新生アルピナは成功するか? その将来とBMWとの関係について考える
2026.06.01 デイリーコラム価格は「BMW以上、ロールス以下」
ついに新生アルピナの第一歩が刻まれた。イタリア国内で開催された歴史的な自動車コンクールであるコンコルソ・デレガンツァ・ヴィラ・デステにおいて、既報のとおり「Vision BMW ALPINA(ビジョンBMWアルピナ)」がその姿を現したのだった(関連記事)。
ここでは主に筆者がショーカーそのものを間近で見た印象と、BMWグループのデザインを統括するエイドリアン・ファン・ホーイドンク氏との半時間にわたるインタビューをもとに、“BMWによる新たなアルピナ像”に迫ってみたい。
まず、事実として分かっているのは、
- ビジョンBMWアルピナは全くのコンセプトカーであること
- 市販モデルの投入は2027年以降でまずは2モデルの用意があること
- 最初のモデルは「7シリーズ」がベースとなること
- 価格帯は“BMWの最高価格以上でロールス・ロイス以下”となること
- 最初のモデルは“プラグのない”V8エンジンを積むこと
- 生産台数は現在より絞られる可能性があること
といった具合である。
エイドリアンによれば、「これまでグループのさまざまなブランドを見てきたが、アルピナは自分のデザイナー人生にとって最も重要なプロジェクト」であるらしい。BMWの車台をベースとしつつ、そこに独自のラグジュアリーとパフォーマンス(彼らはそれをスピードと言った)を加える。それそのものはアルピナがこれまで実施してきた手法に相違ないが、さらに妥協なく推し進めていく覚悟であるという。
ヴィラ・デステに姿を現したショーカーは、アルピナ初期の傑作「B7Sターボ」をコンセプトのモチーフとした。ショーカーが他の場所への“出張展示”に出払ったあとの展示ステージではグリーンメタリックのB7Sターボが代役を務めていたことからも、そのことは容易に推察できる。
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そこに“らしさ”があればいい
何より、ショーカーが「8シリーズ」をベースとしていることは明白だ(かなり大きくて、全長は5.2mを軽く超えていたけれど!)。そしてアンバーカラーの灯火類や控えめなアルピナサイドデカール、フィン形状のアロイホイールなどが次世代においてもアルピナを象徴するディテールとなることは間違いない。
そこで気になったのでエイドリアンに聞いてみた。
「既存のラインナップとの見た目の違いは、これまで以上に大きくなるのですか?」
対するエイドリアンの答えは明快だった。
「必ずしも“まるで違う”必要はないと思っています。ベースモデルのデザインを生かしながらアルピナらしさを演出すればいいのです」
つまり、デザイン面に関してもこれまでと同様にベースモデル+αとなることが濃厚だ。とはいえ、今では設計や生産システムが進化しており、以前のように空力デバイスを加えただけ、という程度ではないと思う。少なくともキドニーグリルのモチーフや、ランプ類のデザインはビジョン流が踏襲されると予想しておこう。
おそらく、もう1台は「X7」ベースになるはずだ。BMWアルピナとしては、まずはこの2台でブランドの価値をしっかり再定義するつもりのようで、販売台数の多寡にこだわる必要は全くないとまで言い切った。
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アルピナからBMWの次期型も見えてくる
そうすると気になるのは、小型モデルのアルピナがあるのかどうか、だ。
「日本市場で特に『B3』や『B5』の需要が多いことは分かっています。将来的に絶対ないとはいえません。実際、例えば『M3』の最上級モデルになると18万ユーロ以上のプライスタグでも需要はあるのです」
ここ数年でノイエクラッセ版アルピナが出てくる可能性は低いが、将来的な“小さな最高級車”として出番があるに違いない。
ヴィラ・デステでは匿名の情報筋からすでに4モデルがアルピナとして企画段階にあると聞いた。7シリーズ、X7とくれば当然8シリーズ、さらには「XM」だろうか?
そこでエイドリアンの言葉を思い出す。新生アルピナも以前と同様にベースモデルから大きくデザインを変える必要はないと彼は言った。その意味するところは何か。大胆に予想すれば、今回発表されたビジョンBMWアルピナは、実は次期型8シリーズのデザインコンセプトを兼ねているのではないか? 要するにスタイルはそのままに、BMW版の顔やインテリアが存在する気がしてならない。
思い出してほしい。現行型8シリーズのデビューはまずレーシングカーの「M8 GT」からだった。そしてMブランドのコンセプトにふさわしくその発表はサーキットで、あの時はルマンで行われたのだ。ラグジュアリーとスピードを極める新生アルピナにとって、珠玉の美しきスポーツモデルが集うヴィラ・デステは最高のお披露目の舞台。そう考えたのだろう。
理想のBMW。それが私のアルピナ評である。以前にB7Sターボを所有したこともあったが、同時代の「ポルシェ911ターボ」よりも速く、乗り味はBMWとして洗練されていた。そのB7Sターボの価値が今や5000万円前後といわれているのだから、新生アルピナがまずはそのあたりの価格帯から始まると知っても、実は驚きではなかったのだった。
(文=西川 淳/写真=BMW/編集=関 顕也)
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西川 淳
永遠のスーパーカー少年を自負する、京都在住の自動車ライター。精密機械工学部出身で、産業から経済、歴史、文化、工学まで俯瞰(ふかん)して自動車を眺めることを理想とする。得意なジャンルは、高額車やスポーツカー、輸入車、クラシックカーといった趣味の領域。
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