三菱トライトンGSR(4WD/6AT)
ピックアップトラックの民主化 2024.06.08 試乗記 三菱のピックアップトラック「トライトン」の新型が日本に上陸。12年ぶりの国内販売ということで姿かたちが新しいのは当然ながら、この6代目はエンジンもシャシーもすべてが新開発なのだ。高速道路と一般道、そして多少のラフロードを走ってみた。海外では大スター
ダイムラー・クライスラー時代だからもうずいぶんと昔のことだが、タイのチェンマイ近郊のぬかるんだ山道で身動き取れなくなったわれわれの「ジープ・チェロキー」を(チェロキーの名誉のために言っておくとオールシーズンタイヤではどうしようもなかった)、大はしゃぎする子供たちを荷台に満載した三菱ピックアップが豪快に抜いていったことを思い出す。東南アジアなどでは日常の風景だ。道なき道で酷使されても音を上げないタフなクルマを必要とする地域が世界にはまだまだあるが、そんな市場で人気を集めているのが三菱のトライトンである。タイ工場製のトライトンは一時日本でも販売されていたが、新型は12年ぶりの復活導入だという。
国内では知られていないものの、トライトンは三菱の誇るグローバルモデルである。東南アジアやオーストラリア、中南米といった市場を中心に、世界150カ国で年間およそ20万台を販売しているというから(2023年の三菱の世界生産台数は100万台強)、まさに三菱を支える屋台骨。1978年の初代モデルから現在までの累計販売台数は560万台以上に上るという。といっても、かつては「フォルテ」や「ストラーダ」、あるいは海外市場での「L200」という名称で販売されており、日本でもトライトンを名乗ったのは先々代から(2006~2011年は日本でも販売)、新型は通算6代目にあたる。
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エンジンもシャシーも新開発
ピックアップゆえに各種ボディータイプが用意されるが、日本に導入されるのは2.4リッター4気筒ディーゼルターボ+6段ATを積む定員5人のダブルキャブのみ。全長5360mm×全幅1930mm(「GSR」の数値)は確かに日本では巨大だが、世界では標準的サイズだ。装備の差によって「GLS」(498万0800円)とGSR(540万1000円)の二本立てだが、メカニズムは同一である。
新型トライトンはエンジンからシャシーフレームまで新設計で、既にタイでは2023年に発売されている。新開発の4N16型2.4リッター4気筒ディーゼルターボは大小ターボチャージャーが直列に並ぶ2ステージ式ターボや尿素SCRシステムを採用するだけでなく、ブロックやバランスシャフトの配置まで異なるというからまったくの新型といっていい。一足先に「日産キャラバン」にも同型が積まれているが三菱としては初搭載。しかも高出力版で204PS/3500rpmと470N・m/1500-2750rpmを発生する。さすがは最新世代だけあって、予想以上に静かで振動も気にならないし、オンロードでも重さを感じさせずに加速する。これなら一般的なSUVから乗り換えた人も違和感なく走れるはずだ。
フロントはダブルウイッシュボーン、リアはリーフスプリングによる車軸式という足まわりだが(大幅に剛性アップしたフレームに合わせてこちらも新開発)、オンロードでも“あたり”は丸められており、ガツン、バシンと直接的な突き上げを感じることはない。ピックアップトラックはどうしても荷物の積載を考慮して(最大積載量は500kg)タフで硬い足まわりが求められるが、トライトンには貨客車特有のスパルタンさはなく(日本仕様は乗り心地重視で設定されているという)、びっくりするほど文化的だ。上位グレードのGSRにはオレンジのステッチ付きレザーパワーシートが標準装備で、リアシートも十分に快適だ。完備したADAS系とインフォテインメントなどと合わせて、まったくやせ我慢することなく、快適にロングドライブもこなせるだろう。
こだわりの4WDシステム
いっぽうで悪路走破性は、さすが長年の経験が生かされているようで本格的だ。「スーパーセレクト4WD-II」と称する4WDシステムが採用されているが、「パジェロ」時代のそれとは異なりセンターデフにはトルセンデフを使用(以前はビスカスカップリングだった)。2H(後輪駆動)と4H(4WD)、4HLc(4WD直結)、そして4LLc(4WDローレンジ直結)と4種類の駆動方式をセンターコンソールのダイヤルで切り替えることができる(リアデフをロックするスイッチも別に備わる)。ちなみに唯一のライバルと目される「トヨタ・ハイラックス」はシンプルなパートタイム式(2H/4H/4L)で、つまり4WDを選ぶと前後輪の回転差を吸収できず、いわゆるタイトコーナーブレーキング現象を回避できない。これが高速道路や雪道などで4Hを選べばほぼフールプルーフに走れるトライトンとの最大の相違点である。
さらにトライトンは「ノーマル」「エコ」「グラベル」など計7種類のドライブモードを選択(駆動方式に応じて選択可能モードを設定)できるうえに、ブレーキを使うAYC(アクティブヨーコントロール)やアクティブLSD、トレーラーをけん引する際のトレーラースタビリティーアシストといった電子制御アシストシステムが満載されている。そのぶんハイラックスよりは高めの価格設定である。
問題はサイズのみ
普通のSUVでは手に負えないような岩場の急坂(そもそも普通は許されない上級コース)でも何事もなく登れることはオフロードコースでの試乗会で確認済み。しかも一番ハードな4LLcを選ばなくても軽々と登ってみせた。日本車最強レベルの悪路走破性に加え、一般的なSUVと同等とまでは言わないが、従来のピックアップとは比べものにならないほどの扱いやすさと快適性まで備えているのだから、もうちょっと強気に出てもいいのではないかと思う(月間販売目標は200台)。ハイラックスは国内でも年間1万台ほど売れているのだ。
もちろん、このずうたいを持て余さないという条件はつくが(最小回転半径は6.2m)、使いこなせる人には待望の新世代ピックアップである。もしかすると、あえて古い「ランクル」に乗るような“ファッショナブル”な人にとっては本格的かつ多機能にすぎるのかもしれないが、結局やせ我慢は長続きしないものである。ちなみにキャノピーや電動トノカバーなどの豊富なオプションも順次発売される予定である。
(文=高平高輝/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝)
テスト車のデータ
三菱トライトンGSR
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=5360×1930×1815mm
ホイールベース:3130mm
車重:2140kg
駆動方式:4WD
エンジン:2.4リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:6段AT
最高出力:204PS(150kW)/3500rpm
最大トルク:470N・m(47.9kgf・m)/1500-2750rpm
タイヤ:(前)265/60R18 110H M+S/(後)265/60R18 110H M+S(ヨコハマ・ジオランダーA/T G94)
燃費:11.3km/リッター(WLTCモード)
価格:540万1000円/テスト車=563万2990円
オプション装備:ボディーカラー<ホワイトダイヤモンド>(7万7000円) ※以下、販売店オプション フロアマット(4万4660円)/ETC車載器<音声案内タイプ>(4万1030円)/ドライブレコーダー<スタンドアローン>(6万6000円)/三角停止板(3300円)
テスト車の年式:2024年型
テスト開始時の走行距離:3878km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(6)/山岳路(2)
テスト距離:326.0km
使用燃料:41.8リッター(軽油)
参考燃費:7.8km/リッター(満タン法)/8.2km/リッター(車載燃費計計測値)

高平 高輝
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