ホンダ・ステップワゴン ハイブリッド モデューロX Honda SENSING(FF)
上質感にあふれている 2019.03.13 試乗記 雪を求めて三千里!? 「ホンダ・ステップワゴン」のコンプリートカー「モデューロX」に乗りに、冬の北海道へ。“チューニングカー”を走らせるには場違いにも思える、雪道での試乗を通して分かったことは? 手間ヒマ掛かったクルマならではの、走りの魅力を報告する。空力にこだわるコンプリートカー
ホンダの四輪車の純正用品を手がけるホンダアクセス。本田技研工業の100%子会社であるこのメーカーが、風洞やテストコースなど“親会社”の資産を活用しつつ開発を行った走りのチューニングパーツに与えられる名称が「Modulo(モデューロ)」である。
そうしたアイテムを数多く採用しながら、さらに専用の空力デザインも当初から織り込むなど、パーツ交換のみによるチューニングでは不可能な領域にまで踏み込みながら通常のホンダ車同様にディーラーでの新車購入を可能としたモデルが「モデューロX」の名を冠せられたコンプリートカーだ。
ここに紹介するステップワゴン モデューロXも、もちろんそうしたコンプリートカーの1台。ベース車両は、運転支援システムの充実やハイブリッド仕様の初設定などをメインメニューとして2017年秋にリファインが施されたマイナーチェンジモデル。すなわち、現行ステップワゴンのモデューロXは、これで2世代目ということになる。
ベース車両にハイブリッドバージョンが設定されたことを受けて、モデューロXとしては「フリード」に続く同仕様が設定されたことが大きなトピックのひとつ。
今回は、そんなステップワゴン ハイブリッド モデューロXを北海道の雪道へと連れ出した。実は今シーズンの北海道は全般に積雪量が少なく、2月下旬に予定されていたこの取材のスケジュールも、当初は中止が検討されたほどだった。
しかし、幸運にも東京から旭川入りした日の夜に、15cmほどの降雪を記録。完全にドライだった路面も翌日のテスト日には新雪で真っ白く覆われ、絶好のコンディションの下でテストドライブが行えることになった。
さりげなく特別感をアピール
「ダイナミック&スポーティー」がコンセプトというステップワゴン モデューロXのスタイリングは、一見して「落ち着いた大人のミニバン」という雰囲気が漂う仕上がりだ。
専用フロントグリルや前後バンパー、ボディー同色のリアコーナーガーニッシュなどにより、ベースである「スパーダ」グレードを上回る迫力が醸し出されはしているものの、それでも昨今はやりの(?)過度な押し出し感などとは無縁のさりげない演出で、エクステリアデザインは個人的にも好感がもてる。
ピアノブラックにシルバーのモールディングがあしらわれたインパネのミドルパッドや、「Modulo X」のロゴ入りシート、専用のステアリングホイールなどを採用したインテリアも、やはり“これ見よがし”とまでは至らない範囲で、このモデルが“特別なステップワゴン”であることを軽くアピールしている。
テスト車に装着されていた10インチ画面のナビゲーションシステムも、モデューロXのために開発された専用アイテム。そもそもナビゲーションシステムは、ホンダアクセスが得意とする分野である。
それゆえ、このアイテムは周囲のデザインと見事に溶け込んだ上に、マルチビューカメラシステムや後退出庫サポート、駐車時録画付きのナビ連動ドライブレコーダーなど多彩な機能を備えることが、大きなセリングポイントでもある逸品だった。
悪条件でも安心感がある
それにしても、標準車以上に上質な走りを追求したというモデューロXのテストドライブを、わざわざ雪上で行う意味は一体どこにあるのだろうか!?
「舗装路に比べるとはるかに滑りやすく、気象状況によっては視界が極端に悪化する場面もあるなど、環境が厳しくなるほどに安心して走れるという点をぜひとも体感してほしい」と、そのように語るのは、モデューロ・モデルの開発を統括する福田正剛氏。
モデューロが目指すのは、ベース車以上に上質な走りのテイスト。そこには単にサーキット上でより速く走れることのみならず、悪条件の下でもより安心して、リラックスしながらドライブできることなども含まれるという。
専用サスペンションのスペックやボディーキットのデザインも、すべてはこうした仕上がりを目指して開発されたもの。特にボディーキットは、「単なる見た目のドレスアップ効果だけでなく、必ず空力性能の向上を伴うこと」というのがモデューロならではの特徴である。パーツとしてのモデューロに対し、モデューロXではそんな専用ボディーキットの採用による空力性能の向上なども踏まえつつサスペンションのセッティングを行えるという点で、コンプリートカーならではの強みがあるというわけだ。
実際に、横浜ゴムの最新スタッドレスタイヤ「アイスガード6」を装着したモデューロXでは、新雪の中をほとんど舗装路を走行するのと変わらない気分のままに、常に高い安心感を抱きながらリラックスしたドライブを楽しむことができた。
中でも、シャーベット状に溶けかけた路面やわだち路面に差し掛かったり、急な横風に吹かれたりしても、クルマの挙動が急変しない点が大いに好ましい。加えて、荒れた路面に差し掛かっても衝撃をしなやかにいなし、快適性がすこぶる高いというのも、これまでさまざまな車種のモデューロXで感じられた印象と共通することを、あらためて教えられることになった。
職人気質のクルマづくり
ところで、そんな北海道でのテストドライブの後、幸運にもあらためて一般の舗装路を、通常のサマータイヤを履いたステップワゴン モデューロXでドライブする機会も得られた。
こうしたシーンでまず実感できたのは、「ミニバンとしては異例」といった表現を用いたくなるほど、しなやかさに富んだフットワークのテイスト。と同時に、こうした背の高いモデルでは気になることの多いロール感が、ほとんど目立たないことも特筆すべき点だ。コーナリング時にステア操作に対する不自然な遅れが感じられず、ロールとヨーイングの発生に気になる“時間差”がないことがそうした好印象をもたらしているというのは、滑りやすい雪上では気がつきにくいポイントだった。
高速道路へと乗り込むと、速度の上昇とともにフラット感が上乗せされていくのは、「デザイナーも一緒に走りながらボディーキットのデザインを煮詰めていく」という、モデューロXならではのクルマづくりの成果が表れた点でもあるはず。「効果のないものは採用しない」というポリシーで開発されたモデューロXのボディーキットに、“無意味な造形”などはあり得ないということだ。
異なるスペックのサスペンションやアルミホイール、そしてボディーキットを装着し、実走テストを繰り返しながらセッティングを熟成していく……。そんなクルマづくりのやり方は、「今では古い」という考え方もあるかもしれない。「そんな手間ヒマを掛けた結果、価格が上がってしまうのならば、標準仕様で十分」という人も当然いるだろう。
けれども、こうした“昔ながらの職人気質”でつくり込まれたモデューロXの走りのテイストには、どこか人肌のぬくもりのような優しく上質な感覚が混じっていることもまた事実。
チューニングモデルというと、とかく硬派でとがった走りのテイストばかりが前面に押し出されがちである。しかし、それらとは一線を画した“上質感あふれる走り”こそが、モデューロの真骨頂なのだ。
(文=河村康彦/写真=荒川正幸/編集=近藤 俊)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
テスト車のデータ
ホンダ・ステップワゴン ハイブリッド モデューロX Honda SENSING
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4760×1695×1840mm
ホイールベース:2890mm
車重:1840kg
駆動方式:FF
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ
モーター:交流同期電動機
エンジン最高出力:145ps(107kW)/6200rpm
エンジン最大トルク:175Nm(17.8kgm)/4000rpm
モーター最高出力:184ps(135kW)/5000-6000rpm
モーター最大トルク:315Nm(32.1kgm)/0-2000rpm
タイヤ:(前)205/60R16 96Q/(後)205/60R16 96Q(ヨコハマ・アイスガード6 iG60)
燃費:--km/リッター
価格:399万6000円/テスト車=439万4520円
オプション装備:プラチナホワイト・パール<特別塗装色>(3万7800円)/10インチプレミアムインターナビ+ドライブレコーダー<ナビ連動タイプ>(36万0720円)
テスト車の年式:2019年型
テスト開始時の走行距離:1160km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター
拡大 |

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
-
BYDシールAWD(4WD)【試乗記】 2026.1.17 BYDのBEVサルーン「シール」の機能アップデートモデルが登場。強化のポイント自体はそれほど多くないが、4WDモデルの「シールAWD」は新たに電子制御式の可変ダンパーを装備したというから見逃せない。さまざまなシーンでの乗り心地をチェックした。
-
マツダCX-60 XDドライブエディション ナッパレザーパッケージ(4WD/8AT)【試乗記】 2026.1.14 「マツダCX-60」に新グレードの「XDドライブエディション ナッパレザーパッケージ」が登場。スポーティーさと力強さ、上質さを追求したというその中身を精査するとともに、国内デビューから3年を経た“ラージ商品群第1弾”の成熟度をチェックした。
-
カワサキKLX230シェルパS(6MT)【レビュー】 2026.1.13 その出来には“セロー乗り”も太鼓判!? カワサキのトレイルバイク「KLX230シェルパ」に、ローダウン仕様の「シェルパS」が登場。安心の足つき性で間口を広げた一台だが、実際に走らせてみると、ストリートでも楽しめるオールラウンダーに仕上がっていた。
-
メルセデス・ベンツC220dラグジュアリー(FR/9AT)【試乗記】 2026.1.12 輸入車における定番の人気モデル「メルセデス・ベンツCクラス」。モデルライフ中にも年次改良で進化し続けるこのクルマの、現在の実力はいかほどか? ディーゼルエンジンと充実装備が魅力のグレード「C220dラグジュアリー」で確かめた。
-
日産ルークス ハイウェイスターGターボ プロパイロットエディション(FF/CVT)【試乗記】 2026.1.10 日産の軽スーパーハイトワゴン「ルークス」がフルモデルチェンジ。「見えない危険が……」のテレビCMでお茶の間をにぎわせているが、走る、曲がる、止まるをはじめとしたクルマ全体としての仕上がりはどうか。最上級グレードをテストした。
-
NEW
ベントレー・コンチネンタルGTアズール(4WD/8AT)【試乗記】
2026.1.19試乗記ベントレーのラグジュアリークーペ「コンチネンタルGT」のなかでも、ウェルビーイングにこだわったという「アズール」に試乗。控えめ(?)な680PSのハイブリッドがかなえる走りは、快適で満ち足りていて、ラグジュアリーカーの本分を感じさせるものだった。 -
NEW
第327回:髪もクルマもナイスファイト!
2026.1.19カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。日産の新型「ルークス」で夜の首都高に出撃した。しっかりしたシャシーとターボエンジンのパワフルな走りに感心していると、前方にスーパーカーの姿を発見。今夜の獲物は「フェラーリ・ローマ」だ! -
NEW
日本で売れるクルマはあるのか!? 最新の“アメリカ産ニホンシャ”を清水草一が検証する!
2026.1.19デイリーコラムアメリカからの外圧による制度変更で、北米生産モデルの国内導入を決めたトヨタ。同様に、今後日本での販売が期待できる「海外生産の日本車」には、どんなものがあるだろうか? 清水草一が検証してみた。 -
フェラーリ12チリンドリ(後編)
2026.1.18思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が「フェラーリ12チリンドリ」に試乗。前編では伝家の宝刀であるV12エンジンを絶賛した山野。後編ではコンビを組むシャシーの印象を余すところなく聞いてみた。 -
BYDシールAWD(4WD)【試乗記】
2026.1.17試乗記BYDのBEVサルーン「シール」の機能アップデートモデルが登場。強化のポイント自体はそれほど多くないが、4WDモデルの「シールAWD」は新たに電子制御式の可変ダンパーを装備したというから見逃せない。さまざまなシーンでの乗り心地をチェックした。 -
新生ノートンがいよいよ始動! 名門の復活を担う次世代モーターサイクルの姿に迫る
2026.1.16デイリーコラム英国のモーターサイクル史にあまたの逸話を残してきた名門、ノートンが、いよいよ再始動! その数奇な歴史を振り返るとともに、ミラノで発表された4台の次世代モデルを通して、彼らが思い描く未来像に迫った。
















































