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ジープ・グランドチェロキー サミットリザーブ4xe(4WD/8AT)/ジープ・コマンダー リミテッド(4WD/9AT)/シボレー・カマロSS(FR/10AT)

自動車大国のふところ 2023.02.16 JAIA輸入車試乗会2023 堀田 剛資 魅力的な輸入車が一堂に会すJAIA合同試乗会。アメリカ車乗りのwebCGほったが取材したのは、もちろんぜんぶアメリカ車だ! ジープのプラグインハイブリッド車(PHEV)「グランドチェロキー4xe」と新型の「コマンダー」、V8の「シボレー・カマロ」に試乗し、おのおのに宿る独自の個性に触れた。

選ぶべき理由がある 
ジープ・グランドチェロキー サミットリザーブ4xe(その1)

JAIAの会場にて、ステランティスの広報さんからジープ・グランドチェロキー4xeをお借りしたときのこと。氏は車両の状態をチェックしつつ、記者にこう言った。「このクルマ、webCGさんが取材第1号なんですよ」。なんでもグラチェロ4xeの広報車は、今回のJAIAが初舞台! なおかつ、その最初の取材枠をゲットしたのがwebCGなのだそうな。これはありがたい。何をか知らんがありがたい。記者は縁起物に当たった気分で、運転席におじゃました。

2022年10月に日本に導入されたばかりのグランドチェロキー4xe(参照)。そのあらましを紹介すると、ベースとなるのは2021年登場の5代目グラチェロのショートボディー。“4xe(フォー・バイ・イー)”とはジープにおけるPHEVモデルの総称で、第1号として小型SUVの「レネゲード4xe」が2020年にデビューしている。が、当然ながらそちらと今回のグラチェロ版では、同じなのは“4xe”の名前だけ。中身は全くの別物だ。

たぶん本邦初公開となるグラチェロ4xeのそれはというと、2リッターのガソリンターボエンジンに2つのモータージェネレーターを組み合わせたもの。1つは、オルタネーターよろしくベルトを介してクランクシャフトに接続している水冷式モータージェネレーターで、エンジンのスムーズなスタート/ストップと、その力を借りての発電に活躍する。走行アシスト/EV走行を担うのは、もう1基の、よりパワフルなモータージェネレーターだ。こちらは2つのクラッチにサンドされ、トルクコンバーターのようにエンジンと8段ATの間に鎮座。そこから先は純エンジン車と一緒で、つまりはタフでマッチョな副変速機付きフルタイム4WDが、ギア比もそのままに踏襲されている。

システム全体のアウトプットは、最高出力375PS、最大トルク637N・m……というのは北米仕様の数字で、日本仕様は電動パワートレインのスペックが違うから、参考程度に留め置きください。EV走行距離は、WLTCモードで53kmである。

 
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選ぶべき理由がある 
ジープ・グランドチェロキー サミットリザーブ4xe(その2)

というわけで、JAIAにおけるグラチェロ4xeのリポートは、パワートレインこそキモ。そこを紹介してナンボだったのだが、記者はドアを開けた瞬間にその使命を忘れた。試乗グレード「サミットリザーブ」のインテリアが、あまりに……あまりにスバラシかったからだ。

皆さまご覧あれ! 峰カメラマンの麗しの写真を。濃い目のブラウンとベージュでコーディネートされた車内空間は、実に温かく開放的。上質さも申し分なく、シートもドアもダッシュボードも、ことごとくレザーと本木目で覆われていた。よく見るとダッシュのステッチがほのかにうねっていたり、ステアリングのリムとスポークの際にシワ(というほどでもないが)が寄っていたりするが、縫製職人の息子(=ワタシ)からしたら、それもむしろホンモノの証し。人の手のぬくもりを感じるありがたいポイントだ。

このインテリア、他のwebCGメンバーズにも大変好評で、取材を手伝ってくれたカンベ青年も「ドアポケットにも本物のステッチですよ。同価格帯のドイツ車でも、ここまで気を使っていない」とクールに指摘(彼は希代のカーガイにして、そのままの意味での“インテリアのプロ”だ)。善き一般人代表のサミー青年も「この内装はカッコイイですね。こういうクルマを運転できたら気持ちよさそう」と興奮しつつ、マッキントッシュのオーディオにスマホをつないで米津玄師に聴き入っていた。うーむ。記者だけが感嘆したのなら勘違いの可能性もあるが、こりゃホンモノだ。

思い出すのは、まだ他媒体で“でっち”をやっていたころに拝見した、「グランドワゴニア」や「AMCイーグル」の内装である。いずれも開放的でくつろげて、雄大なロケーションに親和するおおらかなものだった。この最上級グラチェロの車内に、記者はそれらの現代的解釈と再構築、そして復活を見た。まさに温故知新。ジープはここにきて、ほかのどのブランドとも違う高級車の世界観を会得した様子だ。こりゃあ、ドイツ御三家もキャデもレクサスも、うかうかしてられませんぜ?

 
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選ぶべき理由がある 
ジープ・グランドチェロキー サミットリザーブ4xe(その3)

かように、内装だけでにわかオールドアメリカン好き(=記者)の心をわしづかみにしたグラチェロのサミットリザーブ4xeだが、乗っても実に見どころの多いクルマだった(というか、2ページ目で触れたとおり本来はそれが趣旨である)。その特徴をひとことで表すと、古典と前衛の融合。最初は「エレキで走るジープ」という衝撃体験の驚きが勝っていたのだが、しばらく走ると、ヘンテコなスポーティネスに毒されていない王道・大型SUVのよさが、ひしひしと感じられた。

前後方向の動きについては、時に「ぽこっ」と飛び出す走りだしを除けば、実にスムーズ。ややローギアード感のある電動走行にクルマの重さを感じるものの(ちなみに車重は2510kg)、マナーのよさは日欧のライバルと比べてもそん色がない。ガスペダルを踏んづけた際のタメの大きさはいかにもアメリカンSUVだが、それもドライブモードを「スポーツ」に入れれば即解消である。まぁ、個人的には「ノーマル」モードの加速のほうが、おおらかで好きなんですがね。もちろん、最新のHEVのご多分に漏れず、絶対的なダッシュのよさはかなりのもの。控えめだけど健康的なエンジンサウンドを聞きながらの中間加速は、胸のすくレスポンスだった。

乗り心地も、ややハリ感はあるけど基本的にはおうようで、目をつり上げて走らせないとリズムが合わない“走り屋系SUV”にはない心地よさがある。もちろん、こちらもスポーツモードにしたら足まわりが引き締まり、目地段差をダスンといなすたくましさをみせるのだが、記者はやっぱり、ノーマルモードでゆったりゆるゆる行くのがいいと思った。

「内装と外装と走りに、一体感がありますよね」というのは、先に登場したカンベ青年の言。ホントに言い得て妙である。最初は「お値段1200万円超のジープって、どうなのさ?」なんて思っていたが、おみそれいたしました。モノのよさに独自の世界観、そしてその後ろにある文化的背景。ライバルを差し置いて買う理由がありますよ、コイツには。

【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4910×1980×1810mm/ホイールベース:2965mm/車重:2510kg/駆動方式:4WD/エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ(最高出力:272PS/5250rpm、最大トルク:400N・m/3000rpm)/P1モーター:交流同期電動機(最高出力:63PS、最大トルク:54N・m)/P2モーター:交流同期電動機(最高出力:145PS、最大トルク:255N・m)/トランスミッション:8AT/燃費:10.4km/リッター(WLTCモード)/価格:1227万円

 
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こういうのでいいんだけど…… 
ジープ・コマンダー リミテッド

“コマンダー”と聞いて、かつてのジープのフラッグシップを思い出す向きからしたら、今回の新型は「なんじゃこりゃあ!」(松田優作風)だろう。なにせ先達(せんだつ)は、デカくてシカクいボディーが目を引く、グラチェロをも超える上級モデルだったのだ。やっかいオタクの筆者も、最初は正直「これがコマンダーなんて……」と思っていた。しかし、いざ実物と相対してみると……うーん。いやいや、悪くないクルマでした。

確かに、2リッターのディーゼルエンジンはもっさりしているしにぎやかだしで、年式の古さを感じずにはいられない。しかも、せっかくの9段ATも発進(ちなみに通常は2速発進)から2200rpmあたりまでシフトアップを粘るなど、回転をいささか引っ張りがち。これが余計ににぎやかさを助長していて、もったいないかぎりである。ただ、その他の点では意外や……と言ったら失礼だけど、せんえつながら好感が持てた。

操舵に対する応答はそこそこに軽やかで、「ディーゼルの3列7人乗りSUV」と聞いて想像するような重ったるさ、仰々しさはない。ブレーキ/アクセル操作への反応にもギクシャクするところはないし、速度が乗ると上述のディーゼルサウンドもそこまで気にならない。総じて、スポーティーじゃないけど痛痒(つうよう)を覚えることもないのだ。乗り心地も、時に「うっ」という突き上げはあるものの、全体的にはたおやか系で違和感なくまとめられている。常時路面をモニタリングして走るような線の細さはなく、ワダチや段差に対する神経の太さをみるに、これなら外乱にも強そうだ。意外性はないし、胸がすくような気持ちよさもないけど、“普通のSUV”として実にまっとうなクルマだったのだ。

インド生産で、アメリカで売られていないクルマを“アメリカ車”として語るのはどうかと思うけど、個人的にアメリカ車の美点だと思っている、合目的性の高さ、本分を忘れていない感じはコマンダーにも確かにあって、記者はそこにこそ大いに好感を持った次第である。

問題は……「リミテッド」のモノグレード構成で600万円弱っていう、その値段よなぁ!

【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4770×1860×1730mm/ホイールベース:2780mm/車重:1870kg/駆動方式:4WD/エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ(最高出力:170PS/3750rpm、最大トルク:350N・m/1750-2500rpm)/トランスミッション:9AT/燃費:13.9km/リッター(WLTCモード)/価格:597万円

 
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圧倒的感謝 
シボレー・カマロSS

「これはぜいたくなクルマですねえ」

試乗に帯同したカンベ青年が、そう感嘆する。テスラ乗り(ほかにも色んなクルマを持っているけど)の氏からこの言葉を引き出しただけでもう、コイツを借り出したかいがあったというもの。『マッドマックス』の雑魚キャラよろしくV8をあがめる記者としては、心中ガッツポーズであった。

日本導入から6年。現行型のシボレー・カマロSSについては、webCGでもう何度も取材している。佐野弘宗氏が試乗記を書いているし(その1その2)、かの山野哲也氏にもインプレッションをお願いした。せんえつながら、記者自身がリポートをしたためたこともあった。だから、モノとしての品評についてはもうそちらをご覧ください。ぜーんぶ書いてありますので(記者のショボいリポートは除く)。

だったらなぜ、今あらためて借りたのか? それはもう、記者が乗りたかったからとしか言いようがない。何度借りても、借りるたびにココロが洗われるのだ、カマロSSには。

どう考えても悪役サイドなエクステリアデザイン、イグニッションオンで聞かされる「LT1」の目覚めのひと吠(ほ)え、不穏なアイドリングでほのかに震えるセンターコンソール、加速時の「ずろろろろ!」という豪快なサウンドと、鋼管の中を大量の排気が流れる脈動感……。ハンドリングとか乗り心地とか、ぜんぶどうでもいい。いや、そのあたりもカマロは一級品なのだけど、今だけはどうでもいい! 記者が自動車のなにに最も畏怖を覚え、感動する人間なのか。このクルマに乗ると初心に帰れる(?)のである。エレキだとか水素だとか、操安性とか直進性とか、七面倒くさいあれやこれやで混濁した記者の脳(処理速度3.58MHz)は、このクルマに乗るたびに洗われるのだ。

そしてつくづく思うのだ。こんなクルマ、あとどんだけ乗っていられるのかしら? そして同時に、業界関係者として“それ”を味わえる最後の世代に属せたことを、ブイハチの神さまに感謝してしまうのである。

【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4785×1900×1345mm/ホイールベース:2810mm/車重:1710kg/駆動方式:FR/エンジン:6.2リッターV8 OHV 16バルブ(最高出力:453PS/5700rpm、最大トルク:617N・m/4600rpm)/トランスミッション:10AT/燃費:--km/リッター/価格:848万円

(文=webCGほった<webCG”Happy”Hotta>/写真=田村 弥、峰 昌宏/編集=堀田剛資)

 
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堀田 剛資

堀田 剛資

猫とバイクと文庫本、そして東京多摩地区をこよなく愛するwebCG編集者。好きな言葉は反骨、嫌いな言葉は権威主義。今日もダッジとトライアンフで、奥多摩かいわいをお散歩する。

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