交通社会に浸透中! 安全運転につながるAI技術って何だ?
2021.02.05 デイリーコラム判定はAIがする時代
AI(人工知能)といえば、クルマのインフォテインメントシステムを含む広義の家電でいろいろ世話になっている気がするが、近ごろは交通安全や交通事故にかかわる領域でも、AIはその存在感を発揮しはじめている。
例えば、損害保険会社大手の東京海上日動は、個人向け自動車保険の特約のなかで「ドライブエージェント パーソナル」というテレマティクスサービスを2020年3月に導入した。
これは、該当する特約を契約したユーザーにドライブレコーダーを貸与し、万一事故が起きた際には「事故受付センター」に自動的に事故発生の連絡がされ、同時に事故時の映像も送信。さらにはデータ受信からわずか5分程度でAIが事故状況を再現および分析するというもの。そして過去の判例に基づく責任割合の参考値もすみやかに算出し、事故状況の把握と解決を迅速に行えるようにする――というサービスだ。
行政による事例もある。香川県は2020年3月、県内の交通事故が起こりやすい場所をAIで分析し、「潜在的な危険度が高い」とAI予測した100カ所を示す地図を製作した。
この地図は約4万件の人身事故データや、道幅や車線数などに関する情報、沿線店舗の状況などの膨大なデータをAIに読み込ませ、その後、AIが「交通事故発生の危険性が高い」とはじき出した上位100カ所を地図上に落とし込んだものだ。
こちらのマップは香川県内の市町で配布されると同時に、県のホームページで公表されたわけだが、それに加えて「保険会社がドライバーに貸与するドライブレコーダーとの連携」も始まっている。同年12月には、香川県と交通事故防止に関する包括契約を結んでいるMS&ADインシュアランスグループの三井住友海上火災保険とあいおいニッセイ同和損害保険が、契約者に提供している通信型ドライブレコーダーとこの地図を連携させ、AIが潜在的な危険を予測した地点を通る際に、ドライバーに音声で注意をうながすという取り組みを発表。年明け1月末から、この新アラート機能が有効になっている。
「自分で運転している」といえるのか?
前述のような一般ドライバー向けサービスだけでなく、プロドライバーの世界でも、AIを活用した安全運行システムの開発は進められている。
企業向け物流サービスを提供している日立物流は、IoTテクノロジー(Internet of Things/モノが直接インターネットにつながる技術)を活用して職業ドライバーの運行をリアルタイムに管理し、ドライバーを事故から守るという「スマート安全運行管理システム(SSCV<Smart & Safety Connected Vehicle>)」を開発した(2020年10月発表)。
これは、運行前に測定されるドライバーの生体情報と、運行中の車載センシング機器で検出される生体反応や“ヒヤリ・ハット”などの危険シグナルをクラウドに集約。その集約されたデータをAIが分析し、危険運転や異常運転のシグナルが確認された場合、それを管理者にリアルタイムに通知。そして管理者が同じくリアルタイムにドライバーへ警告を発信することで、漫然運転状態(疲労の蓄積や心配事などにより、目は開いているが、見ていないという状態)が引き起こす事故を未然に防ぐ、というシステムだ。
こういった「AIの活用」と、「自動運転」――ある条件下で基本操作をクルマ任せにできる“レベル3の自動運転”までいかないにしても、高度な運転支援システムによる“優秀なレベル2の半自動運転”――が組み合わされたとき、各ドライバーの胸に去来するのは「……今このクルマを運転しているのは、果たして自分なのか? それともキカイなのか?」という微妙な感情なのかもしれない。
そうであるがゆえに「AIなんて要らないよ! AIはカーマニアの敵! ついでに自分はAT(オートマ)も大っ嫌いだ!」と叫びたくなる人もいるだろう。
その気持ちは、比較的守旧派なカーマニアのひとりとして、筆者もわかるつもりだ。しかし、カーマニアであろうとなかろうと、そしてどれだけ運転技術や安全運転意識に自信があろうとなかろうと、人は事故るときには事故る。またどれだけ注意を払ったとしても、「漫然運転状態」に陥る瞬間は必ずあるはずだ。
だからこそ、AIには今後もっともっと活躍してほしいと思っている。「自動車趣味」を愛しているからこそ、そう思うのだ。
(文=谷山 雪/写真=webCG/編集=関 顕也)
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