに本腰 全天候型タイヤは次代のスタンダードになるか? 2025.10.16 季節や天候を問わず、多くの道を走れるオールシーズンタイヤ。かつての「雪道も走れる」から、いまや快適性や低燃費性能がセリングポイントになるほどに進化を遂げている。注目のニューフェイスとオールシーズンタイヤの最新トレンドをリポートする。
-
マイルドハイブリッドとストロングハイブリッドはどこが違うのか? 2025.10.15 ハイブリッド車の多様化が進んでいる。システムは大きく「ストロングハイブリッド」と「マイルドハイブリッド」に分けられるわけだが、具体的にどんな違いがあり、機能的にはどんな差があるのだろうか。線引きできるポイントを考える。
-
ただいま鋭意開発中!? 次期「ダイハツ・コペン」を予想する 2025.10.13 ダイハツが軽スポーツカー「コペン」の生産終了を宣言。しかしその一方で、新たなコペンの開発にも取り組んでいるという。実現した際には、どんなクルマになるだろうか? 同モデルに詳しい工藤貴宏は、こう考える。
-
NEW
トヨタ・カローラ クロスGRスポーツ(4WD/CVT)【試乗記】
2025.10.21試乗記「トヨタ・カローラ クロス」のマイナーチェンジに合わせて追加設定された、初のスポーティーグレード「GRスポーツ」に試乗。排気量をアップしたハイブリッドパワートレインや強化されたボディー、そして専用セッティングのリアサスが織りなす走りの印象を報告する。 -
NEW
SUVやミニバンに備わるリアワイパーがセダンに少ないのはなぜ?
2025.10.21あの多田哲哉のクルマQ&ASUVやミニバンではリアウィンドウにワイパーが装着されているのが一般的なのに、セダンでの装着例は非常に少ない。その理由は? トヨタでさまざまな車両を開発してきた多田哲哉さんに聞いた。 -
NEW
2025-2026 Winter webCGタイヤセレクション
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>2025-2026 Winterシーズンに注目のタイヤをwebCGが独自にリポート。一年を通して履き替えいらずのオールシーズンタイヤか、それともスノー/アイス性能に磨きをかけ、より進化したスタッドレスタイヤか。最新ラインナップを詳しく紹介する。 -
NEW
進化したオールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2」の走りを体感
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>欧州・北米に続き、ネクセンの最新オールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2(エヌブルー4シーズン2)」が日本にも上陸。進化したその性能は、いかなるものなのか。「ルノー・カングー」に装着したオーナーのロングドライブに同行し、リアルな評価を聞いた。 -
NEW
ウインターライフが変わる・広がる ダンロップ「シンクロウェザー」の真価
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>あらゆる路面にシンクロし、四季を通して高い性能を発揮する、ダンロップのオールシーズンタイヤ「シンクロウェザー」。そのウインター性能はどれほどのものか? 横浜、河口湖、八ヶ岳の3拠点生活を送る自動車ヘビーユーザーが、冬の八ヶ岳でその真価に触れた。 -
第321回:私の名前を覚えていますか
2025.10.20カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。24年ぶりに復活したホンダの新型「プレリュード」がリバイバルヒットを飛ばすなか、その陰でひっそりと消えていく2ドアクーペがある。今回はスペシャリティークーペについて、カーマニア的に考察した。