ボルボV60 T6 AWDインスクリプション(4WD/8AT)
絶滅危惧種とは言わせない 2018.06.25 試乗記 ボルボの中核を担うステーションワゴン「V60」が2代目に進化。日本では縮小が続くジャンルだが、新世代のボディー骨格とパワーユニットを得た北欧のファミリーエステートは、洗練されたスタイルと実用性をあわせ持つ魅力的なモデルに仕上がっていた。ワゴン飢餓状態の市場に待望の2代目
ラクダにトラにチンパンジー……誰もが身近な存在と思っていた野生動物たちが、実はいつの間にやら「絶滅の危機に瀕(ひん)する生物」としてレッドリストに名が挙がる、いわゆる絶滅危惧種に該当していたという。
話題を自動車界へと置き換えれば、自然吸気で多気筒の大排気量エンジンなどは、まさに最近似たような立場へと追いやられてしまった存在。さらに身近なところでは、日本車のカタログ上ではすっかりお目にかかれなくなったステーションワゴンなども同様といってよさそうだ。
車検証の記載では、「ステーションワゴン」という表記が与えられたモデルは今でも多数。が、実際にはそれらは「いやいや、これってSUVでしょ」と言いたくなるものが大半だ。「スバル・レガシィ ツーリングワゴン」が売れに売れまくり、触発された日本の周辺メーカーからライバル車が次々と生み出された2000年代初頭までのワゴンブームの時代からすれば、日本の市場の縮小ぶりはまさに「見る影もない」と評するしかないものだ。
一方で、ブームの盛衰とは関係ナシに、自らのライフスタイルに照らした結果「やっぱりステーションワゴンが一番!」というユーザーはもちろん今でも一定数が存在しているはず。かくして、ステーションワゴン飢餓状態(?)に置かれていた人々にとって大いに気になるであろう一台が、今年春のジュネーブモーターショーで発表された2代目となるボルボV60だ。
スタイリッシュでも荷室は広大
現行「XC90」に始まった「90シリーズ」の前例と同様に、新型V60に採用されたハードウエアはすでに日本への上陸も始まっている「XC60」に準拠したもの。すなわち、ボディー骨格には「SPA」と名付けられた中型モデル以上用のモジュラーユニットを用い、エンジンはガソリンかディーゼルか、出力の違いなどにかかわらず、すべてが過給機付きの2リッター4気筒。こちらもモジュラー化が徹底されている。
4761×1850mmという全長と全幅は、同じ欧州仕様値で表されるXC60のそれに対して27mm長く、48mm狭いという関係。ホイールベースはわずかに7mm長く、リアのオーバーハングは90mmのプラス。全高は1427mmとさすがに低く、これはXC60比で231mmものマイナスで、多くのパレット式立体駐車場に楽々収まる計算だ。
ディメンションもさることながら、一見して新しいV60をスリークでスタイリッシュなワゴンに見せているのは、新世代ボルボ車に共通する、伸びやかなノーズセクションの造形に加え、強い前傾アングルが与えられた、リアのウィンドウセクションの造形にもありそう。理屈からすれば、リアウィンドウを垂直位置から前に倒していけば、それだけ積載容量が削られてしまう計算。が、そこにこだわる向きには「『V90』もある」というシナリオが成立するわけだ。
後席使用時で529リッター、後席をアレンジして最大1441リッターというルーフラインまでを用いた際の容量を備えるV60に対して、V90のラゲッジスペースは723リッター/1526リッターと明確に上回る値。ちなみに、XC60の場合にはその値が635リッター/1432リッターと発表されている。
ただし、実際にその空間を目の当たりにしてみればV60の場合でも、「これ以上、何を望むのか」というほどに広大であることを実感。直方体が基調で突起物がなく、いかにも扱いやすそうなその空間が、キャビンの延長という雰囲気の上質な仕上げである点も好感が持てるポイントだ。
プラグインハイブリッドは2種類を用意
インテリアのデザインも、XC90に始まった新世代ボルボ車の流儀に従ったもの。最近のモデルを目にした経験があれば、大方の人が予想できるであろう仕上がりだ。シンプルでクリーンでありながらもゴージャスさもしっかり兼ね備えたこのところのボルボ車に共通する雰囲気は、ショールームを訪れた段階で「メルセデスでもなくBMWでもなく、このモデルが欲しい!」という声を上げさせるに十分なポテンシャルを感じさせるものだ。
足元は十分に広く、Bピラーにはフェイスレベルの空調吹き出し口も備わるので、後席での長時間乗車も快適。XC60の216mmに対して128mmと最低地上高のゆとりは比べるべくもないが、「その分、乗降はこちらのほうが楽」と実感する人もいるはず。それでも、「やっぱり4WDにするのだったらもう少し地上高があったほうが安心」という人は、恐らく登場するのは時間の問題であろう「クロスカントリー」を待つという手もアリかもしれない。
バルセロナ近郊で開催された国際試乗会でテストドライブを行ったのは、ツインチャージャー付きで最高310psを発するガソリンの強心臓を搭載した「T6 AWDインスクリプション」。現時点で発表されているエンジンバリエーションは、このT6以外に「D3」と「D4」という2タイプのディーゼルがある。
さらに、他のモデルとは異なるV60の特徴は、プラグインハイブリッド仕様に組み合わせるガソリンエンジンとして2種類を用意したこと。ボルボでは「ツインエンジン」と呼んでいるパワーユニットだ。後輪をモーター駆動としたボルボ独自のハイブリッドシステムで、ターボチャージャーとスーパーチャージャーの双方を備えたエンジンはT6モデルからの流用。「ハードウエアは同一で、キャリブレーションの違いで出力差を設けている」と説明される。
かくも特徴的なバリエーション展開としたのは、最近とみに電動化にまつわるニュースが聞かれるこのブランドを象徴したものともいえそうだ。
ハンドリングに“選択と集中”の効果
いよいよテストドライブへと出発……といきたいところだが、最近のボルボ車にはまず、スタート前に“ちょっと難儀”な作業が待っている。メーターのグラフィックやドライブモード、ナビゲーションシステムの動作などを、メーターパネル中央の大きなディスプレイを操作して好みの仕様へとアレンジする必要があるのだ。
ところが、「SENSUS(センサス)」と称するボルボ車のシステムは大半の操作を画面内のみで行わなければならず、必要な操作画面にたどり着くまでが一筋縄ではいかない。極端なハナシ、ナビゲーションシステムで目的地を設定するのもひと苦労。当然、走りながらの操作など至難の業なのだ。
試乗会用にクイックガイドなる特製リーフレットが載せられていたが、クルマが止まっている状態であってすらそれを眺めながら考え込んでしまう始末。そもそも、安全を社是(?)とするこのブランドに、この使い勝手の悪さはマッチしない。毎度のコメントではあるが、ここばかりは早急な改善を訴えたい。
一方で、いざスタートしてみればその走りのテイストは、思わず“最新のボルボは最良のボルボ”とうなりたくなる仕上がりだった。低回転域からトルクがスッと立ち上がる力強さと心地よさは、さすがはメカニカルスーパーチャージャー併用という凝った心臓の作りを意識させられるもの。オーバー300psというスペックだけに、絶対的な加速力も十二分だ。
唯一、サウンドの質という点で3500rpm付近から4気筒らしさが顔をのぞかせはするものの、ロードノイズや風切り音を含めて静粛性の高さも文句はナシ。ただし、それでもスピーカーを活用してより上質なエンジンサウンドを創出するといった手はあるように思う。ボルボはこのあたりが正直過ぎる、というか、ちょっと不器用に思えてしまう。
今回のテスト車が装着していたシューズは、235/40の19インチ。偏平率の低いタイヤではあるが、路面の凹凸への当たり感が優しく、振動波形が“角マル”な印象が強かった点にも好感が持てた。このモデルも含め、総じて最近のボルボ車のハンドリング感覚が自然で素直なのは、搭載エンジンを4気筒までと割り切った“選択と集中”の効果が出ているところでもあるように思う。
何だか最近、目ぼしいステーションワゴンが見当たらなくて……と嘆いていた人にとって、これはきっと今年最大のプレゼントとなるはずだ。
(文=河村康彦/写真=ボルボ/編集=鈴木真人)
テスト車のデータ
ボルボV60 T6 AWDインスクリプション
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4761×1850×1427mm
ホイールベース:2872mm
車重:1690kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ+スーパーチャージャー
トランスミッション:8段AT
最高出力:310ps(228kW)/5700rpm
最大トルク:400Nm(40.8kgm)/2200-5100rpm
タイヤ:(前)235/40R19/(後)235/40R19
燃費:8.0-9.0リッター/100km(約11.1-12.5km/リッター、欧州複合モード)
価格:--万円/テスト車=-- 円
オプション装備:--
テスト車の年式:2018年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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