スバル・レヴォーグ レイバック リミテッドEX(4WD/CVT)
失ったものはひとつだけ 2024.01.31 試乗記 「スバル・レヴォーグ」の車高を70mm引き上げ、内外装にプレミアム志向のSUV風味が加えられたニューモデル「レヴォーグ レイバック」に試乗。ベースモデルとの違いや土の香りをさせない都会派クロスオーバーをうたう、その仕上がりをチェックした。目指したのは本気でおいしい担々麺
スバル・レヴォーグ レイバックは、ステーションワゴンのレヴォーグをベースにSUVテイストに仕立てたクロスオーバーモデル。興味深いのは、2020年に現行レヴォーグが発表された際には、レヴォーグ レイバックを開発する予定はなかったということだ。
で、次の数字を見ると、スバルがレイバックをスクランブルで追加した理由がわかる。以下、一般社団法人日本自動車販売協会連合会の統計「タイプ別販売台数」より。
2023年1月から12月のSUVの販売台数は87万2788台で、対前年同期比でプラス133%。ちなみに2019年は51万3996台だったから、SUVは4年で約1.7倍も増加している。他方、ステーションワゴンの数字を見ると、2023年1月から12月の販売台数は16万6704台と、SUVの約3割。2019年は22万5937台だったから、市場は4年で約7割にシューっとしぼんでいることもわかる。
この数字から想像できるのは、いまや乗用車を買う際の選択肢はSUVかミニバンの二者択一になりつつある、ということだ。ステーションワゴンとかセダンは、一部の好事家を除くと候補車リストに載らなくなった。SUVシフトの加速スピードがスバルの想定を超えていたため、当初の計画にはなかったクロスオーバースタイルのレヴォーグ レイバックを追加することになったと推察する。
ここまでお読みになって、「ってことは、レヴォーグ レイバックは車高を上げて手軽にちゃちゃっとつくったSUVか」と思われる方もいるかもしれない。事実、世界を見渡せばそうした“なんちゃってSUV”も少なからず存在する。いままでみそラーメンだけをつくってきたラーメン店が、流行(はや)っているからと安易に辛味を加えて担々麺を売り出す、というような。ところがスバルはそうした“売れれば官軍”的なクルマづくりはしなかった。時間と予算は限られていただろうけれど、本気でおいしい担々麺を目指したのだ。
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細かな創意工夫がある
レヴォーグ レイバックは、ベースのレヴォーグより55mm増しの200mmという最低地上高を確保。全高も70mm高い1570mmとなっている。この変更にあわせて、フロントマスクも絶妙にボリュームアップ。ハンサムでシャープな顔つきだったレヴォーグよりも少し厚みのある、リッチでタフな顔つきだ。
前後フェンダーのホイールアーチを黒い樹脂で覆うのはこの手のモデルでは定番のおめかしであるけれど、樹脂パネルのあしらい方が控えめ。これみよがしにSUV感を強調していない点と、取って付けたような“後付け”っぽさがないところに好感を持つ。
さりげないけれど丁寧につくり込んでいる、というのはインテリアも共通。ぱっと見、レヴォーグと同じレイアウトかと思わせておいて、乗り込もうとするとシートの形状が工夫されていることを体感する。
スポーツワゴンをうたうレヴォーグのシートは、体をホールドするためにサイドが張り出していた。いっぽう、レヴォーグ レイバックではこの張り出しが控えめになっている。着座位置が55mm高いレヴォーグ レイバックは、上からシートに腰を下ろすというよりも、水平方向に腰を滑り込ませるような着座モーションになる。そこで、乗降性を考えてサイドの張り出しを控えめにしたのだ。乗る人への思いやり、頭の中には“誠意大将軍”というフレーズが浮かぶ。
インテリアの各部に用いられるアッシュのカラーやオレンジ系のステッチもシックでおしゃれだけど、そうした表面的な演出よりも、シートの形状を変えていることに感心した。
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大人の走りが味わえる
現時点でのレヴォーグ レイバックは「リミテッドEX」の1グレードで、パワートレインは1.8リッター水平対向4気筒ターボエンジンと、CVT(リニアトロニック)の組み合わせのみ。低回転域から力強く、滑らかに加速するドライブフィールは、レヴォーグと共通だ。
走りだして真っ先に感じるのは、乗り心地がゆったりしているということだ。ちゃちゃっと安直に背を高くしたSUV/クロスオーバーでたまにあるのが、「車高を上げる」→「重心が高くなる」→「ロールを抑えるために足を硬くする」→「とんがった乗り心地になる」というもの。安直につくった“なんちゃってSUV”は、人間にたとえると、膝が伸びたままの状態で走るような感じの乗り心地になる。しかも見栄えのいい薄くて太いタイヤを履かせたりすると、目も当てられない。
けれどもレヴォーグ レイバックは、しなやかに膝が伸び縮みして路面からのショックをクッションとして吸収している印象で、実にコンフォータブル。
市街地から高速道路に上がって高い速度域になると、しなやかに伸び縮みした後の上下動がスパッと収束して、フラットな姿勢を保つ。いわゆる、ダンピングが効いている乗り心地だ。スカッとさわやかなのはコカ・コーラ、スパッとさわやかなのがレヴォーグ レイバック。
このフィーリングはワインディングロードでも変わらず、少し大きめにロールしながら、安定した姿勢でコーナーをクリアしていく。ロールはするけれど、コーナーで外側のタイヤが沈み込み、ボディーが傾いていくロールスピードが適切だし、前後のロールのバランスも自然だから不安はまったくない。タイムや刺激を求めるよりも、美しいコーナリングフォームを愛(め)でる大人のスポーツドライビングをもたらしてくれる。
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“なんちゃって”ではなく本歌取り
乗り心地は快適だし、コーナリングフォームはきれいだし、おまけに静粛性は抜群で標準装備のharman/kardonのオーディオの音もいい。レヴォーグのSUV版というより、大人のレヴォーグではないか。ここでポイントとなるのが、レヴォーグに比べて全高が70mm高くなっているのにエンジン搭載位置をそのまま引き上げていないという工夫と仕立てである。背は高くなったけれど、重心をそこまで高くはしなかったのだ。
といったこだわりから生まれたのがレヴォーグ レイバック。モノづくりでもなんでも制約があったほうが創意工夫が生まれることがあるけれど、このクルマも「背は高くしながらも快適性や操縦性は落とさない」という制約がいい方向に働いたように思える。
レヴォーグ レイバックは、レヴォーグと同様に最新の「アイサイトX」を搭載。ステレオカメラに超広角の単眼カメラが加わり、自動ブレーキが作動する範囲は拡大しているという。
自動ブレーキを試すことはできなかったけれど、高速道路での渋滞時のハンズオフアシストが作動するシチュエーションには恵まれた。正直、割り込みの車両があると反射的にハンドルを握ってしまうが、その作動は確実で、オーナーになって慣れれば疲労軽減に寄与するはずだ。ほかに、車両とその周辺の俯瞰(ふかん)映像が表示されるトップビュー機能も追加されていて、現時点ではこれ以上は望めない運転支援機能が備わっている。
というわけで、レヴォーグ レイバックがSUV化によって失ったものは皆無であるように感じる。あえて言えば、全高が1570mmになったので、日本の一般的な立体駐車場の1550mm制限に引っかかることか。
今は昔、派生車種として登場したはずの「トヨタ・コロナ マークII」がやがて主流になり、コロナが消えてマークIIが残った史実を思い出した。レイバックは“なんちゃってSUV”ではなく、本歌取りなのだ。
(文=サトータケシ/写真=花村英典/編集=櫻井健一)
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テスト車のデータ
スバル・レヴォーグ レイバック リミテッドEX
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4770×1820×1570mm
ホイールベース:2670mm
車重:1610kg
駆動方式:4WD
エンジン:1.8リッター水平対向4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:CVT
最高出力:177PS(130kW)/5200-5600rpm
最大トルク:300N・m(30.6kgf・m)/1600-3600rpm
タイヤ:(前)225/55R18 98V M+S/(後)225/55R18 98V M+S(ファルケン・ジークスZE001A A/S)
燃費:13.6km/リッター(WLTCモード)
価格:399万3000円/テスト車=429万円
オプション装備:スマートリアビューミラー(5万5000円)/本革シート<ブラック/アッシュ[カッパーステッチ]>(13万2000円)/サンルーフ(11万円)
テスト車の年式:2023年型
テスト開始時の走行距離:1291km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3)/高速道路(6)/山岳路(1)
テスト距離:246.8km
使用燃料:18.4リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:13.4km/リッター(満タン法)/13.2km/リッター(車載燃費計計測値)

サトータケシ
ライター/エディター。2022年12月時点での愛車は2010年型の「シトロエンC6」。最近、ちょいちょいお金がかかるようになったのが悩みのタネ。いまほしいクルマは「スズキ・ジムニー」と「ルノー・トゥインゴS」。でも2台持ちする甲斐性はなし。残念……。
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