ジープ・グランドチェロキー サミットリザーブ4xe(4WD/8AT)
文句なしの実力派 2023.04.12 試乗記 5代目となる「ジープ・グランドチェロキー」に、プラグインハイブリッド車(PHEV)の「4xe」が登場。電動パワートレインを得たジープの上級SUVは、走りの質やパワートレインの先進性はもちろん、装備やインテリアの質感でもライバルに比肩する、高い実力の持ち主だった。これからの時代へ向けた回答
これまでエンジン車廃止を強硬に主張していた欧州連合が、エンジン搭載車を条件つきで容認することになっても、電動化の波が目に見えてスピードダウンする可能性は低い。エンジンが生き残るにしても、それは少なくともPHEVというカタチになる可能性が高い。
2022年10月に国内導入が発表されていたジープ・グランドチェロキー(以下グラチェロ)のPHEV=「4xe」は、“マッチョSUVの電動化”という命題に対するジープの正式回答と見ていい。続く2022年12月に受注開始された「ラングラー」の4xe(参照)にも、これと基本的に同じパワーユニットが搭載されているからだ。
グラチェロ(とラングラー)のプラグインパワートレインの核となるのは、おなじみの2リッター4気筒ターボだ。最高出力272PS、最大トルク400N・mというスペックも、既存の純エンジン仕様と基本的に変わりない。
4xeではそのエンジンに2基のモーターを組み合わせる。ジープが「P1」と呼ぶ1つ目のモーターはいわゆるスタータージェネレーター(スターター兼発電機)で、一般的には“BSG”とか“ISG”と呼ばれるものだ。グラチェロやラングラーではクランクシャフトプーリーからベルトを介して駆動するのでBSGと呼ぶのが正確だろう。P1の最高出力と最大トルクは63PSと54N・mで、このクルマではエンジン始動と発電をおこなう。
2基目の「P2」はご想像のとおり、電動(EV)走行や駆動アシスト、そして回生などを担当する高出力なモーター。最高出力145PS、最大トルク255N・mという数値は、それ単独で自然吸気2リッターエンジン+αに相当する。エンジンと変速機にサンドイッチされている。
PHEVのひとつの核ともいえる電池は、14.87kWhという総電力量をもつリチウムイオン式で、満充電状態なら最大53kmのEV走行が可能(WLTCモード)とされている。
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日本における“いちばんお高いジープ”
ラングラーの4xeも、エンジンやモーター、バッテリーはすべて、その性能値も含めてグラチェロのそれと共通だ。諸元表上はバッテリーの総電力量のみわずかにラングラーが上回っているものの、容量やセル数、電圧を見ると、電池も両車で同じだと分かる。
グラチェロとラングラーの4xeで唯一ともいえる相違点は、非PHEVモデルと同じく4WDシステムである。ラングラーのそれがパートタイムとフルタイムを融合した「ロックトラックフルタイム4×4」なのに対して、グラチェロは「クアドラトラックII」となる。これは、センターの電子制御式油圧多板クラッチが完全フリーとなるFR状態から、フルロックするリジッド4WDまで、自在に前後トルク配分を可変制御するタイプであり、副変速機も備える。
今回の試乗車は2グレードあるグラチェロ4xeのうち、上級の「サミットリザーブ」だった。同グレードではさらにリアに電動LSDも追加されるといい、その本体価格はじつに1227万円に達する。
つい最近まで値上げのニュースが目立っていたジープだが、それでも本体価格1000万円超のモデルはさすがに数えるほどしかない。しかも、その1227万円という正札はラングラーのPHEVである「アンリミテッド ルビコン4xe」(1030万円)や、ジープでもっとも大きく豪華なロング版の「グランドチェロキーL」のサミットリザーブ(1189万円~1194万5000円)よりも高い(日本仕様のグラチェロLは3.6リッターV6エンジンのみで、4xeは用意されない)。つまり、このグラチェロのサミットリザーブ4xeは、日本仕様の現行ジープでは最高価格のフラッグシップということだ。
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多様な使い方に応えるパワートレイン制御
普通充電でほぼ満充電にした状態で走り出したグラチェロ4xeは、多くのPHEVと同様に、市街地では基本的にEVとして走る。アクセルペダルを深く踏み込むとエンジンがかかってフルパワーになるが、日本の道路の平均的な流れに上品に従う控えめな運転なら、高速道路での80~90km/h走行までEV状態を保つ。
センターディスプレイに表示させた4WDのリアルタイム配分を観察していると、少なくともドライの舗装路では前輪にトルク配分するのは発進の瞬間や大きく操舵したときが大半で、それ以外は後輪駆動状態で走ることが多い。いっぽうで、減速時は4WDとなって回生効率を最大限まで高めている。
電気だけで走るグラチェロはすこぶる静かだ。物理的な静粛対策に加えて、「オート」モードではしなやかに凹凸を吸収するエアサスがロードノイズを抑制するのにも効果を発揮しているようである。少し負荷が増えてエンジンが回りはじめても、3000rpm以下ならエンジンノイズはほとんど気にならない。
このクルマもほかのグラチェロと同じく、「オート」「スポーツ」「スノー」「マッド/サンド」「ロック」と路面に応じてシャシーやパワートレインのセッティングが変わる「セレクテレインシステム」が備わる。さらには4xe専用の機能として、ボタンひとつで回生を強めてワンペダルドライブ的なパワーフィール(完全停止はしない)となる「マックスリジェネレーション」モード、そして「ハイブリッド」「エレクトリック」「e-SAVE」というパワートレイン制御の選択機能も備わる。
e-SAVEとはご想像のとおり、電池残量をコントロールするモードである。そのe-SAVEにはさらに現状の電池残量を維持する「バッテリー節約」モードと、積極的に残量を復活させる「バッテリー充電」モードがあり、後者では「40%」「60%」「80%」と、充電レベルが任意で設定できるのが面白い。
バッテリー充電モードにすると基本的に燃費が悪化するので、必要な残量に限定すれば無駄な充電を抑制することができる。たとえば、あらかじめ必要な電池残量を確保しておいて、いざというときのオフロードでは繊細なアクセルワークが可能となるEV走行で……といったジープらしい活用法も可能というわけだ。
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優秀なフットワークを支えるシャシーの出自
4xeに搭載される8段ATは各ギアレシオもファイナルレシオも通常の純2リッターターボ車と共通である。そこにモーターパワーが加わってのシステム出力は375PS、同トルクは637N・mというが(いずれも本国仕様)、今回の試乗車は純2リッターターボ車より440kgも重い(同じ「リミテッド」グレード同士の比較だと+340kg)。よって、体感的に驚くような力強さはないが、動力性能は必要十二分といったところだろう。
乗り心地やハンドリングは率直に優秀である。サミットリザーブを名乗るグラチェロはエアサスと電子制御ダンパーを備えるのも特徴で、とくにロングホイールベースとなるグラチェロLのサミットリザーブはまさにとろけるような絶品の乗り心地だ。ショートホイールベースとなる4xeのサミットリザーブはそれには一歩およばずの感があるものの、どんな路面でもしなやかでフラットに安定している。快適性とステアリングの正確性は並みいる手ごわい競合車と比較しても上位に入るだろう。
どんなに荒れた路面でもミシリともいわない車体の剛性感は素晴らしく、2.5tというウェイトをもてあましているそぶりは皆無といっていい。快適性重視のオートモードのままだと山坂道ではマイルドにすぎるが、フットワークが引き締まってパワステも重くなるスポーツモードにすると、一気に俊敏になる。グラチェロの基本骨格はもともともアルファ・ロメオの専用アーキテクチャーとして開発がスタートしたという「ジョルジョ」で、現在はアルファの「ステルヴィオ」に「ジュリア」、そして「マセラティ・グレカーレ」などと共有する。グラチェロの卓越した走りはジョルジョの素性が優秀である証左でもある。
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ため息もののインテリアと充実した装備
それにしても、グラチェロ……そのなかでもサミットリザーブの室内調度には、乗るたびに思わず笑みが出る。グラチェロはグローバルでは「BMW X5」や「メルセデス・ベンツGLE」「ポルシェ・カイエン」「レクサスRX」あたりとの競合を意識したEセグメントクロスオーバーである。
と同時に、ロングホイールベースで3列シーターのLになると、さらに上級の「キャデラック・エスカレード」やレクサスだと「LX」、BMWなら「X7」あたりの市場もうかがわなければならない。本木目パネルに繊細なメッキパーツ、そしてダッシュボードやドアポケットのすみずみまでレザーがていねいに張られるなど、じつに手の込んだ仕立ては、これらハイエンドSUVと比較しても遜色ない。
ジープで1200万円台という価格に、けっこうなハードルの高さを感じるのは正直なところだ。ただし、競合車のX5では、従来型の直6ディーゼルの「Mスポーツ」で本体価格は1141万円。そこに主要オプションをトッピングするだけで、かぎりなく1500万円に近づく。先日発表された改良型は直6のPHEVで1260万円だが、これまでと似た装備内容なら、実質価格はやはりグラチェロよりお高めになるだろう。国産のレクサスRXでも同じPHEVの「450h+」に主要オプションを追加すると、1000万円に手が届きそうになる。
これらの競合車と冷静に比較すれば、柔らかなパレルモレザーの内装や21インチホイール、マッキントッシュ社製の上級サウンドシステム、さらには電動ダブルパノラマルーフまで標準装備したPHEVのグラチェロが1200万円台の前半なら、ベラボーに高いとはいえないだろう。
(文=佐野弘宗/写真=向後一宏/編集=堀田剛資)
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テスト車のデータ
ジープ・グランドチェロキー サミットリザーブ4xe
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4910×1980×1810mm
ホイールベース:2965mm
車重:2510kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:8段AT
エンジン最高出力:272PS(200kW)/5250rpm
エンジン最大トルク:400N・m(40.8kgf・m)/3000rpm
モーター最高出力:145PS(107kW)
モーター最大トルク:255N・m(26.0kgf・m)
タイヤ:(前)275/45R21 110H XL/(後)275/45R21 110H XL(ピレリPゼロPZ4)
ハイブリッド燃料消費率:10.4km/リッター(WLTCモード)
EV走行換算距離:53km(WLTCモード)
充電電力使用時走行距離:62km(WLTCモード)
交流電力量消費率:280Wh/km(WLTCモード)
価格:1227万円/テスト車=1233万6000円
オプション装備:※以下、販売店オプション フロアマット 5人乗り用モデル(6万6000円)
テスト車の年式:2023年型
テスト開始時の走行距離:2123km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(6)/山岳路(2)
テスト距離:514.0km
使用燃料:57.3リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:9.0km/リッター(満タン法)/9.0km/リッター(車載燃費計計測値)
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佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。
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