新型「キックス」がスマッシュヒットの日産 次なる一手のコンパクトミニバンとはどんなクルマか?
2026.08.19 デイリーコラム日産に足りなかったジャンル
♪来る! きっと来る♪
ここで映画『リング』のテーマ曲が脳内を流れた人はもう40代後半以降でしょうか。
それはともかく、7月8日付の『共同通信』によると、日産自動車の山崎庄平氏が「2028年度以降に小型ミニバンの発売を検討している」ことをインタビューで明らかにしたという。山崎氏は日本/アセアン、関係会社マネジメントコミッティー議長として国内や東南アジア事業を統括する立場にあるのだとか。そんな偉い人がインタビューで明かしたということは、「火のないところに煙は立たぬ」どころか盛大に焚き火が始まっている、もしくは狼煙(のろし)が上がっていると考えるのが自然でしょうねぇ。
というわけで来るんです、テレビの中から貞子が(さすがに液晶テレビからは出てこられないだろうなあ……)。いやそうじゃなくてコンパクトミニバン市場に日産からの刺客が。
記事によると「(日産は)200万~250万円くらいのコンパクトなクルマを持っていないので考えている。詳細は決まっていない」とのこと。ですが、常識的に考えて2年後に発売しようというクルマをこれから開発しようなんてことはあり得ない(開発スピードが速い中国メーカーならやるかもしれないけれど)。山崎氏は「思いつきだが、2列シートや電気自動車のみにすることも考えられる」とコメントしたようだけど、筆者に言わせればそれはあえて実際とは違うことを言ってはぐらかしているだけ。クルマの概要はもう決まっていて鋭意開発中なのでしょうね。
果たして、どんなクルマになるのか?
いうまでもないのは大人気車種となっている「トヨタ・シエンタ」や「ホンダ・フリード」をライバルとするクルマになるということ。つまり全長4.3m級のスライドドア付きの3列シート車ですね。
「トヨタ・ルーミー」&「ダイハツ・トール」や「スズキ・ソリオ」の全長4m級2列シートモデルという可能性もなくはないけれど、“ミニバン”とは3列シート車を指すのが一般的であり、自動車メーカーの偉い人がミニバンと言ったら、それは3列シート車と考えるのが妥当。それが筆者はシエンタ&フリードの競合車だと考える根拠だ(確証はないけど)。
パワートレインはどうなる?
もしかして、それって「キューブ3(キュービック)」の復活!?
そう考える気持ちも分からなくはないが、その新型車が国内市場を重視したものであるならば、そうではないだろう。なぜなら、国内のミニバンマーケットはスライドドアがマスト。当時キューブ3は「コンパクトな3列ミニバン」という点では時代の波に乗れていたものの、スライドドアではなくスイングドアだったことが大ヒットモデルになれなかった大きな理由といっていい。日本で売るならやっぱりスライドドアなのですよ。
逆に、日本以外の市場に向けたものならスライドドアの必要はない(むしろコンパクトクラスだとスライドドアは受け入れられにくい)。どのマーケットを重視するかによって、ドアのスタイルが違うのが日本車の常識だ。
プラットフォームは「ノート」や新型「キックス」に使われているCMF-Bと考えるのが自然。能力が高く、コンパクトカー向けとはいえ全長4.5mを超えるSUVの「ルノー・アルカナ」にも使われているくらいだからキャパシティー的には大丈夫でしょう。
電気自動車専用……なんてことはおそらくない。2年先とはいえ、それでは国内で量販できないことくらい日産は痛いほど分かっているはずだ。となればもちろんメインのパワートレインはシリーズハイブリッドのおなじみ「e-POWER」であり、問題はハイブリッドではない素のガソリン仕様が用意されるかというところでしょうかね。
より多く売りたいなら車両価格を抑えられるガソリン車を用意するべきだとは思う一方で、ライバルたちも販売面の主力はハイブリッドという状況を考えると効率を考えて「e-POWER一本足」となるかもしれない。燃費だけでなく動力性能も快適性も、“価格以外”はすべてハイブリッドが有利なのは事実だが……さて?
「セレナ」などミドルサイズミニバンの価格がどんどん上がっている今、それよりも手軽なミニバンをラインナップに加えれば販売台数が上乗せされるのは明らか。ただ、老婆心ながら思うのは「今さらですか!?」ということ。シエンタやフリードが大ヒットモデルになったのは今に始まったことではない。そこへ参入してこなかったという事実が、日産の国内市場軽視の姿勢を端的に表していたと思うのは筆者だけでしょうか。
とはいえ、その状況が変化しそうな兆しがあるだけでも「日産は変わりつつある」というべきなのかも。イヴァン・エスピノーサCEO体制となり、かつては冷遇してきた日本市場を「ホーム」と位置づけて重視することを表明している日産の今後に期待しかない……という結論にしておきましょうか。今日のところは。
でも、本当に小さなミニバンを出すの?
(文=工藤貴宏/写真=日産自動車、トヨタ自動車、本田技研工業/編集=藤沢 勝)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |

工藤 貴宏
物心ついた頃からクルマ好きとなり、小学生の頃には自動車雑誌を読み始め、大学在学中に自動車雑誌編集部でアルバイトを開始。その後、バイト先の編集部に就職したのち編集プロダクションを経て、気が付けばフリーランスの自動車ライターに。別の言い方をすればプロのクルマ好きってとこでしょうか。現在の所有車両は「スズキ・ソリオ」「マツダCX-60」、そして「ホンダS660」。実用車からスポーツカーまで幅広く大好きです。
-
メーカー団体もついに本気になった? 日本における「自動運転」の未来と現在地 2026.10.2 日本の自動車メーカー14社で構成される日本自動車工業会が、記者会見で「自動運転」の普及・実装へ向けた取り組みを発表した。彼らは、どのようなロードマップで自動運転の社会実装を考えており、そこにはどのような課題があるのか?
-
安いのは分かってる 軽スーパーハイトBEV「BYDラッコ」のお買い得度を検証する 2026.10.1 BYDの軽スーパーハイトBEV「ラッコ」がいよいよ日本の道を走り始めた。すでに各所で報じられているとおり安いのは間違いないが、装備内容等も考慮したうえでの買い得度はどんなものか。ライバル車との比較を通じて検証した。
-
目指したのは“さらなるスポーティーセダン” 新型「BMW 3シリーズ」の技術的ハイライトを読み解く 2026.9.30 BMWが「i3」に続いて「3シリーズ セダン」の新型を公開した。かたや電気自動車、かたや内燃機関搭載車とはいえ、どちらも同じ3シリーズなのだが、どうも世間の受け止めはそうではないらしい。それはともかく、「Mスポーツ プロ」も設定された新型の技術的ハイライトを解説する。
-
目指せ国内生産100万台! 日産の国内事業再編にみる思惑と狙い 2026.9.28 日産が将来の成長へ向けた国内事業の再構築を発表。国内生産100万台を実現すると表明した。赤字に工場閉鎖と、暗いニュースが続いていた日産だが、現状の4割増しというこの大胆な目標は、達成可能なものなのか? そもそも日本での事業にこだわる理由とは?
-
あのクルマはなぜ売れている? 自販連のデータから“日本車の今”を読む 2026.9.25 ここ数年の自販連のデータからは、国内市場におけるトヨタのゆるぎない強さが見てとれる。ではその実績から、人々にどんなクルマが求められているといえるのか? 統計や数字の裏にある消費者マインドを探ってみよう。
-
NEW
思考するドライバー 山野哲也の“目”――ランボルギーニ・テメラリオ編
2026.10.2webCG Moviesレーシングドライバー山野哲也が「ランボルギーニ・テメラリオ」に試乗。プラグインハイブリッド化によってさらなる高性能を手にした、ミドシップスーパースポーツの走りを語る。 -
NEW
第876回:“ヨコハマ史上最高”が目白押し SUV向けスタッドレスタイヤの新製品「アイスガード8 SUV」を試す
2026.10.2エディターから一言2026年9月1日に販売が開始された横浜ゴムのSUV用スタッドレスタイヤ「アイスガード8 SUV」。従来製品との比較で氷上性能を14%、雪上性能を4%、耐摩耗性能を11%アップさせたというその実力を、一足先に冬のテストコースで確かめた。 -
NEW
メーカー団体もついに本気になった? 日本における「自動運転」の未来と現在地
2026.10.2デイリーコラム日本の自動車メーカー14社で構成される日本自動車工業会が、記者会見で「自動運転」の普及・実装へ向けた取り組みを発表した。彼らは、どのようなロードマップで自動運転の社会実装を考えており、そこにはどのような課題があるのか? -
安いのは分かってる 軽スーパーハイトBEV「BYDラッコ」のお買い得度を検証する
2026.10.1デイリーコラムBYDの軽スーパーハイトBEV「ラッコ」がいよいよ日本の道を走り始めた。すでに各所で報じられているとおり安いのは間違いないが、装備内容等も考慮したうえでの買い得度はどんなものか。ライバル車との比較を通じて検証した。 -
マツダCX-5 L(後編)
2026.10.1あの多田哲哉の自動車放談ファン待望の新型「マツダCX-5」ではあるが、試乗した多田哲哉さんは気になるところがある様子。一体、どんなところが……? さまざまな車両を開発してきた専門家としての意見を聞いてみよう。 -
楽しいのが一番! 世界のスポーツカー特集
2026.10.1日刊!名車列伝過ごしやすい気候になり、ドライブが楽しみな10月。「スポーツの秋」ということで、クルマ好きならグッとくる、国内外のスポーツカーを日替わりで紹介します。




































