トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”(4WD/8AT)
本気のスーパーハッチ 2024.06.12 試乗記 「うちのカミさんマニュアル乗れないんだよな~」とハンカチをかんでいたオトーサンに朗報だ。「トヨタGRヤリス」に待望の8段ATモデルが追加設定された。エンジンやシャシーにも手が入った、トヨタが言うところの“進化型”である。公道でその仕上がりを試す。覚悟は要る
環八から東名高速に合流すると、つけていたはずのラジオがまったく聞こえなくなった。100km/hも出ていないのに、しかも舗装が滑らかなレーンを選んで走っても大差なし。ゴーゴーざわざわという容赦ないロードノイズに加えて、駆動系からもこもり音のようなうなりが聞こえる。もともと静かなクルマではなかったが、マイナーチェンジを受けた最新のGRヤリスは何だか以前よりもうるさくなったような気がする。今どきこういうはっきりしたクルマは珍しい。
乗り心地も一般道を走っている時には従来型よりも当たりが丸くなったように感じたが、高速道路の継ぎ目ではやはり突き上げは明確で、お世辞にもフラットとはいいがたい。皆さん百も承知とは思うが、「GR」を冠するクルマのなかでもヤリスは明らかに性能重視の競技志向、やる気満々の武闘派高性能ロケットであることをあらためて思い知らされた。
2024年年初の東京オートサロンで発表された“進化型”GRヤリスは単なるマイナーチェンジとはいえないほど広範な改良が加えられているが、なかでも注目はモータースポーツの裾野を広げるというGRの方針を体現する8段ATモデルの追加である(モータースポーツ用グレードの「RC」にも設定された)。トルクコンバーター式ながら電光石火のシフトを可能にするということで「GR-DAT(ダイレクトオートマチック)」と称する。試乗車は最上級グレード「RZ“ハイパフォーマンス”」の8ATモデルである。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
メーカー純正とは思えない
一般的なマイナーチェンジでありがちなコスメティックな変更はなし。正確には左右テールランプが一文字につなげられたことが唯一のおしゃれ要素だが、それ以外はすべて機能的な要求を満たすための変更である。
「GR-FOUR」のロゴがペイントされたインタークーラー(水噴射付き)をはじめとして、フロント開口部いっぱいに広がるコアが迫力満点で、以前はフォグランプが装着されていた左右部分にもATFクーラーとサブラジエーター(クーリングパッケージに含まれるオプション)がおさめられており、メッシュのカバーネットも金属製に変更されているうえにバンパー下部も3分割式に変更されている。これはダメージを受けにくくするためと、修理交換を容易にするためという。またリアスポイラーに内蔵されていたハイマウントストップランプと、バンパー下部に設置されていたバックアップランプもメインユニット内に移設されている。これも別パーツへの交換と修理を考慮した変更とされている。
という具合にメーカー純正の市販モデルにもかかわらず、最初から“つるし”のままで競技に出場する場合やサーキット走行を考慮しているのがGRヤリスの特徴だ。メーカー自らがここまで手を入れたら、チューニングショップやレースガレージの商売上がったりではないか、と心配になるほどだが、うざったいぐらいに機能説明が付いてくるこだわりがマニアにはたまらないのだろう。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
インテリアも競技用
コックピットまわりも標準型の「ヤリス」とはまったく別物である。切り立ったダッシュパネルはいささかビジネスライクすぎるが、こういう素っ気なさも機能最優先を主張していることは確かである。
視界向上のために高さを抑えたスクエアなインストゥルメントパネル(ルームミラー位置も移動されている)はドライバーに向かってわずかに湾曲しており、6点式ベルトを締めた状態でもスイッチ類に手が届きやすいという。またシートポジションも25mm低められており、特にヘルメットを着用した場合の余裕につながっているはずだ。これらはすべてボリュームセラーとはいえないGRヤリス専用だというから、驚くほかはない。
1.6リッター3気筒ターボエンジンの最高出力は「GRカローラ」と同じ304PS/6500rpmに引き上げられ、最大トルクも400N・m/3250-4600rpmに増強されている(従来型は272PSと370N・m)。8ATのセレクター前にはドライブモード(「スポーツ」「ノーマル」「エコ」「カスタム」の4種)のセレクターが新たに備わったが、スポーツを選ぶとスロットルレスポンスもシフトもはっきりアグレッシブになり、とりわけミドルレンジでのガツンと強烈な反応はひと回りたくましくなったようだ。滑らかなフィーリングというより絶対的な速さを追求した実戦的ユニットである。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
さらに実戦向き
一般道での試乗だったためにそれなりのペースでしか試せなかったが、その限りではAT任せで乗るよりもシフトパドルを使ってマニュアル変速したほうが正直走りやすかった。ただし、マニュアルシフトでリミッターに少しでも当てると、変速の際に若干タイムラグがあった(おそらくはシステム保護のため)。サーキットなどで思い切り走ればまた違うはずだ。
コンソールのダイヤルでGR-FOUR(アクティブトルクスプリット4WD)のモードを選択できるのは従来どおりだが、これまでの「ノーマル」(前後トルク配分比60:40)と「スポーツ」(30:70)、さらに「トラック」(50:50)という設定ではなく、ノーマル(60:40)と「グラベル」(53:47)および「トラック」(60~30:40~70の可変式)に改められている。
従来型は4WDスポーツを選ぶとやや唐突にリアを振り出す“スナッピー”なキャラクターだったが、最新型はガッチリと路面をつかんでグイグイ加速する強烈なトラクションが特徴的だ。たぶん、より絶対的な速さを重視する方向でセッティングされたと思われる。何より、さらに堅固に正確になったステアリングフィールが好ましい。ボディー剛性アップだけでなく、フロントストラットアッパーの締結ボルトを3本に増やしたことが(今までは1本!)効いていると推測する。コンペティションの世界ではずっと前から2ペダルATのほうが速いことは常識。もちろんイージードライブもできるが(7&8速はオーバードライブ用)、上述したように平和で安楽なクルマではない。ATでも、いやだからこそ“ガチ”な人向けのスーパーハッチである。
(文=高平高輝/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
テスト車のデータ
トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3995×1805×1455mm
ホイールベース:2560mm
車重:1300kg
駆動方式:4WD
エンジン:1.6リッター直3 DOHC 12バルブ ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:304PS(224kW)/6500rpm
最大トルク:400N・m(40.8kgf・m)/3250-4600rpm
タイヤ:(前)225/40ZR18 92Y XL/(後)225/40ZR18 92Y XL(ミシュラン・パイロットスポーツ4 S)
燃費:10.8km/リッター(WLTCモード)
価格:533万円/テスト車=583万5450円
オプション装備:ボディーカラー<プレシャスメタル>(5万5000円)/クーリングパッケージ<サブラジエーター、コールドエアインテークダクト>(11万円)/ナビパッケージ<コネクティッドナビ対応ディスプレイオーディオPlus、ドライブレコーダー【前方】+簡易後方録画、ステアリングヒーター、シートヒーター、ナノイーX、JBLプレミアムサウンドシステム【8スピーカー】、ETC2.0ユニット>(24万3100円)/デジタルキー(3万3000円)/寒冷地仕様+リアフォグランプ(3万6850円) ※以下、販売店オプション GRフロアマット<ベーシック>(2万7500円)
テスト車の年式:2024年型
テスト開始時の走行距離:1173km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(6)/山岳路(2)
テスト距離:365.6km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
テスト距離:8.7km/リッター(車載燃費計計測値)

高平 高輝
-
無限N-ONE e:/シビック タイプR Gr.B/シビック タイプR Gr.A/プレリュード【試乗記】 2026.2.7 モータースポーツのフィールドで培った技術やノウハウを、カスタマイズパーツに注ぎ込むM-TEC。無限ブランドで知られる同社が手がけた最新のコンプリートカーやカスタマイズカーのステアリングを握り、磨き込まれた刺激的でスポーティーな走りを味わった。
-
インディアン・チーフ ヴィンテージ(6MT)【海外試乗記】 2026.2.6 アメリカの老舗、インディアンの基幹モデル「チーフ」シリーズに、新機種「チーフ ヴィンテージ」が登場。このマシンが、同社のラインナップのなかでも特別な存在とされている理由とは? ミッドセンチュリーの空気を全身で体現した一台に、米ロサンゼルスで触れた。
-
スズキeビターラZ(4WD)/eビターラZ(FWD)【試乗記】 2026.2.5 スズキから初の量販電気自動車(BEV)「eビターラ」がいよいよ登場! 全長4.3mで、航続距離433~520km(WLTCモード)、そして何よりこのお値段! 「By Your Side」を標榜(ひょうぼう)するスズキ入魂のBEVは、日本のユーザーにも喜ばれそうな一台に仕上がっていた。
-
日産エクストレイル ロッククリークe-4ORCE(4WD)【試乗記】 2026.2.4 「日産エクストレイル」に新たなカスタマイズモデル「ロッククリーク」が登場。専用のボディーカラーや外装パーツが与えられ、いかにもタフに使い倒せそうな雰囲気をまとっているのが特徴だ。高速道路とワインディングロードを中心に400km余りをドライブした。
-
フェラーリ849テスタロッサ(4WD/8AT)【海外試乗記】 2026.2.3 フェラーリの新型スーパースポーツ「849テスタロッサ」は、スペシャルモデル「F80」に通じるデザインをまとい、歴史的な車名が与えられている。期待高まる、その走りは? スペインで試乗した西川 淳の第一報。
-
NEW
ガス代は下落しハイブリッド好調 では“燃費の相場”はどうなっている?
2026.2.9デイリーコラム暫定税率は廃止となり、高止まりしていた燃料代は下落。一方でBEV化の速度は下がり、ハイブリッド車需要が高まっている。では、2026年現在の燃費はいかほどか? 自動車購入時の目安になるであろう“燃費の相場”について考える。 -
NEW
日産キャラバン グランドプレミアムGX MYROOM(FR/7AT)【試乗記】
2026.2.9試乗記「日産キャラバン」がマイナーチェンジでアダプティブクルーズコントロールを搭載。こうした先進運転支援システムとは無縁だった商用ワンボックスへの採用だけに、これは事件だ。キャンパー仕様の「MYROOM」でその性能をチェックした。 -
トヨタ・カローラ クロス“GRスポーツ”(前編)
2026.2.8思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が「トヨタ・カローラ クロス“GRスポーツ”」に試乗。人気の都市型SUVに、GRのデザイン要素と走りの味つけを加味した特別なモデルだ。箱根のワインディングロードでの印象を聞いた。 -
無限N-ONE e:/シビック タイプR Gr.B/シビック タイプR Gr.A/プレリュード【試乗記】
2026.2.7試乗記モータースポーツのフィールドで培った技術やノウハウを、カスタマイズパーツに注ぎ込むM-TEC。無限ブランドで知られる同社が手がけた最新のコンプリートカーやカスタマイズカーのステアリングを握り、磨き込まれた刺激的でスポーティーな走りを味わった。 -
インディアン・チーフ ヴィンテージ(6MT)【海外試乗記】
2026.2.6試乗記アメリカの老舗、インディアンの基幹モデル「チーフ」シリーズに、新機種「チーフ ヴィンテージ」が登場。このマシンが、同社のラインナップのなかでも特別な存在とされている理由とは? ミッドセンチュリーの空気を全身で体現した一台に、米ロサンゼルスで触れた。 -
ホンダの「Hマーク」がいよいよ刷新! ブランドロゴ刷新の経緯とホンダのねらい
2026.2.6デイリーコラム長く親しまれたホンダ四輪車のロゴ、通称「Hマーク」がついに刷新!? 当初は「新しい電気自動車用」とされていた新Hマークは、どのようにして“四輪事業全体の象徴”となるに至ったのか? 新ロゴの適用拡大に至る経緯と、そこに宿るホンダの覚悟を解説する。




















































