ボルボXC60 B5 AWDインスクリプション(4WD/8AT)
つつましさという美徳 2020.10.03 試乗記 「ボルボXC60」の2リッターガソリンターボ車が、マイルドハイブリッドシステムを搭載した「B5」に進化。電動アシスト機構を得たボルボのアッパーミドルクラスSUVは、プレミアムなのにつつましいという、得難いキャラクターのモデルに仕上がっていた。デザインのためのデザインにあらず
「ボルボXC60 B5 AWDインスクリプション」、このクルマの何がいいって、乗っていると、いい人に見られることだ。
まず、「どないだー!」とか「ナンボのもんじゃー!」という押し出しの強さをウリにするモデルとは一線を画す、抑制の利いたルックスが上品だ。パッと見の派手さはない代わりに、前後のオーバーハングの長さがいい案配のバランスで、引き締まった印象を与える。ルーフラインもじっくりと観察するときれいだけれど、クーペっぽさを強調する最近のはやりとは違って、控えめなアピールだ。
つまり“盛る”ことではなく一歩引くことで美しさと個性を表現していて、インスタ映えは期待できないけれど、飽きずに長~く愛用できそうだ。同時に、ただ控えめであるだけでなく、T字型のヘッドランプやL字型のテールランプでしっかりとボルボらしさも主張している。
ギラギラせずに、落ち着いた印象を与えるデザイン手法はインテリアにも共通する。こちらも、飾り立てることを第一に考えているのではなく、使いやすさを考え抜いて、そこに上等な素材を与えたらこういう内装になりました、という感じ。
内外装ともに、デザイナーが主役ではなく、乗り手が主役のデザインなのだ。グッドデザインというと、つい優秀なデザイナーの顔が見える作品を想像してしまう。けれども、このクルマの場合はデザイナーが黒子に徹していて、クルマがカッコいいというより、乗っている人がステキに見える。そういうクルマって意外と少ないもんです。
マイルドな乗り味とスムーズな加速感
もしあなたの知人がこのクルマを購入したとして、ゴルフとかバードウオッチングに行くとします。走りだした瞬間に、助手席に座ったあなたは「こいつ、いいヤツだなぁ」としみじみ感じるはずだ。
まず乗り心地が素晴らしい。基本的にはソフトな乗り心地で、路面からの衝撃は、タイヤ→サスペンション→ボディー→シートを経由する過程で角が丸められ、ドライバーに届く頃にはすっかりマイルドになっている。サスペンションがいいとかシートがいいとか、なにかひとつが突出しているわけではなく、車両全体で、「ハーシュネス(路面からの突き上げ)を小さくしよう」という意思統一が図られている。そして、ただのユルふわの乗り心地ではなく、ハーシュネスを受け止めたあとはしっかりとボディーの揺れを抑える。余波、余震は残さず、スパッと収束する。
ちなみに試乗車には、31万円ナリでオプション設定されるエアサスペンションが装着されていた。標準サスと直接比較したわけではないので断言はできないけれど、ソフトでありながらダンピングの利いた乗り心地は、エアサスの手柄だと考えられる。
そしてもうひとつ、走りだしのスムーズさ、力強さもドライバーがいいヤツに思える理由だ。
申し遅れましたが、電動化を進めるボルボにあってこのXC60のガソリンエンジン搭載モデルは、マイルドハイブリッドシステムを搭載するようになった。モデル名の「B」はブレーキのBで、回生ブレーキが備わることを意味する。
エンジンスターターの役割も果たすモーターが、減速時にはエネルギーを回生する発電機として機能し、リチウムイオン電池に電気を蓄え、加速時には走行をアシストする、というシステム自体はハイブリッド車に慣れた身には特に新味はない。けれども2t近い車体が静かに、悠々と発進する感覚は、何度味わっても感心する。
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高速道路で感じる基本骨格の出来のよさ
市街地でも十分に魅力的だったボルボXC60 B5 AWDインスクリプションであるけれど、高速道路ではさらに輝きを増した。
しなやかな乗り心地とダンピングの利いた乗り味を両立するシャシーの美点は、速度が上がるにつれてより強調される。市街地では、この快適さはエアサスの恩恵だと感じた。けれども、100km/hで路面の不整を突破したときに感じたショックのいなし方や、みしりともしないボディー剛性の高さからは、基本骨格からしっかりとつくり込まれていることが伝わってくる。
高速巡航時の静かさも感心するレベルで、33万円ナリのオプションであるBower&Wilkinsのプレミアムサウンドシステムの音が気持ちよく鳴っている。これくらい静かなら、高額オプションも奮発するかいがあるというものだ。
高速での静粛性の高さには、気筒休止システムも寄与しているはずだ。「はずだ」というのは、目を凝らして耳を澄ませても、気筒休止の切り替えが確認できなかったから。エンジンへの負荷が低い状態では、4気筒のうち1番目と4番目のシリンダーが休憩しているはずだけれど、だれがいつどこでサボっているのか、ドライバーには発見できなかった。
ここでwebCG編集部のH氏に運転を代わってもらい、後席を試す。後席は足元も頭上もスペースは十分で、居心地がいい。乗り心地も快適で、前席は乗り心地がよかったのに後席はイマイチというクルマも多いなかで、かなりレベルが高い。もしH氏が友人だったら、「お前、いいクルマ買ったなぁ」と声をかけたくなるはずだ。
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ドライバーがいい人に見える
再びドライバーズシートに戻り、運転支援系の装置を試す。このクルマに限らずボルボ全体に言えることだけれど、この手の装置のインターフェイスがいい。例えば前のクルマについて行こうと決めると、ほぼワンアクションで追従の構えになる(=アダプティブクルーズコントロールを作動させられる)。このあたりからも、ドライバーが主役で、エンジニアリングはあくまで快適なドライブを支援するものだというボルボの考え方が伝わってくる。
ただし、以前は「追従走行はボルボが早い段階から採用しただけあって、加減速が滑らかだなぁ」と感心したものだけれど、各社のレベルが上ったいま、そういうアドバンテージは感じなかった。
また弱点というわけではないけれど、ワインディングロードでペースを上げると、上屋がグラっと傾く感覚があって、それほど積極的に走らせようという気にはならない。ま、ハンドリングをうんぬんするモデルでもないし、路面の荒れた山道でも乗り心地のよさが変わらないことを考えれば、目くじらを立てるほどのこともない。
というわけでセンスのいいデザインをまとい、静かに、しなやかに走るボルボXC60に乗っている人は、いい人だと思われるに違いない。そしてその背景には、デザイナーやエンジニアではなく、あくまでユーザーが主役だというボルボの考え方があるように思えてならない。
(文=サトータケシ/写真=荒川正幸/編集=堀田剛資)
テスト車のデータ
ボルボXC60 B5 AWDインスクリプション
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4690×1900×1660mm
ホイールベース:2865mm
車重:1940kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:8段AT
エンジン最高出力:250PS(184kW)/5400-5700rpm
エンジン最大トルク:350N・m(35.7kgf・m)/1800-4800rpm
モーター最高出力:13.6PS(10kW)/3000rpm
モーター最大トルク:40N・m(4.1kgf・m)/2250rpm
タイヤ:(前)235/55R19 105V/(後)235/55R19 105V(ミシュラン・ラティチュードスポーツ3)
燃費:11.5km/リッター(WLTCモード)
価格:734万円/テスト車=829万6000円
オプション装備:メタリックペイント<オスミウムグレーメタリック>(9万2000円)/チルトアップ機構付き電動パノラマガラスサンルーフ(21万円)/パワーチャイルドロック(1万4000円)/Bowers&Wilkinsプレミアムサウンドオーディオシステム<1100W、15スピーカー、サブウーハー付き>(33万円)/電子制御式4輪エアサスペンション+ドライビングモード選択式FOUR-Cアクティブパフォーマンスシャシー(31万円)
テスト車の年式:2020年型
テスト開始時の走行距離:4382km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3)/高速道路(7)/山岳路(0)
テスト距離:398.1km
使用燃料:39.2リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:10.2km/リッター(満タン法)/10.6km/リッター(車載燃費計計測値)
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サトータケシ
ライター/エディター。2022年12月時点での愛車は2010年型の「シトロエンC6」。最近、ちょいちょいお金がかかるようになったのが悩みのタネ。いまほしいクルマは「スズキ・ジムニー」と「ルノー・トゥインゴS」。でも2台持ちする甲斐性はなし。残念……。
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