ドゥカティ・モンスター+(6MT)
理想がここにある 2021.08.26 試乗記 軽量コンパクトな車体に、パワフルな2気筒エンジンを搭載した「ドゥカティ・モンスター」。軽快な走りを身上とするイタリア製ネイキッドスポーツの最新モデルは、このジャンルの理想ともいえる走りを備えたマシンに仕上がっていた。フル加速でも感じられるエンジンの上質さ
1993年に登場して以来、ドゥカティ・モンスターはさまざまな進化を遂げてきた。年式やモデルによってハンドリングがずいぶん違っていて、なかには乗りこなすのが難しいモデルもあったが、今回試乗した最新のモンスターは、非常に扱いやすいマシンになっていた。
マシンにまたがってすぐに感じたのは、シートの低さと軽く前傾になる自然なライディングポジション。車体が軽いこともあって取り回しも容易で、走りだす前から乗りやすいマシンであることが伝わってくる。
エンジンのフィーリングも洗練されていて、さすがに3000rpmを切るような回転域で走るとギクシャクしてしまうが、そこから先はとても滑らかに回る。ツーリングモードで走ってみるとスロットルを開けたときのドンツキもなく、とても優しくレスポンスしてくれる。マイルドな特性だが、トルク自体はあるのでストリートではとても楽だし、マシンに急(せ)かされるような感じもしない。
軽やかに回転を上げていくLツインの鼓動感は、以前に比べて多少薄まったような印象もあるが、それは振動が少なくなってよりスムーズになったため。エンジン自体の完成度は確実に向上している。レブリミットまで引っ張って、回転上昇にともなうパワーの出方を確かめてみても、特にどこかの回転域で強く出るようなこともなく、終始フラットな特性を示す。どんな乗り方をしても従順で扱いやすい性格のエンジンだ。
ところが、これがスポーツモードになると様相が一変し、ずいぶんと元気になる。中速域でのレスポンスが鋭さを増し、回転を上げていくと7000rpm付近からパワーが盛り上がり、8000rpmからはレブリミットまで一直線に吹け上がる。非常にパワフルだが、エンジンのフィーリングはやはり滑らかだ。ツーリングモードのときに感じた上質さは、フルパワーで加速しているときも変わらない。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
ハイパワーネイキッドに乗るときの鉄則
ただ、スポーツモードでパワーを解き放つときには注意が必要だ。ハンドル位置が高く(スポーツネイキッドとしてはだが)、比較的体が起き気味のライディングポジションとなるため、中速で不用意にスロットルを開けると上体がのけぞり、ハンドルを引っ張ってしまう可能性があるのだ。
モンスターのパワーでハンドルを引っ張ってしまえば、フロントタイヤは簡単に地面から離される。もちろんトラクションコントロール、ウイリーコントロールが介入してくれるのだが、スポーツモードの場合はその度合いも少なくなっているから、タイヤが軽く浮き上がった状態になり、ライダーが体勢を崩していたりすると不安定な挙動を誘発してしまう。だから、スポーツモードで走るときはライダーがしっかりと荷重移動し、加速時はハンドルに力を入れないよう前傾姿勢になっていることが必須。これはモンスターに限ったことでなく、ハイパワーなスポーツネイキッド全般に言えることだ。
車両のほうに話を戻すと、新型モンスターはクイックシフターの作動も秀逸で、交差点でバイクをバンクさせ、加速しているような状態でシフトアップしてもショックはなく、リアタイヤにかかる駆動力の変化も少ない。回転数が低くても作動がスムーズなので、ツーリングからスポーツ走行まで積極的に使いたくなる。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
ハイシート仕様も試してみたい
テスターはドゥカティ・モンスターというと、どうしても一昔前のモデルをイメージしてしまう。キャスターが立っていてフォークのオフセットが少なく、低くて幅の広いハンドルを押さえ込みながらコントロールするバイクだ。ステアリングで舵角をつける際には、前傾姿勢と幅広のハンドルでは操作がセンシティブになりがちで、思うように操るのが難しかった。しかし新型にそんな難しさはみじんもない。ハンドリングはニュートラルで安定感があり、市街地でも走りやすい。ハンドルの切れ角が増えてUターンがしやすくなったのもストリート派のライダーにはうれしいところだろう。
ただ、シートが低くハンドル位置が高いため、ライダーが意識してハンドルに強く荷重をかけるような乗り方は難しい。もちろんドゥカティがつくるスポーツネイキッドだから、スポーティーなライディングをこなすことはできるのだが、ビッグネイキッドのようにマシンへ体重を預けてバンクさせていくような乗り方になる。ワインディングロードやサーキットなどで積極的に体重移動しながらマシンコントロールを楽しみたい人にとっては、好みが分かれるかもしれない。
もっともこれには、日本仕様では標準装備となるローシート等も関係しているはずだ。機会があったらハイシート仕様にも試乗してみたいと思う。着座位置が変わるだけで、印象はずいぶん変わることだろう。
軽量でハイパワーなマシンをネイキッドに仕立てるのは難しい。アップライトなポジションで乗りやすくなるイメージがあるかもしれないが、スポーツバイクに比べればフロント荷重が減ってしまうし、自由になったライダーの上体は、加減速で暴れてマシンの挙動を乱してしまう可能性もある。ドゥカティ・モンスターは、そういった制約のなかで試行錯誤を続けながら進化してきた。マネジメントシステムの進化やこれまでのデータの蓄積によって、やっと現在のマシンが出来上がったのである。
多くの人がイメージしていた「アップハンドルで乗りやすく、ハイパワーを自由自在に操ることができるマシン」。そんな理想のスポーツネイキッドが、今回のモンスターで具現したのかもしれない。
(文=後藤 武/写真=郡大二郎/編集=堀田剛資)
【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=--×--×--mm
ホイールベース:1474mm
シート高:775mm
重量:188kg
エンジン:937cc 水冷4ストロークV型2気筒DOHC 4バルブ(1気筒あたり)
最高出力:111PS(82kW)/9250rpm
最大トルク:93N・m(9.5kgf・m)/6500rpm
トランスミッション:6段MT
燃費:5.3リッター/100km(約18.9km/リッター)
価格:149万5000円~151万5000円

後藤 武
ライター/エディター。航空誌『シュナイダー』や二輪専門誌『CLUBMAN』『2ストマガジン』などの編集長を経てフリーランスに。エアロバティックスパイロットだった経験を生かしてエアレースの解説なども担当。二輪旧車、V8、複葉機をこよなく愛す。
-
DS N°8エトワールAWD(4WD) 2026.8.22 DSオートモビルから登場した、新時代の旗艦モデル「N°8」。完全新設計のシャシーにアクティブサスペンションを組み合わせた電気自動車(BEV)は、往年の“ハイドロ”を思わせる乗り味と人車一体の走りを備えた、稀有(けう)なサルーンに仕上がっていた。
-
メルセデス・ベンツCLA220(FF/8AT)【試乗記】 2026.8.21 メルセデス独自のオペレーティングシステムと、フル電動化を見据えた最新プラットフォームを組み合わせて開発された新型「CLA」。その先鋒として発売されたハイブリッドモデルの仕上がりを、セダンの上級グレードに試乗して確かめた。
-
マツダCX-5 L(4WD)【試乗記】 2026.8.19 マツダの販売の中軸を担うミドルクラスSUV「CX-5」が、3代目にフルモデルチェンジ。その完成度にはどうしても期待してしまうところだが、実車の仕上がりはどうだったのか? 絶対に失敗の許されない、マツダの基幹車種の実力に触れた。
-
トヨタbZ4XツーリングZ(FWD)【試乗記】 2026.8.18 クルマの進化か、充電インフラの進化か、それともCEV補助金拡充の効能かは定かではないが、ようやく日本の電気自動車(BEV)も普及期を迎えつつある。ことに「bZ4Xツーリング」は豊かな一充電走行距離と優れたドライバビリティーが自慢のトヨタの最新作だ。FWDモデルの仕上がりをリポートする。
-
BMW iX3 50 xDrive Mスポーツ(4WD)【試乗記】 2026.8.17 BMWの新世代電気自動車の第1弾である「iX3」がいよいよ日本の道を走り始めた。さすが「ノイエクラッセ」をうたうだけあって、内外装だけではなく、運転感覚もまた新しい。「Mスポーツ」グレードの仕上がりをリポートする。
-
NEW
トヨタRAV4アドベンチャー(前編)
2026.8.23思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が新型「トヨタRAV4」に試乗。ご存じのとおり今やトヨタの屋台骨を支えるSUVであり、先代モデルではグローバルでの年間販売台数が100万台に到達。世界で最も多く販売されるトヨタ車の6代目だ。箱根のワインディングロードでの印象を聞いた。 -
DS N°8エトワールAWD(4WD)
2026.8.22試乗記DSオートモビルから登場した、新時代の旗艦モデル「N°8」。完全新設計のシャシーにアクティブサスペンションを組み合わせた電気自動車(BEV)は、往年の“ハイドロ”を思わせる乗り味と人車一体の走りを備えた、稀有(けう)なサルーンに仕上がっていた。 -
メルセデス・ベンツCLA220(FF/8AT)【試乗記】
2026.8.21試乗記メルセデス独自のオペレーティングシステムと、フル電動化を見据えた最新プラットフォームを組み合わせて開発された新型「CLA」。その先鋒として発売されたハイブリッドモデルの仕上がりを、セダンの上級グレードに試乗して確かめた。 -
これは“ヨーロッパ版軽自動車”か? 欧州の新自動車規格「M1E」とニッポンの軽の可能性
2026.8.21デイリーコラム欧州で検討されている、新たな小型電気自動車(BEV)規格「M1E」。手ごろなBEVの普及と域内自動車産業の保護を目的としたこの規格は、軽自動車という独自の小型車を育んできた日本にとってもチャンスとなるのか? 新たな自動車規格の展望と可能性を考察する。 -
FCEVで世界一の販売台数 「ヒョンデ・ネッソ」にみる水素の可能性と普及へのカギ
2026.8.20デイリーコラムフルモデルチェンジしたヒョンデの燃料電池車(FCEV)「ネッソ」は、1014km(参考値)の一充填走行距離を実現したという。進化したゼロエミッションの走りを味わいながら、ヒョンデが目指す水素社会の可能性とFCEVの未来について考えてみた。 -
第292回:350SEが運ぶのは幸福か、それとも究極の不幸か…… 『星の時 4K』
2026.8.20読んでますカー、観てますカーブラジルの女性小説家クラリッセ・リスペクトルが1977年に発表した小説を、女性監督スザーナ・アマラウが1985年に映画化した伝説の作品。「メルセデス・ベンツ350SE」がもたらす運命の瞬間を謎めいた手つきで描き出す。












