メルセデス・ベンツCLA250 4MATIC(4WD/7AT)/CLA220d(FF/8AT)
こんなに良くなっちゃって 2019.05.10 試乗記 2013年のデビュー以来、コンパクトな4ドアモデルとして人気を集めてきたメルセデス・ベンツの「CLAクーペ」。2代目となる新型は、基幹車種「Cクラス」の存在をおびやかすほどの完成度を見せてくれた。クラスレスなところが人気
新型メルセデス・ベンツCLAのプレス向け国際試乗会はドイツ・ミュンヘン空港を起点に開催された。ミュンヘンといえば最大のライバルであるBMWの本拠地であり、また近くのインゴルシュタットにはアウディも居て、空港には体験型施設のアウディフォーラムもある。
そんな敵陣真っただ中でイベントが開催されたのは、もちろんライバルたちを挑発するためだろう。2013年にデビューした初代CLAは、メルセデス・ベンツの中でもユーザー年齢層が若く、またライバルからの乗り換えの割合も際立って高かったという。しかもBMWは、次期型「2シリーズ」にはCLAの対抗馬となる「グランクーペ」を追加すると公言しているものの現時点では用意はなく、アウディもまた同様の状況だ。
要するに、敵は丸腰で攻めてくることができないでいるのを分かっていて、ここを舞台に選んだのである。戦いは熾烈(しれつ)というほかない。
メルセデス・ベンツ日本に聞くと、ヒットの理由のひとつにはクラスレスな存在感があるという。4ドアクーペという遊び心が強くアピールされたパッケージングが、C/E/Sというヒエラルキーの外にあるクルマと見せるらしい。例えばずいぶん成長したCクラスと比較して、扱いやすいサイズを理由にこちらを選んだ、なんて人は実はほとんど居ないのだそうだ。
もはやCクラスを超えた!?
それは日本だけの話ではないのだろう。新型CLAは人気の一番の要因に違いないスタイリングを刷新し、それを理由にサイズアップも図っている。全長は4688mm、全幅は1830mmと、いずれもCクラスを上回るほどに大きくされ、それによってノーズ前端を下げ、フェンダーを拡幅し、ワイド&ロー感を強調しているのだ。実際に一番、横に張り出しているのはリアフェンダーである。
その上で煩雑だったキャラクターラインを整理し、シンプルにまとめたスタイリングは従来よりも格段に美しく仕上がっている。こうなると、いよいよCクラスとどっちが上なのか下なのか分からない。
インテリアは、同じプラットフォームを使う「Aクラス」と基本的に同じ構成とされる。横長大画面のワイドスクリーンコックピットを用い、柔らかな曲面で構成されたダッシュボードには、照明まで入れ込まれたタービン形状のエアダクトがずらりと並ぶ。64色から選択できるイルミネーションの色合いにもよるが、相当に妖しい雰囲気を醸し出すこともできる。
操作系にはもちろん最新のMBUXを採用する。「ハイ、メルセデス」と声を掛けるだけで起動する音声認識機能はさらにアップデートされて、複雑な文節の理解力が高められたというが、こちらは当面はアメリカ向けのみとなるようだ。
サイズアップはデザインだけでなく室内の広さにも貢献していて、特に横方向の余裕が増している。また後席は、着座姿勢も少し変わったのか男性でも頭がつっかえることがなくなったから、数時間のドライブにも十分対応してくれそうだ。荷室容量は10リッター減となったが、それでも460リッターを確保。開口部が左右に広げられ、使い勝手は向上している。
これぞメルセデスの走り
走りについては、幅広いボディーサイズに合わせてトレッドを拡大するべくハブキャリアやタイロッドなどが専用品とされ、アンチロールバーが大径化されるなどして、Aクラスなどよりもスポーティーに仕立てたとうたわれている。また、Aクラスではエンジンやタイヤサイズによってトーションビームとマルチリンクを使い分けているリアサスペンションは、CLAでは全車マルチリンクとされた。
パワートレインは全車、直列4気筒ターボで、ガソリンが1.4リッターと2リッター、ディーゼルが1.5リッターと2リッターがそろう。そのうち今回は、ガソリン2リッターで最高出力225ps、最大トルク350Nmの「CLA250 4MATIC」と、最高出力190ps、最大トルク400Nmのディーゼル2リッターを積む「CLA220d」の2台のステアリングを握ることができた。
まず試したのはCLA250 4MATIC。動力性能は十分以上で、先代の登場当時にはあからさまなトルク不足を感じた低中速域もしっかりとトルクがついてくるし、回せばトップエンドまでしっかりパワーがついてくる。しかもサウンドだって結構聞かせるものになっていて、アウトバーンでは気持ち良く右足に力を込めることができた。
驚いたのは乗り心地である。19インチタイヤ装着ということで乗る前にはあまり期待はしていなかったのだが、実際にはしなやかにストロークし、あらゆる入力のカドを丸めてくれる、実に上質な乗り心地が実現されていたのだ。しかも、“冗舌”なステアリングを切り込んだ時のレスポンスにも適度な軽快感があって、ワインディングロードだって楽しく走れる。想像をはるかに上回る出来栄えに、大いに感心させられたのである。
実は試乗車にはアダプティブダンピングシステムが装着されていた。その効果はかなりのものらしく、スポーティーなだけでなく極めて快適な走りは、これぞメルセデス・ベンツという味わいが濃厚だった。この組み合わせなら、あるいはCクラスよりも完成度は上かも……と、お世辞抜きにそう感じられたほどだ。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
より多くの人にアピールできる
CLA220dに乗り換えると、こちらは低回転域からトルクが充実していて、市街地から高速道路まで抜群のドライバビリティーを誇るだけでなく、想像をはるかに超える静粛性、スムーズさを味わわせてくれた。このエンジンは2020年からのさらに厳しくなるユーロ6d排ガス規制に対応するメルセデス・ベンツ自慢の作。ディーゼルの進化に終わりはない。開発陣の気迫が、そこにはみなぎっているように思えた。
運転支援装備についてはAクラスと同様で、カメラとレーダーの進化により500m前方の状況まで検知することが可能。機能面も、ウインカーレバーの操作で車線変更できるレーンチェンジングアシストが備わり、マルチビームLEDヘッドランプもオプションで用意されるなど、旗艦「Sクラス」にだってほぼ遜色はない。
内外装ともにデザインの洗練度、クオリティーを高め、走りの質も格段に引き上げられた新型CLAは、先代の人気を引き継ぐだけにはとどまらず、さらに広いユーザー層にアピールできそうな仕上がりとなっている。あるいはサイズうんぬんではなくその内容で、Cクラスではなくこちらを選ぶという人も出てくるかもしれない。
2019年末以降という日本での販売開始の際には、まずは「CLA250 4MATIC」が導入されるもよう。そのあと「CLA200d」「CLA180」といったモデルが続くこととなりそうだ。
(文=島下泰久/写真=メルセデス・ベンツ日本/編集=関 顕也)
拡大 |
テスト車のデータ
メルセデス・ベンツCLA250 4MATIC
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4688×1830×1439mm
ホイールベース:2729mm
車重:1550kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:224ps(165kW)/5500rpm
最大トルク:350Nm(35.7kgm)/1800rpm
タイヤ:(前)225/40R19 93W/(後)225/40R19 93W(ピレリPゼロ)
燃費:6.5-6.7リッター/100km(約14.9-15.4km/リッター、NEDC複合モード)
価格:--円/テスト車=--円
オプション装備:--
※数値は欧州仕様のもの。
テスト車の年式:2019年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(プレミアムガソリン)
参考燃費:--km/リッター
メルセデス・ベンツCLA220d
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4688×1830×1439mm
ホイールベース:2729mm
車重:1560kg
駆動方式:FF
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:190ps(140kW)/3800rpm
最大トルク:400Nm(40.8kgm)/1600-2600rpm
タイヤ:(前)225/40R19 93W/(後)225/40R19 93W(ピレリPゼロ)
燃費:4.3-4.4リッター/100km(約22.7-23.3km/リッター、NEDC複合モード)
価格:--円/テスト車=--円
オプション装備:--
※数値は欧州仕様のもの。
テスト車の年式:2019年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(軽油)
参考燃費:--km/リッター

島下 泰久
モータージャーナリスト。乗って、書いて、最近ではしゃべる機会も激増中。『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)、『クルマの未来で日本はどう戦うのか?』(星海社)など著書多数。YouTubeチャンネル『RIDE NOW』主宰。所有(する不動)車は「ホンダ・ビート」「スバル・サンバー」など。
-
トヨタRAV4 Z(4WD/CVT)【試乗記】 2026.8.12 トヨタの人気SUV「RAV4」が6代目へと進化。どれくらい人気なのかは本文をご覧いただきたいが、日本だけでなく約180もの国と地域で愛されているモデルゆえに、その仕上がりはとにかく手堅く、そして隙がない。街から高速道路、さらに山道まで走り回って、気になったのはわずか1カ所のみだった。
-
ボルボES90ウルトラ ツインモーター パフォーマンス(4WD)【試乗記】 2026.8.11 新型電気自動車「ES90」は、ボルボが「フラッグシップクロスオーバー」と紹介する新種の5ドアハッチバックモデル。「SPA2」プラットフォームによるゆとりあるボディーと、ボルボの次世代電気自動車アーキテクチャーの織りなす走りを報告する。
-
テスラ・モデルY Lプレミアム(4WD)【試乗記】 2026.8.10 日本でも好評を博す、テスラのSUVタイプの電気自動車「モデルY」。その6人乗り・ロングボディー仕様が「モデルY L」だ。実際に機能性や走りに触れてみると、決して「補助金頼み」とは言えない、同車の人気の理由が分かってきた。
-
アウディQ3 TFSI 110kWアドバンスト(FF/7AT)【試乗記】 2026.8.8 アウディのミドルサイズSUV「Q3」の新型が日本に上陸。デザインやインターフェイスは新しくなっているが、さまざまな事情によってクルマとしての基本コンポーネンツは先代を踏襲しているのが3代目の実情だ。果たしてそれが吉と出るか凶と出るか。FWDのエントリーグレードを試す。
-
スズキDR-Z4SM(5MT)【レビュー】 2026.8.7 スズキ久々のスーパーモタードである「DR-Z4SM」に試乗! 最新の400cc級デュアルパーパスモデルをベースに、タイヤを17インチ化してオンロードでの機動性を突き詰めた一台は、今どき珍しいほどにアグレッシブで、強烈な個性を放つマシンに仕上がっていた。
-
NEW
目指すは究極の走りと官能性 「ランボルギーニ・レヴエルトSV」の核心をキーマンが語る
2026.8.15デイリーコラムランボルギーニが「レヴエルト」の進化モデル「レヴエルトSV」を発表。強力なV12エンジンとプラグインハイブリッドシステムを搭載したフラッグシップは、いかなる進化を遂げたのか? V12モデルのディレクターを務めるキーマンが、その核心を語った。 -
ボルボのフラッグシップ電気自動車「EX90」が上陸 軌道修正された電動化戦略の今を探る
2026.8.13デイリーコラムボルボのフラッグシップ電気自動車(BEV)「EX90」と「ES90」が日本に上陸。2030年までに完全BEVブランドになるという目標は軌道修正したが、2040年までに温室効果ガス排出ゼロ企業を目指す方針に変わりはない。ボルボの電動化戦略の今を探る。 -
第974回:「民生用」と「軍用」をまたぐクルマたち――ルノーの最新戦術車両に思う
2026.8.13マッキナ あらモーダ!ルノーのクロスオーバーSUV「ラファール」がまさかの軍用車に? ルノーと軍需との第1次大戦にまでさかのぼるつながりと、彼らが今ふたたび防衛産業と距離を詰め始めた理由、世界的に見られる軍用と民生用の垣根を超えたクルマの歴史を、大矢アキオが解説する。 -
「スバルBRZ」が採用した「新しいシフトレバー構造」とは何か?
2026.8.12デイリーコラム2026年7月31日に発表された「スバルBRZ」の最新モデルでは6段MTへの「新しいシフトレバー構造」の採用がうたわれている。すでに熟成し切った技術のように思われるマニュアルトランスミッションだが、2026年にもなってどんな構造を取り入れたのだろうか。スバルに聞いてみた。 -
第124回:「日産エルグランド」と「メルセデス・ベンツVLE」(前編) ―絶対王者に戦いを挑む、次世代高級ミニバンのカーデザイン―
2026.8.12カーデザイン曼荼羅日産が新型「エルグランド」を発売し、海の向こうではメルセデス・ベンツが「VLE」を発表するなど、いまにわかに盛り上がりを見せている高級ミニバンのかいわい。新興勢力は王者「トヨタ・アルファード」の存在を超えられるのか? カーデザイン視点で考えた。 -
トヨタRAV4 Z(4WD/CVT)【試乗記】
2026.8.12試乗記トヨタの人気SUV「RAV4」が6代目へと進化。どれくらい人気なのかは本文をご覧いただきたいが、日本だけでなく約180もの国と地域で愛されているモデルゆえに、その仕上がりはとにかく手堅く、そして隙がない。街から高速道路、さらに山道まで走り回って、気になったのはわずか1カ所のみだった。



















































