メルセデスAMG EQS53 4MATIC+(4WD)
ここまでやるか 2022.12.10 試乗記 「EQS53 4MATIC+」はメルセデスAMG初をうたう電気自動車(BEV)だ。「M」や「RS」には負けられないという意気込みのもと開発されているだけあって、そのつくり込みには一切の隙がない。ワインディングロードで実力の一端を味わってみた。メルセデス、半端ない
既存のSUVをベースにしたこれまでの「EQA」や「EQC」なら「へえー、これが電気自動車ですか?」と言っていた隣家のオトーサンも、このEQSを見たら「これは一体何ですか?」とびっくり仰天するはずだ。メルセデスの新しいフラッグシップBEVはそれほど未来的というか衝撃的な姿形をしている。BEV専用プラットフォームのなせる業だが、ちょっと前ならショーモデルでしかありえなかったフォルムのクルマが実際に市販される時代になったんだなあ、とため息が出る。
もちろん、見た目だけではない。しっかりと形態は機能に裏打ちされている。EQSの空気抵抗係数はなんと0.20と驚異的で、市販車としては世界最高値である。これほどの数値はタイヤをスパッツで覆った速度記録車にしか達成できなかったものだが、メルセデスは彼らが「ワン・ボウ(一筆書きの弓型)」と称する、ツルリ、ぺったんこのコンセプトカーのようなフォルムのボディーに徹底的な細部処理を施すことで実現した。例えばAピラーとウインドシールドの段差はラバーストリップで埋められており、ドアハンドルも格納式、さらに密閉のためにフェンダー部まで回り込んだフロントフードも開かない。正確に言うと、ユーザーが日常的に開けることは想定されておらず、高性能HEPAフィルターを交換する場合などサービス工場でのみ開閉可能という。それゆえ左前フェンダー部にはウオッシャー液注入用のフラップが別に設けられている。さらに車高もエアサスペンションによって車速に応じて低められるという。やる時は、ここまでやるかとあきれるほど徹底的なのがメルセデスである。
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AMG初のBEV
2022年9月末に国内発売されたばかりのEQSは、メルセデス・ベンツの電動車サブブランドEQシリーズのフラッグシップモデルである。リアアクスルに「eATS」と称する電動パワートレイン(モーターは永久磁石同期式)を積む後輪駆動の「EQS450+」(1578万円)と、前後2基のeATSを搭載するAMG EQS53 4MATIC+(2372万円)の2車種があり、前者は333PSと568N・mを生み出し、後者のシステム最高出力&最大トルクは658PSと950N・mで、これがレーススタート時には761PSと1020N・mにまで引き上げられるという。107.8kWhという大容量のリチウムイオン電池を新開発のBEV専用プラットフォームに搭載するEQS53の車重は2.7t近くにも達するが、0-100km/h加速は3.8秒とスーパースポーツカー並み、最高速も250km/hという。ちなみにEQS53はメルセデスAMG初の電気自動車を称している。
大容量バッテリーを積むEQS53はWLTCモードでの一充電走行距離601km(EQS450は700km!)を誇るが、街なかや遅い一般道を無音ではいまわっている際のいわゆる電費は3km/kWhにも届かないぐらいで、これでは600kmなどとてもおぼつかないと思っていたが、実は速度が増すとスルスル伸びていく(別の機会に乗った450は高速に乗ると6km/kWhぐらいになった)。これぞエアロダイナミックボディーのたまものだろう。本来BEVは高速走行を苦手とするはずだが、どうもEQSには当てはまらないらしい。
EQSは「Sクラス」相当のBEVということだが、実際に全長は5225mm、全幅1925mm、全高は1520mmと現行型Sクラスとほぼ同じ。ホイールベースは3210mmでこちらはSクラスのロングホイールベース仕様と事実上同じ。要するにオーバーハングが短いSクラスと考えればいい。その堂々たるサイズにこれでもかというぐらいに新機軸を満載したメルセデスの意欲作である。
後輪の切れ角にもぎょっとする
これだけの図体(ずうたい)ともなれば特に日本では街なかでの取り回しが気になるところだが、EQSにはリアアクスルステアリングが標準装備されており、EQS53 4MATIC+では9度まで逆位相に切れる(EQS450+では最大4.5度まで)。おかげでターニングサークルは5.3mと、「フォルクスワーゲン・ゴルフ」並みに小さく、しかもEQS450+(5.5m)についてはウェブサイト経由でのアップデートによって最大10度まで拡大することが可能で、その場合の最小回転半径は5mになるという。もっとも運転席からはまったくボディーの隅は見えないから(カメラを利用するしかない)、その点は覚悟しておく必要がある。
デザインスタディーのような外観にもぎょっとするが、それ以上に驚くのは12.3インチのコックピットディスプレイと17.7インチのメディアディスプレイ、そして12.3インチの助手席ディスプレイという3個のディスプレイ(後2基は有機EL式)を一枚の曲面ガラスで覆った「MBUXハイパースクリーン」である(EQS450+ではオプション)。幅はほとんど1.4m、ダッシュすべてが巨大なモニターのようなこのスクリーンは圧倒的な迫力で、こちらについてもここまで来たかと恐れ入る。物理スイッチはだいぶ減ったが、必要な機能アイコンは学習機能を使って(メルセデスは「ゼロレイヤー」と称する)トップ画面に表示されるように考えられているのがありがたい。
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メルセデスの意地が詰まっている
走りっぷりは当たり前だがフラッグシップにふさわしく、徹頭徹尾滑らかで静かである。室内もラゲッジスペースも広大で、さすがは専用プラットフォームというべきか、バッテリー搭載によるスペースへの影響などはどこにも見当たらない。他のEQシリーズ同様、パドルによって強回生/普通回生/回生なしの3モードに加えて、インテリジェント回生というモードも選ぶことができる。これは前走車などを検知して自動的に回生ブレーキのレベルを制御するもので、前車がいる場合には完全停止まで作動する巧妙なシステムだ。ヘビー級のEQSは当然可変ダンパーとエアスプリングを採用したエアサスペンションを備えるが、80km/hぐらいまでの低中速では若干ヒョコヒョコした感覚がつきまとう。それ以上になるとピシッと落ち着き、あたりも滑らかになるようだ。
ラグジュアリーなフラッグシップBEVとはいえ、レーススタートモードにするとジェット機の離陸時のような効果音が響くし、スポーツ+モードでは恐ろしいまでのトルクを開放し、コーナリングの最中でも右足に瞬時に反応して怒った猫のように敏しょうに、どう猛に暴れる。ここまでやれる、どうだ見たか、と言われているような気がした。誠に恐れ入りました、ではあるが、将来を考えるとちょっとゾクッとしたEQS53である。
(文=高平高輝/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝)
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テスト車のデータ
メルセデスAMG EQS53 4MATIC+
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=5225×1925×1520mm
ホイールベース:3210mm
車重:2670kg
駆動方式:4WD
フロントモーター:交流同期電動機
リアモーター:交流同期電動機
フロントモーター最高出力:237PS(174kW)/4858-6937rpm
フロントモーター最大トルク:346N・m(35.3kgf・m)/0-4858rpm
リアモーター最高出力:422PS(310kW)/4918-6886rpm
リアモーター最大トルク:609N・m(62.1kgf・m)/0-4822rpm
システム最高出力:658PS(484kW)
システム最大トルク:950N・m(96.9kgf・m)
タイヤ:(前)275/40R21 107W XL/(後)275/40R21 107W XL(ミシュラン・パイロットスポーツEV)
一充電走行距離:601km(WLTCモード)
交流電力量消費率:221kWh/km(WLTCモード)
価格:2372万円/テスト車=2384万3000円
オプション装備:エクスクルーシブパッケージ(12万3000円)
テスト車の年式:2022年型
テスト開始時の走行距離:864km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
消費電力量:--kWh
参考電力消費率:--km/kWh

高平 高輝
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