ポルシェ・カイエンEハイブリッド(4WD/8AT)
三方よし! 2024.06.22 試乗記 「ポルシェ・カイエン」の最新モデルが日本に上陸。デザインのブラッシュアップもさることながら、この「Eハイブリッド」ではパワートレインにも手が入り、走りのキャラクターが大きく変化している。果たして進化のレベルはいかほどか。フロントまわりがよりモダンに
2023年4月の上海モーターショーで発表された最新のカイエンがニッポンに上陸している。そのうちのPHEV、Eハイブリッドに試乗した。久しぶりに間近で見たカイエンは象のようにデカかった。撮影場所の千葉県木更津市まで、メルセデス・ベンツの新型「E220dオールテレイン」に乗って行ったこともある。着座位置がひときわ高い。カイエンは全高1.7m、全幅は2m近いから、当たり前ですけれど、それが筆者の第一印象だった。
SUVなのに、シートはタイトで、「911」のハードコア版みたい。背中をキュッと押すようにしてサポートする。ヘッドレストとバックレストが一体になった、ポルシェの伝統的デザインともいえるこれは、アダプティブスポーツシートというオプションで、グッとスポーティネスが増す。カイエンはいま、2018年にデビューした第3世代で、最新モデルの登場はフェイズ2への移行を意味する。今回のアップデートでポルシェはあと3年、この世代を引っ張るはずだ。
そのフェイズ2カイエン。見どころは、顔つきが角マルから角カドになったLEDヘッドライトである。グリルも角カドになり、鋭く、モダンになった。内装では、計器盤が湾曲した液晶スクリーンになり、伝統的形状だったシフトレバーが小型化されてダッシュボードの、ステアリングホイール左側に移動した。要は「タイカン」に似たデザインになった。足まわりでは新開発の2チャンバー式エアサスペンションが選べるようになっている。
パワーユニットの目玉はV8の復活のほか、今回のカイエンEハイブリッドでは電気システムが新しくなっている。この電気システムは同じまま、異なる内燃機関と組み合わせることで、カイエンと「カイエンS」、そして「カイエン ターボ」のEハイブリッドシリーズを形成している。兄弟モデルの「パナメーラ」にももちろん設定されている。電気ですかぁ? 電気があれば、なんでもできる。
タフでなければ生きていけない
しかしてここでは話をカイエンEハイブリッドに絞る。スターターはキー型のレバーをひねるのではなくて、丸いボタンを押すスタイルに変更されている。こちらを押し、ステアリングの左にあるレバーを下げてDレンジに入れ、アクセルを軽く踏む。そうすると、PHEVというのはまずはモーターで走行する。象のように大きなカイエンは音もなく、ニンジャのように動き始める。
一般道を走り始めると、路面の凹凸を正直に伝えてくる。頭がクラクラ揺れる。最新Eクラスのオールテレインから乗り換えたから、なおさらそう感じたのかもしれない。試乗車がオプションの21インチ仕様なことも影響しているだろう。タイヤは前が285/45、後ろは315/40という極太偏平、前後異サイズのピレリPゼロのZR(240km/h超)規格である。ここはアフリカの奥地かシルクロードか、という冒険的心持ちになる。ドン・キホーテが怪物に見立てた風車ならぬ観覧車も木更津には立っている。その下には高級ブランドのアウトレットという、矛盾した存在のステキなショッピングモールがデンと広がってもいる。
現代は混沌(こんとん)としている。男はタフでなければ生きていけない。ポルシェがつくった高性能SUV、カイエンは、コンクリートジャングルでサバイバルするためのアイテムなのだ。と思うことで、この乗り心地を受け入れることにした。カイエンは電気駆動でもハードボイルド、朝から500g、約1ポンドのステーキ。高級部位のリブアイなのだ、と。
Eハイブリッドにはハイブリッド関連のモードとは別に、「スポーツ」と「スポーツプラス」のモードも付いている。早速、スポーツに切り替えると、乗り心地がさらに引き締まり、ステアリングの手応えが増す。そして、エンジンがグオオオッとほえる。スポーツプラスに切り替えると、乗り心地はさらに引き締まる。ちょっと硬すぎるので、私的にはスポーツでいいや、と再び切り替える。心なしか、3年前に試乗した「カイエンEハイブリッド クーペ」よりエンジンが控えめになっている。
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よりモーター主体のパワートレインに
しかして、それはそうだった。以下、少々退屈ながら数字を並べる。新しいEハイブリッドのシステムは、電気モーターの活躍範囲が広がっている。モーターも新しい。最高出力と最大トルクは136PSと400N・mから176PSと460N・mへと、40PSと60N・mもアップしている。一方で3リッターV6ツインターボは340PS/5300-6400rpmと450N・m/1340-5300rpmから304PS/5400-6400rpm、420N・m/1400-4800rpmへ、36PSと30N・mダウンしている。電気モーターと内燃機関の力の配分を変えることで、システム全体の出力とトルクは462PSと700N・mから470PSと650N・mに、馬力は若干アップ、トルクは50N・mダウンしているのだ。
電気モーターの領域を広げるべく、リチウムイオン電池の容量を17.9kWhから8kWh増の25.9kWhに増量してもいる。これにより、EV航続距離は48kmから90kmへと2倍弱に延びている。フツウのカイエンの車重はメーカー公表値で2130kg。カイエンEハイブリッドは同2500kgだから、PHEV化によって370kgも増えている。
その重さをモーターのトルクは軽々と加速させる。ピュア内燃機関のカイエンの最高速度は248km/h、0-100km/hは6.0秒。Eハイブリッドは最高速が254km/hに伸び、0-100km/hは4.9秒に短縮している。フェイスリフト前のカイエンEハイブリッド、実はこれ、クーペのデータですけれど、最高速253km/h、0-100km/h 5.1秒より速くなっている! 車重は50kg増えていると考えられるのに……。
しかも燃費は、webCGの実測値で2021年のカイエンEハイブリッド クーペは車載燃費計で9.1km/リッター、満タン法で9.0km/リッター、今回は9.9km/リッターと9.7km/リッターだった。走行距離も走行パターンも異なるため、あくまで参考値ながら、より低燃費になっている。さすがポルシェ。最善のカイエンは最新のカイエンなのだ。
金があるなら悩みたい
木更津から館山自動車道で内房のワインディングロードを目指す。風切り音がやや高めなのは背の高いSUVだから致し方ない。平滑な路面の高速道路では乗り心地はスムーズで快適、カイエンEハイブリッドが高速クルーザーであることは疑いない。「Eチャージ」モードだと、エンジンは粛々と回って、駆動しつつ発電して蓄電に励む。
ワインディングに到着したころにはすっかり巨体に慣れ、スポーツモードに切り替えて山道をスイスイ走る。スイスイ走れるのは、オプションのリアアクスルステアリングを装着していることもある。ブレーキはポルシェである。素晴らしく利く。減速時にエネルギー回生しているはずだけれど、通常のブレーキと違和感がない。さすがポルシェである。
そんなわけで、新しいカイエンEハイブリッドでは電気の役割が増え、内燃機関はやや遠のいた。というのが筆者の印象である。ま、ポルシェの発表どおりなんですけど。だけど、私は旧型のほうがよかった。内燃機関が好きだから。という方もいらっしゃるにちがいない。ポルシェビキなら当然だ。
そうした声に応えるためにカイエンS Eハイブリッドはある。こちらのV6ツインターボは最高出力353PSと、先代カイエンEハイブリッドの340PSを上回り、システム最高出力544PSを発生する。最新のカイエンEハイブリッド比ではエンジンが50PSも強力になって、価格は200万円プラス。私は買えないけど、悩ましい選択です。
現代のポルシェはユーザーに対して親切で慎重で、ビジネスもうまい。Eハイブリッドは環境にもよい。近江商人いうところの、「売り手によし、買い手によし、世間によし」の三方よし。見習いたいものである。
(文=今尾直樹/写真=郡大二郎/編集=藤沢 勝)
テスト車のデータ
ポルシェ・カイエンEハイブリッド
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4930×1983×1696mm
ホイールベース:2895mm
車重:2500kg
駆動方式:4WD
エンジン:3リッターV6 DOHC 24バルブ ツインターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:8段AT
エンジン最高出力:304PS(224kW)/5400-6400rpm
エンジン最大トルク:420N・m(42.8kgf・m)/1400-4800rpm
モーター最高出力:176PS(130kW)
モーター最大トルク:460N・m(46.9kgf・m)
システム最高出力:471PS(346kW)
システム最大トルク:650N・m(66.3kgf・m)
タイヤ:(前)285/45ZR21 113Y XL/(後)315/40ZR21 115Y XL(ピレリPゼロ)
ハイブリッド燃料消費率:1.8-1.5リッター/100km(約55.5-66.7km/リッター、WLTPモード)
充電電力使用時走行距離:77-90km(WLTPモード)
EV走行換算距離:77-90km(WLTPモード)
交流電力消費率:30.8-28.7kWh/100km(約3.2-3.5kWh/km、WLTPモード)
価格:1395万円/テスト車=1879万3000円
オプション装備:ボディーカラー<キャララホワイトメタリック>(17万3000円)/ツートーンスムースレザーインテリア<ブラック×ナイトグリーン>(58万3000円)/リアアクスルステアリング(25万5000円)/スポーツテールパイプ<シルバー>(12万3000円)/「e-hybrid」エクステリア<アシッドグリーン>(0円)/ポルシェアクティブサスペンションマネジメントシステムを含むアダプティブエアサスペンション(33万9000円)/エアクオリティーシステム(6万4000円)/エクスクルーシブデザインフューエルキャップ(2万円)/マルチファンクションステアリングホイール<ヒーター&シフトパドル付き>(4万1000円)/パノラマルーフシステム(29万1000円)/アルミルーフレール<ブラック>(8万8000円)/リアドアロールアップサンシェード(9万9000円)/シートヒーター<フロント&リア>(6万6000円)/シートベンチレーション<フロント>(15万2000円)/リアシート用サイドエアバッグ(6万2000円)/ヘッドレストのポルシェクレスト<フロント&リア>(6万8000円)/ユーカリウッドインテリアパッケージ(8万1000円)/HDマトリクスLEDヘッドライト(33万8000円)/4ゾーンオートクライメートコントロール(12万3000円)/BOSEサラウンドサウンドシステム(20万3000円)/ポルシェリアシートエンタテインメントプレパレーション(5万2000円)/ソフトクローズドア(10万6000円)/ヘッドアップディスプレイ(19万3000円)/アクティブレーンキーピングアシスト<クロスロードアシスト&エマージェンシーストップを含む>(11万2000円)/アダプティブスポーツシート<18ウェイ電動調節機能付き>(21万5000円)/エクステリアパッケージ<ハイグロスブラック>(5万2000円)/「PORSCHE」ロゴドアカーテシーライト(4万3000円)/21インチエアロデザインホイール<ホイールアーチエクステンション付き>(50万9000円)/プライバシーガラス(7万5000円)/リアワイパートリム<ハイグロスブラック塗装>(3万1000円)/ポルシェリアシートエンタテインメント(28万6000円)
テスト車の年式:2024年型
テスト開始時の走行距離:1296km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:303.2km
使用燃料:31.3リッター
参考燃費:9.7km/リッター(満タン法)/9.9km/リッター(車載燃費計計測値)

今尾 直樹
1960年岐阜県生まれ。1983年秋、就職活動中にCG誌で、「新雑誌創刊につき編集部員募集」を知り、郵送では間に合わなかったため、締め切り日に水道橋にあった二玄社まで履歴書を持参する。筆記試験の会場は忘れたけれど、監督官のひとりが下野康史さんで、もうひとりの見知らぬひとが鈴木正文さんだった。合格通知が届いたのは11月23日勤労感謝の日。あれからはや幾年。少年老い易く学成り難し。つづく。
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