「最速フェラーリ」対「最強レッドブル」、2022年のF1後半戦はどうなる?
2022.08.26 デイリーコラム2022年シーズンのF1はサマーブレイクを終え、8月28日に決勝レースが行われる第14戦ベルギーGPから残る9戦に突入する。前半の戦いぶりを振り返りながら、後半戦の見どころをまとめてみた。
「最速」と「最強」の奇妙なズレ
40年ぶりに「グラウンド・エフェクト・カー」が復活した2022年のF1。その前半戦は、「最速」が必ずしも「最強」にはならないという、奇妙なズレを生じながら進展してきたといっていい。
いまや最もパワフルといわれるパワーユニットをもって華麗なる復活を遂げたフェラーリは、前半の13戦で8回ものポールポジションを獲得するほど各サーキットで韋駄天(いだてん)の走りを披露。しかし勝利数となると形勢が逆転し、レッドブルが9勝、対するフェラーリは4勝にとどまることになり、結果、コンストラクターズチャンピオンシップではレッドブルがフェラーリに対して97点ものリードを築いた。
また、開幕から3戦して2勝と上々のスタートを切ったシャルル・ルクレールは、その後フェラーリの信頼性の問題や戦略ミス、また自身のエラーなどで多くの勝ち星とポイントを取りこぼし、最大のライバルであるレッドブルのマックス・フェルスタッペンに80点もの大差をつけられてしまった。残り9戦で全勝し、ファステストラップとスプリントでのポイントを加えると合計242点が手に入るとはいえ、80点をひっくり返すのは並大抵のことではない。
2連覇に向かってまっしぐらのフェルスタッペンだが、心配がないわけではない。フロントの食いつきが弱いというマシン特性はフェルスタッペンの好みに合わないもので、チャンピオンにフルに力を発揮させるためにはさらなる改良が必要とされている。さらに、重量級といわれるレッドブルのマシンの軽量化、そしてシーズン序盤ほどではないものの、第13戦ハンガリーGP予選でのパワー不足などにみられる細かな信頼性への懸念も残っている。
ベルギーGPからは、空力的な上下動「ポーポシング」とメカニカルな振動「バウンシング」を抑えるための規制が新たに施行され、その一環としていわゆる「フレキシブル・フロア」に対する検査も厳格化される。大方の予想では、この規制強化が勢力図に与える影響はほとんどないとされるが、フェラーリとルクレールにとっては“神風”となってほしいところかもしれない。スクーデリアのタイトル獲得には、自分たちの戦い方以外に「運」も必要とされているのである。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
どん底からはい上がってきた王者、激しいランキング4位争い
ターボハイブリッド時代の覇者、メルセデスの2022年前半戦は、どん底からはい上がることに多くの時間と労力が費やされた。ポーポシング/バウンシングといったグラウンド・エフェクト・カー特有の挙動に悪戦苦闘してきたシルバーアローは、5月の第6戦スペインGPでようやく問題解決の糸口をつかみ、以降は上り調子である。
ルイス・ハミルトンは夏休み前までの5戦で連続表彰台、そして第12戦フランスGP、続くハンガリーGPでは2戦連続2-3フィニッシュ、さらにハンガリーではジョージ・ラッセルが初ポールを獲得するなど、順調にリザルトを残してきている。
フェラーリ、レッドブルとのパフォーマンスの差はまだ大きく、特に予選では苦戦を強いられることが多々あるものの、レースでは着実に表彰台の常連になりつつあり、気がつけばコンストラクターズランキングで2位のフェラーリに30点差まで迫るまでになった。レッドブル、フェラーリ、そしてメルセデスの3強が優勝争いに絡んでくれば、レースの面白みはがぜん増してくるだろう。
中団勢に目を向ければ、4点差でチャンピオンシップ4位を争うアルピーヌとマクラーレンの戦いも熾烈(しれつ)になってきた。アルピーヌはマシンアップデートを重ねるごとにパフォーマンスを上げてきており、特にフェルナンド・アロンソが予選2位を獲得した第9戦カナダGP以降は、2桁ポイントを4戦連続で記録するなど、シーズンの出遅れをカバーする活躍を見せている。
一方、マクラーレンにとっては浮き沈みの激しいシーズンとなっている。開幕前のブレーキの問題からスタートダッシュに失敗するも、第4戦エミリア・ロマーニャGPではランド・ノリスが3位表彰台。マシン自体にポテンシャルはありそうだが、その後はマイナーポイントを拾うにとどまっており、好調のアルピーヌとは好対照。さらにダニエル・リカルドの不調でポイントがなかなか積み上げられず、リカルドは契約満了を前にして今季限りでマクラーレンから放出されることとなった。いずれにしても、ミッドフィールダーの雄となるのは果たしてどちらか、見ものである。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
2年目で安定感を増した角田、そして3年ぶりの日本GP
アルファタウリは苦しい戦いを強いられているが、GP2年目の角田裕毅は着実に経験を自信につなげている、そんな前半戦だった。
2020年は107点でランキング7位、続く2021年は142点で同6位と順位を上げてきていただけに、今シーズン半ばでまでのアルファタウリの「27点で8位」という戦績は明らかな後退と言わざるを得ない。
第12戦フランスGPでは数少ないマシンアップデートを投入したものの、ピエール・ガスリー、角田とも夏休み前の過去5戦でポイントを稼げていない。当面は7点差でランキング7位のハースを追いかけることになるが、ライバルとの開発競争で後れをとっていることは明白であるがゆえに、効果的なマシンアップデートが必要とされている。
今季11点を獲得している角田自身も、ルーキーイヤーとなった昨季に比べポイントを減らしているものの、ミスやクラッシュが重なった1年前からは格段の成長を遂げている。マシンのパフォーマンスを最大限に引き出すことに関しては良い感触を得ているようであり、自己採点では「10点中7点」だとか。ガスリーを上回ることもしばしばあり、フランスGPでは今季ベストタイの予選8位で入賞に期待がかかったが、他車に当てられてリタイアという悔しい思いもした。
そんな角田の勇姿を間近で見られる機会が、ようやく訪れる。日本GPが3年ぶりに開かれるのだ。ホンダとしては撤退後となるものの、引き続きそのパワーユニットは角田の、そしてディフェンディングチャンピオンのフェルスタッペンらの背中を強力に押すことになる。鈴鹿サーキットでのGPウイークは10月7日に開幕し、9日に決勝レースが行われる。日本のF1ファンにとって、待ちに待った週末であることは言うまでもないだろう。
(文=柄谷悠人/編集=関 顕也)
拡大 |
拡大 |

柄谷 悠人
-
フェラーリが「日本上陸60周年」 記念祭から“ブランドの今とこれから”を読むNEW 2026.10.19 「日本上陸60周年」を祝うファン感謝イベントを開催したフェラーリ。自動車界に燦然と輝くハイブランドは、いま何を目指しどこに行こうとしているのか? 経営トップの談話を交えながら推察してみよう。
-
スズキの未来を徹底検証! 技術戦略説明会から“10年先のスズキの姿”を夢想する 2026.10.16 年間生産500万台で、Dセグメントまでカバーする巨大メーカーに!? スズキが発表した「10年先を見据えた技術戦略2026」を徹底検証。技術開発に製品開発、インドを核としたグローバル戦略などの中身を通して、「10年先のスズキの姿」を予想した。
-
間もなく正式発表 ミツオカの新型2シータースポーツカー「LA1」を予測する 2026.10.15 光岡自動車が2026年11月26日に正式発表を予定しているアメリカンスタイルの新型2シータースポーツカー「LA1」。現在公開されているLA1の画像とティーザーサイトに掲載された情報から、その特徴を分析する。
-
「BYDラッコ」「スズキeスカイ」登場で卍どもえに 軽乗用BEVの覇権はどこが握る? 2026.10.14 これまで「日産サクラ/三菱eKクロスEV」と「ホンダN-ONE e:」のみだったところに「BYDラッコ」と「スズキeスカイ」が加わり、軽BEV市場がにわかに盛り上がりを見せている。どれもほぼ同じ床面積を持つBEVだが、比べてみるとその中身は結構違う。今後の覇権を握るのはどの陣営か。
-
電動化された新型「A110」の登場はいつ? 来日したアルピーヌのクリエフCEOに未来戦略を聞く 2026.10.12 アルピーヌのフィリップ・クリエフCEOが来日し、現在推進している戦略を報道関係者に説明した。なかでも気になったのは電動化された新型「A110」と、「A110Rウルティム」に相当する特別な超高性能モデルの存在だ。その内容とは?
-
NEW
トヨタ・ランドクルーザー“300”GRスポーツ(4WD/10AT)【試乗記】
2026.10.19試乗記トヨタの「ランドクルーザー“300”」にハイブリッドパワートレイン搭載モデルが登場。環境負荷低減のために牙を抜かれた……どころか、電気の力を味方に、さらに力強さを増しているから面白い。愛知県のオフロードコースで乗った印象をリポートする。 -
NEW
フェラーリが「日本上陸60周年」 記念祭から“ブランドの今とこれから”を読む
2026.10.19デイリーコラム「日本上陸60周年」を祝うファン感謝イベントを開催したフェラーリ。自動車界に燦然と輝くハイブランドは、いま何を目指しどこに行こうとしているのか? 経営トップの談話を交えながら推察してみよう。 -
日産キックスX e-4ORCE(前編)
2026.10.18思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が新型「日産キックス」に試乗。デザインが新しいのはもちろんのこと、まさに下ろしたての最新のパワートレインを搭載。日産の大きな期待を背負ったコンパクトSUVである。箱根のワインディングロードでの印象を聞いた。 -
三菱eKクロスEV P(FWD)【試乗記】
2026.10.17試乗記三菱の軽乗用電気自動車(EV)「eKクロスEV」が、一部改良でデザインを刷新! 2022年発売の古参の一台は、台頭するライバルをどう迎え撃つのか? 最新モデルと比べても、キラリと光る魅力はあるのか? 軽EVのパイオニアが擁する一台の実力を確かめた。 -
写真で解説する「フィアット・グランデパンダ」
2026.10.16画像・写真ステランティスが「フィアットブランドの大きな柱のひとつとなる重要なモデル」と位置づける「グランデパンダ」が日本上陸。その具体的な見どころを、写真とともに解説する。 -
フィアット・グランデパンダ ハイブリッド ラプリマ(FF/6AT)【試乗記】
2026.10.16試乗記欧州を代表するコンパクトカーの一台である「フィアット・パンダ」が第4世代に進化。新たに「グランデパンダ」を名乗り、日本にやってきた。ずばり新型の見どころは車両の随所にちりばめられた初代モデルへのオマージュである。上位グレード「ラプリマ」の仕上がりをリポートする。







