三菱トライトンGSR(4WD/6AT)
魂が入ってる 2024.03.23 試乗記 世界中で活躍する三菱のピックアップトラック「トライトン」。その新型がいよいよ日本に上陸した。タフネスと洗練されたライドフィールを併せ持つ一台は、「パジェロ」に代わる新しいブランドリーダーとなり得るのか? その実力をオンロードとオフロードで確かめた。三菱の世界戦略を支える基幹車種
現在はトライトン(別名「L200」)と呼ばれる三菱ピックアップの系譜は、今回の新型で通算6世代を数える。1978年発売の初代「フォルテ」と2代目にあたる「ストラーダ」は国内生産されていたものの、次の世代のストラーダ(通算3代目)からは日本仕様もタイ生産となった。2005年発売の4代目もトライトンの名で日本でも販売されたが、2014年のフルモデルチェンジを待たず、国内販売は2011年で終了した。
そんなトライトンは、今やグローバル販売で年間約20万台=三菱全体の約2割(!)を占める超大黒柱だ。ピックアップ市場の最前線である東南アジアや豪州では、おなじみの「トヨタ・ハイラックス」に加えて、「いすゞD-MAX」や「フォード・レンジャー」などと常に激烈な販売競争を繰り広げるビッグネームでもある。ルノーや日産とのアライアンスで、アセアン地域の主導権を三菱が握るのも、トライトンの存在が大きいと思われる。
そんなトライトンが2世代・13年ぶりに国内発売された背景には、大きく2つの理由があるという。ひとつは、ハイラックス(トライトンと同じタイ生産)が現在、国内でも年間1万台以上を売り上げていることだ。初代トライトンは日本でヒットしたとはいいがたいが、その国内販売終了から6年後に上陸したハイラックスが、日本のピックアップ市場を再開拓した。
もうひとつの理由は、商品企画担当氏がいうところでは「日本の三菱ラインナップにはアイコンが必要」だからである。2019年の「パジェロ」の販売終了以降、往年のパリダカに通じる硬派なオフロードイメージを表現した三菱車が、日本からなくなっていたのは事実である。同氏はさらに「お客さまのためだけでなく、弊社社員や販売現場の士気のためにも、そうしたアイコンは大切なのです」と続けた。
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険しいオフロードも難なくクリア
試乗車は上級の「GSR」グレードとなったが、手ごろな「GLS」とも、パワートレインやタイヤサイズなど走行性能にまつわる部分にちがいはない。今回は短時間ながらオン/オフの両路面での試乗ができた。舗装路のヒビ割れをあえて減速せずに乗り越えたり、意図的にコーナーを攻めるような運転をしたり、あるいはオフロードの岩場やモーグルセクションに突っ込んだりしても、とにかく車体がミシリともいわないのには素直に感心した。
開発陣によると、その最大のキモはやはり新しいラダーフレームらしい。新型のそれは、日本でも販売された初代トライトン以来20年ぶりの完全新開発で、先代比で“曲げ”で60%、“ねじり”で40%の剛性アップを果たしている。
このフレームについては「アライアンスで共同開発の検討もありましたが、われわれ三菱としてどうしても外せないこだわりがあり、今回は三菱単独での開発とさせてもらいました」と開発担当氏。今後は、このフレームが新しい日産のピックアップに使われる可能性もあるが、三菱入魂の作であることは間違いない。
それにしても、今回のコースのような本格オフロードを、3種類ある四駆のモードと計7種のドライブモードから適当なものを選ぶだけで、アマチュアの筆者でも難なくクリアできてしまう走破性にはあらためて驚く。ドライブモードはアクセルや変速特性、トラクションコントロールやブレーキLSDの介入ぐあいなどを、選ばれた路面特性に合わせて微調整する。また、新たに電動式となったパワーステアリングは、こうした場面での素早く大きな操作も楽だし、キックバックの抑制にも効果的。過酷な悪路では不可欠なヒルディセントコントロールが、アクセルとブレーキだけで直感的に操作できるのも、じつはリバース側でもそのまま作動するのも、三菱の隠れた美点である。
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リアの足まわりにみる快適性向上の工夫
舗装路では先述の車体の剛性感に加えて、しなやかなロードホールディングも素晴らしい。足まわりも完全新開発だが、リアサスペンションは相変わらず古典的なリーフリジッド形式である。しかも、今回の試乗は空荷で1~2名乗車という、この種の“荷グルマ”には明らかに不利な条件だった。それなのに無粋な突き上げをほとんど感じさせない乗り心地や、路面に吸いつくようなリアの接地感は、「コイル? いや、なんとなれば独立サスペンション?」と錯覚しそうになるくらいだった。
この種のピックアップをファミリーカーとして使う人たちが世界的に増えており、乗り心地や操縦安定性に関する要求レベルが高まっているという。新型トライトンのちょっと驚くくらい快適な乗り心地には、例の新開発フレームだけでなく、3枚重ね(以前は5枚重ね)としてフリクションロスを低減させたリーフスプリングや、前後方向にソフトにしたブッシュといったリアサスペンション周辺の工夫が奏功しているそうだ。
ところで、こういうクルマを舗装路で走らせるときには駆動モードを「2H」モード=2WDに設定する人が多いだろうが、三菱独自の「スーパーセレクト4WD-II(SS4-II)」を備える新型トライトンなら、高速や山坂道では「4H」モードがオススメだ。
SS4-IIは堅牢な副変速機付きパートタイム式とフルタイム式を融合した4WD機構で、4Hではタイトターンブレーキ現象の起こらないセンターデフ付きフルタイム4WDとなるのが特徴である。このときの駆動配分は40:60で、高速では修正舵の少ない直進安定性を、コーナーでは安定感と素直な回頭性を両立する。パジェロのSS4-IIはセンターデフがビスカスLSDだったが、今はそれがトルセンLSDにグレードアップしている。SS4-IIにはセンター直結の「4HLc」やローレンジの「4LLc」ももちろん用意されており、さらにリアデフロック機構まで備わる新型トライトンの駆動システムは、まさに自由自在。より取り見取りである。
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三菱入魂の力作
また、舗装路を流しているときの新型トライトンは、静粛性の高さも印象的だ。ロードノイズも意外なほど小さいが、それ以上に印象的なのがディーゼルエンジンの静かさである。かつてのパジェロや「デリカD:5」のそれと比較すると、トライトンのディーゼルは「これが三菱?」とにわかには信じられない(笑)くらい洗練されている。
この2.4リッターディーゼルはデリカD:5のそれと同じ「4N」系だが、実際にはブロックからバランサーシャフトのレイアウトまで異なる最新世代の「4N16」型(デリカD:5は「4N14」型)。開発担当氏によると、基本骨格からの刷新に加えて、緻密な多段燃料噴射が静粛性に効いているそうだ。燃費ではハイラックスにゆずるものの、動力性能では明らかに上回っている。ちなみに、4N16型ディーゼルは三菱銘柄では今回が国内初導入となるが、じつは2022年に大幅改良された日産の「キャラバン」ですでに世に出ていたりもする。
ほかにも、リアシートバックがほどよく傾斜した着座姿勢に改善されているのもありがたい。優秀な車体剛性やサスペンションもあいまって、長距離ドライブで後席があてがわれても、ガッカリせずに済みそうだ。
新型トライトンは日本市場にとっては2世代ぶりの新作で、しかもほぼ全身新開発である。そして、宿敵ハイラックスを研究しつくした感もありあり。今回のような短時間試乗では、欠点はほとんど指摘できない。考えてみれば、トライトンは今の三菱がプラットフォームから自社開発する数少ない存在であり、車体サイズや市場の多さからすると、事実上のフラッグシップ的存在なのかもしれない。大好評のエクステリアデザインも含めて、渾身の作となるのは必然というほかない?
そんな新型トライトンの国内販売計画は控えめな月間200台だが、2023年末から3月10日までの受注台数は約1700台。上々の滑り出しのうえ、20~30代の若い新規客が多いという。これも三菱には大の字がつく朗報だろう。
(文=佐野弘宗/写真=向後一宏/編集=堀田剛資)
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テスト車のデータ
三菱トライトンGSR
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=5360×1930×1815mm
ホイールベース:3130mm
車重:2140kg
駆動方式:4WD
エンジン:2.4リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:6段AT
最高出力:204PS(150kW)/3500rpm
最大トルク:470N・m(47.9kgf・m)/1500-2750rpm
タイヤ:(前)265/60R18 110H M+S/(後)265/60R18 110H M+S(ヨコハマ・ジオランダーA/T G94)
燃費:11.3km/リッター(WLTCモード)
価格:540万1000円/テスト車=563万2990円
オプション装備:ボディーカラー<ホワイトダイヤモンド>(7万7000円) ※以下、販売店オプション フロアマット(4万4660円)/ETC車載器<音声案内タイプ>(4万1030円)/ドライブレコーダー<スタンドアローン>(6万6000円)/三角停止板(3300円)
テスト車の年式:2024年型
テスト開始時の走行距離:2014km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(軽油)
参考燃費:--km/リッター
三菱トライトンGSR
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=5360×1930×1815mm
ホイールベース:3130mm
車重:2140kg
駆動方式:4WD
エンジン:2.4リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:6段AT
最高出力:204PS(150kW)/3500rpm
最大トルク:470N・m(47.9kgf・m)/1500-2750rpm
タイヤ:(前)265/60R18 110H M+S/(後)265/60R18 110H M+S(ダンロップ・グラントレックAT25)
燃費:11.3km/リッター(WLTCモード)
価格:540万1000円/テスト車=550万0660円
オプション装備:ボディーカラー<ヤマブキオレンジメタリック>(5万5000円) ※以下、販売店オプション フロアマット(4万4660円)
テスト車の年式:2024年型
テスト開始時の走行距離:338km
テスト形態:オフロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(軽油)
参考燃費:--km/リッター
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佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。
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