BMW M440i xDriveカブリオレ(4WD/8AT)
ハレの日はオープンで 2021.09.20 試乗記 BMWの「4シリーズ カブリオレ」が2代目に進化。“Mパフォーマンス仕上げ”の最上級モデル「M440i xDriveカブリオレ」を郊外に連れ出し、伝統のストレート6と4WDのシャシー、そしてオープンスタイルが織りなす走りを確かめた。トップグレードはぜんぶ載せ
「BMW 3シリーズ」級のクーペモデル、「4シリーズ」のオープンバージョンがカブリオレだ。この系譜のスタートは初代3シリーズ時代までさかのぼる。82年の2代目(E30)に変わり、3シリーズが「六本木のカローラ」と呼ばれたころも、ちょっとハズしてカブリオレを選ぶ人がけっこういた。バブルに向かう当時、ライバルのドイツ車に競合モデルはなかった。2ドア4座オープンはBMWのオハコのひとつといえる。
ものすごく鼻の穴の大きい人みたいな顔つきになった新型4シリーズでも、カブリオレはプレゼンスを発揮している。日本仕様はガソリンモデルのみだが、2リッター4気筒と3リッター6気筒が用意される。
このうち、今回の試乗車は最上級のM440i xDrive。車名が示すとおり、“Mパフォーマンス仕上げ”の3リッターモデルの四駆である。カブリオレの440iを求めると、ぜんぶ載せのこの仕様しかない。
価格は大台超えの1089万円。「420iシリーズ」は600万円台だから、「Mアダプティブサスペンション」や「Mデファレンシャルギア」などが組み込まれるとはいえ、2リッター2WDモデルと比べて飛び抜けて高価だ。富裕層向けの4シリーズであることは間違いない。
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シルエットはクーペ風
リトラクタブルルーフからソフトトップに戻ったのが新型オープン4シリーズのニュースである。これによりルーフ部分は先代より40%軽量化されたという。
試乗車のボディー色はサンレモグリーン。濃い緑だが、日陰だと黒に見える。ソフトトップも黒いから、遠目のシルエットはクーペである。それくらい、上屋はきれいなカーブを描いている。シールをいっさい見せることなく、ガラスのリアウィンドウとソフトトップをツライチに仕上げているのも見事だ。
ソフトトップといっても、クローズド時に押して柔らかいところはない。室内側から天井のどこを叩いても、コツコツと硬い音がする。外側はファブリックでも、車上狙いにナイフでザックリやられるようなソフトトップではない。
その上屋は“開”が16秒、“閉”が18秒(実測)。もちろんボタンひとつで静かに完遂する。50km/h以下なら、走行中も開閉できる。
Z型に畳まれたソフトトップはトランクルームの上方に格納される。その状態でトランクリッドを開けると、「マツダ・ロードスター」かと思うほど、中は狭く見えるが、隠れた床の奥行きは110cmある。
ソフトトップを閉めると、フルサイズの広いトランクが現れる。後席の背もたれを倒せば、室内と貫通する。ただ、貫通口は幅53cm×高さ27cmなので、クーペのようにスポーツ自転車を寝かして積んだりすることはできない。
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走りはコンフォート志向
ドアを閉めると、「ハイ、どうぞ」という感じでシートベルトのアンカーが右肩の後ろに伸びてくる。2ドアBMWの昔からの親切装備だ。このおもてなし、好きである。
最上級4シリーズ カブリオレの乗り味は実に上等だ。グレード名の頭にMがつくとはいえ、「M4」ではない。ガツンとくるようなスポーツテイストは感じない。
3リッター直列6気筒ターボは387PS。最大トルクは500N・mに達する力持ちだが、1880kgの車重は「M440i xDriveクーペ」より140kg重い。冷間スタート直後の10秒ほどは角形の排気管からかなりのエキゾーストノートを聴かせるが、走りだせば静穏で、動力性能も刺激より胸板の厚い余裕を感じさせる。
開口部の大きい4座オープンだから、ボディーの剛性感も「ポルシェ718ボクスター」ほどスポーティーではない。それに合わせて乗り心地もマイルドだ。ドライブモードを「スポーツ」に上げても、路面からの当たりは丸い。同じグレードのクーペより、乗り味のテイストをはっきりコンフォート系に振っている。ニュルブルクリンクよりもコートダジュールが似合うクルマである。
そんなキャラクターはトップを開けるとさらに際立つ。アメリカ西海岸でテルマ&ルイーズに乗せても似合いそうだ。オープンコックピットは、60km/hあたりから風が暴れ始めるが、後席にウインドディフレクターを付けると、ピタッと静かになる。
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クーペとの価格差は小さい
約400kmを走って、燃費は9.8km/リッター(満タン法)だった。このエンジンにはまだ48Vマイルドハイブリッドはインストールされていないが、車重1.9t近い4WDの3リッターターボ車としては悪くない数値である。
前述したウインドディフレクターを付けると、リアシートに人は乗せられなくなるが、実際、後席に人を乗せてオープン走行している4座カブリオレはまず見かけない。
ソフトトップを閉めた後席は、意外にちゃんと座れる。背もたれの角度は立ち気味だが、「MINIコンバーチブル」ほどひどくない。ソフトトップなのに、天井はドーム型に丸く、圧迫感も少ない。クーペとそれほど大きく変わらない後席居住性を持ち、耐候性や静粛性も硬い屋根と大差なく、しかしいざとなれば青天井でドラスティックに気分が変えられる。そんな二面性を持つ高級BMWである。
このクラスともなると、屋根付きか屋根開きかを予算で選ぶ悩みはないようだ。あらためて価格表を見ると、1089万円の価格はM440i xDriveクーペのプラスたった51万円。「MINIクーパーS」と同コンバーチブルの差額(56万円)より小さいのである。
(文=下野康史<かばたやすし>/写真=神村 聖/編集=櫻井健一)
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テスト車のデータ
BMW M440i xDriveカブリオレ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4775×1850×1395mm
ホイールベース:2850mm
車重:1880kg
駆動方式:4WD
エンジン:3リッター直6 DOHC 24バルブ ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:387PS(285kW)/5800rpm
最大トルク:500N・m(51.0kgf・m)/1800-5000rpm
タイヤ:(前)225/40R19 93Y/(後)255/35R19 96Y(ブリヂストン・トランザT005)※ランフラットタイヤ
燃費:10.9km/リッター(WLTCモード)/12.0km/リッター(JC08モード)
価格:1089万円/テスト車=1112万8000円
オプション装備:メタリックペイント<サンレモグリーン>(10万円)/ヴァーネスカレザーシート<オイスター、専用ブラックステッチ付き>(0円)/Mスポーツブレーキ(4万8000円)/Mアンソラジットシルバーエフェクトソフトトップ(4万2000円)/ウインドディフレクター(4万8000円)
テスト車の年式:2021年型
テスト開始時の走行距離:1991km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:394.5km
使用燃料:40.1リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:9.8m/リッター(満タン法)/9.6km/リッター(車載燃費計計測値)

下野 康史
自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。
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